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Novels
『鵺姫異聞』岩本隆雄  ソノラマ文庫

うーん、ずいぶん前に読んだのですが、1回だけ読んだところでは、感想が言えるほど、内容が分からなかったのが正直なところでした。なにしろ、下敷きになっていた『鵺姫真話』の内容をすっかり忘れていたもので。そこで、『〜真話』をようやく再読し、『〜異聞』をまた再読、などとやっていた頃には、すっかり感想を書く時期を逸していたのでした。

そういえば『〜真話』を読んだときに、鵺姫様の星の記憶は、また別の話としてありそうだとは、思ってはいたのでした。まさか、こんな壮大なスケールの話になろうとは。

さて、感想。『星虫』メンバー、大物になりすぎです。特に秋緒さん、プロジェクトの主催者で偉い人なのは当然だけど、それと「女神のような美貌」はまた別だと思います。プロジェクトのスタッフが若い人中心なのは当然かもしれないですが、さすがに、今現役で、地に足の付いた「プロジェクトX」な人たちが、「夢」を現実に着地させるための舵をとってくれないと、成功は難しいのではないでしょうか。上層部が、ほとんど20代で、サポートはじじいというのは、あんまりだと思うのですけど。

いえ、そのあたりは別に物語の本題ではないので、どうでもいいのかもしれませんが、こういった具体的な部分のリアリティが弱いと、「夢」そのものが、どんどん薄っぺらくなっていく。若造けっこう、青臭い夢けっこう。しかし、現実を一切書かない訳にいかないのなら、描いた部分だけでもそれなりの説得力が欲しいと思ってしまいました。

内容は、よく考えてあったと思います。分かりにくいのは確かにありましたが、発行日をここまで延ばしただけあって、ぎりぎりまで苦労した様子が伺えました。私にとっての今回のネックは、話がさすがにでかすぎて危機が実感できなかったこと。それと今回の主人公かなあ。あまりに単純明快な男の子(笑)であったために、彼に、それこそみじんも、共感できなかったもので。

うーん、岩本さんの作風は今や確立していますので、今後いかに、バリエーションを増やしていくか。期待しています。変にブンガクはしなくていい。今の路線でかまわないので、前向きにSFして下さいませ。今度は、本当に短編がいいかも。

『The World 〜ルビー・ブラック』2巻 獣木野生 徳間 CharaComics

ルビー・ブラックは、幸運をもたらす黒猫(act by ジョゼ)。前世で人間に捨てられた心の傷がいやされないために、精霊としての霊格が下がってしまった。「黒き牙のある者の王」ブラック・ワイルド(act by サロニー)は、彼女の傷をいやすべく、理想的な人間の「夫」を探すのだが…。

と、いう「ルビー・ブラック」の話と、人間に恋して人間になってしまった花の話「花の贈りもの」の2編が収録されています。このシリーズ、1巻の時点では正直言って引き気味でした。あまりにエコロジーというテーマが前面に出過ぎている気がしたもので。それでも、この巻はそのあたりが大分こなれてきたようで、現代のおとぎ話として、感動してしまいました。「花の贈りもの」のラストの手紙には泣けた。

しかし、白ネコになって老婦人の膝でくつろぐホワイト・ワイルド(act by ジェームス)は目の保養です。悪い奴が来ると、撃退してくれるし。女の足に跪いて口づけるし、カードの相手までしてくれると。こういうネコが1匹ほしい(笑)
Novels
『砂の覇王』9巻 須賀しのぶ コバルト文庫

「流血女神伝」最新刊。『砂の覇王』完結編です。確かに、終わりました。終わりましたが、そこに至るまでが、あまりに詰め込みすぎで、納得いきませんでした。

覇王たるべく、一世一代の賭に出たバルアン。それも、シャイハンの盤石の権力体制をひっくり返したにしては、あまりにあっけなかった。そしてカリエは、バルアンの野望に対しても、最後までどっちつかずに迷っていただけで、ほとんど何も荷担しなかったし。これまでもそうだったかもしれないけど、この最終巻ではいよいよ、カリエは狂言回しにすぎなくなってしまった気がしました。各国の状況を読者に説明するためだけに、各国を放浪する(さらわれる)お姫様。
何も持たなくても、元気のいい跳ねっ返りのカリエが好きだったんだけどなあ。

最後のカリエの選択も、あまりに唐突であったような。ジィキもイウナも、大した必然性もなく亡くなってしまった気がするし、カリエが正妃といっても、ナイヤをはじめ、バルアンの後宮に山ほど女はいるし。ましてや、前巻でのサルとの一件は、何の意味が?というくらいあっさりと無視されてしまいました。

