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米澤穂信さんは、以前『氷菓』を読んで、「ミステリーと思わなければおもしろい(失礼)」という感想であったのですが、このシリーズは知人のブログで絶賛されていたので、改めて読んでみました。ああ、好きだ、この感じ。 高校生の主人公、小鳩常悟朗と、同級生の小佐内ゆき。一応、2人が高校生活の傍ら出くわす謎をめぐる、日常ミステリーというくくりになります。今回は、以前目に付いた謎解きの弱さもかなり改善されており、ミステリーとしても悪くはなかった。しかし、やはりこの作者の本領は、青春小説の方にあるようで、この主人公2人の一筋縄でいかない性格と、関係とがめちゃくちゃ好みでした。いいねえ、ああいう高校生活。 さて、小鳩君は、他人事に首を突っ込んでは、名探偵よろしく、得意面で余計なことを吹聴するイヤな奴であった自分を抑えようとしており、小佐内さんは小佐内さんで、忘れたい過去の自分があるらしい。そんな2人の合い言葉は、「めざせ小市民」。2人でつるんで歩き、時に小佐内さんの甘味グルメ行脚につきあう何事もない日々の中で、しかし、付け焼き刃の小市民のメッキは、ささいなことで剥がれるのであった…。 とにかく、このシリーズは、小佐内さんというヒロインの存在だけで、勝ったも同然という感じです。ミステリーにありがちな、探偵役の主人公のただのヨイショ要員、下手すりゃお荷物、というヒロインに、うんざりさせられることが多かっただけに。 次は「秋期」だそうで、楽しみです。また、米澤さんのハードカバーの他作品も、探してみよう。 | ![]() |
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『ツバサ』のあまりの内容の無さに見切りをつけて以来、CLAMPは二度と読まないつもりでいたのですが、この度、アニメを観て、その出来の良さについ観耽り、ついに原作を揃えつつあります。別に誰に言い訳する必要もないのですが、なんだか悔しいぞ。さて。 四月一日(わたぬき)君尋は、あやかしを引きつけるという困った体質のため、日々多大な迷惑を被っていた。ある日迷い込んだ怪しげな店の店主、侑子の申し出で、その体質を改善してもらうのを条件に、彼女のところで働く事になったが…。 オカルト・ホラーとしては絶品で、この路線はもしかして最も、CLAMP向きなのかもしれません。妖しくて耽美でかつ、どこかの見せ物小屋的な猥雑な安っぽさ。けっこう救いの無い話が多いのにもかかわらず、その軽さのおかげで、因果応報話がさらりと読めているようです。 「あやかしと取り引きしてはいけない」というフレーズは、確か『百鬼夜行抄』(今市子)でした。人と妖物とでは、価値観が違いすぎるからというのが理由でしたが、それで言うと、侑子さんは物や願い事の「正当な価値」について目利きの出来るプロフェショナルという設定らしい。なかなか説得力があります。とりあえず、ひまわりちゃんの正体が知りたい。 | ![]() |
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「常野物語」のシリーズ第3作。『光の帝国』 に収録されていた1編、「オセロ・ゲーム」の続編です。未知の敵対者を「裏返す」という、常野一族の中でもいささか特異な能力を持つ親子の物語。暎子の夫は10年以上も前に、奴らに「裏返された」事で、失踪してしまった。残された暎子と娘の時子は、片時も気を抜くことなく襲撃に備え、ある時は相手を「裏返して」撃退する日々を送っていた。そんなとき、大学生の時子の元に、母の暎子が旅先で、眠ったまま意識が戻らなくなったと連絡が入る。母の病院に駆けつけた時子の元に、「洗濯屋」と名乗る男が接近するが…。 敵は何者で、裏返すとはどういうことか、裏返されたらどうなるのか?孤立無援となった時子に突きつけられる謎の数々。前半はその緊迫感にぐいぐい引かれて読み進みました。しかし、着地点は結局、いつもの恩田ラストでした。まあ、そういう評判だったので、覚悟はしていたのですが。 恩田さんを好きな人にとっては、こういった収束されないあいまいさも、味のうちなのかもしれません。ただ私はもう、このパターンは遠慮したいです。 | ![]() |
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このところ立て続けに話題作を発表している伊坂さん。気になってはいたので、映画制作中で話題の本作でまずはお試し。個性的な才能を持つ4人のチームからなる銀行強盗団の話ということで、スキッと痛快なアクションを期待したのですが。 うーん、いささか、今時のラノベの荒唐無稽なノリに慣れすぎたのでしょうか。思ったより地味な話でした。個性的なはずの4人も、男性3人の性格の描き分けが弱かった。こういう話にはやはり、誰か常識人のツッコミ役を置いて、その視点でチームのメンバーの個性を紹介するプロセスが欲しいよなあ。もしくは、浅田二郎みたいに、地の文でナレーターよろしく突っ込んじゃうとか。いきなり本人たちの視点で1人ずつ語られても、没個性になるだけで、分かりにくかったです。また、あれだけ会話が多い作品で、掛け合いとか、漫才的なノリが皆無なのも、致命的。もしかして、その手のセンス無い?>作者。 ちなみに4人とも、それほど社会不適合というほどでもなく、それなりの常識も備え、それほど大金が必要な事情があるわけでもない。確かに有能なチームでしたが、そこでなぜ銀行強盗なのかという必然性はあいまいなままでした。だからといって、特に彼らの事情が知りたいわけでもないけどさ。 うーん、いまいち相性が良くなかったのかなあ。 | ![]() |
