2001年11月度
   
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Novels
『砂の覇王』5巻 須賀しのぶ コバルト文庫

「流血女神伝」シリーズ最新刊。作者が『キル・ゾーン』完結を優先させたために、こちらのシリーズは、10ヶ月ぶりとなりました。待ちくたびれたよ。うれしーです。

さて、前巻でいきなり、バルアン王子の正妃になってしまったカリエ。マジか?と思ったが、一応マジであったようです>バルアン王子。それに対し、カリエは意外や、前向きに対処しております。以下ネタバレ。

ここにきて、ようやく気づく。バルアンは思ったより重要なキャラだったようです。これまで彼のハーレムは、チャンスがあったら脱出すべきところであり、単なる通過点と思っておりましたが、ここにきて、彼女はいささか唐突ながら、バルアンを『運命共同体』と定め、腹をくくったらしい。バルアンも、カリエの生い立ちや、利用価値以上に、彼女が気に入ったから側においている感じになってまいりました。

それでも、あきらかにこの2人、恋愛感情ではないのが、なかなかいい。主従関係とも少し違う。どちらかというと上司と部下のごとく、基本的にビジネスライクな気がします。セクハラもありですが。色ぼけしたボスは見たくないものだしな。

読んでいて、須賀さんの、先日の活字倶楽部でのインタビューを思い出しました。カリエのように、何も考えず流されて行きながらも、したたかに生き残るタイプの主人公を描きたかったということでした。そして彼女と対比される周囲の女性達は、明快な野心によって、何かを切り捨てることで、今の地位を手に入れてきた、と。
確かに、ビアンあたりに比べると、カリエはあまりに節操なく惰弱です(笑)。しかし、時に柔軟に運命に従いつつ、その先々で力を蓄えていくたくましさがあって、頼もしいです。

しかし、哀れよの、エド。うすうすそうだろうとは思っていたら、ついに後書きで、作者に脇役と太鼓判を押されてしまいました。強く生きるんだよ。いつか日の目を見る日まで。

『HEAVEN?』3巻 佐々木倫子 ビッグコミックス

天国にいちばん近いレストラン奮戦記、3巻目。ミトン付きも売っておりましたが、普通のを買いました。オマケに300円は高いと思う…。

この巻では、オーナーは(比較的)周囲に迷惑をかけていなかったようで、一応内容は、レストランを舞台にした、いかにもありそうギョーカイネタでした。が、やっぱりこの人の話は、おかしい…。
どこがどうとも言えないのに、シチュエーションと的確な突っ込みについ笑わされてしまう。この人の持ち芸はさすがです。
『風光る』10巻 渡辺多恵子 フラワーComics

新撰組青春グラフティ10巻目。いよいよ、伊藤甲子太郎が登場。幕末もいよいよ大詰めになってまいりました。これから、時代は怒濤のように、動乱へとなだれ込んでいく。殺伐とした世界へのとば口のはず、なのですが。いや、だからこそか。
 …なぜ、ここまでギャグになる(^^;)

はい、鬼副長と、件の大物入隊者との、ひたすら低レベルな争いには笑ってしまいました。たまには、こういうのもいいなあ。

余談ですが、作者が沖田総司にハマるきっかけとなった、劇団キャラメルボックスの芝居のビデオがお借りできて、今手元にあります。すみません、なかなか見られなくて。時間ができ次第、じっくり見せていただきますので、もう少々お待ち下さい>鳥様。
Novels
図書
『大地の子エイラ −始原への旅立ち第一部』
           ジーン・アウル 評論社文庫

この「始原への旅立ち」シリーズは、確か3年前に、既刊本を第4部まで一気読みいたしました。これはその第1部ですが、先日ブックオフで、上中巻を見つけてたので、つい再読したものです。下巻も読みたくなったので、図書館から借り出してしまった。

このシリーズ、1〜4部までが、それぞれ上中下巻から成ります。なので3年前は、一度に2部ずつ借りて、6冊ずつ一気読みしたものでした。おもしろかった。そして、その当時、作者が続きを執筆中ということだったので、そろそろ出ないかと期待して待っているところなのですが。いつ出るかなあ。

ストーリーは、BC3万年という、遙かな時代。クロマニヨン人とネアンデルタール人という、2つの人種が暮らしていた太古のヨーロッパが舞台です。主人公の少女エイラは、クロマニヨン人でありながら、両親を地震で亡くし、瀕死でさまよっているところを、ネアンデルタール人たちに拾われて育つ。ネアンデルタール人の「氏族」は、彼らなりの文化と価値観に従って生きる人々であり、その中で、異人種のエイラは常にトラブルの種となってしまう。氏族の人々との暮らしの中で、彼女が体験する葛藤と衝突。それらを、持ち前の強さで、乗り越えて成長していくエイラ。そして、彼女と、彼女を引き取った大呪術士の一家とに通い合う、混じりけなしの愛情。久々に読んでも、この第一部が、最も感動的でありました。

