2002年5月度 |
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昨年の今頃、ハヤカワのこのレーベルで『死の泉』を読んだのを思い出すこの頃。ああいう、耽美で、グロテスクで、絢爛たる物語を読みたいと思っていたところでした。出ましたねー、同じハヤカワから。割と目の付け所がいいのでないかしらん>ハヤカワ。 この作品は、日本ファンタジーノベル大賞の最終選考に残りながら、受賞は逃したという、この著者のデビュー作だそうです。確かに、ファンタジー賞の枠に収まりきれなかったのは無理もない。ファンタジーというジャンルからイメージされるような、明るさや健全さよりは、退廃と背徳の気配が漂う物語。そして、全編を通してメインテーマとなっているのは、妖しく官能的なまでに描写し尽くされた「音楽」でした。この作者は、音楽への造詣が深いと聞いてはおりましたが、納得いたしました。 舞台となるのは、19世紀末のヨーロッパ。このあたりの歴史には疎いのですが、当時の国際情勢は、怒濤のような速さで渦を巻いていた、そんな時代であったらしい。この物語の主人公の一人であるベルンシュタイン公は、新興王国プロイセンに従属する公国の、若き大公であり、政治的にも重要な地位にあった。そして、この複雑な情勢を乗り切るために、諜報活動にも精通していた。 そんな彼がある日、オーストリア帝国の首都ウィーンで、「魔笛」と呼ばれる新種の麻薬の噂を耳にする。「魔笛」は特に聴覚刺激を鋭敏にし、音楽による多幸感をもたらすという効果が特徴であった。そして、その特徴は、ベルンシュタインが昔、開発に携わった薬物、「イズラフェル」に酷似していたのだった。 そして、もう一人、フランツという名の、ウィーンフィルの若き指揮者が登場します。彼は当時、ベルンシュタイン公に、音楽活動の後援をほのめかされながらも、確かな返事がもらえないでいた。その頃、ロンドンの貴族と名乗る得体の知れない青年モーリィがフランツに接触してくる。モーリィの怪しい申し出を受けたフランツは、ロンドンに赴き、当地のクラブで、音楽的にあらゆる面で充足した環境を提供されて、DJにいそしむことになる。彼はそこで、自分のもてるすべてを賭けて自分の「理想の音楽」を追求しようとしていた。 という、2つの主題が、複雑に絡み合って、ラストで一つのおぞましい全貌を明らかにしていきます。この、壮大な楽曲に酔わされたかのような読後感は、なかなかでした。文句なしの力作。一息ついたらぜひ、『カント・アンジェリコ』も読んでみたいです。 |
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本当に今更ながら、ついハマってしまいました。1990より3年にわたって、少年ジャンプで連載されていた戦国歴史絵巻の集英社文庫版です。きっかけは、この春米沢に旅行した際に、当地の博物館で、上杉景勝,直江兼続関連の展示品を見たことでしょうか。景勝と兼続がやりとりした書状とか、兼続が使った「愛」の字の前立て(兜の前につけるやつ)とかを、大笑いしながら見てきましたが、この作品に登場する兼続には萌えてしまいました。途中、話が間延びしたものの、彼と慶次との友情(あくまでも)が、ラストをビシッと締めてくれました。 さて、前田慶次郎利益(慶次)は加賀の前田利家の甥でありながら、家督を奪われ、不遇の境遇にあった。折しも時代は、華麗なる安土桃山時代。信長亡き後、太閤秀吉の支配体制が確立するに従って、秩序と統制が全国に行き渡りつつあった。そんな時代の中を、何も縛られることなく、最後のいくさ人として、そして天下無敵の傾奇者として生き抜いた慶次の、痛快な一代記です。 傾奇者とは、奇抜な格好や行動を好み、派手に目立つ事に命を賭けるような輩。そして、何もとらわれることなく、ただ己の心のみに従って生きる者。当時、支配側の権力は絶大であり、反骨を貫くことはまさに命がけであった。だからこそ、慶次をはじめ、登場するいくさ人たちが、命をかけて貫く生き方の美学には、強烈に惹かれます。 ジャンプ連載だけに、かなり、勢いに任せた無理な展開もあります。何より、男も女も、登場する人物のほとんどから熱烈に惚れられる慶次のキャラは、さすがに、できすぎな気がしないでもない。しかしそこには、些末なリアリティなんぞ全く不要なほどの熱さと勢い、そして、男の色気が充ち満ちております。 ただ、1つ不満は、利沙が、あまり魅力的に思えなかったことかなあ。どう見ても、おまつ様の方がヒロインに見えるのは仕方がないのだろうか。 ついでに、今度、金沢に旅行する予定なので、この機会に前田家関連の遺構を回ってみましょう。 |
