2001年4月度
   
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Novels
『叛逆』 須賀しのぶ コバルト文庫

    キル・ゾーンシリーズ最新刊。後書きによると、キル・ゾーンはあと1冊で終わるそうですが、本当でしょうか?ともあれ、クライマックスしてます。続きが楽しみです。

    今回、オブライエン親父が、いい味出してました。このところというか、ずっと以前から出てきた割には、何を考えているのか分からなかった人ではありますが、今回の、キャッスルへの言葉には、ちょっとじんときてしまった。なんだかんだ言っても、彼女をずっと、娘として見守ってきたんだろうなあ、この人。

    前巻ラストで生死不明であったあの方。あっさり亡くなられております。このあっさりさも、須賀さんらしいというか。それとも、何か伏線があるのか(多分ないと思うけど)。

    しかし、須賀さんも、強くたくましく生きてきながら、自分の中のオンナに苦悩するヒロインをちゃんと描こうとしていて、好感が持てます。キャッスルが同性の目から見て魅力的かどうかは、意見が分かれるかもしれませんが、私は、あれで良いと思う。それも、彼女の迷いや、イヤな部分を、ことある毎にスパッと指摘してくれるエイゼンがいればこそかもしれません。

    キャッスルが最終的に誰を選ぶのか。私もエイゼンに10ドル。

『文鳥様と私』2巻 今市子 あおばコミックス

    今市子さんの、文鳥バカコミックス。1巻は持っていないのに、目について買ってしまった。こういうのは、ふつー、毒にも薬にもならないほのぼのストーリーのはずなんですけど、描いてある内容は…

    総計文鳥5羽の中で、ホモカップルアリ、母子相姦(未遂)あり、ドリカム状態あり、ダブル不倫あり。鳥の世界も実は大変なのだった(^^;)。よく見てるなあ>作者

    ともあれ、尾白、尾黒のモデルらしき勇姿がプリティでした。

『打天楽』/『精霊王』 佐藤史生 小学館文庫

    佐藤史生のSF/ミステリー短編集。しかしながら、どれをとっても、オリジナルなアイディア勝負の逸品ぞろい。よだれの出そうな代物です。惜しむらくは、私がほとんど既読であったことでしょうか(^^;)

    『打天楽』。表題作は『ワン・ゼロ』の番外編、というか後日譚。アキラ、エミィ、ミノルの3人が、ほぼ同時に、都祈雄からのSOSメッセージをキャッチした。現実世界の都祈雄は、中国で何か調べ物をしていたらしい。3人は、自分の無意識世界に潜行していくことで、都祈雄の行方を探索しようとするが…。

    収録作品は、他に『夢喰い』『ムーン・チャイルド』『楕円軌道ラプソディ』『チェンジリング』『ネペンティス』。ハードな部類に属する、粒そろいのSFです。科学と東洋哲学とが、ごく自然に融合した世界。あいかわらずこのイメージはすごいです。仮想現実というものは、SFで描かれた後、着実に実現されているものの一つですね。ロボットもだけど…。

    『チェンジリング』に登場する、サイボーグのセフィロートは、お気に入りでした。

     「彼らは例外なく、身近で世話をしてくれる異性の保護者に求愛しますから」

    世話していた、貴種(人間)の少女について語る時の台詞。そりゃ、あんたダメだわ。


    『精霊王』は、徳永メイという方の原案による短編集。徳永さんの経歴は、巻末エッセイで初めて知ったのですが、プロの原案者で、他にもいろいろ原案作品があるらしい。この、一連の作品群もなかなか、好きでした。

    収録作品は、表題作の他に『アシラム』『オフィーリア探し』『アレフ』『タオピ』

    屈折したジェンダーを抱えた人々の、複雑なドラマ。何気ない台詞と印象的なシーン。中でもスゴいと思ったのは『アシラム』でした。『精霊王』に登場するジョナサンの若い頃の話。富豪の御曹司として生まれ、自分が不当に富を独占していることの罪悪感に苦しめられる青年。今読むと『図南の翼』の珠晶を思い出します。ジョナサンは、よっぽど甘ちゃんですが。ともあれ、本編でジョナサンがあれを行う背景には、こうした思いがあったのでした。ここでの、ブラザー・マルカムとのやりとりは、数え切れないくらい読んだなあ。

