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今市子さんの新作。ミステリー&ホラー&ボーイズLoveテイストの連作シリーズです。舞台は昭和初期(に限りなく近いどこかだそうで)。主人公は、高級味噌の老舗の若旦那。この若旦那が吉原で贔屓にしている店が幻月楼で、そこではなぜか、並みいる花魁を差し置いて、幇間の与三郎と昵懇になってしまった。 与三郎のお座敷芸はなぜか怪談。本人も視える体質らしく、おどろな事件に巻きこまれる。なかなか色男な独身の若旦那のところには、毎度のように縁談が持ち込まれてはぶち壊れ、その怨恨に絡んだ事件も起こる。そうした複雑な事件の謎を、2人で解き明かすというもの。個々の事件が複雑で、1度読んだだけではなかなか分かりにくいところもありましたが、全体として面白かったです。やはり、今さん描くところの、レトロな和の雰囲気は素晴らしい。 |
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最近、ネットの知人がこぞって絶賛しているシリーズ。とりあえず角川文庫で入手したI,IIを読み、残りを図書館から借り出して一気読み。やっぱり、はまりました。脱帽です。思うに、最初にこれに目を付けた人は偉い。そして、この傑作を先入観なく読めた人が、心からうらやましいです。 さてタイトル通り、野球がテーマの、一応児童文学です。主人公の原田巧(たくみ)は、小学校では少年野球で鳴らした野球少年。その彼が、父親の転勤で中国地方の地方都市「新田市」に引っ越し、そこの中学の野球部に入部して活躍する話。というと、少年マンガ的な、明るく爽やかな熱血スポ根世界のようですが、断言します。全然違います。 巧は投手で、それも天才投手で、おまけにそのことをよく自覚しているという、はっきり言ってクソ生意気なガキです。こと野球に関してはナチュラルに自分は凄いと思っていて、それを繕おうともしない。そして、実際それだけの力を持っていたりする。そんな彼が今の中学校の管理野球に身を置いて、どこにもぶつからないですむはずもありません。そして、そういう葛藤をまた、リアルに描いてしまうのだな、この話。 実のところ、I,IIの段階では、ハマったというほどでもなかったのです。この時点ではまだ、彼らはほとんど野球をしていなかったし。そして、文庫版後書きでは、作者自ら熱く語りすぎていた気がして、ちょっと引き気味でした。まあ、IIの後書きは、最終巻のVIを脱稿した直後であったらしいので、多少テンションが高いのも無理はないですが。ちなみに、VIは来年1月発売の予定だそうです。早く読みたい。 天から、背負うに重すぎるほどの才能を与えられ、他を省みることなくまっすぐに高みを目指す魂。彼は己の才能の贄となるべく生まれついてしまった者の1人でした。その才能は時に、身近な者までを有無を言わせず奉仕者にしてしまう。そうしたはた迷惑な天才と、天才に魅入られてしまった一般人。実はこれ、ラノベのファンタジーにありがちなテーマであったりしますが、それを、そこらの野球少年を主人公にして、地に足をつけて描ききったところが凄いです。 誰も、年を取ると負けることがうまくなります。少なくとも、勝ち負けがある場合は、負ける場合も想定します。勝つことしか考えずに突撃して、玉砕するようなまねは、痛みを知ってしまえばそうそうできません。だからこそ、クソガキと思いつつも、彼の勝ちざまと、負けざまさえも見てみたいと思ってしまう。気が付けば目が離せなくなります。 そして、これが、陸上や水泳であれば、1人黙々と栄光を目指せばよい。これがバスケやサッカーならば、必然的にチームの一員としての主人公を描くしかない。しかし、このタイトルは「バッテリー」。ここでクローズアップされているのは、球を投げるピッチャーと、それを受け取るキャッチャーとの1対1の関係です。何者も省みない巧が、しかし投手であるためには、たった1人、捕手の永倉豪が必要だというのは事実であり、彼らにとっては半ば不条理であります。これをめぐって、しつこく迷う巧と豪。もう、しまいには彼らが愛しくてたまりませんでした。 また、他の登場人物も皆、魅力的でした。巧の剛に対する柔を受け持ったかのような弟の青波。野球部の仲間達。野球の名門校、横手中の選手達などなど。ただ、1つだけちと言いたい。門脇君、瑞垣君、きみたちは本当に中学生かね(老けすぎ)。 |
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『しゃばけ』シリーズ第3弾。江戸の人情溢れるミステリー短編が5編収録されています。いつもながら、面白かったです。 今回、表題作「ねこのばば」で、世間知らずと自己卑下しながらも、どうしてなかなか腹の据わった駆け引きをやってのけた若旦那。駆け引きの相手は煮ても焼いても食えなそうな、広徳寺の僧、寛朝氏。この人は、レギュラー化しそうな気もしますが、なかなかいい味出していました。 |
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『ぶたぶた』シリーズの最新刊は、光文社文庫からひっそり出ていました。危うく見逃すところだったではないの。もしかして徳間のデュアル文庫はもう、新作は刊行されないのでしょうか。 今回、ぶたぶた氏はカルチャースクールのエッセイというか、ネット日記の講座に通っています。最初のうちこそ、講師の先生や、スクールの参加者たちをパニックに陥らせつつも、彼らに相談を持ちかけられたり、飲みに行ったり。皆が、ぶたぶたという素敵な秘密を抱える共犯者のように、連帯感に包まれていく様子が、いつもながらほのぼのと描かれます。 最終話に、もしやブラックぶたぶたが出るのかと、ひやりとさせられます。しかし、ぶたぶた氏はやっぱりぶたぶた氏なのでした。おもしろかったあ。 |
