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春からボチボチと読んでいたのですが、明るいさわやかな季節に読む気になれなくて、つい中断しておりました。ちなみに、この長引く梅雨時に読むには、ぴったりのうっとおしい話、かもしれない。直木賞受賞作。 平成4年、東京の住宅街の路上で起きた殺人事件。最初は通り魔かと思われた犯行はやがて、連続殺人事件に発展していく。主人公合田は警視庁の刑事として、この事件を担当したものの、捜査にはどこからか、不透明な圧力がかかるようになる。そのすべては、昭和51年、南アルプス北岳で起きたある事件に収束していくのだった。 裏表紙にある「警察小説の最高峰」という紹介文には、納得。警察組織の中で、上層部への配慮だの、他部署への根回しだのの苦しさをにじませつつ、アンタッチャブルな領域へと分け入って、やがては事件の真相をつきとめていく合田。その過程を丹念に描いた筆力には、脱帽でした。ぐいぐい引き込まれていきました が、この話、なぜか「スカだった」という感想も、よく目にしていたのでした。そして、それにも納得(ヲイ!)。犯人は読者には最初から明らかにされているし。犯人がなぜ、この犯行に及んだのか。その背景には何があったのか?ようやく明らかにされた真実に、拍子抜けしてしまったのもまた事実でした。結局、「山で結ばれたおホモだちが、その絆の故にイケナイ世界に逝ってしまった」というのが真相だったのでしょうか。 そして、合田さんと、その別れた妻の兄、加納検事。ことある毎に、思わせぶりな絆を見せびらかす男達。この小説が、分かる人にはピンと来る、周到に擬装されたやおい小説であるというのは、一部で定説となっておりますが、やっぱりそうだったのかと深く納得。なんだかなあ。 |
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前編の次は…中編でした。で、後編がすごく待ち遠しかったりします。久々、須賀さんらしい、怒濤のストーリー展開を拝めました。 前編で、サルベーンと共にザカリアの村を出たラクリゼ。折り込みの「乙女ちっく通信」に作者からのメッセージがあって、それによると「ラクリゼとサルベーンの甘酸っぱくも、ほのぼのな青春物語」だそうで。凄まじいほのぼのもあったもんだ…。 若き日の2人は、確かに一面、微笑ましくなるほど若いのですけど、その一方で墜ちるときもまたどん底まで、一直線に突き進んでくれます。修羅道を突き進むサルベーン。いつになく純な乙女していたラクリゼ。そして、この2人にとって、カリエの存在の意味とは?「流血女神伝」シリーズの全貌が、この2人の側から眺めることによって、より広がりを見せたようで、おもしろくなってきました ところで、エディアルド母がアリシア?だとしたら、エドとラクリゼで、親子ほどの歳の差?更にカリエとだと、25歳以上の差?さすがにそれはなさそうなので、ホルゼーゼの子の一人をアリシアが名付けたか、引き取ったなのかなあ。感じとしては、ちびカリエがそろそろ生まれている頃に思えるのですけど。 次巻、おそらくヨギナ陥落。そして、ラクリゼがちびカリエを連れて行くのは、アデルカの所ではないかと思う。彼の女神との契約は、カリエがらみで果たされるに違いないので。 今の女マックスなラクリゼと、ぬらりひょんなサルベーンに、いかにしてつながっていくのか。楽しみです。 |
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某掲示板でご縁のあった方が、こちらの作者と伺ったので、読んでみました。これがデビュー作ということですが、なかなかおもしろかったです。 舞台はイギリス。スコットランドの片田舎で育った少年ラムジーは、深刻な家庭の事情があり、一人ロンドンに家出してくる。来た早々、ちんぴらに絡まれた彼を助けたのは、印象的な瞳の青年ジャック。親切なジャックの家に転がり込んだラムジーだが、ジャックも彼の奇妙な仲間達も、なにやら一筋縄でいかない事情を抱えているらしい… いわゆる異世界ファンタジーですが、「向こう」から来た人々の「こちら」での話が中心です。都会の片隅でひっそりと暮らす異世界人の社会が、ふと、どこかにありそうに思えてきます。難を言えば、カマトトなラムジー君を含め、あまりにみんないい人なのが、物足りなかったかも。どちらかというと、2話目の「晴れた日は魔法日和」の方が、よりファンタジーらしくて好みでした。「煙水晶には魔法を蓄える性質がある」といった細かい設定が、それらしくてよかったです |