    『オフィーリア探し』のような、SFっけのないミステリーもいいです。こうした作品を読んでいてふと思い出すのが、宮部みゆき作品。いつか、あの世界を漫画化してみてくれないかしら。
Novels
『玉蘭』 桐野夏生 朝日新聞社

    『柔らかい頬』で直木賞を受賞した作者の、最新作。主人公は、東京で恋に破れ、仕事を辞め、上海に留学しているOL、有子。彼女は、荷物の中に1冊の日記を携えてきていた。「トラブル」と題されたそれは、昭和初期に、上海で商船に乗っていた有子の大叔父のものであった。

    上海で独りになり、自分を見つめ直す有子。先の見えない孤独と絶望の中で、彼女はある夜、日記の主の広野質(ただし)の幻影に会った…。

    有子と質のやりとりから、広野質が例の日記を書いた時代の回想が始まり、そこからさらに、質の妻の回想に派生していく物語。上海のあの時代のエネルギッシュな空気と、白い玉蘭の花の官能的な香り。月光の中で交錯する過去と現在。この雰囲気は、なかなかツボなんですが…。

    言っていい?結局、何が言いたかったんだ?この話。
    有子が誰とでも寝る女になった理由か?有子の恋人、松村が浮気した理由か?質のしょーもない中国での過去か?若くして病死した浪子の悲劇か?

    作者は、こうした現実にまみれた人間達の群像を、身も蓋もなく描きたかったのかもしれません。それにしても、物語に登場する男も女も、誰一人として、魅力的に見えないのが、徹底しているというか…。

    人間の屑のような連中が、慰め合い、アリのように群れ集って生きる話。しかしながら、私的には、そんなものちっとも見たくねーや!作者がプロレタリア作家を目指しているのであれば、それはちょっと遠慮したいです。
『月虹 〜セレス還元』 水樹和佳子 ハヤカワ文庫

    『樹魔・伝説』と並ぶ、水樹和佳子さんの名作SF。よく考えるとこれも、地球の終末の話なんだなあ。初出は1981年。さすがに古いので、作中にソ連が出てきたりします。仕方ないか。

    2072年、世界は終末の危機に瀕していた。宇宙空間に配備された、核をはるかにしのぐビーム砲が、地上を無差別に破壊しつくすという危機。国家間の緊張は高まり、複雑化し、誰もコントロールできないままに、もはや、きっかけを待つばかりという状態であった。

    その中で主人公の少女ソミューは、尋常でない破壊力を持つ謎の男に出会う。彼はソミューに告げる。「地球を分解してセレスを還元するんだ。セレスの記憶を解放してくれ。」彼は何者か?そして「セレス」とは?

    前述したように、初出年代からしても、作品中で描かれる未来像の古さはさすがに否めません。地球を分解して、そこから過去にあった美しい楽園の星「セレス」を再構成するという使命を負って、転生を繰り返してきたソミュー。しかし、彼女は土壇場で迷います。地球のすべてに対する生殺与奪権を握ったまま、それを行使してよいのかどうかを。こういう設定の物語には他に、『マーズ』(横山光輝:六神合体とは別物)などもありました。

    この結末も、読んだあの当時から、甘いとは思っていましたが、今読むと…。今の地球なら、おそらくソミューは迷う余地はないような気がする。美しいセレスが復活するならば、だれが地球を惜しむだろう。たとえ、セレスに地球人類の居場所がないとしても…。

    超兵器で、明日に、せーの、で終わる世界。それもいっそ、すがすがしくていいかもしれない。少なくとも、そういうものに心惹かれる時代ではある。現実はそうも行かないから、せいぜい足掻くしかないのですけど…。
Novels
『黄昏の岸 暁の天』 小野不由美 講談社文庫