児童文学のようでもありますが、意外と性描写があからさまなので、やっぱり大人向きなのだろうか。特筆すべきは、やはり、あの時代のシンプルな生活描写の細やかさです。植物を採集し、動物を狩り、自然に感謝を捧げながら生きる人々の生活は、本当に、心洗われるすがすがしさでした。早く続き出ないかなあ。
Novels
『氷菓』 米澤穂信 角川スニーカー文庫

スニーカー文庫のミステリー倶楽部という新レーベルの1冊です。これは、第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞受賞作(長い)だそうです。作者は1978年生まれ。卒業して数年しか経っていない人の描く高校生活はさりげない実在感があって、なかなかいい感じでした。

主人公ホータローは自称省エネ男。つまり、何事にも「必要ないことにはエネルギーを使わない」というポリシーに従う、単なるナマケモノである。なりゆきで古典部に入部したホータローが、その部活動中になぜか遭遇する、日常の謎めいた事件。彼はその度に、ついポリシーを逸脱して、それらの謎に取り組むはめになるのだった。

といった、いわゆる日常ミステリーですが、うーん。あまりにも個々の「事件」の謎がささやか過ぎる。なので推理も、それくらい誰が考えても分かるのでは?と思えてしまいました。ネタバレで謎と推理の一例を書き出しますと。

謎:女子生徒が外から鍵のかかった教室の中にいた。彼女は鍵の開いている時に
  入室し、自分で鍵は掛けていない。誰が鍵をかけたのか?
答:用務員さんが、教室に誰もいないと思って、マスターキーで鍵を掛けた

謎:古典部文集のバックナンバーを探して、壁新聞部の部室に来たが、部員に
  部室の捜索を拒否された
答:壁新聞部員は、バックナンバーといっしょに隠していたタバコを、捜索され
  たくなかった。

うーん。ネタの見せ方はとてもうまかったんだけど、これじゃミステリーとして、あまりにもあんまりだと思う。料理の仕方はいいんだから、もうちょっと、いいネタさえあればねえ…。
『犬夜叉』23巻 高橋留美子 少年サンデーComics

久々に感想が書きたくなりました。何がって、やっぱり殺生丸です。自覚のないままに、りんが彼の「弱み」になってしまっている。プライドの固まりのような奴が、言葉に詰まって憮然としているところは、もろにツボでありました。

ストーリーは、一区切りついてしまった感じですが、この先どうなるのでしょうか。今度奈落に会ったら、ラスボス戦だったりして。

Novels
図書
『チェンジリング −赤の誓約』 妹尾ゆふ子 ハルキ文庫

ケルト神話をモチーフとした、ハイファンタジーとして、評判が良かったので、図書館ゲット。この作者はこれが初めてです。

内容は、ありがちな異世界ファンタジーそのもの、には違いないのですが、主人公がこの世界で直面している葛藤や、異世界に遭遇した際のとまどいが、リアルに丁寧に描かれているので、最後まで納得して読むことができました。続きも読んでみたいですが、どう考えても、これはまだ導入だと思う。この先、本格的な冒険が始まったら、あと10冊くらい続くんじゃなかろうか、コレ。

さて、主人公の美前は、幼い頃から「あの人たち」が見える特別な目を持っていた。「あの人たち」とは、アイルランドの伝承にあるグレムリンやブラウニーや、その他様々な名前で呼ばれる妖精たちのこと。彼らが見えることは、美前に何ら益をもたらすことはなく、彼女は他人と隔絶され、ただ孤立して成長してきたのだった。

親切な知人の縁故で就職した美前を追うようにして、いっそう頻繁に出没するようになったあの人たち。そして、美前の身に危険が迫ったとき、唐突に、彼女の「騎士」と名乗る者が現れる。仕方なく巻き込まれながらも、美前の冒険は始まった。

と、言うわけで、ファンタジー好き、美形好きにはたまらないと思います。しかし、一言いいたい。「チェンジリング(取り替え子)」って「胎果」とどこが違う?
『アンダー』 森脇真末味 ハヤカワ文庫

初出1990年だそうですが、森脇さんがSFを描いていたとは知らなかった。店頭で見かけたときは、書き下ろしかと思いました。しかも、ハードSF。この人は、ロックマンガなんぞを描いていたこともあって、非常にアツい、汗臭さスレスレのイメージがあったのですが、これはなかなか。(森脇さんにしては)クールな乾いた雰囲気と、スピード感のある展開。そして、あっと驚くオチ。読み応えがありました。

