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2006年 7月度
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Novels
『喪の女王』4巻 須賀しのぶ コバルト文庫

前巻の中休みを経て、ユリ・スカナ編、いよいよ怒濤の展開キター。
偉大なる女王の影で、あがいてきた王子王女達。その確執は女王の死によって一気に表面化する。彼らの三者三様のドロドロっぷりが、なかなか見応えがありました。特にイーダル。彼もやはり、美形度に釣り合う程度にはヘタレであった。まあ、彼は別に、自分で言うほど破滅的でないとは思うけど。

そして、カリエはまたしても、怒濤の情勢のど真ん中に巻き込まれてしまうのでした。さあ、物語もそろそろ大詰めか。今度こそ、しっかりと、クライマックスに向けて盛り上げていってくれますように。期待してます。どうでもいいが、次こそ、エド頑張れ。
Novels
『ぶたぶたのいる場所』矢崎存美 光文社文庫

『ぶたぶた』シリーズ最新作。今回は作者曰く「番外編」だとか。確かに、作者の趣味に走ったお遊びだったかもしれませんが、正直、最近マンネリ気味かと思っていたのが吹っ飛んだくらいおもしろかったです。

今回、ぶたぶた氏は高級ホテルのバトラー(?って執事喫茶ならともかく、ホテルだと、どういう立場の人なのだろう)ということで、お客様のために神出鬼没の働きをしております。そして、今回最大の見所は、ホテルで上演された市民参加劇の『オセロー』と、その中でぶたぶた氏が演じたところの、イアーゴーでした。見た目篤実な人物(?)でありながら、思いっきり腹黒く立ち回るイアーゴー。演じさせてみたかったという某演出家(作者自身)の気持ちはよくわかります。つーか、本当にナマで観たいです、コレ(無理!)

少々余談。シェークスピアの作品は、もっぱら子供向き要約であらすじを知っている程度ですが、マンガ、小説中でシェークスピアが演じられるシーンは、いろいろ思い出されます。『ロミオとジュリエット』が、学園祭等でも一番ポピュラーなようですが、『真夏の夜の夢』や、『ハムレット』もけっこう多い。しかし、なぜか『オセロー』はあまり記憶にないような。主人公が中年だからでしょうか。もし、どこかにありましたら、ご一報を。

私の知る中で、『オセロー』が演じられていたマンガが、1つだけ記憶にあります。それは実は、市川みさこの『しあわせさん』でした。(役に立たない注:オヨヨという猫が出てくる話です。)すみません、思い出したらつい懐かしかったもので…。
Novels図書
『犬はどこだ』米澤穂信 東京創元社

『春期限定〜』/『夏期限定〜』シリーズの、瑞々しい青春ミステリーの雰囲気が気に入った米澤さん。これは、より一般向きというか、本格を意識したらしい話でした。

病気のために、都会の一流企業勤務をリタイアして、故郷に舞い戻った主人公、紺屋。無職状態を脱するため、地元で調査事務所「紺屋S&R」を開業する。最初は無理なく、迷子ペットの捜索に特化した事務所にするつもりだったが、うっかり、失踪した人間(若い女性)の捜索を引き受けてしまった。事件は、別件で依頼された古文書の出自探索ともリンクして、思いがけない大藪を形成していくが…。

過去の理不尽な経験から、まだ立ち直りきっていない探偵の、屈折具合が米澤さんらしい。しかし、失踪女性の足どりからたどりついた理不尽さはまた格別でした。気楽に読んでいたら、その不意打ちの深刻さがけっこう後を引いた。ラストは、重い。重かったです。
と、次から、これもアリと覚悟して読もうっと。
『レナード現象には理由がある』川原 泉 白泉社JetsComics

カーラ教授久々のコミックス。しかも、学園もの短編集です。
前作の『ブレーメンII』が、最後までピンと来ないまま終わってしまったのと、昔に比べてリアルになった絵柄に違和感があるのとで、読む前には若干の不安を感じていたのですが、取り越し苦労でした。昔ののほほんとした雰囲気が復活したようで、私的にはかなりマル。ただ、「ドングリにもほどがある」のリスの話は、引っかかってしまいました。生き物を不注意で死なせてもへらへらしているのは、ちと後味が悪かったので、それさえなければねえ。

内容は、県下でも指折りの進学校、私立・彰英高校に通う生徒達による、どこかズレたラブストーリー。4つの短編で、それぞれのカップルによるささやかなドラマが描かれます。例によってウンチク過剰のほのぼの展開が、昔通りでなつかしかった。ちなみに、「レナード現象」とは、水滴と水滴がぶつかって分裂する際、周囲の空気がマイナス・イオン化する現象、だそうです。

『笑う大天使』の映画も公開間近で話題になっていますが、予告映像の印象がビミョーなこの頃でした。
Novels図書
『金春屋ゴメス』西條奈加 新潮社

第17回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。ここ数年のファンタジー大賞は、若干ホラー寄りな気がしておりましたが、今回は「時代劇」「SF」「ミステリー」のテイストがいい具合にごった煮になった、ヘンテコで楽しい話でした。

近未来の日本には、日本であって日本でない、独立国家「江戸」が存在した。北関東と東北の1部にまたがるエリアに約700万人が暮らす「江戸」において、人々は、江戸時代さながらの暮らしをしているらしい。らしい、というのは、「江戸」は完全な鎖国を敷いており、日本からの入国を厳密に制限していたため、「江戸」の詳しい情報は、ほとんど知られていなかったのだった。

さて、主人公辰二郎は、幼い頃に江戸に住んでいたが、何らかの事情で、両親と共に日本に移住してきたらしい。江戸にいた頃の事は、ほとんど覚えていない辰二郎だったが、病で余命半年を宣告された父のたっての希望で、江戸への入国を申請したところ、300倍の難関をものともせず、入国の許可が降りた。どうやら、それには辰二郎が江戸にいた頃に起こった、何かの事件が関係しているらしい。

江戸に入国した辰二郎は、「裏金春屋」に住み込んで働くこととなる。「裏金春屋」とは、なぜか飯屋「金春屋」に併設された、長崎奉行所の別名であり、お奉行様は、ゴメス親分として、恐れられていた。全くの異国としての江戸の暮らしにとまどいつつも、次第になじんでいく辰二郎だったが…。

江戸時代は、もし鎖国したままでいられたとすれば、ある種のユートピアになり得たと、どこかで聞いたことがあります。作中の「江戸」の町は、江戸がなり得たかもしれない、ゆるいユートピアを、力業で現出させてしまった世界。入国倍率300倍はダテではない。将軍様の支配するこの楽園に、一生に一度は行ってみたいです。

黒鬼丸にまたがったゴメス親分の雄姿にしびれました。

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