バルアンは確かに魅力的だが、カリエから見てどう魅力的なのか、さっぱり伝わってこないし、バルアンの方も、なぜそこまでカリエを特別扱いするのか?は未だに謎のままです。バルアンはもともと、その場その場で女に興味を持っても、対等になれるタイプじゃなさそうだしねえ。少女小説の主人公の相手役として、これほど不似合いな男も、そういないと思うんですけど。

主人公の想い人のお約束としては、再会したときに、「綺麗になった」くらいのことは言うたれよ!と、バルアンのために、突っ込んでしまいました。いや、普段ならそれくらいは、ぬけぬけと言いそうな奴なんですけど。

そ他
『田口ランディ その「盗作=万引き」の研究』 大月隆寛編 鹿砦社

つい買ってしまいました。タイトルからして、いろいろ障りのある本ですが、以前から、この本の発行のきっかけとなった2ちゃんねるのスレッドを追いかけてきた身としましては、ついにこういう本が出たことに、快哉を叫びたい気分なのでした。

田口ランディ。幻冬舎より、『コンセント』『アンテナ』『モザイク』の3部作が出版され、ベストセラーとなるも、2002年春にそのうちの2作にて、盗作が発覚し、絶版に。しかしながら、その盗作報道は、一般にはほとんどスルーされる程度の扱いでしかなく、社会的には何ら責任をとることなくここまで来ている作家。その彼女の他の作品に目をやると、発覚した部分の数倍に及ぶ、盗作疑惑が…?というのがこの本の主旨であります。

それでなくても、このところの出版関係者のモラルには、激しく疑念を抱かざるを得なくなった今日この頃。どんなにクズな本でも、売れればいい?という開き直りが露骨に目に付くこの頃。この本は、出版業界が、いかに腐れているのかのいいサンプルを提供してくれます。もちろん、この本に書かれたことは、一つの見方であり、立場によってはまた別の見方もあることと思いますが、事実を列挙しただけでも、この状況を野放しにはしておけないという、義憤にかられる内容になっております。ここまで発行にこぎ着けた大月さん、執筆者の皆様、本当にお疲れさまでした。

いろいろ障りはあるだろうけど、この件はもっと、あちこちで話題になってほしいなあ。
Novels図書
『図書室の海』 恩田陸 新潮社

これは短編集。ファンタジー〜SF〜ミステリーの間隙を自在に浮遊しつつ、恩田陸世界が垣間見せる情景が、10編収録されています。この表題作の「図書室の海」は『六番目の小夜子』の書き下ろしの番外編。また、「睡蓮」という作品には、『麦の海に沈む果実』の理瀬が登場しているという、ファンにはうれしい一冊です。

初出は、最も古いもので1995年。主に、1998〜2001年作品。心なしか、この時期の作風の変化がくっきり出ているようで、興味深いです。作風は変化したのか、はたまた懐が深くなったのか。感じるのは、近作になるほどに、人間の悪意と毒とが、巧みに作品に取り入れられていること。しかも作者が明らかにそれを、楽しんで描いていること。その悪意も、なにやら生活感や切実感のない、趣味的とでもいうべき代物で、共感できないだけに妙に苦いのでした。「茶色の小壜」はホラーとして楽しめたけど、「国境の南」はしゃれにならなくて、いやーん。

自分の好きな路線を開拓してきた作家に対して、昔を懐かしんでみても仕方がないことなのでしょうが、それでも、『光の帝国』のような、まっさらな輝きのある作品は、もう描けないのかと、ふと思ってしまうのでした。

「図書室の海」。読む本読む本、図書カードに必ず同じ名前があるというエピソードに『空の色に似ている』(内田善美)を思い出しました。シチュエーションはだいぶ違うけどね。
『NANA』1〜2巻 矢沢あい りぼんComics

あちこちで絶賛されている、少女マンガ作品。特に「若い世代の恋愛のバイブル」といった紹介に引かれて、トライしてみた1,2巻。
矢沢あいさんは、『ご近所物語』がアニメ化された当時に読んで、割と好きでした。感想は、全巻読んでからと思っていたのですが、困った。1,2巻の続きを読む気が起きない(^^;。

さて、不倫に傷ついた経験を乗り越え、新しい彼氏の上京について東京に来た少女「奈々」と、メジャーデビューした恋人を追って上京したロッカーの少女「ナナ」。2人のNANAは、ひょんな事から、マンションの部屋を分け合って共同生活することになった。2人の東京での暮らしがいよいよスタートする。

