HOME 
2006年 8月度
<<前月 来月>> 
マンガ
Novels
小説
図書
図書館GET 
そ他
その他借り物  


『へうげもの』3巻 山田芳裕 モーニングKC

戦国数寄絵巻。前巻より続く本能寺の変です。つーか、ウワサに聞いてはいたけど、そのつきぬけたトンデモぶりが天晴れでした。
本能寺陰謀説は山ほどありそうですが、そもそも、光秀を焚きつけておきながら、影で信長を手にかけたのが、秀吉本人ってどーよ。そして、切られた(絵的にはまさに、上下に両断されてますけど)瀕死の上様が、笑いながら、切った相手にお茶点ててるってどーよ。ありえません(笑)

ともあれ、上様亡き後は、当然サル君の天下になりますが、美的存在感では到底上様に敵わないこの人を軸にして、桃山時代はどう描かれるのやら。ちょっと思いやられます。光秀君の美的感覚の方が、見応えがありそうだっただけに。
『げんしけん』8巻 木尾士目 アフタヌーンKC

アキバ系、キャンパス青春ロマン。先日、感動のうちに雑誌の連載は終了しました。で、当然最終巻かと思いきや、オビに「9巻に続く」…。アレ?
とりあえず、盛り上がりまくった、笹原×荻上編は決着しました。今回、その雑誌掲載分に加えて、雑誌未掲載の単行本書き下ろしが、2話分と+α載っていました。全然違和感がなかったけど。もちろん、豪華な加筆はうれしかったのですが、某編集者のお言葉、「普通に連載してりゃいいじゃん…」にも、深く頷いてしまいました。
次巻もまた、盛大な書き下ろし加筆があるばず。楽しみにしています。

それにしても、大野さん、やっぱり気づいてたんだな。墓場まで持っていくはずのあの秘密に…。
『ブラック・ラグーン』1〜5巻 広江礼威 サンデーGX Comics

巷で話題の、闇の国際社会を舞台にした、ハードなアクションロマン。前から気になっていたのですが、先日アニメ版DVDの1巻を観て、さっそく原作を揃えてしまいました。評判通り、面白い。

日本の商社の東南アジア勤務のサラリーマンだったロック(岡島緑郎)が、会社の違法取引をめぐる命がけのゴタゴタに巻き込まれたとき、会社はあっさり彼を見捨てた。成り行きで会社にも日本社会にも見切りをつけたロックは、件のゴタゴタに同行した、「運び屋」グループの仲間となって、裏社会に身を投じるが…。

この手の国際謀略とか、ハードなミリタリーアクションについては、一昔前に新谷かおるや、浦沢直樹にしびれたものでした。そして今、本作を読むと否応なしに、それらが相対的に「古く」なってしまったことに気づかされます。例えば『砂の薔薇』や『MASTER KEATON』が今も名作であることに変わりはないのですが、本作はそれらの名作よりも、より端的に「今」の、手の切れそうなクールなカッコ良さというものを体現しております。これはやられるよなあ。

主人公ロックが遭遇するのは、裏社会だけあって、金と暴力の支配する、救いようのない世界。日本で不自由なく育ったロックはしかし、時に世界の違いに打ちのめされながらも、したたかに、そこで生き延びていきます。

銃声と血しぶきと、残酷でグロテスクなアングラ社会の描写。それを補うかのように投入される、メガネの最凶メイドや、女子高校生のヤクザ組長といった、いかにもな萌えアイテム。能天気な勧善懲悪の許されない現実の中で、ロックが抱き続けるささやかな正義感と誇り。それらの絶妙なバランスにより、リアルかつ、痛快なエンターティメント作品に仕上がった本作。続きが楽しみ。アニメ版も、見たところかなり良い出来で、オリジナルな演出も楽しめたので、続きも借りてみたいです。
『結界師』1〜12巻 田辺イエロウ 少年サンデーComics

少年サンデー誌の人気連載。この秋からアニメ化予定で話題になっています。12巻現在まだ勢いがあるから、この先もっと楽しめそう。

「結界師」とは、結界の中にあやかしを捕らえて、それを滅する力を持つ者。つまり妖怪退治屋のようなもので、作中で結界師を家業とする2つの家系が登場します。主人公、良守の墨村家と、幼なじみでライバルの、時音の雪村家。2つの家系は、互いをライバル視しながら、400年に渡って世襲で続いてきたという設定。

2つの家は、近くの、烏森と呼ばれる土地を代々守ってきた。烏森は何故か、あやかしに力を与える不思議な場所であり、多くのあやかしに狙われている。良守は、烏森に秘められた謎を解き明かそうとするが…。

読んで、真っ先に思い出したのが、『封殺鬼』(霜島ケイ)でした。中学生の未熟な良守が、一人前になろうとしてあがきつつ、ジジババの年の功に救われたり。幼なじみで年上の時音のしっかりした姉御ぶりとか。良守には兄がいて、彼より力量も頭脳においても優れているのですが、兄は「正当」な後継者とみなされず、家を出て独自に活動しているとか。そういった、ホームドラマ的な人間関係で読ませてくれます。

