HOME 
2007年 7月度
<<前月 来月>> 
マンガ
Novels
小説
図書
図書館GET 
そ他
その他借り物  


Novels
『喪の女王』7巻 須賀しのぶ  コバルト文庫

外伝・番外編を含め、25冊以上も長く続いてきた、『流血女神伝』シリーズ。いよいよ、あと1冊宣言が出ました。
ここに至るまで、いろいろありました。正直、内容を詰め込み過ぎて、心理描写が置きざりになったり、勢いに任せて書き飛ばした印象があったこともありました。それでもこれまで、シリーズをほぼ一定ペースで刊行し続け、この先どうなるんだ!というワクワク感をずっと維持してきたことは、たいしたものだったと素直に思います。

そして、これまで営々と積み上げてきた物語の幕を、あと1冊でいかに鮮やかに降ろすか。まさに作者の力量が問われています。どうぞどうぞ、できれば『キル・ゾーン』のラストのような、カタルシスを期待させてください。お願いします。

ちなみに、私的にオチをつけてほしいことはこれだけあります。
●エティカヤ組 カリエの、バルアン&アフレイムへのオトシマエ
●ルトヴィア組 ルトヴィア一国の終焉と、ミュカ・ドーン・グラーシカ、それぞれの行く末
●海アホ組 ギアス×トルハーンの対決。
●ユリ・スカナ組 ネフィシカ×ビアンの対決。イーダルの救済もしくは破滅。
●ザカール組 サルベーン&ラクリゼ。
●ザカリア女神の契約の成就 ドーン・ミュカ・トルハーンの女神への供物。
●主人公組 カリエ&エド&セーディラ。

なんだか、絶対1冊では無理な気もしてきましたが…。
願わくば、どういう形であれ、絶対にハッピーエンドであってほしい。ここまで毎度、神々の干渉に翻弄され続けてきた人々が、幸福な結末をもぎ取れますように。祈っております。
Novels図書
『星新一 一〇〇一話をつくった人』 最相葉月  新潮社

ショートショートの名手にして、SF界の第一人者、星新一。国民的作家として、SF界をリードしてきた彼の業績は広く知られています。これは膨大な資料と取材に基づいて、星氏の知られざる全貌に肉薄した評伝です。もう、感動でした。これは読んで損は無しと断言いたします。

星新一は、多くの人にとっておそらく、若い頃のある時期に出会い、いつしか卒業してしまった作家の1人であろうと思います。あの一切の無駄をそぎ落とした文体で描かれた、知的かつ上品にして、エスプリの効いたショートショート群。読めば文句なくおもしろいのは重々分かっていながらも、大人になってから読むには、やや物足りない気がしていました。その印象は、この著者の方にとっても同じであったらしく、後書きで、評伝に取り組むことになったきっかけについて述べています。曰く、50年以上読み継がれてきた、広範な読者層を持つ作家であり、自分も一時期夢中になったにもかかわらず、あまりにもその作者の事を知らなかったことに気づいたので、逆に興味を引かれた、とのこと。

この評伝では、星氏の生い立ちについて、彼の父親である星一氏と彼の創業した星製薬のことが、全体のかなりの分量を費やして語られています。戦前からの大企業であった星製薬は、いわゆる「政商」ではなかったことから、政府からいじめに近い扱いを受けた結果、負債をかかえ、戦後にはGHQからも迫害を受けたこと。星親一(本名)が戦後、父の急死によって、会社を受け継いだときは、手の施しようのないほどの経営実態であったこと。最終手段として、経営と負債の処理のほとんどを他人に委託し、会社経営から手を引いた星親一にとって、作家として独り立ちすることは、ほとんど社会復帰の唯一の手段であったことなどなど。

そのあたりの事情は、まるで、司馬遼太郎作品によくある「余談」部分のようで、状況を見てきたように説明しつつも、当時の若き星親一が背負った重荷と、無念とが、くっきりと浮き彫りになっていました。

そして、彼が縁あって小説を書くようになったことから、いよいよ作家・星新一が誕生します。星氏がSFというジャンルを開拓し、商業的に確立させたことと同期して、黎明期のSF界の様子が詳しく描かれており、大変興味深かったです。このあたりも、系統立てて説明してもらえたのは非常にありがたかった。ビッグネームがゴロゴロ登場し、時代の熱気がその場にいたかように伝わってきました。また、新井素子との交流についても、星氏の側から聞くとまた新鮮でした。

ともあれ、結果的には星氏のショートショートはコンスタントに売れ、商業的には大成功を納めたこと。しかし、文学的にはついに、「賞」と無縁であったことへの、微妙な屈折。最終的に、作品の数にこだわるようになり、一〇〇一作目に致るまで、ただ黙々とショートショートを、文字通り生命を削り、絞り出すようにして書き抜いた、その偉大なる業績。

知らなかったです。かっこつけすぎです。涙が止まりませんでした。

巻末の、延々8ページに及ぶ参考資料のリストに圧倒されます。読み終えて、新たな気持ちで星新一ショートショートを読み直してみたくなりました。
Novels図書
『冥王星パーティ』 平山瑞穂  新潮社

『ラス・マンチャス通信』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞した作者の最新作。今回は高校時代にある時間を共有した1組の男女を通して描く、屈折した青春譚です。前作『忘れないと誓ったぼくがいた』は、青春というにはあまりにキレイすぎて、読後に何も残らなかった気がしましたが、今回は、現実のダークさと、ナイーヴな心理描写とのバランスがとれていて、作者の持ち味がよく出ていました。

桜川衛は、ある日ネット上に「shoko tsuzuki」なる管理者の運営するアダルトサイトを見つけた。そこには、顔の判然としない猥褻写真とともに、高校時代の衛と「都築祥子」にしか知り得ない内容が記載されていた。果たしてこれは、衛の知っていた、「あの」都築祥子なのだろうか…?

ラブストーリーといえなくもないですが、作者の意図はやはり、誰しも身に覚えのありそうな、若くて自意識過剰で潔癖でイタい時代をつぶさに描くことの方なのでしょう。この人は、そうしたシビアな感情を描くのが、相変わらずうまい。なんだかんだで一気に読んでしまいました。なにより主人公たちが、そうしたイタさを糧にしながらも、ちゃんと成長しえたのがよかったです。
『コヅミトキ』 天野真歩 エンターブレイン

店頭で見かけて気になって、そのままジャケ買いしました。私にしては珍しいです。当たりだったかどうかは、うーん、微妙でした。

アジア的ムラ社会の雰囲気がある異世界を舞台に、祖母の跡を継いでムラの拝み屋(コヅミトキ)になった主人公サシュウ。彼が土俗的な祟り神や、呪いや、血縁などに関わる、様々な障りに、専門家として対峙する話。

舞台となる世界は「どこかで見た気のする架空の国」として、それなりの存在感がありました。そこでサシュウが事件に関わっていくのは、少し『蟲師』な雰囲気。中には、呪いや因縁等の、血生臭い話もありますが、サシュウの飄々とした性格のせいか、それほどオドロでもありません。それはいいのですが…。

惜しむらくは、ストーリーマンガとして、ぎこちない感じがあったこと。主人公に感情移入させ、事件に臨場感を出したり、絵柄に緩急をつけたりがあまりないので、結果として、感情的に平板で、そっけない話になってしまっています。多分、狙っているわけではなくて、ストーリーを表現する技術がまだ拙いのだと思う。土俗の拝み屋ファンタジーという設定は、なかなかツボなだけに、惜しいです。

 HOME  <<前月 来月>>