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2002年 11月度
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Novels
『天気晴朗なれど波高し。』 須賀しのぶ  コバルト文庫

「流血女神伝」シリーズの外伝。『天翔けるバカ』テイストの、今度は海軍コメディです。コバルト本誌で連載が始まったと聞いた時は、てっきりタイトルは「海翔けるアホ」になるかと思っていました。ともあれ、本編で、どシリアスな再会を果たした、ギアスとトルハーンの、若き日の話です。

さて、主人公ランゾット青年は名門ギアス家の末弟として生まれた。ギアス家の者の義務として、1度は海軍に入隊する必要があったものの、彼はさっさと義務を終えて退役し、小説家となるのを夢見ていた。そんな彼はしかし、見習士官としての初航海で、コーア・トルハーンと、運命の出会い(ぶっ)を果たすのだった。

うーん、以前からミステリーが書きたかったらしい須賀さん、これで気がすんだでしょうか。しかし、登場する女性キャラ1人。それも冒頭と、エピローグのみ。後は、船上のひたすらマッチョな男所帯。美形もなし。耽美のカケラもなし。よくぞこれをコバルトで書いたもんだわ。

難を言えば、コーアとランゾットが、あまりにあっさりとお互いを認め合ってしまったのが、物足りなかったかもです。ギアスも一見変な奴ながら、中身はまともすぎるくらいだったし。もう少し2人の、ボケとツッコミを徹底させて欲しかった気もしました。また、機会があったら続き読みたいです。
Novels
『冬になる前の雨』 矢崎存美  光文社文庫

『ぶたぶた』の矢崎存美さんの、ホラー短編集。ときに、血腥く、時に安部公房ばりにシュールで、そしてせつなく哀しい16の短編が収録されています。
解説の井上雅彦さんの言う通り、『ぶたぶた』のほんわかした作風を期待して読むとぶっ飛ぶかもしれません。ここには確かに、人間の情け容赦ないサイコな怖さがこれでもかと描かれています。しかし、それもまさしく矢崎さんの1つの顔だと、読んでいて不思議と納得できるのでした。

おそらく、こうして人間の怖さ、弱さをちゃんと描けるからこそ、同じまなざしで、うわっつらでない哀しみとぬくもりとが、描けるのだろう、と、そんな気がしました。書き下ろしの表題作は、本当に怖くてそして、しみじみと泣けました
Novels
『宝石泥棒』 山田正紀  ハルキ文庫

ずいぶん前に、何気なく古本屋で入手しました。1980年に早川より刊行された、日本のSF黄金期の古典的名作。1998年にこのレーベルで復刊されたこれは、いかにも渾身の力作らしい完成度と、熱かった時代の名残を感じさせました。

広大な熱帯雨林の懐で人と、多くの異形の生物が行き交う世界。主人公ジローはその世界で生まれ、そこで戦士として生きるはずであった。ある日彼は、国を挙げての「稲魂の祭り」で、自分のいとこである少女ランに出会い、魅了される。しかし、彼の世界では、いとこ同士の恋は厳格な禁忌であった。

ランのことがあきらめきれないジローは、思いあまってランが仕えていた神殿に侵入し、神である「稲魂」に問いかける。「稲魂」は答える。「「空なる螺旋」を捜せ。月を取り戻せ」。そうして、ジローはあてのない探索に旅だつのであったが…。

読んでいて、作者自身があとがきで触発されたと書いている作品、ブライアン・オールディスの『地球の長い午後』と、やはりイメージが重なりました。もっとも、むかーし読んだ当時、『地球の長い午後』は、これでもかの奇想天外なイメージが延々と続くだけで、オチもない、ひどく退屈な作品に思えた記憶があります。
この、『宝石泥棒』も、作者が想像力の限りをぶち込んだらしい、豪華絢爛なイメージの冒険譚でした。それでもやはり、20年が過ぎてしまった今では、そうしたイメージの陳腐化は避けられないものがあります。ラストの「神として世界を管理している、人類より高次の何者かがいて、主人公が彼らに挑戦する」というオチは、それこそ80年代当時でも、かなりありがちだったと思う。このテーマは、光瀬龍から、新井素子まで、一通り踏襲されてきたし、この作者の他作品でもよくみられたと思います。