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「↓廃用身」に続けて読むと、我ながらマゾみたいな取り合わせ。これも、相当に苦いインパクトがありました。 ある日、主人公の町のお役所の広報で通知された、「となり町との戦争のお知らせ」。何かの誤りでも、冗談でもなく、本当に通知された日を境に、「となり町戦争」は開始された。事態がのみこめない主人公をよそに、広報で淡々と発表され続ける戦果、損害、戦死者。部外者であった主人公のもとにも、戦争への協力要請が舞い込む…。 どうにもナンセンスな設定でありながら、いかにしてこの日常の延長に、戦争をありえそうに描くかにこだわり抜いたリアリティには、やられたと思うしかありませんでした。しっかりと町の行政の中に組み込まれた「戦争事業」。何年もかけて計画され、周到に準備され、予算に計上された戦争は、開始された時には既に、現場のお役人が事務的に遂行していく公共事業の1つに過ぎなくなっていた。 戦後民主主義の中で育った主人公の中にある「戦争はイケナイ」という素朴なお題目は、それを遂行していく行政の着実さ、迷いなさに対して、少しもとっかかりを見いだせないまま沈黙させられる。いかにも「普通の人」である主人公が読者と等身大に配置されたことで、読者もまた高見の見物が許されない気になってしまう隙の無さ。脱帽でした。 | ![]() |
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タイトルからして、グロいキワモノ話かと思っていたのですが、最近になって、現役の医師の著者が、医療現場の問題意識をテーマにして書いたフィクションであると聞いたので、図書館で手にしてみました。確かに、スプラッタはありませんでしたが、重いテーマをゲシゲシ抉るためには、理知的な文章の方がより効果的なのだと思い知らされた気分。鬱々とした気味悪さが、身に染みました。お見事というべきか。 さて、内容は、ある高齢者デイケア施設を舞台に、そこで行われていたある「治療」の顛末を、その治療に携わった医師の手記と、治療について取材した編集者がとりまとめたレポートという形の、2部構成で描いたもの。「Aケア」と称されたその治療は、麻痺して回復の見込みのなくなった老人の手足を切断する、というものであった。 役に立たないお荷物となった手足を切断することで、文字通り身軽になり、精神的にも前向きになる等々、「Aケア」のプラス効果を並べ立てる、前半部分の医師の手記。回復の見込みが無いとはいえ、手足を切断するというショッキングな処置について、格好の猟奇ネタとばかりに群がるマスコミの反応も含め、さまざまな角度から検証した後半部分のレポート。これがフィクションであるのは十分承知ながら、そのリアリティに圧倒されます。 読み終えて何より鬱なのは、「Aケア」について、この医師の考えに感化されて、けっこういけるかも、と思ってしまう自分がいたことかもしれません。役に立たないものを切り捨てて、みんなが楽になれるなら、それのどこがいけないの?と。おそらく、それこそが、著者の問題提起なのだと思います。うー、口の中が苦い。 | ![]() |
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最近、あまりアニメを観ていない気のするこの頃。つーか、深夜に毎週追いかける根性ないから、もう少しゴールデンタイムにやってくれんかなーと思いますが。それはさておき…。4月からアニメがスタートした本作、久々に気に入ったので原作を買ってみました。 舞台は、異人ならぬ、宇宙人(天人)がやってきて、開国させられてしまったパラレル江戸時代。侍が時代遅れとなった江戸の町で、天人の横暴に耐えつつ暮らす人々。そんな中で一人、侍魂を失わない漢、坂田銀時が主人公。さまざまなやっかい事を解決する(?)「万事屋」を営む銀時と、愉快な仲間達のすちゃらかな、よろず事件簿…。 だった、はずなのですが、主人公、いつのまにか、別に正義漢じゃなくて、ただの甘いもの中毒の天然ボケになってるし。人情ものには必ず、ブラックなツッコミが入るし。ネタは、シニカルで下世話でせこいし。原作を読んで確信しました。このギャグセンスは、2ちゃんねるそのものなのだった。 と云うわけで、続きも読みたいです。願わくば作者の人、できるだけ長いこと、このシニカルな世界で、壊れることなくギャグを続けて下さいませ。 | ![]() |