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中学生の主人公、夏貴の親友一家が、自宅の火災で焼死した。呆然とする夏貴であったが、不思議なことに親友の意識は、彼の焼け残った携帯に宿っていた。携帯を通じて亡くなった親友と会話しながら、火事の日のことを振り返るうちに、次第に不審な点が明らかになっていく。やがて、夏貴の身にも危険が…と、いうもの。 ここまでは、不思議要素もあるミステリーと思っていたのですが、事態は予想を超えて、思わぬ方向に転がっていきます。なので、途中から3段飛びで飛躍した展開に全く置いてきぼりにされてしまいました。テーマ自体はそうそう珍しいものではなかったのですが、読んでいて、なんでそうなるかな?というツッコミの嵐だったもので。ラストにかけては、投げました。おまえら勝手にやっとれ。このテーマは、東野圭吾さんの作品にもありました。あちらの方はまだおもしろい方だったがなあ。 ネタバレでいきます。人間のクローン技術という大きくて重い問題をテーマにしながら、参考文献もずらりと並んでいながら、あまりにそれをめぐる人々の反応が、画一的でうすっぺらに見えてしまうのだな。クローンを生み出してはいけない、それは存在するべきではないという否定的な建前を掲げるだけなら誰でもできる。小説的には、その一歩を敢えて踏み出してしまう側の業を、もっと納得行くように描くべきではないかと。見方によっては「人間が愚かで考え無しだと、主人公のようなかわいそうな子供が誕生してしまうんだよ」という上段に構えたお説教に読めてしまって、釈然としないのでした。 この話の中では東さんの考えが、一番納得がいくのですが、彼もちょっと無条件にいい人すぎて、今いち言葉に重みがないしなあ。 クローン人間は「人間」である。人間には人権があり、誰かの代替や、搾取の対象にしてはならない。って、倫理的にはこれだけのことだと思うんだけどなあ。ヤミクローン体からの臓器提供といった犯罪の問題はこの際別にして、夏貴のケースで、誰かのクローンであるということが、なぜそこまで問題視されなくてはならないのか。納得行きませんでした。 |
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プロファイラー大滝錬磨が主人公のシリーズ第4作。前作から、いつの間にか3年が過ぎていました。今回、宗一郎はもう少し育って、思春期の少年レベルの精神年齢となり、その年相応の一途さで錬磨を慕い、そして反発する葛藤に突入しました。その現れとして、錬磨から独立宣言し、錬磨の友人夫婦の元に身を寄せた宗一郎。急に保護者役を解雇されたことが、どうしても感情的に納得できないまま身をもてあます錬磨。そんなとき、宗一郎が偶然関わった、連続犬虐待事件。犯人は果たして…? 今回は読んでいて一番精神的にきつかったかもしれません。いつもながら、犯人がその犯行に至るまでの心理を丁寧に描いていて、その心の闇が理解できるものになっている。いるとは思うのですが、動物虐待ネタだけは、納得しようとしても拒絶反応が抑えられないようでした。 現実の動物虐待事件で捕まっても、大した罪ではないと開き直る犯人達。この国の法律では、どれほど残酷なことをしても、そうそう実刑になることもなく、日常生活を続けらるのだから、もしかしたらそうなのかもしれません。加害者の罪の意識と、被害者の受けるダメージとの間に、これほどギャップがある犯罪もそう無いと思う。なので、今回はどう頑張っても爽やかには決着できないだろうと思ったし、実際、晴れ晴れとはいかない読後感でした。仕方ないか。 それはともあれ、今回はクライマックスに至るまでの、インターミッションという位置づけであったらしい。次回で怒濤の展開になっていくとのこと。期待しましょう。 |
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以前から、周囲に勧められまくっておりました、音大オーケストラコメディ。実は、春頃3巻まで入手して読んだのですが、その時は、あまりにベタなギャグになじめず、そのまま中断しておりました。それをこのたび、ブックオフでなぜか最新刊のみ購入。結局揃えてしまったのでした。はい、人様のおすすめは素直に聞くが吉でございます。おもしろかった。 主人公の千秋真一は指揮者志望の音大生。飛行機恐怖症で日本を出られないことで、音楽家としての将来に行き詰まりを感じ、鬱々とする日々。おまけに自分の才能を過信したオレ様性格で、周囲から浮きまくるわ、彼女にふられるわで、どん底の千秋は、ある日隣の部屋の住人、野田恵(のだめ)と知り合う。バカでずうずうしく、常識を超越した変人でありながら、たぐいまれなるピアノの才能を持つのだめ。彼女に翻弄されながら、千秋も次第にその指揮者としての才能を開花させていくのであった。 4巻から後は音楽的シリアス部分に力が入ってきて、ギャグとシリアスがいいバランスになってまいりました。雌伏していた才能が集まり音を紡ぐオケのシーンは圧巻。私はクラシックで寝てしまうので、演奏されている曲がイメージできないのが残念なほどでした。 千秋とのだめの今後がすごく楽しみ。ただ、これまでのところ、音楽の素晴らしさが単純な「才能」という言葉で説明されすぎている気がします。のだめはともかく、千秋はもう少し音楽的に悩んだ方がいいと思う。某「フジミ」でさえ、「音」の探求にはものすごく苦労して、悩んでいるぞ。 |