12巻は、組織化されたあやかしの集団、黒芒会との決戦で盛りあがりました。なんつっても、松戸平介氏の「究極のロマンチスト」ぶりが凄まじかった。また、「藍」の妖の過去などなど、脇役の活躍に、主人公食われっぱなしでした。

しかし最近、正守兄が、すっかり味方というか、良守の保護者になっているようで、ちょっと物足りない。彼はもっと、墨村とは独自の価値観で動いていて、基本的に味方だが、力を借りるのに交換条件が要るくらいな方が、おもしろいと思うのだが。
Novels図書
『クドリャフカの順番 「十文字」事件』米澤穂信 角川書店

『氷菓』に始まる、「古典部」シリーズ。今回はちゃんと、謎解きパートも力が入ってました。でもやっぱり、読んでいてつい、「いいねえ、青春だねえ」と、にやけてしまうおばさんでございます。
ちなみに「クドリャフカ」は、ソ連が打ち上げた人工衛星、スプートニク2号に乗せられた、悲劇のライカ犬の名前。この犬の事は川原泉の「ブレーメンII」でも触れられていました。

さて今回は、神山高校文化祭で起こる奇妙な事件の謎という、まさに王道の設定で、期待を裏切らない展開でした。文化祭に臨んで、主人公の奉太郎@省エネ男をはじめとする、4人の古典部員たちは、本人達的には非常に深刻な問題に直面してしまった。文化祭向に発行される古典部の文集が、通常30部のはずが、手違いで、何と200部刷り上がってきたのだった。何とかして、文化祭期間中に在庫を減らすべく手を尽くす部員達。果たして…。

「十文字」事件自体は、それほど凝った謎でもなかったのですが、前述の目的のために省エネを返上して、一丸となった古典部員たちの活躍は楽しかった。高校の文化祭でてんやわんやというだけで、なんかもう、そのノスタルジーの威力に、やられてしまいそうです。

ただ一点、突っ込みます。マンガを評論することに対する意見の相違というところで、名作マンガの例として、何で同人誌作品を挙げるかな?アマチュアの名作を出すよりも、普通にプロの作品でいくらでも傑作はあるだろうに。伊原さんが、これまでに読んだ全マンガ作品の中で、素人が初めて手がけた同人誌作品を最高と見なしていたのだとすれば、いくら何でもそれは、マンガ描きというものをなめているのではないかと思います。
Novels図書
『月の骨』ジョナサン・キャロル 創元推理文庫

ダーク・ファンタジーの旗手として有名な作者の、評価の高いシリーズと聞いたので、図書館で試しに借りてみました。実はどういうのが「ダーク・ファンタジー」なのか、よくわかっていなかったのですが、ホラーとファンタジーの中間な感じでした。おもしろかった。
この先に邪悪な何かが待ちかまえていそうな雰囲気は、S・キングに近いと思いましたが、表現が簡潔なだけ、キングより読みやすかったです。さて

夫は優しく、家庭は円満。念願の娘を授かり、一見、順風満帆な生活を送る主婦カレン。彼女が不安に思うのは、毎夜見る夢のこと。それは、「ロンデュア」と呼ばれる世界を舞台にした、連続したストーリーのある夢で、彼女はそこで1人の少年と冒険の旅を続けている。彼らの旅の目的はその世界にある、5個の「月の骨」を手に入れること。やがて、夢は次第に、現実にも干渉するようになっていくが…。

私的には、もう少しサイコホラー寄りでもOK。次はそういうのを探してみよう。

Novels
『さよなら妖精』米澤穂信 創元推理文庫

米澤穂信、第3段。これは特にシリーズのない単発作品で、最近文庫化されました。オビには、「不朽のボーイ・ミーツ・ガール・ミステリ」とありましたが、うーん。「ボーイ・ミーツ・ガール」もだが、そもそもこれが「ミステリ」なのかも、かなり怪しいと思う。少しひねった青春小説というのがしっくりくる感じです。

高校生の主人公がある日、偶然出会った同世代の異邦人、マーヤ。彼女は父親と来日したが、ある事情で父親に頼れなくなって、途方に暮れていた。主人公と友人は、行きがかり上、知人の経営する旅館を彼女の滞在先として紹介する。
遠く、ユーゴスラヴィアから来たマーヤは、好奇心旺盛で、勉強熱心であり、日本での滞在中に、あらゆるものをどん欲に吸収しようとしていた。そんなマーヤとの短い交流の中で主人公たちに芽生えたものとは。

米澤さんらしい、高校生的まっすぐな日常と、そこから、突然振り出された重い結末。主人公はマーヤに恋したというよりは、彼女の背後にある、非情なまでに広大な世界を垣間見てしまったのだと思う。彼のあまりにまっすぐにして無防備な反応に、よく分かるような、青臭さにいたたまれないような、何ともいえない気分にさせられてしまいました。物語としては決して完成度が高いとはいえませんが、こういうのも1つの試みとして有りかと思います。

HOME  <<前月 来月>>