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第133回直木賞受賞作。ホラー畑からデビューした人なので、この人の受賞にあたっては「出世したなあ」という感慨があったものでした。たまたま先日、図書館で見かけたので借りてみたもの。 昭和30年代の大阪を舞台にした、特定の層をターゲットにした感のある短編集。 この時代はこのところブームのようで、高度成長期の明るさ前向きさが、よくノスタルジックに取り上げられます。しかし、それは当時のリアルなそれでなく、美化された思い出に過ぎないというのも、よく指摘されるところです。 さて本作では、かの時代の空気が、思い出の中で無かったことにされている暗さ、陰惨さも含めて、濃厚に描かれています。あの時代の少し後で、名残の空気を吸って育った者としては、身に覚えのある陰惨さが、正直しんどかったのですが。あのただ中で育った人々は、あれを読んで、素直に懐かしいと思えるのでしょうか。 不思議より、怪奇現象より、淡々とした日常の空気が一番コワいという、不思議なホラーだったのかもしれません。 | ![]() |
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『レキオス』の池上さんの新作。まさに、あの延長上にある、パワフルかつ、ぶっとんだ近未来SFです。内容は、とてもじゃないが簡潔になど説明できません。 とりあえず舞台は、温暖化が進み、炭素削減が最重要課題となった近未来の地球。その世界ではついに「炭素経済」なるシステムが導入された。 大まかに云うと、各国は国内で排出されたCO2の量に応じて、「炭素税」なる税を負担しなくてはならないという制度。そのため、CO2量と炭素税率のコントロールが、国際経済の要となり、かつての金や石油同様に、炭素税率の相場を見越してのマネーゲームが世界中で過熱することとなった。 一方、温暖化による豪雨と、植物による浸食で、都市機能が麻痺した東京。政府は地上の都市を破棄して、東京の上空に13層からなる巨大な建造物「アトラス」を建設し、首都機能をアトラスに移転することを決定した。しかし結局アトラスの移民権は、1部のエリートにしかもたらされず、スラム化した地上に取り残された住民は、要求を掲げ、反政府活動を繰り広げていた、というもの。 一応主人公は、地上で反政府ゲリラ組織に属する少女、國子。主な登場人物は、彼女の陣営の人々の他に、アトラスに住む謎の少女、美邦とその陣営。また、炭素システムを利用したマネーゲームにより、一山当てようとする「カーボニスト」たちなどなど。アトラスとCO2をめぐって、それぞれの陣営のキャラ立ちしまくった人々が入り乱れ、騒々しくも苛烈なバトルを繰り広げつつ、オカルトやら、伝奇ネタやら入り乱れた、想像もつかない結末へとたどり着いた物語。文句なくおもしろかったです。 ただ、池上さんにしては、今回は思ったよりストーリー重視で、ヘンタイな人々による暴走が少なかった気がしました。まあ、一般的に見れば、登場人物のほぼ全員がかなり歪んでいるし、揃いもそろって少年ジャンプキャラ並みにタフだったし、ストーリーに破綻が少なくて読みやすかったといえば、その通りなのですが。と、いうか、あの話が下手に寄り道しまくったら、永遠に終わってくれないというのも明らかですが。でも、あの破綻すれすれのパワーがないと、物足りなく感じてしまうのは性でしょうか。モモコ姐さん、最高です。結局、「銀」って何? この話やはり、「池上版 ナウシカ」だったりして。 | ![]() |
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虚弱な若旦那と妖たちの、ほのぼの人情捕物帖。第5弾。今回は、久々の長編形式です。最近、下の娘(小5)もこのシリーズを楽しみにしているので、3人で読むなら元はとれるかと思い、買うことにしました。 例によっていつものごとく患っている若旦那は、母親から、箱根に湯治に行ってゆっくりしてはどうかと勧められた。お供はいつもの2人と手代と、兄の松之助。それに3匹の鳴家。遠出に縁のなかった若旦那は、喜び勇んで旅支度したものの、出発してまもなく、手代たちは失踪するわ、おかしな夢を見るわ。旅の先行きは前途多難に…。 温泉でのんびりしたかっただけなのに、これでもかの災難に遭って、きりきり舞いする若旦那が気の毒でした。長編なだけに、事件の謎も複雑に念が入っており、ぐいぐい引かれて読み進んで行ったのですが。それが途中からいきなり、ちょっと待て、な気分になってしまったのは何故だろう。今回は楽しめませんでした。 「うそうそ」は、うろうろとあちこち探し回る様子の事であるらしい。そして今回、みんながうろうろと探し回っているのは、自分が自分であると胸を張れるような「自信」であるらしいです。健康に問題ありの若旦那はじめ、姫神様もお武家様も、うまくいかないと逃げたり、情けない自己卑下に陥ったり。それでも、なんとかがんばってやっていかなくちゃね、という話。いかにも若い読者に向けたらしい現代的かつ、青臭い問題意識が直球過ぎ。あまりにストレートなお説教にげんなりしてしまいました。 | ![]() |