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『遠い約束』や『時計を忘れて森へ行こう』で、みずみずしい青春ミステリーが印象的だった光原さん。ただ『十八の夏』以降は、何となく違和感を感じて追わないでいました。これは作者には珍しく、ケルトファンタジーの連作短編ということで、手に取ってみました。中身はしかし、しっかりミステリーだった。 さて、このケルト風異世界では、楽人(バルド)は重要な役割を担っていた。各村や町にあって行事に不可欠なだけでなく、優れた楽人は王や領主に召し抱えられて「讃えの楽人」として栄華を極めることもできた。そして更に、限られた素質を持った者の中で、何かの力によって選ばれた者のみが「祓いの楽人」となる。「祓いの楽人」は、音楽を力とし、世の摂理をただす術を知るもの達であった。彼らはその楽の力によって、時に魔を祓い、災害を食い止め、迷える魂を行くべき場所に送ることができたという。 と、いう「祓いの楽人」であるオシアンと相棒の少年ブラン。彼らが狂言回しとなって旅をし、行く先々で霊魂や魔物がらみの事件を解決する話。迷える霊魂に対して最終的にトドメを刺すのはオシアンの祓いの楽の音ですが、霊たちがこだわっているものを明らかにして、かれらの迷いを解きやすくするために、ブランたちも毎度探偵よろしく奔走するのでした。 で、今回このファンタジー設定が成功したかはどうかは、ちょっと微妙かも。作者がケルト好きなのは分かるのですが、あまり底が深くないのもなんとなく分かるし。後半になって、レギュラー登場人物が増えたりと、ラノベシリーズとしての面白みは出てきましたが、個々の事件そのものはあまりうまくまとまっていない気もする。解きほぐすべき謎は人の過去の事件や想いであることが多いのですが、その心理が現代人のまんまなのがどうもなあ。しかもそれを、ブランが毎度くどくど解説してくれるのが、正直うざいです。謎のない「水底の街」のような話の方が叙情的でいいのかも。 できればホワイトハートのファンタジーレーベルあたりで、うんと美麗な挿絵付きでシリーズ化されたら、もっと話題になりそうな気がします。 | ![]() |
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熊野にご一緒した海さんおすすめの浜たかや。なかなか独特な世界を描いた骨太いファンタジーのようなので、借りて来てみました。 物語の舞台は、ロールと呼ばれる世界。そこは中央の強大な武力国家、アギオン帝国と、辺境のいくつかの部族国家により成立する世界。主人公キアスは辺境部族の1つ、モールマイ族のモール神殿で暮らす見習い巫女の1人だった。 かつては強力な呪力を備えていたといわれるモールの巫女も、その力が衰えたと言われて久しい。アギオン帝国による周辺国への圧迫が露骨になる中、かつてのモールの巫女の力を取り戻すにはどうしたらいいか考えていたキアス。同じ頃、アギオン帝国内部では、帝国を揺るがすほどの力を持つ巫女の出現の噂がささやかれていた。 うーん、かなり凝ったつくりの物語で、魅力的な素材も豊富でした。モールマイ族は子供の誕生と同時にモールの木の苗を植え、その木は子供と分かちがたく結びついた「根」となるとか。見習い巫女が、正巫女となるための「呼び出し」の儀式とか。夢が重要な鍵となっている展開もなかなかいい。 ただ、読んでいて致命的だったのですが、主人公キアスの高慢ちきな性格がどうしても好きになれなかった。捨て子だったというキアスですが、別にそのための苦労はしていないようだし、なぜか行く先々でナチュラルに周囲の人々を見下しています。そして一介の見習い巫女の名が、なぜか、アギオン帝国の皇帝の周辺で噂になっていくというご都合主義に、ちょっと待て、と。 もう少し、キアスが共感しやすい少女で、中央権力vs辺境部族といった対立が、リアリティをもって描かれていれば、倍くらい読みやすかったと思います。 | ![]() |
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宇宙を目指す高校生達の青春、11巻目。相変わらず、宇宙飛行士を目指して無茶な訓練に明け暮れるアスミたち。3年生となった彼らが垣間見せる成長ぶりに、いつもながら驚かされます。 話としてはあまり進んでいませんが、それもまたよし。この季節の中で、一途に青空を見上げ、夜空の星を追う彼らをずっと見ていたいです。いつか彼らの夢がどこかにたどり着くその時まで。 思えば、この話は2025年という設定でした。獅子号の事故は確か2010年。連載開始時には、はるか先に思えていた年が、ここまで近づいてきています。どうぞこの先の未来が、子供達が少しでも、夢を追えるような時代へとつながっていきますように。 | ![]() |
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待望の新刊。前半の「Greenback Jane」は、マフィアから追われている偽札職人の女を、彼女の製作した原版と引き替えに逃がそうとするレヴィとエダ(@暴力教会のシスター)の話。彼女らのひたすら派手なガンアクションと、新顔旧顔取り揃えて、かわるがわる登場するやたらキャラ立ちした殺し屋さんたちが見物でした。勢いだけで、内容はあんまり無かった気がするけど。 珍しくベニーがハッカーとして活躍していました。彼、当初からレギュラーだった割には、いまだに性格が見えないなあ。オタク属性なのに、役回りはいつも、正論を言う常識人だったりするし。 後半の「El Baile de la muerte」は、ロベルタ復活編。彼女の復活によりロベルタ祭りなるものが開催中とか?やっぱり人気なのね。いや、うれしいですけど。 ラブレス家の当主がテロにより爆死。1人復讐を誓うロベルタと、彼女の暴走を止めようと奔走するぼっちゃまたち。この話今も雑誌連載中なので、先が非常に楽しみです。 私的最萌えキャラは、張の旦那。なでつけた黒髪と後退気味のオデコ。よれたネクタイにスーツ。百戦錬磨の中年の余裕と哀愁。そして色気にクラクラ。この先に登場するのが凄く待ち遠しいところです。 | ![]() |
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第134回直木賞受賞作。東野さんは、過去何度も候補に上がっていたので、受賞は遅過ぎたくらいだと思います。伝統的なミステリーに、何かしら現代的なテーマを盛り込んだ、安定した面白さが評価されたのでしょう。 と、言いつつ、東野作品を読んだのは10年ぶりくらいになることに気づいた。読めばおもしろいと知りながらも、東野作品は、キャラ萌えを狙ったり、シリーズ化したりということがないので、もう一つ「今すぐ読みたい」という状態にならないでいたようです。なんとなく、もったいないかもなあ。 さて、本作。殺人事件が犯人の視点から描かれる、倒叙法ものです。犯人のアパートの隣人である容疑者Xは、何を思ってか犯人への協力を申し出、遺体処理とアリバイ工作を引き受ける。彼と、事件を捜査する側との知恵比べがメインテーマとなります。追われる側からの緊迫感に引かれて、読み始めたら止まらなくなりました。おかげでハードカバーを、はるばる熊野まで持って行く羽目になった。 容疑者Xの行為については、賛否というか、納得できる/できないが分かれるようです。確かにアレは、された方にはいい迷惑だったと思うし、正直引きますが、感動してしまったのも事実でした。あれかな。機械の愚直さや誠実さを、健気と感じてしまうツボ。通じるものがあったようです。 | ![]() |