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2005年 3月度
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『NANA』12巻 矢沢あい  りぼんマスコットComics

このところ、あまり話が進まない気がしてじれているのは私だけではあるまい。そのあたりは作者も感じていたのでしょう。小出しに、種明かしをしてきました。

冒頭で数ページだけ、現在から6年後の光景が描かれます。奈々と娘のサツキちゃん6歳と、ナナを除くブラストのメンバー。ノブの実家の寺田屋旅館で働いているらしい奈々。それでも、奈々はノブとよりを戻した風でもなく、サツキちゃんも、外見はどーみてもタクミの子らしい。そして、奈々はシンちゃんと妙に親密な感じ。

まあ、奈々とタクミが破局するのは想定していましたが、それについての言及は今回特になし。予想としては、タクミの浮気とか、DVなどがありそうな気がします。又、ナナとレンの破局も予想の範囲内ですが、ありそうなのはレンが麻薬所持で逮捕とか思っていた。どうもレンには会えても、ナナとは簡単に会えない状況にあるらしいのが意外です。これから起こることに、いやが応にも興味が再燃してきます。うまいなあ。話が停滞しだしたら、また小出しにお願いできないものでしょうか。

『監督不行届』 安野モヨコ  祥伝社

あちこちで話題になっていた本作。遅ればせながら読んでしまいました。以前、庵野秀明監督との結婚で話題になった作者が、その結婚生活をのろけまくったエッセイ漫画です。

そもそも、安野モヨコさんの漫画の方は、マガジンハウス系漫画のおされなイメージがあって、これまであまり関心が無かったのでした。が、対する庵野監督の方は、「日本のオタク四天王の1人」。配偶者に感化され、オタクの快楽に目覚めさせられていくヨメの赤裸々な姿には笑いました。つーか、元々けっこうオタクじゃん>妻アンノ。

カントクなる生物の生態は、さぞやエキセントリックなことと、覚悟して読んだのですがここに登場するカントクは…、か、可愛いかったです。(セリフをわざとどもりながら話すのが、オタクの特徴なそうな。ギク!)
ひげヅラの40男が真顔で「知って。わしのことを知って!もっと!」。引く寸前だが紙一重で、これは愛だ(多分)。

この本の書評がらみで、庵野監督が出演している日産の車のCMも観ました(気が付かなかった)。今ではカントクも、風呂も入れば、運動もする、服も買う。偏食だけは相変わらずのようですが、ヨメのおかげで、それなりに健康的なオタクライフに踏み出したらしい。このオタク夫婦に幸いあれ(ごちそうさまです)

Novels
『ブラック・ベルベット2 〜病める真珠が愛した司祭』 須賀しのぶ  
             コバルト文庫

須賀さんのSF新シリーズ2作目。面白くなってまいりました。作者曰く、肩の凝らないB級を目指しているとのこと。その通り、読んでいて思わず「B級上等!」と叫びたくなる勢いがありました。どこかで見たようなごった煮設定がまた、たまりません。

最大のツボはやはりオオカミの人ですね。言うにことかいて自分のことを「僕」ですぜ。黒豹の人をつい「ロデム」と呼びたくなるあの世界を思い出してしまうではないですか。

前巻で、向かうところ敵なしで登場したキリ。しかし今回は、そのキリを小娘扱いできる年長組が登場。彼らの、この世の腐った体制へのレジスタンスは始まったばかり、でありました。続きが楽しみです。

Novels
『終の神話・人祇の章』 霜島ケイ  小学館キャンバス文庫

『封殺鬼』シリーズ第28巻にして、最終刊です。本当に終わりました。記紀の時代に遡って広げまくった大風呂敷を、きちんと畳んだのは流石でした。おおむね納得できる終わり方でした。そして、この期に及んでも、悲壮な盛り上がりの要所要所で漫才を繰り出す職人芸には、最後まで楽しませていただきました。

しかしこれまで、命がけの神事を司ることで、あれだけ悲壮に覚悟を決めていた弓ちゃん。また、土壇場で「家のため」をアイデンティティにする愚に、ようやく気づいた眞巳兄。みんな生き残っちまいますかい。基本的に、ハッピーエンドは好きです、私。安易にキャラが犠牲になるのは嫌いです。しかし、今回だけは、大団円でお腹いっぱいな気分でした。今回に限り、思います。眞巳兄はともかく、彼らには華々しく散って欲しかった。