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恩田陸の20世紀に捧げるオマージュと聞いて、読んでみました。昭和のなつかしのサブカルチャーを、私と同世代の作者がどう料理するのか楽しみにしていたのですが。 20XX年、カナザワアキラは超難関の入試を突破して、日本一、というより日本唯一の名門高校、大東京学園に入学を許可された。生活環境も経済力も、疲弊しきって未来の展望のなくなった近未来の日本で、大東京学園の卒業総代となった生徒のみは、国家によって生活が保証してもらえるという。しかし、入学したそこは、学校とは名ばかり、その実体は、生徒を労働力として酷使しつつ、異端思想を弾圧するだけの監獄であった。そのあまりの異常さに堪えられなくなったアキラはやがて、「新宿クラス」の生徒達の、「脱走」を企てようとする思想に共鳴していくのだが…。 うーん、これ、ギャグでしょう?少なくとも、あのアホらしい学校行事は、コメディ以外の何者でもないと思う。それでいて、彼らの学校生活の描かれ方は、最後まで一貫して、『バトル・ロワイヤル』かい!?というくらいにシリアスに悲惨なので、そのギャップがどうも居心地が悪かったです。だいたい、若い優秀な学生をかき集めて、あれだけの予算をつぎ込んだあげく、良くて従順な肉体労働者。下手すりゃ地雷除去要員に仕立て、コロコロ死んでもお構いなしというのは、どう考えても損失が大きすぎる。まじめに考えるだけ馬鹿らしい設定なのですから。 作中で描かれるサブカルチャーについても。それらへの知識やこだわりは、私から見てもいかにも物足りなかったです。確かに私が知らないジャンルでネタが分からないだけ、ということもあったとは思いますが、単に前世紀に流行したものを無造作に並べたという印象でした。そして、サブカルチャーといえば、世界に誇るOTAKU文化を抜きには語れないと思うのですが、そちらもさわりのみ。オタク嫌いだからねえ、恩田さん(『三月は深き紅の淵を』参照)。 20世紀へのオマージュというと、つい、1昨年前のアニメ『クレヨンしんちゃんモーレツ!オトナ帝国の逆襲』などを思い出してしまいます。こちらは、自分はこれが好きで、ネタにしたいんじゃあ!という、制作者のあの時代へのこだわりと愛とが溢れていたように思う。そういうものは、元ネタが分からないなりに、ちゃんと伝わるものです。 そして、しんちゃんは、過去を懐かしみつつも、未来に進むことを選びますが、アキラ達は、過去の輝かしき予定調和へと還っていく。ちょっと、引っかかるハッピーエンドでした。 しかし、このタイトルはやはり、「ボーイズ」ものへのオマージュでしょうか?それとも、80年代少女漫画?あの少年達の造形って、攻受がはっきりしすぎ。 |
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「ゲド戦記」シリーズのまさかと思われた最新作。発売当初、本屋の店頭で見かけてマジかと叫んでおりました。 しかし、いざ読み始めて見ると。前作、「帰還」を読んだのは、 10年ばかり昔のこと。今や、その内容もすっかりおぼろげになり、テハヌーって誰だったっけ、というありさまなのに気づいた。ともあれ、そういう奴は置いてきぼりにして、ストーリーはさっさと新しい展開に進んでいきます。 大賢人としての力を失って以来、ル・アルビという片田舎で、テナーとテハヌーと共に静かに暮らすゲド。すっかり農夫の生活が板についたかのような彼の住まいに、ある日一人の客人が訪ねてくる。ハンノキと名乗るその若いまじない師は、最愛の妻を亡くしたばかりであったが、その死を悲しむ余裕すらない、恐ろしい出来事にとらわれていた。彼は夜毎に夢の中で、死者の世界との境界に誘われるという。そこでは彼の妻の魂が苦しんでいるのを見せつけられるだけでなく、あらゆる死者が境界に列をなし、彼に救いを求めてこちら側へと手を伸べようとするという。 その夢が、世界に訪れようとしている大きな変革に関わると判断したゲドは、ハンノキを、テナー達が滞在していた王都に送り出す。その頃王都では、時を同じくして、東方の新興国からの使者や、西海域に出没して村を襲う竜といった問題が起こり、若きレバンネン王や、王宮の魔法使い達を悩ませていた。 と、いうわけで、これらの謎を追って、この世界の成り立ちと竜との関わりが明らかにされるのでした。うーん、「帰還」の時から思いましたが、文章が観念的というか、思索的というか。生身の人間のドラマに寄り添うことなく、世界を俯瞰するかのような語り口になったのが、突き放した印象を与えます。また、テナーの視点や、王と王女の関係の描かれ方も、旧式なフェミニズムの主張があからさまで、そこだけファンタジーの世界から浮いているのも、前回と同じで今ひとつ。 それでも、作者の描く「多島海」は、いまだ明らかならざる伏線を秘めつつ、確固としてそこに存在しており、その情景の美しさに、読んではまた、ため息をつくのでした。御年70歳を越えられた作者によって、いまだ衰えることなく、新たな物語が綴られていくこと。長く続いた物語が、壊れた作者自身の手によって蹂躙されていくことが珍しくない昨今、これは、もしかして奇跡のような僥倖なのかもしれないと、改めて思います。 |
