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有川さんの最新作。元は『図書館内乱』に作中小説として登場した本のタイトルでしたが、このたびコラボ企画として実際に執筆されました。 内容は、聴覚障害をもつ女性の直球のラブストーリーです。主人公の伸行が、高校時代にのめりこんだ、とある物語。予想を裏切る残酷な結末故に、彼にとってのトラウマとなっていた物語について、熱く語っているサイトを見かけた彼は、つい、その管理人「ひとみ」にメールを送ってしまった。そうしてはじまった、伸行と「ひとみ」のとの、やたらテンションの高い往復書簡。いつしかリアルでひとみと会える日を待ち望むようになった伸行に、ついにその日がやってきたが…。 聴覚障害というハンディについて、健常者にはなかなか想像がつかないもどかしさが、伝わってきました。言葉が聞き取れないために、他人との間に横たわる、どうしても超えることの出来ないコミュニケーションの壁。普通に自意識もコンプレックスもある若い女性は、自身の障害を致命的な欠陥のように悩んで、自己否定でぐちゃぐちゃになってしまう。主人公はそんな彼女に近づきたいと思いながらも、時にそれを普通に、めんどくさいと感じて疲れてみたり。そんな、若さゆえの痛みの伴った、瑞々しくもリアルな恋物語でした。 なんつーか、有川さんの少女漫画的素養が、ここでは全開になった感じ。ただ、それが好きかどうかは正直、微妙でした。「ひとみ」のぐだぐだした態度には、さすがに感情移入できなかったし、結末は見えていたので、恋の行方をハラハラしながら追いかけるという話でもなかった。 それでも、立ちふさがる困難を1つ1つ乗り越えていった主人公たちの、成長のすがすがしさは悪くなかったです。こうした純なリリカル系も、たまにはいいかもね。 | ![]() |
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『ダ・ヴィンチ・コード』の作者の、同じくらい力の入った伝奇ミステリー。宗教図像解釈学者のロバート・ラングドン氏は、こちらが初登場作品です。 ある日未明に、電話でたたき起こされたラングドン氏。彼の元に送られてきたのは、1つのむごたらしい遺体の写真。遺体の胸には、歴史の影で長く暗躍してきた秘密組織「イルミナティ」の紋章が刻印されていた。謎の電話の主は、ラングドンの学者としての業績を見こんで、協力を要請してきたのだった。迷惑に思いつつも、抑えがたい興味に突き動かされて、電話の主の待つスイスはジュネーブに向かうラングドンだったが…。 と、いう具合で、事件の発端は『ダ・ヴィンチ・コード』とほとんど同じでした。紋章の絡んだ、謎の殺人事件。そこに被害者の娘が登場して、事件を解明しようとする。ラングドンさんは、本来全く自分に関わりのない事件であるにもかかわらず、学者としての業と、若い女性への騎士道精神が災いして、抜け出せない所まで深く事件に巻き込まれ、奔走する羽目になるのであった。 さて、殺害された被害者は科学者であり、何と「反物質」の生成に成功していたという。そして、被害者の保管していた反物質は何者かによって盗まれた。核を超える破壊力を持つ反物質を手に入れた何者かは、その直後、折しも教皇急死により、コンクラーベが開催されようとしていたヴァチカンに現れ、高らかにカトリックの中枢に対する破壊と攻撃を予告した。ラングドンと、被害者の娘ヴィットリアは、急ぎヴァチカンに駆けつけるが…。 ミステリーとしては凝っていましたが、正直『ダ・ヴィンチ・コード』ほど、先が気になって一気読み、という訳にはいかず、思ったより時間がかかってしまいました。今回ラングドンさんの巻き込まれ方が中途半端だったせいかしら。実際、彼は上巻のラストあたりまでは役立たずの傍観者で、「大変ですねえ、じゃ、私はこれで」と、ばかりにいつ退場してもおかしくなかった。あと、「反物質」による大量虐殺テロは、我が事として臨場感を感じるには、事件のスケールが大きすぎたらしい。映像で見れば大分違うんだろうなあ。 ともあれ、テーマといい、謎解きといい、贅沢なネタをふんだんに使った水準以上のエンターティメントであるのは間違いありません。本書片手に、ヴァチカン観光できたら、さぞかし楽しいことでしょう。 | ![]() |