読んでいて思い出したのは、まず佐藤史生。次になぜか、獣木野生。いや、長編のキャラが別作品で、正反対の役に出演している『2821コカ・コーラ』のような雰囲気があったもので。更に、花郁悠紀子の『フェネラ』。グロフの存在が、コンラート・ヘイルに重なりました。

サラエ=弘,ドギー=八角,ケイ=仲尾,グロフ=金子と言ったら、某所でウケてしまった。特にケイの、はた迷惑な永遠の少年ぶりが、いかにもそれらしいと思います。
Novels
『アイ・アム』 菅 浩江  祥伝社文庫

祥伝社400円文庫の菅さんのSF。正直、苦悩する人工知能ものは、やや食傷気味だったのですが、読んでみました。うーん、他の400円文庫よりは、よっぽど真面目に書かれておりました。ミキさんの存在に、いかにもありそうなリアリティがあったし、医療現場をちゃんと取材していたのが伺えた。しかし、やはり途中でネタが分かってしまいました。以下ネタバレ。

これ、人工知能ものでも、何でもないじゃん。途中から、主人公が本当は人間だったというオチは許せない、と思っていたら、本当にそうなってしまった(^^;)。そうしてラストで人間の記憶を取り戻した主人公ですが、なんでそのまま、ロボットのふりを続けようとするかな?
ちなみに私、脳だけのサイボーグになっても、本読んで、ゲームやって、思ったことを書き散らすための手足があれば、当分OKですな。間違っても、人さまにご奉仕して生き甲斐にしたいなんぞとは思わないぞ。
Novels
『弥勒』 篠田節子  講談社文庫

『ゴサインタン』で宗教なるものに正面から取り組んで、一歩も引かなかった篠田さん。そしてこれは、さらに深く救済について問いかけ続けた物語です。文庫化されていたので、旅のお供にと読み始めたのですが、読み終えるのにずいぶん時間がかかってしまいました。いやー、分量もだけど、内容がまた、とてつもなくハードでした。おかげで、読み終えた直後には、いろいろな感情が錯綜して、収拾がつかない状態だったし。今でも、どう感想をまとめたものやら、正直、途方にくれております。さて。

主人公の永岡は、美術館の元学芸員であり、今は新聞社で美術関係のイベント等のプロデュースに携わっていた。彼はある日、ヒマラヤの小国「パスキム」で起こった政変について知らされる。彼はかつて、仕事がらみでパスキムを訪れ、その国の文化の奥深さに魅了されたことがあった。文化財と融合し、奇跡のような美に彩られた都市。満ち足りた精神と絢爛たる文化。それらが、革命勢力によって無惨に破壊されているとの情報に、いてもたってもいられなくなった永岡は、よせばいいのに、封鎖された国境を越え、パスキムにたどりつく。彼がそこで、見たものとは?

彼は、革命勢力に捕まって、その壮大な事業に参加させられます。革命勢力の目指したものは、宗教を含めたあらゆる旧体制の破壊であり、その上に、彼らの理想とする社会を作り上げることでした。その理想とは、いわゆる原始共産制の社会。人はすべて平等で貧富の差もなく。人々が自らの食うだけの土地を耕し、本当に必要なものしか持たずに生きる。そんな清らかな一種のユートピアはしかし、実現可能かと思わせた直後に、最悪の形で崩壊していくのでした。

その崩壊のすさまじさに、つい、今のアフガンの現実を連想してしまった。そのカタストロフィの中で、かつて永岡を魅了したパスキム美術も、既存の宗教も、ヒューマニズムも、すべての価値観が解体され、相対化されていく。極限にある者にとって、「救い」はあるのか。どこかで、みつかるのだろうか。

これについて、結末はややあいまいであったような気がしました。これももう少ししたら、ちょっとは頭の整理がつくでしょうか。とりあえず、ユニセフに募金でもしておこうかしら…。
『西洋骨董洋菓子店』3巻 よしながふみ 新書館WINGS文庫

先日ハマった、プロジェクトXケーキ屋編(違う!)、3巻目。あいかわらず、飛ばしております。この巻はしかし、ちょっと全体的にナマナマしかったかも。4人それぞれの過去が、少しずつ明らかになり、時々深刻な顔も垣間見せております。特に、橘さんのは根が深そうだ。

私のツボはやはり、暗い過去を笑い飛ばすタフなオトコ達ですので、あのハイテンションな漫才も続けていってほしいです。しかし、今回、神田君が橘さんに尋ねたこと。「彼がアンティークを始めた理由」については、はぐらかされてしまったけれど、私も是非聞いてみたいです。


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