    『十二国記』シリーズの最新刊です。5年待ちました。

    私が小野不由美を知ったのは、実は『魔性の子』が最初でした。忘れもしない、下の娘を出産したときに、入院に備えて買い込んだ本の一冊でした。ただ、入院中に読んだ『魔性の子』には正直、それほどのインパクトは受けませんでした。退院後に、他の小野作品を読もうと思ったのは、ひとえに広瀬の担当の後藤先生の言葉が印象に残ったせいであったかもしれません。いわく。「人間なんて、くさやの干物みたいなもんだ」云々。「ああ、この人はワカッテイル」と、うまく言えないながら、心のどこかでそう合点したものでした。

    その後、『十二国記』『悪霊シリーズ』に巡り会い、読み耽り、ご多分に漏れず、完全に小野不由美にハマりました。そして、ちょうどそのころでした。私がNiftyを介して、ネット世界のおもしろさに目覚めたのは。そして小野不由美は、その当時から、最もネット上でブレイクしていた作家でした。その名は、ネット上で頻繁に話題になり、『十二国記』を知らなければモグリだというような、定評が作られつつある時期でした。

    その当時の最新刊は『風の万里〜』でした。それから半年待って、ようやくリアルタイムで『図南の翼』を読むことができました。そして当時は、ごく単純に、同じくらい待てば続きが読めると期待しておりました。その続きが、まさか今の今になってしまうとは、いったい誰が予想しえたでしょうか(;;)。

    その5年の間に、私はNiftyで某フォーラムに入り浸り。同好の志と趣味について話す快感に味をしめ。かけがえのない友人たちを得。しかし、その後の圧倒的なインターネットの普及によって、パソコン通信さえもが衰退し。おかげでこんなサイトなんぞも立ち上げてしまい。あいかわらずネットにはどっぷりと浸かっている。

    その5年の間に、『エヴァンゲリオン』が社会現象になり。いろいろに悲痛な事件もまた、起こりました。その間、ネット上でもずっと、新刊情報が周期的に話題になり、ガセもいろいろ飛び交いました。私だけでない、ネット上のこれだけの人たちが、ずっとずっと、千秋の思いで、待っていたのです。固唾をのんで、この時を。

    そして、あのとき生まれた娘は、当然ながら5歳になりました。

    ともあれ、まだ感想がまとまらないです、ネタバレ感想をいずれまとめます。
Novels図書
『夢々(ゆめゆめ) 陰陽師鬼談』 荒俣宏 角川書店

    荒俣教授描く、陰陽師列伝。「陰陽師」安倍晴明のブームは今やバブルな社会現象になりつつあり、年季の入った晴明ファンからは冷ややかな目で見られております。しかし、小説で陰陽道を取り入れた草分けは、やっぱりこの人だった気がします。少なくとも、私が五芒星とか、ドーマンセーマンとかを知ったのは、『帝都物語』が最初でした。

    さて、毎度、膨大な知識量にものを言わせた濃いウンチクで、楽しませてくれる荒俣教授ですので、この陰陽師ブームについて、どう取り上げてくれるのかを楽しみにしておりましたが、うーん。今回はかなり初心者向けのところを狙ったのだろうか?めずらしく、陰陽道の理論的な部分には、あまり触れられておりませんでした。

    聖徳太子〜晴明御大〜渡辺綱〜丑御前と、歴史上あるいは、伝承上の人物を取り上げ、陰陽道に関りのあるエピソードをランダムに紹介するという連作短編集。おなじみの話も、知らなかった話もあり、さらっと読めました。

    赤っぽい髪の、のっぺり顔の晴明様。出世のために苦心するせこいおっさん晴明のイメージは、ちょっと夢枕貘さんの『平成講釈 安倍晴明』風。ただ晴明様のキャラについては、ここ最近のブームで、非常に多様な解釈がなされているので、もう、それほど意外性があるというわけでもなかったです。正直、物足りなかったかも。
『アンジェリーク』7巻 〜闇の森の少女 由羅カイリ 角川ASUKAコミックス

