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2007年 1月度
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『へうげもの』4巻 山田芳裕 バーズComicsDX

一瞬、「黄土色」と呼びそうになりましたが、実は豪華な黄金色カバーの最新刊。桃山時代をイメージさせる心憎い意匠、なのでしょうか。

さて、時代の趨勢により、天下の覇者となったサル君。どうも、信長様ほどの器量があるようには見えない彼の創る時代が、どうなることかと思いましたが、これはこれで、なかなか…。
孔雀の羽根で身を飾り、壮大な大阪城を構築し、と派手にぶち上げたものを、利休に「信長の真似」とばっさり切り捨てられてみたり。そのあたりの己の限界は本人が誰よりも自覚していたらしく、「信長をなぞるが我が道」と開き直ってみたり。そうかと思えば、茶々との閨でいきなりロープを持ち出しての緊縛プレイ。縄目にうっとりするマニアックさといい。一筋縄でいかない関白様です。

秀吉に正式に仕えることになった左助も、順調に出世しております。ついに「織部」の名を手に入れ、いろいろ思うところありながらも、結局は数寄街道を邁進するのであった。彼の「天下取り」は果たして成功するのでしょうか。

今の所の最強かつ最凶な人物は、どう見ても利休。ほとんど人間離れした彼岸に行っちゃってます。そして、やっぱりどこかで再登場しそうな光秀。などなど、史実は史実で楽しみですが、それとは関係ないところに仕掛けられた、微妙な遊び心が、また妙に楽しいです。不思議な読後感だなあ。
『Under The Rose』1〜4巻 船戸明里 バーズComicsDX

ヴィクトリア朝英国貴族社会の影の部分をこれでもかと描く本作。その愛憎ドロドロっぷりが評判でした。1,2巻は昨年、ブックオフで入手して読んだのですが、第1話「冬の物語」はどこの『トーマの心臓』ですか?という、半端なラストが釈然としなくて、しばらく放置。暮れに3巻を同様に見つけて読み、そのまま最新刊になだれ込みました。いやー、ドロドロもここまで突き抜けてくれると、非常に読み応えがあります。船戸さんがここまで描ける人だったとは。確かに挿絵だけでは、もったいないです。

舞台となるロウランド伯爵家。人もうらやむような幸福そうな一家にはおそるべき秘密が、って…。まあ、男の子ばかり6人兄弟のうち、2人は母親が違う庶子だとか。外にも愛人宅があって、そこにも子供が2人いるとか。伯爵と夫人は、仮面夫婦だとか。そこまでは、ありがちなことだったのですが…。

今連載中の第2話は、今やどこが「春の賛歌」なのか全く分からなくなっておりますが、ロウランド家にやってきた若く美しい家庭教師、ミス・ブレナン視点から描かれる話。そこが伏魔殿であることにも気づかず、気丈にきれい事を押し通す彼女は、最新刊4巻では、マジにフ/ラ/ン/ス/書/院/文庫(検索よけ付加)な事になってます。弱冠16歳にして、堂に入った鬼畜ぶりを披露するのは、次男のウィリアム君。結局、この子がこのお屋敷の闇を最も色濃く体現していたのでした。

彼がマザコンなのは疑いようもないし、ミス・ブレナンと夫人は、どこか似ていると思う。だから、そのあたりの愛憎に収束していくような気もするのですが。果たして、誰も殺すことなく決着させることができるのか。危ぶんでおります。まあ、夫人は最初から死亡フラグの人なので、ここでウィリアム君の手にかかるのは必然と見ていますが。他は誰も死なないで欲しいところです。
半分怖いもの見たさですが、最後まで見届けます。
『ヴィンランド・サガ』1〜3巻 幸村 誠 アフタヌーンKC

アフタヌーン誌連載中の北欧歴史ロマン。改めて最初から読んでみました。

アフタヌーン誌に掲載されたのは、コミックス3巻以降の部分。それ以前の1,2巻収録部分は、少年マガジンに連載されていたもので、今回初読みです。正直、アフタヌーンで始まった「新連載」を読んだときは、殺伐とした戦闘描写が延々と続く上、登場人物も誰が誰やらな状態だったので、話が見えてくるまで、しばらくかかりました。確かに1巻から読んでおけば、普通に判りやすい話でした。まあ、いいか。

11世紀初頭、デーン人、もしくはノルド(ノルマン)人、後にヴァイキングと呼ばれる勇猛なる民は、その最盛期を迎えようとしていた。彼らは北欧を拠点とし、ヨーロッパ全域で、戦争、暴行、略奪をほしいままにし恐れられてきた。そんな時代、主人公の少年トルフィンは、戦士アシェラッド率いる傭兵団に身を置き、戦闘に臨み頭角を現す。彼とアシェラッドには、その過去に深い因縁があった…。

関係ないが、「ノルマン人」という言葉は『ロビン・フッドの冒険』で初めて知ったので、今も敵役のイメージが強いです。後々のサクソン人との確執を見ると、どっちもどっちかとは思いますが。それはともかく。

デーン(デンマーク)王国から、イングランドへの侵攻に参加したアシェラッドたち。殺伐とした戦闘の果てに見えてきた、彼らを取り巻く情勢と謀略。ここにきて俄然、面白くなってきたところです。続きが楽しみ。
Novels図書
『夜市』恒川光太郎 角川書店

第12回日本ホラー小説大賞受賞作。あちこちで評価が高かったので、読んでみました。ホラーとしては、正直、全然怖くないのですが、不可思議で透明感のある、独特の雰囲気は、なかなかよかったです。今日も人知れず、日本のどこかで開かれる「夜市」。その縁日に似たノスタルジックな情景が、鮮明に浮かんできます。少し朱川湊人に似た感じですが、こちらの方が叙情的で好みでした。