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各メディアこぞっての、盛り上げ祭り開催中の『結界師』。アニメもいよいよスタートです。アニメの印象としては、『犬夜叉』よりも好みでした。 いえ、『犬夜叉』は妖怪のおどろな描写や派手なアクションに力が入る余り、原作のコミカルな部分が弱くなって、全体的に暗ーくなってしまった印象があるので。『結界師』も、ラブコメもしくは、ホームドラマ的な部分をしっかり描写して欲しいものです。 さて、原作14巻は、前巻で黒芒編に一応の決着がついたことから、ちょっと中休み的な展開です。とはいえ、一般に週刊誌連載も長くなると、こういう短い息抜き話というのが、とても貴重に思えてくるものです。烏天狗が可愛くて、なんだか癒されてしまった。 次からまた当分、シリアス展開が続きそうな感じですが、正守兄の出番が多そうなのはうれしいです。 | ![]() |
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「青春小説」をテーマにしたらしい7人の作家による競作短編集。有川浩を目当てに借りてみました。有川さんによる「クジラの彼」は『海の底』に登場した冬原さんが主役の短編。しかも直球ラブストーリーでした。よかったあ。あの、何事もそつなく器用にこなす人の、あーんな姿が見られて、とってもおトクでした。 しかし、あれが事実なら(きっと、事実なんだろうけど)海自の隊員なんて、見合いか職場恋愛でもなければ、結婚なんてほとんど無理そうに思えます。大変なんだなあ。 他の6名は、桜庭一樹以外はこれが初読みでした。一通り感想です。 ●角田光代 「あの八月の、」 大学の元映画部の女性達が、学生時代の映像を見ながら、過去の恋を振り返る話。恋愛描写が湿っぽくて生々しい感じ。「性交する」という言葉の古くささに引きました。 ●日向蓬 「涙の匂い」 父親の左遷により、田舎の中学に転校した主人公の、周囲との違和感と淡い初恋。辛気臭くて今イチ。 ●三羽省吾 「ニート・ニート・ニート」 ある日、トラブルメーカーの友人1号に強引にドライブに連れ出された主人公。さしたる理由もなく会社を辞めたばかりの主人公と、意図的無職の友人1号と、引きこもっていたところを拉致同然に連れ出された、友人2号。彼らは結局、どこにも行く宛もないままに、首都高を走り続ける。共感するにはあまりにダメダメなニーツども。イタすぎて笑えねえ。 ●坂木司 「ホテルジューシー」 引きこもり探偵シリーズが話題になったことから、気になっていた坂木さん。文章と雰囲気はなかなか好みでした。沖縄のリゾートホテルでバイトしていた主人公(♀)は、そこで拝み倒されて、別のかなり格下のホテル勤務に回されてしまった。そこで主人公に降りかかるハードな日々とは。 なんだかんだ言っても、主人公はお人好しなところに、つけ込まれている気がしないでもない…。そういう釈然としなさは、他作品ではどうでしょうか。 ●桜庭一樹 「辻斬りのように」 察するに、『少女七竈と七人の可愛そうな大人』(未読ですが)に至る前日譚です。で、これ単独だと、攻撃性が痛いだけの、どうにも評価できない短編でした。残念ながら。 ●森見登美彦 「夜は短し歩けよ乙女」 第15回ファンタジーノベル大賞受賞作の作者によるフ ァンタジー。初めて、宴会なるものに参加した女子大生が体験する、ほろ酔い加減の長い夜。ちょっと癖のある独特な雰囲気が印象的でした。 | ![]() |