「俺と一緒に、逝くか?」
「ああ、ええで」

腐女子萌えと呼ぶなら呼んで下さい。不意打ちで、このセリフとともに、彼らが笑って逝ってくれたら、おそらく言うこと無しでした。あくまでも、私見ですけど…。

Novels
『彩雲国物語 〜漆黒の月の宴』 雪乃紗衣  角川ビーンズ文庫

シリーズ5作目。官吏となって、かねてより問題があった地である茶州の州牧に抜擢され、前巻で苦労して赴任地にたどり着いた秀麗一行。さあ、ようやくかの地を私物化してきた黒幕の茶一族と本格対決。悪を倒し平和を取り戻すぞ!という展開だったのですが。うーん、いまいち盛り上がりませんでしたねえ。

州牧の着任式までに、茶州の都、虎lにたどり着かなくてはならない。しかし黒幕の妨害が…という展開は、正直デジャブだったし。そうやってついに対決した黒幕(じじい)は悲しいくらい小物でした。

そして今回、なんだかんだいっても、主人公があまり活躍していなかった気がする。前回1人取り残されて、毅然と我が道を行った秀麗はかっこよかったのに。やはり、有能な新キャラがわらわら登場するにまぎれて、彼女も影が薄くなってしまったのでしょうか?主人公は大丈夫ということは単に、あっさり退場しないだけということだったりして。

そう、今回秀麗に期待されていたのは、前巻で登場した真の黒幕氏との対決のはずでした。元気でパワフルな女の子が、自分で制御しきれない初めての感情にとまどい、翻弄される。その弱さを乗り越えて成長する。萌える展開ではないですか。
まあ、そういう展開は確かに扱いが難しいです。というか、少女漫画、少女小説ひっくるめて、史上、数えるほどしか成功例がないのが現実です。ちなみに、成功した作品は例外なく、不朽の名作として語り継がれていたりします。果たして前巻時点で、その覚悟はあったのか否や。正直、お手並み拝見な気分で読み、まあ、こんなもんだろ、というところにオチがつきました。ピカレスクに登場したはずの黒幕が、1人勝手にヘタレて退場。あれじゃ主人公は、苦悩も成長もするヒマないんですけど。

ただ、秘かにあの人は、この先もまだ登場するような気もしています。この先本腰入れて、秀麗の恋を描く覚悟があるなら、少年ジャンプ展開も歓迎します。

今回一応、任地の政情も落ち着いてしまったので、作者がこの先どういう展開に持っていくつもりなのか、予想がつかなくなりました。都には戻らないのかなあ。でも、あれだけ立派になってしまった劉輝と再会しても、なんだか寂しい気がします。

Novels図書
『ラス・マンチャス通信』 平山瑞穂  新潮社

第16回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。この賞の歴代の受賞作は、不可思議で美しく、独特の雰囲気のある物語が多いこともあり、昨年度受賞の本作にもトライしてみました。感想としては…。うーん、ファンタジーノベル大賞もここまできましたか。

主人公「僕」の家には、両親と姉ともう1人、「アレ」がいた。アレはいつも、そこらにあるものをおもちゃにして勝手に1人で遊んでいるので、僕たちはいつも、アレの醜悪な見た目にも悪臭にも目をつぶり、アレをもとから存在しないものとみなす努力をした。懸命な努力はしかし、報われることはなかった。ある日ついにアレの所行に切れてしまった僕は、ついアレに向かって拳をふるってしまったのだが…。

「僕」の1人称で淡々と語られる日常は、不可思議にしてグロテスク。この日本にあるどこかのようであり、隔絶された異界のようでもある。原初の記憶に近い場所で見る悪夢のようでした。ホラーと紙一重のブラックさは、諸星大二郎や、夢枕貘の短編に似ているかもしれません。

表題にある「ラス・マンチャス」は有名なスペインの地名であり、また、「染み」を意味するその国の言葉でもあるそうです。これは作品中に挿入されている「ラス・マンチャス」と呼ばれた人々の逸話からきています。
「僕」の人生に「染み」のようにつきまとう不条理な悪意。タブーから目をそらし、閉塞感を口に出さないことでかろうじて保たれる日常。そうした感覚が妙に生々しくて、決して楽しい話というわけではないのに、一気に読まされてしまいました。あ、この感覚はあれにも似ている。太宰の『人間失格』。