印象に残ったのは、地平線の果てに血のような黎明が現れる、この世のすべての終末のような光景でしょうか。こうした壮大なイメージは、やはり、この頃のSFならではのことかもしれません。
『SとMの世界』1巻 さいとうちほ/ビーパパス  あすかComics

すごいタイトルですが…。さいとうちほ+ビーパパスという、あの『少女革命ウテナ』のコンビ作品と言うことで、読んでみました。確かにあのケレン味たっぷりな世界。しかも、ウテナのマンガ版は、ちゃお誌連載のため健全だったのに対して、これはそういう歯止めなし(笑)。高校生の主人公、しょっちゅう貞操の危機に遭ってます。やっぱり、こういうアニメになるんでしょうか。

さて、かつて世界に存在した最強の魔道書「SとMの書」。が、その書はその後裁断され、その紙粘土から、2体の人形が作られた。「S」と呼ばれる少女の人形と、「M」と呼ばれる少年の人形は、選ばれた者にその万能の力を与えるという。
主人公、舞姫世界(名前)は修学旅行中に、列車事故に遭い、時空の彼方に跳ばされる。たどり着いた先は、17世紀、ルイ14世治世のフランス。いっしょに跳んで来たらしい少年ソビュールは、人形「S」を携え、世界を「花嫁」と呼ぶ。一方、マキャヴァリオと名乗る怪しげな男が現れて…。

何も言いません。どこまでかっ飛ばせるか、楽しみにしています。今のところ、ウテナほどのパワーは感じられないかも。
『風の杜夜話』2巻 市川ジュン  あおば文庫

古都鎌倉の「杜」に伝わる、不思議な出来事を描くファンタジー第2巻。
お約束ながら、主人公と高王さんのじれったいラブストーリーになってまいりました。なにしろ、お互いが想いを伝える前に、御苦労な方々が、時を越えて彼らに干渉してくるもので、前途多難です。
当分はこのパターンで楽しめそう。
Novels
『悪霊列伝』 永井路子  角川文庫

永井路子さんの歴史小説は1時期よく読んだものでした。ただ、彼女の小説は主人公の1女性の目を通してその時代を描いたものが多く、そのためとっつきやすくはあるものの、どうしても歴史を描くスケールが小さくなってしまう傾向があったと思います。

さて、久々に読んでみたこれはこれは、一転して、日本史に名だたる怨霊11人について、その生没年、怨霊となるに至った事件、家系、時代背景などを詳しく描いた、文字通りの悪霊列伝です。いつもの小説とは少し趣が違って、どの章も作者の調べた事実からなり、それが情緒に流されることなく、政治的な力関係を軸に簡潔にまとめられておりました。

特に、かの崇徳上皇についての章。保元の乱に破れて讃岐に流され、かの地で恨みを呑んで没した上皇。彼がなぜ、日本国の大魔王と呼ばれ、大天狗として恐れられているのか?伊勢に詣でるこの機会に詳しく知りたかったので、大変参考になりました。

全編を通して「悪霊」なるものについて、説得力のある考察がされており、「怨霊は生きている人間が必要とするからこそ存在する」というテーマが、繰り返し展開されているところなど、なかなか興味深かったです。
『本当にあった事件シリーズ』2巻 浪花 愛  竹書房

先日、第1巻が出まして、続きを楽しみにしておりました。作者一家のオタクライフエッセイ。

浪花愛さんは、ここ最近、コミケで同人誌(主にエッセイと『アンジェリーク本』)を買ったり、執筆している某社の猫バカアンソロジーを見つけ次第買ったりしているもので、なぜかマイブームになりつつあります。4匹の猫との暮らしを描いた、猫バカエッセイも、この家の猫はどれもキャラが立っていて大好きなのでした。

さて、前巻で未収録だったエピソード、だいだいこの巻で収録されていて、ほっとしました。読みたかった塩沢兼人さんの告別式の話も、ようやく読めたし。
続巻の未収録分(結婚式で人気声優の某氏に司会をしてもらった話とか)も早く読みたいです。


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