HOME 
2003年 2月度
<<前月 来月>>
マンガ
Novels
小説
図書
図書館GET 
そ他
その他借り物  


Novels図書
『終戦のローレライ』上下  福井晴敏   講談社

『亡国のイージス』の作者の新作です。正直、これは手こずりました。そもそも、上下巻のハードカバーは相当ボリュームがあるところにもってきて、この話、導入がかなり取っつきにくかった。冒頭からいきなり、全く状況の分からない、潜水艦による海戦の描写が続く。舞台が太平洋戦争末期なので、敗戦の色濃い日本の、くらーい悲惨な状況が綿々と描かれる。そこを突破するだけで、図書館の貸出期限をほとんど使ってしまったので、やばいと焦ったものの、返却日をかなりオーバーしてしまいました。本当に申し訳なかったです>市立図書館&次の予約の方。
と、いうわけで、上巻の特に前半は「そのうちきっと、おもしろくなる。きっと。」と唄いつつ、忍の一字。上巻の後半から、ようやく勢いがつき始め、下巻はほとんど一気でした。投げないでよかった。前半で苦労した甲斐はありました。感動でした。(でも、やっぱり、苦は少ない方がよかったけどさ…)さて。

前述の通り、太平洋戦争末期の日本。同盟国のドイツは無条件降伏し、本土決戦もささやかれる中、誰もが出口のない暗闇の中にいた、その頃、1隻のドイツの潜水艦が、日本に亡命してくる。最新鋭の兵器「ローレライ」を搭載し、連合国に多大な被害を与えて「シーゴースト」と恐れられてきたその艦は、日本にたどり着くまでの戦闘中に、やむをえず「ローレライ」を海中に投棄してきたという。帝国海軍に引き取られ日本名「伊507」を冠せられた潜水艦は、八方ふさがりの状況を打破し、少しでもましな「あるべき終戦の形」を日本にもたらすべく、特別任務を与えられる。そのために、特別編成された部隊。融通される貴重な武器・燃料。どこかきな臭い気配を漂わせながらも「伊507」は出撃し、まずは海中の「ローレライ」回収作戦にあたったが…。

海中に沈んだ兵器ということで、『パトレイバー』に出てくるASYURAシステムのようなものを想像していた「ローレライ」。実際はなかなか意外な代物でした。ネタバレ行きます。

パウラの登場シーンでは、つい、「ファティマかこいつ?」と突っ込んでしまいました。更に、少々の間があって、彼女が「ニュータイプ」なのだと気づく。そうすると、フリッツはまんまシャアに見えてきたので、遅まきながら、作者の意図が、第二次世界大戦を背景に『ガンダム』をやることにあったのだと、確信してしまいました。そうか、そういうサンライズアニメネタを、軽く見せないために、冒頭に敢えて、地味ーな重苦しい描写を置いたのか。しかし、それでリアリティが出たのかというと、それほど効果はなかったような気がするんですけど。
ちなみに、まんまなセリフの抜粋。
「兵器として利用されることに変わりはない。」
「あんたたち大人が始めたくだらない戦争で、これ以上人が死ぬのはまっぴら
 だ。」
「(ローレライの力は)人間がもともと持っている潜在的な力が、何かのきっ
 かけで覚醒した…」

…まあ、それはそれとして、全体としては、このサンライズアニメ的ヒロイズムと、あの暗い時代に避けて通れない、正視に耐えない重苦しいエピソード(あの兄妹のドイツでの過去や、下巻にあった南方の地獄など)は、バランスがとれていたと思います。ひたすらリアルなだけの、悲惨な戦争手記になってしまったら、さすがに読む気にはなれなかったと思うので。

そして、長き戦いの中で、それぞれに、命賭けて守るべき何かを見い出していく漢たち。彼らの戦いがまた熱くて、感動的でした。もし『イージス』より先にこちらを読んでいたら、あれ以上に評価していたかもしれません。ただ、テーマ的にもキャラ配置にも、かなり『イージス』とかぶるものがあったので、これ単独での評価はちょっと、できかねております。

かつて、ただ生き延びることが、すべての希望であった時代があったこと。その頃から、たかだか60年しか経っていないことなどを、やはり思わずにはいられませんでした。とりあえず、飢える心配のないところまではい上がれただけでも、日本の戦後は上出来であったとは思う。が、反面、物質的には充足しておりながら、目の前の幸福を実感できないのはなぜなのだろうと。

その点からすると、黒幕の浅倉大佐(なんとなく甘糟と言いたくなる)が結局、ひ弱な、頭でっかちのボンボンに成り下がってしまったのが、残念でした。彼の主張は、理が通っていて、説得力があったのに。彼がもう少し穏便な方法で、戦争遂行者に対する「けじめ」をきっちりつけてくれていたら、日本は果たして、どんな国になっていたろうかと、ふと思います。
そ他
『ブラックジャックによろしく』1〜4巻 佐藤秀峰 
                    講談社KCモーニング