と、いうのが2巻までなのですが、これまでの所、2人の恋愛遍歴がかなりイタい。特に奈々の方は、恋愛以外に打ち込むものが何も無いタイプで、平凡な女の子としてリアルではあるけど、あまり好きになれない気がするのでした。

と、いうわけで、あまーりリアルなだけで夢のない、痛い恋愛模様は見たくないのですが、この先、いかがでしょう。主人公の胸のすくような成長とか、2人の友情とか絆とか、見所はありますでしょうか?>最新刊まで読んだ方。
Novels
『イタリア遺聞』 塩野七生 新潮文庫

おそらく、ある時期の少女漫画読みが、かなりの確率で読んでいたと思われる、塩野七生のイタリアもの。当時これを読むようになるきっかけとして、主に2つのルートがありました。その1つが、森川久美の『ヴァレンチーノ』シリーズから、ルネッサンスのヴェネチアに入るもの。そして、もう1つが、青池保子の『エルアルコン〜鷹』他から、チェーザレ・ボルジアにハマるパターン。

ご多分にもれず私も、この両方から塩野さんに呼ばれて、かなり昔に一通り読んだものでした。作品としては綿密な取材に基づいた骨太な歴史小説が多かったのですが、この『イタリア遺聞』は、イタリアをテーマにした小ネタを集めたエッセイ短編集です。今回、この中の、「奴隷から皇后になった女」という章が唐突に読みたくなったのは、近年楽しみにしている、須賀しのぶの『砂の覇王』つながりでした。

『砂の覇王』では主人公が、オスマン・トルコを下敷きにした、エティカヤという国で、ハレムの女奴隷をやっています。実際のトルコの後宮はもっとシビアなようですが、この対比はなかなか興味深いです。

久々に読むと、他にも、「オデュッセイア異聞」など、相変わらずおもしろかった。関係ないが、本家「カモカのおっちゃん」(田辺聖子さんご主人)はお亡くなりになったのでした。ご冥福をお祈りいたします。
Novels
『木曜組曲』 恩田陸 徳間文庫

大御所作家、重松時子が服毒死。彼女の死そのものは、自殺ということで決着したものの、その死に際に居合わせた女たちは、それぞれに彼女の死について、釈然としない何かを抱えていた。

当時居合わせたのは、5人の、いずれも時子に関わりの深い女たち。年齢も境遇もさまざまなながら、いずれもモノを書くことの周辺にいた彼女たちは、以来毎年、時子の命日に近い週の木曜日を挟んで3日間、時子の家に集まって過ごすのを、慣例にしていた。
時子の死からはや4年。今年の集まりについに、それぞれが封印してきた疑惑が解き放たれる。パンドラの箱から、解放された真実とは?

おもしろかったです。舞台はずっと家の中。内容は、ほとんど女同士の会話。で、ありながら、最初から最後まで、息詰まるような緊迫感が漂っていて、ほとんど一気に読んでしまいました。恩田陸としては、最も純粋にミステリーしていたのではないだろうか。納得できるオチもあったし。

これについて、あちこちで「モノカキの女はコワイ」といった感想を見かけましたが、確かにコワイ。女たちの情け容赦のない心理戦は、壮絶なものがありました。しかしながら、おのおの背筋をピンと伸ばして生きている彼女たちの姿は、悪意さえも爽快で、見応えがありました。こういうのも好きだわ>恩田さん。
『ヒカルの碁』19巻 ほったゆみ/小畑健 少年JUMPコミックス

少年たちそれぞれが、囲碁の世界で頭角を現す熱血編(?)の第2部がスタート。すっかり、王道少年マンガしています。ただ、ここだけの話、第2部になってからの話は、単調でややもの足りないです。ヒカルが対局して、勝ったり負けたりの繰り返しは、そろそろ飽きた。

今回、碁会所で、ヒカルとアキラが屈託なくじゃれあっていたのが新鮮で、これは、第2部ならの展開だと思って、にんまりしていたのも束の間、この2人決裂してしまいました。残念。アキラがラスボスという設定は、第1部でやったから、もういいのに。それよりヒカルは、アキラとの交流の中から、いろいろ吸収して強くなってほしいと思っておりました。

また、御器曽プロとの対局がタイムリーでした。ちょうどアニメで、あのあたりの因縁話を見たばかりだったもので。御器曽7段は、確かにあれだけコケにされても仕方ないだけのことをやってはおりましたが、それにしても、あの態度はさすがにどうかと思うぞ>ヒカル。

さて、当面ヒカルたちの目標は、韓国、中国とのJr団体戦「北斗杯」出場。これはなかなか、おもしろそうです。洪秀英との再戦など、楽しみだし。せっかくの団体戦なので、団体戦ならではの人間ドラマを期待します。


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