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今市子は、ミステリーコミックの名手とか。確かに今さんの本領発揮といった感じのミステリアスなファンタジーでした。よく考えないとオチの分からないところとか、登場する魔物がキュートなところとか、『百鬼夜行抄』を彷彿させます。 舞台は架空の中華風世界。干魃に見舞われた村々は、水乞いのために、翠湖の岸辺に娘を送る。その願いを河の神「河伯」に聞きとげてもらうために。水乞いのために岸辺に赴いた、スリジャとエン。彼らの他にも岸辺には、多くの男女が、故郷から多くを背負ってたどり着くのだった。 この世界には、人間と、人間より生命力が強く、時に魔力を持つ「鬼人」と呼ばれる種族が共存しているのですが、その異種族の描かれ方がいいです。お互いに、そういうものだと割り切って暮らしていて、干渉しない。他人が、もしかすると自分自身までもが、時に人間なのか鬼人なのか曖昧になる鷹揚さ。今さんらしいです。 |
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カーラ教授の弥次喜多宇宙旅行記。第3巻。おもしろくなってきました。1,2巻は、どこか無理してボケていたかのような違和感があったのですが、イザナギ・イザナミのあたりは、以前の読み切りの切れ味が戻ってきたような気がしました。ほのぼのブレーメンIIに幸いあれ。 この巻はあと、虎の人がかっこよかったです。しかしライオンの人と、ずいぶんと、書き込み方が違うこと。 |
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かなり前に読んだのに、感想書くのを忘れていました。この作者は以前、ヤングジャンプで連載していた、『マボちゃんのDay by Day』という、ほのぼのホームドラマがあって、気に入っておりました。今回、渋そうな装丁のこの1巻を見かけ、手に取ってみました。あいかわらずのしみじみホームドラマ。たまにはいいなあ。思わずほっとします。 主人公は、北国の某H市を走る市電、つまり路面電車の運転手。インパクトのある弁当を作ってくれる新妻と二人暮らし。そんな彼の出会う、ほのぼのストーリーでした。地味ですが、やっぱり好きです、こういう話。 |
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ついに、読みました。このためにマンガ喫茶に2日通いました。浦沢直樹さんは、これまでに、別の方の原作であった『PINEAPPLE ARMY』や『MASTER KEATON』を読んで、惚れ込んでおりました。この『MONSTER』はアイディアも含めて、純粋に浦沢さんの作品と言うことで、連載開始時から注目しておりました。これが、ここまで長くなろうとは。 さて、途中経過はチラチラ雑誌で追っかけていたものの、この長く複雑な物語を追い切れるはずもなく、完結したら読もうと思って楽しみにしていた大河連載。ついに完結。ついに一気読みいたしました。 ストーリーは今更言うこともないと思います。日本人で天才外科医であった、天馬賢三の勤務する病院に、運び込まれた少年、ヨハン。テンマの手術によって一命をとりとめた彼は、実はその身の内に、巨大な「怪物」を潜ませた、得体の知れない存在であった。成長したヨハンは、次第にその正体を明らかにしていく。一方、ヨハンによって、殺人の容疑をかけられたテンマは、逃亡生活の傍ら、次第にヨハンを追いつめていくが…。 以上のメインのストーリーと平行して、テンマをはじめ、ヨハンに関り、翻弄される人々の人生のドラマが、緻密に複層的に、展開されていきます。このあたりの描写は、まさに浦沢さんの本領発揮というべきか。もう、ボロボロ泣けるようなエピソードがてんこ盛り。これだけでも、傑作というにふさわしい。水準は軽く超えていると思いました。 ただ、本当に惜しいかな、最後までのめり込みきれなかったのは、物足りなかったのは、ヨハンの存在感でした。彼に翻弄される人々の人生の重さに引き替え、ヨハンの存在感は、あまりに希薄に思えたこと。作者は、彼をどう描きたかったのだろう? テンマの、全く翳りのない正の存在としての存在感は、あれで良かったと思う。ただ、この物語の構造として、テンマに対峙するヨハン自身が、この物語のメインテーマであるべきであった。彼には、テンマやニナや、他のすべての人々のヒューマンなドラマと比肩しうる程の、強烈な負の存在感が与えられるべきであったと思うのです。そして、その負の存在の源は、人間が根元的に備えている、悪であり、弱さであり、哀しみであるべきであった。しかし、「MONSTER」の意味は物語の途中で変わってしまったような気がします。怪物は、ヨハン自身ではなく、ヨハンを作り出してしまった、国家や体制やイデオロギーといった巨大なものであるというすり替えが行われてしまったかのようで。「罪を憎んで人を憎まず」という、その主張は、きれいで、分かりやすい。が、そのために、この物語は、人間存在の深みまで到達することができなかった。そんな気がします。 おそらく、浦沢さんは、作家として根っからのヒューマニストなのだろう。彼の描く人間性への信頼は、今時、本当に貴重なものだと思います。ただ、この作品に限っては、もう一歩の踏み込みが欲しかった。あのリアルな筆致で、怪物の哀しみと人の美しさを、描き抜いて欲しかったです。 以上、贅沢な願いでした。 |