できればファンタジー方面でのご活躍を、期待させて下さい。

Novels図書
『金春屋ゴメス 〜芥子の花』西條奈加 新潮社

近未来、日本の中に忽然と出現した独立国家「江戸」を舞台にした、パラレル時代ファンタジー。秘かに続編が期待されていたのが、やっと出ました。それも、前作より1段とパワーアップされました。文句なくおもしろかった。さて。

今回はタイトルにも関連しますが、阿片の抜け荷にまつわる話です。
長崎奉行所は、江戸産の阿片が世界各地に出回っているとの情報を受け、全力で調査にあたることとなった。そんな失態に加え、腹心の部下だった十助が江戸を辞したこともあって、ゴメス親分は荒れていた。親分による人的被害は甚大で、「裏金春」の面々は戦々恐々。そんなとき、十助の後任に、柔術の達人という美しい女性武士が配属される。また父親の看病のために里帰りしていた辰二郎も復帰して、ようやく落ち着きを取り戻したかに見えた裏金春だったが。

江戸の武士というのは、つまり公務員なので、資格試験があるそうです。ゴメス親分が昔受けたという、武家試験の話とか。柳橋で芸者を上げて豪遊する話とか。流人島に潜入した手下の脱出方法の手配とか。そしてクライマックスの鬼神のごとき御活躍。ゴメス親分、渋すぎです。もう、最高でございました。
今回、ラストで新たな伏線が暗示されたこともあり、まだ続いてくれそうです。『しゃばけ』に続く、人気シリーズになりそうな予感。
『エロイカより愛を込めて』30〜34 青池保子 プリンセスComics

少女漫画界のもはや古典的名作『エロイカより愛を込めて』。実は20巻台で息切れして、しばらく読まないでいたのですが、最新作「ケルティック・スパイラル」の評判がいいので、その収録分の32〜34巻、及びその少し前の、外伝と「Z」が収録されていた、30,31巻を入手して一気読みしました。久々に読むと面白かったです。前半の、ケルトマニアのおばさんの妄想に振り回される伯爵という、まったりコメディ部分も笑えたし、後半は、少佐の任務がテロリストの破壊工作阻止という判りやすいものだったので、緊張感とスピード感がありました。
休止期間はあったものの、30年描き続けて、まだこれだけのクオリティを保てるというのは、やっぱり凄いことだと思います。

番外編の「心理実験プロジェクトS」。少佐の作ったケーキなら、オークションでプレミアつけます。「Z」のファイナル・ストーリー。これを立ち読みして、はじめて燃料電池なるものを知った1999年夏。かのエネルギーの研究はメジャーになったが、普及はまだまだですね。次はハイブリット車にしたいところ。

そして、近々予告されている、『アル・カサル』の完結編が、とても楽しみです。

Novels図書
『神様がくれた指』 佐藤多佳子 新潮社

『一瞬の風になれ』で、ブレイク中の佐藤さん。図書館リクエストしたものの、時間がかかりそうなので、とりあえず入手できたお試しの1册。

主人公は天才的なスリのセンスを持った青年。逮捕され服役。ようやく出所して帰宅する途中の電車内で、10代の少年少女のスリチームに、まんまと母親の財布を奪われ、自身も負傷してしまう。その芸術的な手腕にショックを受けた彼は、たまたまケガをした彼を助けてくれた占い師の青年の家に転がり込んだまま、奴らを探し出して、何らかの落とし前をつけさせることを誓った。

得体の知れないムショ帰りの男を拾って住まわせる占い師も、家賃の支払に当てるための大金を、賭博であっさり失ってしまうようなダメ男。ダメ男2人の奇妙な同居生活、というと、どこかやおい臭いですが、それは置いといて。

スリ行為を美化しすぎている等、それ、いいのか?という甘さはありますが、瑞々しい文体と心理描写はなかなかいいです。事件が収束していく後半は、緊迫感に引かれて一気読みでした。その熱っぽさが、あさのあつこに似ている感じ。
他作品も読んでみたいです。
Novels
『半落ち』 横山秀夫 講談社文庫

これまで映画化、ドラマ化されまくってきたベストセラー作品。まだ未読だったので、文庫で入手して読みました。

現役警官が、アルツハイマー症の妻を絞殺後、自首した。事件に関わった人々にも、彼の真面目で篤実な人柄は伺えた。「病状が進み、殺してくれと叫ぶ妻が不憫だった」という供述に、矛盾は無いように思われたのだが…。
この世への執着を捨て去ったかに見えた容疑者の男は、それでも、妻を殺害してから自首する迄の間の2日間に、どこへ出かけ、何をしていたかについて、頑として黙秘を続ける。果たして、空白の2日間に何があったのだろうか。

うーん、いい話でしたが、やや違和感。現役警官の犯罪とはいえ、妻を哀れんでの嘱託殺人が一面トップに載るようなニュースなのかなあ。これの発表された20世紀はともかく、センセーショナルな事件報道が、年々過激になる一方の昨今、これがごく、ステレオタイプな事件とみなされても仕方ないし、全国的には、ほとんど続報の必要もないほどの、地味な扱いで終わってしまうような気がします。

にもかかわらず、空白の2日間を隠蔽しようとする県警も、その空白に秘められた容疑者の想いを余さず汲み取ろうとする事件関係者も、必死すぎるように思えてしまった。警察と検察とマスコミと弁護士とが、いつでもこれだけ真剣に仕事をしてくれれば、そりゃ、世に冤罪も隠蔽事件も汚職も、皆無でしょうとも。

で、結局、明らかになった容疑者の行為。別に隠すような事じゃないじゃん。

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