HOME 戻る
『残酷な神が支配する』完結!
ネタバレ感想


ネタバレ感想です。

最終回で、ジェルミは、この悲劇の発端となった最初の歪みである、サンドラとの関係をようやく直視しました。サンドラへの悪意を自覚し、彼女に犯した自らの罪と向かい合いました。最終回での、地下に眠るサンドラのキスは、許しのようでもあり、また呪いのようでもありました。おそらく、ジェルミにとってもその両方であったのだと思います。はっきり言ってコワかった。

今にして思えば、ジェルミとイアンの彷徨は、前の巻で、アパートの1室で2人が、「遭難」した場面で、クライマックスを迎えていたのかもしれません。そして、遭難していた2人が、揃って生還した朝の、静かな食事風景。この場面で、2人は確実に、1つの壁を越えられたように思いました。

結局何者も、ココロについての特効薬にはなり得ず、ただ、時間のみがその救いであったのかもしれない。イアンとジェルミが待ちわびる、冬の祭典を何度かクリアし、行きつ戻りつしながらも、その先にあるのは、おそらく救いであろうことを予感させるラストでありました。だから、多分、あれでよかったのです。あのラストでしか、なかったのだと思います

さて、ラストまで通読した際に、今更ながら引っかかったのは「生贄」という言葉でした。自分の世界を壊さないために、供物を捧げ続ける人々。崩壊してゆくグレッグの世界に捧げられたジェルミ。

物語の最初の頃の「生贄」という言葉は、生々しく、ひどく残酷に響いたものでしたが、ラスト近くでは、どこか、宗教的な神聖なニュアンスを帯びておりました。今も、子供達は親のいいところも、悪いところも、刻印されながら、世界に供せられ続ける。神は天上から、崩壊しゆく世界を、静かな諦観でもって、見守っているのでしょうか。

実際、育児は、宗教行事に似ていないこともないです。日々の生活の中で、毎日同じ事を黙々と繰り返す。その繰り返しの中で、意識的にも、無意識的にも、様々なものを、子供の皮膚に刻印する。それはまさしく、子供にとっては、呪いでありましょう。

まあ、ここだけの話、親のはしくれとしては、これだけの犠牲を払って子供を育ててやっているので、呪いの1つくらいは黙って引き受けてもらいたいところです。親以外の誰でも、こんなめんどうなことを引き受けられるものなら、やってみろという気もしております。

=>8月の感想に戻る


HOME