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某巨大掲示板のミステリー板に、「読後壁に投げつけた本(^^;」というスレッドがあるのですが。この本は実はそこで、しょーもなさでは1,2を争うといわれる、影の迷作であります。文庫化もされておりましたが、さすがに自腹を切って読みたくはないと思っていたところ、図書館で発見。どれくらいしょーもないのかと、興味しんしんで借りて参りました。さあ、思いっきり投げるぞー、と、意気込んで読みましたところ…。 思ったよりまともでした(^^;。いえ、自腹を切って、真面目に期待して読んだら、さすがに投げたくなったとは思いますが。どこかで見たような設定の、15の短編ミステリーが収録されており、まともなものは、謎解きとしてもまあまあでした。ただ、徹底しておバカな方が、ギャグとして楽しめてよかったです。しかし、表題作。いいのか?『占星術殺人事件』のもろ、ネタバレしてますけど。 ただ、作者がギャグのつもりらしい駄洒落の下品さは…、さぶい。作者は30代のはずなのに、あまりにオヤジだ。更に、後書きで、ごくまじめに自作を解説している文章が…。極北。 |
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『指輪物語』。第二部、三部続けて読了。ゴールデンウィークで時間がとれたとはいえ、我ながら予想外の速度で読み切ってしまいました。中つ国から、ようやく帰還いたしました。 おもしろかったです。今となってはさすがに古びてしまった感のある部分も、あるにはありましたが、とにかく先が気になってどんどん読めてしまいました。第一部では、「何のためについてきたんだ?こいつ」という状態であった登場人物までも、一人一人の仲間が、余すところなく活躍し、戦い抜いた結果として、勝ち取ったハッピーエンド。ずっしりきました。 仲間たちは、旅の途中ではぐれ、それぞれの場所に流れ、そこで、それぞれの使命を果たします。中つ国という世界を俯瞰するかのように、同時期に多くの場所で発生するエピソード縒り合わせながら進行していく物語。しかし、そのメインとなったのはやはり、誰が見ても困難、おそらく不可能である使命に立ち向かい、それをやりとげた、フロドとサムの物語でした。第三部のタイトルにある「王」は、普通に考えればアラゴルンを指すのでしょうが、敢えてフロドに「王」の称号を与えたくなりました。 ただ、個人的にはやや、エピローグが長すぎた気もします。別にあそこであの人が出てくる必然性はないと思うのですが…。 最後に、この映画を観てファンになった同人な方々に、土下座して頼みたい。何に萌えるかは人それぞれなのは分かっておりますが、できれば、サムは必要以上に美形に描かないで下さい(;_;) |
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こちらも楽しみにしていた、コミック版「悪霊シリーズ」。「謎の洋館」編後半です。読みながら、台詞の多さを実感。そういえば、原作も説明的な台詞は多かったっけ。 しかし、謎の館の構造等、視覚的に自然に表現されていることもあり、見やすかったです。そのあたり、さぞかし苦心しただろうなあ。 さて次の、北陸の旅館編も楽しみです。やはり前後編に分かれるでしょうけど、めったにない、あの人の活躍するシーンが見てみたい。 |
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「ありまとゆきのん」編の最終章突入。きたきたキタぞう。ブラック有馬が全開だー!!! こう来ることは最初から予告されていたので、今更、何も言いませんが。のたうち回る有馬の姿も、こわいもの見たさですが。せめても、あまり引き延ばさないで、すみやかにハッピーエンドに到達できますことを。しんどくなりそうな展開の序盤にて、お祈りしておきます。 |
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