これも、今、話題沸騰中の医療マンガ。日本の医療システムが抱える矛盾と、凄まじいばかりの現実を、正面から取り上げた、評判通りの力作でした。マンガ喫茶で一気読み。確かに話題になるのも分かります。

実はダンナが医療関係の仕事(医者ニハ非ズ)をしていることもあって、医療の現実なるものについても、少しは知っているつもりでした。それでも冒頭の、素人同然の研修医の主人公が、いきなり1人で重傷の救急患者に対処させられるという、ショッキングなシーンにはガーンとやられました。こ、怖えーかったよお。

矛盾だらけの無理のある医療システムの中で、医者とは何か、どうすればいいか、否応もなく問われ、成長していく主人公。このあたりからはさすがに、人間ドラマが主軸に据えられ、問題意識はほどほどになってきた感じ。まあ、それが元々の作者の狙いであったのでしょう。現実的にも、主人公がシステム批判ばかりしていては、さすがに病院勤務は続けられないでしょうし。ただ、最初の頃の、硬派な問題意識のインパクトに比べると、3,4巻の展開は、ややぬるい気もいたしました。

3,4巻の新生児の障碍の話については、自分の妊娠中に、胎児の羊水検査をするか?と迷ったことを思い出します。結果としてはしなかった。もし、胎児に異常が発見された場合に苦悩するくらいなら、まだ、知らずに生まれてしまった方がマシだと思えたから。こればっかりは、どんなに技術が進歩しても、そうそう答えの出せない領域でありましょう。
Novels図書
『ハッピー・バースデイ』 新井素子  角川書店

これはあの、『おしまいの日』、『今はもういないあたしへ…』の作者である新井素子(ブラック)の作品。であればとにかく、重たくて、後味のあまりよろしくない作品であるという予感バリバリ。そこへ持ってきて、今の時点の、既読の皆様からその予想に、だめ押しの嵐。曰く、「モノカキの女はコワイ」云々、云々。

なので、いよいよ自分で読むときには、本当におっかなびっくりになっていた本作でした。それでも、読み始めるとするする最後まで読んでしまうところは、さすがに新井素子と言うべきでしょうか。この作品、何が怖いって、冒頭の幸福の絶頂にある主人公が一番コワイ。絶頂から、いかに突き落とされるかが、ありありと予想できるだけに。さすが、作者がS・キングのフリークだけのことはあります。さて。

主人公は新人賞を取って小説家デビューした主婦。幸福の絶頂にあった彼女が、ふとしたきっかけで、ストーカーのターゲットにされてしまったことから、すべては歪み軋みはじめた…。

まあ、ストーカーなんぞする奴が悪いと言えば全くその通りなんですけど。ラストは、高さんがハッピーエンドと言えなくもないとおっしゃっていた通り、全く救いが無いわけでない。ただ、ひどく乾いてブラックでした。

しかし、毎度の事ながら、素子さんどうしていつも、主人公が作者に重なる話ばかり書くかなあ。確信犯なのでしょうか。
Novels
『玉響に散りて』〜封殺鬼25 霜島ケイ  小学館キャンパス文庫

「封殺鬼」シリーズ、最新刊。羅ごう編、あと2冊だそうです。ようやく、ここまできました。
今回で、揉めにもめていた「本家」内部の確執がようやくクライマックスを迎えたようです。跡取り世代の若造たちが、力及ばずにいた問題を収集したのは結局、そのオヤジ世代の年の功でありました。これまでほとんど登場しなかった達彦父の遺言には、さすがにしみじみしてしまいました。最期まで聖に会おうとしなかった彼の半端さが人間らしくて愛しかったです。その点、桐子さんの悟り方はさすがに人間離れしていたのであった。

と、いうわけで、次巻でようやく佳境になだれ込むのか?…長かったです。

『ONE PIECE』27巻 尾田栄一郎  少年ジャンプComics

大河海賊冒険マンガ最新刊。前巻の感想ではっきりつまらん、と書きましたが、今回は少し、持ち直した気がします。ここにきて、天界の支配体制を一通りレクチャーしてもらえたことと、天界に莫大な財宝の眠る可能性が示唆されたことが大きいです。空の冒険の方向性が明らかにはなってきたせいか。

尚も、敵の存在感が軽いとか、分かりづらいとかもありますが、まあ、クロコダイルほどの存在感のある敵はそうそう登場しないことでしょうから、仕方ないかも。この章は、必要以上に引っ張らないで、だいたいのところで終わりにしてくれれば、毛色の変わった冒険譚として、楽しく読み流せるかも。だから、あまり長くしなければ、だってば。


HOME  <<前月  来月>>