HOME 
2006年 1月度
<<前月 来月>> 
マンガ
Novels
小説
図書
図書館GET 
そ他
その他借り物  


Novels図書
『6ステイン』福井晴敏  講談社

東西冷戦のただ中にありながら、まともな諜報組織もないことから、各国の工作員がやりたい放題に跳梁している日本。そんな状況への対抗策として、非公開に組織された防衛庁情報局、通称ダイス。もしくは市ヶ谷。その組織の、文字通りコマとして生ざるを得なかった男たち(女もだが)が、その運命にささやかな抵抗を試みる。市ヶ谷をめぐる6編の短編が収録された、短編集です。
タイトルの「ステイン」はおそらく「錆」の事なので、第一線から引いて錆び付いた彼らの、自分自身への抵抗の物語、という意味も含まれていると思います。

ともあれ、アクションには定評のある作者のスパイ小説、なのですが。今回は、うーん…甘い。6編そろって、温情ありすぎよ>ダイス。こんな、行く先々で私情で動く奴らばかりで、よく組織が成り立つものだわ。「最後に一花」とばかりに、男のロマンに酔いたがる主人公ばかりに見えて、あまり美しく感じなかったです。

こういう、組織vs一匹狼の対立構図を書かせると、男性作家の方がよりストレートに、ヒーローしちゃうものなのだろうか。一方で、高村薫等の女性作家がともすると、組織を描く事の方に妙な熱が入ってしまうのは、きっと、いまだ実質は女性を受け入れないでいる組織というものに、一種のあこがれがあるからなのかもなあ。

と、言うわけで、『C-blossom』の方に軍配を上げたいと思います。
『桜蘭高校ホスト部』1〜6巻 葉鳥ビスコ 花とゆめComics

アニメ化予定で注目されてきた本作。あちこちで人気なので古本屋GETしてみました。

ここは見渡す限り、セレブの子弟達が通う、私立桜蘭高校。その中でも、粒よりの美少年が集う、むやみにゴージャスな一角が、この「ホスト部」である。ホスト部の部員達は、もてあました暇な時間の使い道を、なぜか学内の女性達に夢を与えることに見いだしたそうで、そのために日々精進している、らしい…。
で、そのホスト部に、主人公の藤岡ハルヒが、なかば強制参加させられるという話。ハルヒは庶民の家庭ながら、成績優秀なため学費免除されている特待生。そして、実は女の子なのだが、ホスト部ではなぜかそれはノープロブレム。ゴージャスな面々に振り回されるお祭りな日々に、ハルヒの苦闘は続く…。

1,2巻を読んだ時点では、実は不安でした。すなわち「これを読むには、私は年をとりすぎたのではないか?」と思ってしまったために。あまりに露骨な願望充足っぷりが透けて見えてしまい、さすがに引いてしまった。
金持ち仕様の名門校に通う庶民の主人公。しかし、学校内のVIP集団に見初められ、そこでラブラブ展開に…という設定は『花より男子』(神尾葉子)に似ているとか。主人公がペットのようにかまわれている雰囲気は、『ここはG・W』(那須雪絵)っぽいとか、思いつつ。本作ではそれらを、より今時のネオロマンス・ゲーム風味にした感じでした。ゴージャス集団の中の紅一点であり、しかも、そこでお客さんでなく、彼らの仲間でいられる立場、というのは、ある意味、LaLa読者の願望の極地ではないでしょうか。もう、そこまでお膳立てしてしまっていいんかい、と…。

しかし、そこで萎える寸前で立ち直ったのは、ハルヒの性格のおかげかもしれません。美形にも、VIPにもいっこうに動じることのない、醒めたマイペースな天然少女。シンデレラストーリーの極地も、かろうじて彼女なら許せる、という心境になったところで、6巻までは、ネオロマのイベントをこなす感覚で楽しく読めました。

こうなると、6巻現在、LaLaによくある、あのうっとおしいトラウマ設定が出てこないのが、却って新鮮です。この先、ホスト部の誰か1人でも、暗い過去が出て話がぐだぐだし始めたら、その場で脱落するつもりですが、それまでは、このおバカなお祭りの日々を、楽しみたいと思います。
『長い長いさんぽ』 須藤真澄 ビームComics