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1年以上ぶりのコミック版『ゴーストハント』新刊です。その分気合いを入れて描かれてます。 北陸の料亭の回の前編。状況説明や伏線部分をうまく処理してくれたので。そして見せ場はすべて後編に残されたので(泣)、続きが楽しみとしか言えません。いつになるかなあ。まあ、単行本2冊にまとめるための構成は決まっていることでしょうから、少しは早くなるとは思うけど。 たしかに、あれを視覚化するのは、けっこう大変だったろうな。そして、最終回は、原作上下巻だと、コミックスなら4冊くらい?このペースだと、完結までにあと5年くらいかかりそうな気がしてきた。小野不由美病は伝染るのでしょうか |
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このところ、諸処でブレイク中らしい、『マリみて』シリーズ最新作。紅薔薇のつぼみとなった祐巳の、2年生の2学期が始まりました。祐麒の通う花寺学院では、リリアンより一足早く学園祭が開催され、リリアンの薔薇様とつぼみたちも応援に駆り出されます。なので、いつになく男性の出番の多い話でありました。 今回は、祐巳の妹の事がそろそろ、巷で話題にされるようになったという話。今回登場の可南子さんは、あの描かれ方ではさすがに妹には無理だろうと思うのですが、某掲示板では、本命とみなす人がいて、ちょっとびっくりした。同人のカップリングじゃないんだけどなあ。それと、予想はしていたけど、やっぱり祐麒は生徒会長だったのでした。なにげにVIPな姉弟になっています。 ただ最近のブレイクと裏腹に、物語のテンションが下がり続けているのは気になります。スールという関係についても、以前はもっと微妙で複雑な感情の交流があったような気がしたのだけど、そのあたりが形式的になった気がしてならない。そして、祐巳がいつのまにか、可愛くて親しみやすい、つぼみにふさわしいステキナヒトになっていて、周囲がそれをもてはやすと言う構図ができあがってしまったのが、痛いです。なので、この先当分、買うのを控えようかと思うこのごろでした。 |
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先日ハマった「マのつく」シリーズ(略して「丸マ」)。最新の2冊です。これまでのところは単純に、コメディなファンタジーとして、気楽に楽しんできたこのシリーズ、ここに来て、完全にやられました。ここまでずっぽりハマってしまうとは、とんだ伏兵であった。 それにしても今回、『天〜』のラストは、まさに極悪な引きで終わってくれました。幸い、出たばかりの『地〜』と同時購入して、一気に読むことができましたが、そうでなければ、一ヶ月間身もだえして過ごさねばならなかったところでした。さて。 主人公渋谷有利は、異世界に行って魔族の王として即位して以来、地球と異世界とを行き来する生活を送っています。日本で平凡な高校生活を送りつつ、何かあるたびにあちらに呼び出される日々。あちら側は、「魔族」と人間と、その他の稀少種族が共に暮らしている世界であり、人間と魔族とは、歴史的に、根深い対立関係にあります。 今回、ユーリは、異世界に渡るなり、何者かの奇襲を受け、人間世界の大国「シマロン」の片隅に飛ばされてしまう。しかも今回のワープでは、日本の友人の村田健を一緒に巻き込んでしまったらしい。ユーリと村田健(通称ムラケン)は、シマロンをあてもなく放浪するうちに、人間達が企てる陰謀に巻き込まれてしまうのだが…。 というのが、これまでのところでした。人間達は世界を破滅に導きかねないほどの威力を持つ禁断の兵器「箱」を手に入れ、世界に大災害をもたらそうとしていた。ユーリは、平和主義のへなちょこ魔王ながら、それをくい止めようと奮闘するのであった。異世界ファンタジーのパロディのようにスタートしたこのシリーズ。ここにきて、予想外にシリアスになってまいりました。 そして、今回久々に萌えまくってしまったキャラが、魔族3兄弟の次男、コンラッドでした。次第に明らかにされていく彼の過去に、もろにツボを突かれてしまった私。もちろん、さりげなく成長していた三男坊も、正体が明らかになったムラケンもそれぞれツボですし、アニシナ&グレタの最強魔女コンビも先が楽しみ。が、やはりここは、コンラッドです。壊れてます。 このところ、萌えに飢えていたとはいえ、やっぱりキャラ萌えは強かったのでした。と、言うわけで、このシリーズ、ごく個人的に、今年前半期の滑り込みベスト作品として、挙げたいと思います。 |