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2004年 2月度
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『空の向こう』 遠藤淑子  白泉社Jets Comics

白泉社系の雑誌と、いくつかは4コマ誌に掲載された読み切りを収録した、短編集。もう、昔ながらの遠藤淑子節全開という内容で、正直、涙が出るほどうれしかったです。

巻頭の「茂合課長」のような、大ボケは感涙ものですし(お願い、これもっとやって)、表題作や「スノウ」のような、シリアスの合間にボケ。そして、ラストで号泣のラブストーリーも健在でした。
収録作に2001年以降の作品がないのは、少し心配なところですが。お願い。少しずつでもこの先、新作描いていってください。
Novels
『家守綺譚』 梨木香歩  新潮社

『からくりからくさ』等の梨木香歩さんの新作と言うことで、衝動買いしてしまった本作。
今より少し昔の、今より少しばかりおおらかであった時代のこと。駆け出し文士の主人公は他界した旧友の実家が空き家になることのなったときに、そこに「家守」として住み込むこととなった。住み込んでみれば、死んだはずの旧友はなぜかしょっちゅう出没するし、庭の樹に惚れられるし、お約束のように河童や狸もやってくる。なかなか油断のならない日々のつれづれを描いた「家守日記」なのでした。

雰囲気は、坂田靖子に近いです。漱石の時代を思わせる洒脱さで、淡々と綴られる日々。けっこうとんでもないことが起こっても、あたふたするのは主人公だけで、なぜか周りの人々は「常識です」と、きっぱり言い切ってしまう日常感。なかなか好みでした。ただ、主人公の昼行灯な性格のせいか、自然豊かな風景の中にいながら、そのみずみずしい季節感をあまり感じられなかった気もしました。
それと秘かに、何かオチがあるのかと期待していたのですが、結局最後まで全く同じペースで終わったのは、物足りなかったかもです。
『ぬさり道』1巻 森真理  竹書房

ダンナ本ですが、なかなかおもしろかったエッセイコミック。この手のネタは、なかなか、役にたつ、かも?
さて、「ぬさり」とは、熊本弁で、「運の良い事柄、人、物」を指す言葉であるそうです。この本は、自分に運を向け、「ぬさった」人になるべく、あちこち取材し、そのコツを追求した体験記なのでした。

まずは風水の大家Dr.コパに、診断してもらう。宝くじを極める。断食道場に通う。ワイルドストロベリーを育てる。また、今、いろいろな方面でぬさっている方々に会って、ぬさるコツを披露してもらう、等々。思わず、なるほどと膝を打つような体験レポートは、それだけで楽しめました。
しかしながら、一番納得できたのは、

「ぬさる家はどこも、整理整頓されている」 ←(グサ!)
「ぬさる人はエネルギッシュである」 ←(同上)
「ぬさる女はまめである」 ←(同上)

という、当然の摂理でありました。シクシク、あああ整理整頓。

この1巻には載っていなかったのですが、『名探偵コナン』の青木剛昌さんに取材したときはすごかった。想像もつかないぬさりレベルでした。
ともあれ、これを参考に、自分にできるレベルで、清く正しく健康にぬさることを、目指したいと思います(笑)
Novels図書
『狐笛のかなた』 上橋菜穂子  理論社

『守人シリーズ』の上橋さんの新作です。舞台は一応架空の国、時代ですが、おそらくイメージは室町時代あたりの日本であるようです。

両親を亡くし、祖母と2人、村はずれの家で暮らす少女、小夜。そこから更に人里離れたところにある「森陰屋敷」に独り閉じこめられて暮らす少年、小春丸。そして、この世の外に棲む生き物「霊狐」でありながら、人間の呪術者に使役されている、野火。物語は、孤独なこの3人の出会いからはじまり、運命はこの3人を避けがたい悲劇へと巻き込んでいく。

うーん、上橋さんらしい波瀾万丈な和風ファンタジー。しかし、感想としては物足りなくもありました。何と言っても、トーンがあまりに暗かった。少年少女が主人公の冒険端にもかかわらず、彼らが揃いも揃って、自分たちの孤独な境遇に対して、聞き分けが良すぎる。聡明なだけに、周囲の大人の事情も分かってしまうので、思い切って行動できない主人公達。彼らの選択枝は結局、自分の命を犠牲にするか否かしか、残されていないのでした。

少年少女の冒険というとすぐ思い出すのは、荻原規子作品ですが、荻原ファンタジーであれば多分、無知で無力でも、大切な誰かのために後先考えず行動する主人公が、そのハチャメチャなパワーで物語を引っ張っていったことでしょう。一応のハッピーエンドを迎えたにもかかわらず、この物語には、そうした爽快感がありませんでした。呪者と使役される者。若桜野の地の美しさ等。魅力的な素材は多かっただけに残念です。
『エリア88』全23巻  新谷かおる  小学館 少年BigComics

今更すみません。実はこれ、読んだことなかったんです。

それが、今、なぜ今更?というタイミングで、アニメ化が進んでいます。イラク戦争が泥沼化しつつある中、製作者側に何らかの意図があるのかは不明ですが、家にはダンナ本が全巻揃っていたので、この機会に物置から引っ張り出してみました。初版の第1巻は昭和54年発行。古い。しかし、読んでいて少しも古さを感じさせません。ただ1つ。シンの、正面から見ても前髪で片目が隠れてしまう髪型だけは、あの時代らしいかもです。あの頃は、ああいうキャラが多かった。

舞台は中東の王国アスラン。内戦の続くこの国で、主人公風間真は、アスランの外人部隊に所属し、戦闘機乗りとして戦う日々を送っていた。極上の腕と運を兼ね備えた者のみが生き残れる、地獄の最前線地区「エリア88」。男達はそこで、生き延びるために敵を屠り、己の命の限界を見据え、死線をくぐり抜けていく。仲間と軽口をたたきつつ、交わす命のやりとり。鋼鉄の翼の赴くままに、血塗られた空に焦がれる男達を描いた戦闘ロマン。

やはり、名作だけのことはありました。前半の、戦闘機乗り列伝とでも言うべき部分は、リアルかつ悲惨で、読んでいてつらい所もありましたが、後半は少し雰囲気が変わります。後半では、主人公と仲間達の、世界の紛争を裏でコントロールして利益を得る巨悪との戦いがメインとなり、彼らの痛快な活躍が描かれます。私的にはどちらかというと、主人公が単純に「正義の味方」になってしまうよりは、純度の高い男の美学が描かれていた前半の方が、好みでありました。

ともあれ、別にミリタリーオタクでなくとも、戦闘機カッコイイ!とうっとりさせてしまうのが、この作品の力なのでしょう。戦争を美化する云々などと、ヤボは言いません。前述した、現代のCGを駆使して製作されているアニメが、原作に迫力でもスピード感でも到底及ばないのを見るにつけ、新谷さんは本当に、飛行機を精魂込めて描いていたのだろうと思われます。兵器にそれほど愛のない少女漫画は、この点だけは敵わないだろうなあ。

これを読んでついでに、須賀しのぶの『天翔ける馬鹿』も再読してしまった。なるほど、影響されてるわ。