ただただ号泣。

昨年1月に作者の愛猫ゆず君が、16歳で他界。表題作はそのいきさつを描き切ったエッセイです。ちなみに、発売日の16日は彼の一周忌に合わせたとのことでした。
作者のサイトの日記で、ゆず君の事は知っていました。須藤さんがそこから立ち直るまで、しばらく時間がかかったことも。そうして発表された追悼読み切りは、いつもの通り、ゆずに対する自身の過剰な思い入れを少し突き放して笑いながらも、周囲をドン引きさせるほどの深い悲しみを、くまなく描き出していました。ペットの斎場から灰と骨をすべて持ち帰り、細かく細かく分別し、オリジナルの骨壺に納め。部屋中のゆずの痕跡を収集し。そうして人は、日常の中で一つ一つ、心の整理を付けていくしかないのかもしれません。

最終話に登場した2匹の子猫、「にい」と「とと」。これだから猫飼いは、と苦笑しつつも、子猫たちの傍若無人な元気さに救われます。彼らの新しい幸せを、心よりお祈り申し上げます。
『C-blossom』全2巻 霜月かよ子/福井晴敏 KCフレンド

なぜか昨年1年で、ありとあらゆるメディアミックスの集中砲火を浴びた感のある、福井作品。これも、その一環ですが、『亡国のイージス』の番外編で、オリジナルストーリーで、しかも少女漫画という、やや、毛色の変わった作品です。実は、このたびの映画化作品は、まだ1つも観ないままにお腹一杯な気分でいたのですが、本作は意外にも評判が良かったので、読んでみました。

うん、評判通り、作画の人はなかなか力がある人でした。少女漫画というので、3倍増し王子様仕様の如月行が、ただのお荷物でしかない主人公と、ハーレクインロマンス、にならないかと危ぶんでいたのですが、そんなこともなく、ちゃんと『〜イージス』ファンのツボを押さえた作りになっておりました。
甘ったるくない繊細な絵柄。丁寧なアクション。そして、この作品のキモは、如月行をいかに魅力的に描ききるか。彼の孤独と、重荷と、魂とを、『〜イージス』ファンにも、そうでない読者にも余すことなく伝えられるかにかかっている、ということを、この作者はきちんと理解されていたと思います。

主人公の女子高生、香奈の父親は公務員だったが、公金横領で拘留されている。実は父親は防衛庁の非公開組織(ダイスですな)の会計を担当しており、そこの大規模な横領組織の活動に関与していたのだ。組織内部で暗躍する実体の見えない裏組織。誰が敵で味方か分からない中で、行は香奈の身を守るという任務を果たそうとする。

時期的には、『〜イージス』の少し前にあたるらしい。前述したように、行がイメージ通りだったのでよかったです。『6ステイン』も読んでみよう。
『もやしもん』1,2巻 石川雅之  イブニングKC

新年初読みです。話題の農大キャンバスコメディ。菌が見えるという特殊能力のある主人公が、農大の奇人変人と楽しく有意義な(笑)キャンバスライフを送る話。おもしろかったです。

一口に農大といっても、化石でない燃料やら、微生物、発酵といった、最先端のバイオ分野も扱うところ。主人公の特殊能力は、一部で高く評価されますが、今のところあくまでも一部のマニアックな集団内に留まっております。
バイオのうさんくさい部分にことごとく手を出しては、失敗する先輩だの、ゼミの女子学生をコマすための媚薬をヤミで販売する教授だの、あくの強い人々の中では、没個性にさえ見える主人公、沢木君。彼視点で描かれる菌の絵に、ほんわか和まされつつ、様々な菌に関するトリビアを楽しく拝聴しました。しかし、この作者って、どういう経歴の人なのだろう。

この先、日本酒の醸造がテーマになっていくのかなあ。キビヤックやホンオフェ(どちらも、臭いの強烈な発酵食品)よりは、好みですが。

HOME  <<前月 来月>>