    コーエー製作人気ゲームシリーズのコミック版7巻目。
    夢魔に取り憑かれたロザリア救出のために、奔走する守護聖様たち。ふっふ、皆さまのめったに見られない顔が拝めてよかったです。怒りで目の据わった地様とか、女王に声をかけられて顔を赤らめる夢様とか。おおっと言う感じでした。しかし、ランディにまで世話をやかれていてどうする>闇様(^^;)

    あとがき4コマのゼフェルの独白は、深く納得(笑)。
Novels
『EDGE3 〜毒の夏』 とみなが喜和 講談社X文庫 ホワイトハート

    プロファイラー(心理捜査官)大滝錬摩の活躍を描く、シリーズ第3作。主人公大滝錬摩は、かつて、天才プロファイラーとして活躍し、警察に協力して様々な難事件を解決に導いたことで知られていた。しかし、「彼女」は4年前、とある事件をきっかけに引退していたのだった。

    その錬摩が犯罪捜査に復活したのが、『EDGE1』の「黄昏の爆弾摩」事件。そして、第3作の今回は、錬摩が都内で発生する連続毒物事件を分析します。無差別な毒物傷害事件を起こす、許し難い犯罪者を、それでも共感と哀しみをもって描く視点はあいかわらずです。まあ、プロファイリングするより先に、偶然に犯人が分かってどうする?というつっこみは置いといて。今回は特に、事件と平行して、錬摩自身の「宗一郎」との関係がクローズアップされてまいりました。

    錬摩の元相棒「藤崎宗一郎」。このシリーズが単なるミステリーやサスペンスでなく、時にSFになるのは、この宗一郎の設定によります。彼は、錬摩の有能な相棒であったが、4年前のその事件で、一時、回復の見込みなしという植物状態に陥ってしまった。しかし、彼は天性の異常能力の持ち主であった。片手を失えば、義手を意志で動かし、身近な人の心を読んで、自分の目や耳の代わりにする。そして、その能力によって、損傷された脳の機能すら、この4年の間に復活させてしまった。しかし、復活した脳は、記憶まではとどめておいてくれなかった。彼はまったく素の赤ん坊から精神発達をやり直し、現在10歳の少年程度までに回復したという設定。

    この10歳の「宗一郎」と、かつて錬摩の相棒であった「藤崎」とのややこしい関係。かつて、これ以上ない信頼で結ばれていたらしい、錬摩と藤崎に何があったのか。このあたりが未だに謎で、今後のメインテーマになりそうです。

    刃物のように鋭く、時にあやうい一面を持つ錬摩。謎の多い彼女と周囲の人々の葛藤、心理描写がまた見応えがあります。どこがどうとは言えないけれど、やっぱり好きだなあ、このシリーズ。
Novels
『仲蔵狂乱』 松井今朝子 講談社文庫

    minato様おすすめの、時代小説大賞受賞作の歴史小説。江戸時代の不世出の名優、中村仲蔵の生涯を描きます。なにより、萩尾望都の解説が卓抜(笑)。

    さて、主人公仲蔵は、江戸中期に生まれ、幼い頃に、由緒ある芝居小屋「中村座」の唄うたいと振り付け師の家の、養子になった。彼は紆余曲折の末、中村座の役者となり、最下級の下積みから、一気に看板役者への花道を駆け上る。その極彩色の生涯を、つややかに描いた一代記です。

    確かに、おもしろかった。作者の、仲蔵と彼の芝居に対する、暑苦しいまでの思い入れが伝わって参りました。ただ…。この話、仲蔵に惚れて読まないと苦しいようです…。私は仲蔵が、あまり好みのタイプでなかったので、その思い入れにあまり共感できなかった。
    仲蔵、かっこいいのはいいんだけど、作中でも出ていたように、「男にもてる」タイプの役者なんだよなあ。あの、本質的にマッチョなところがちょっと…。

    ともあれ、あの当時の華やかな芝居の世界を、本当に見てきたように描く手腕はすごい。あまりに詳細なので、あまり時代小説と思わずに読んでしまいました。近藤文恵さんの『ねむりねずみ』といい、梨園の世界、あこがれてしまいます。おそらく今も昔も変わらぬ、美と退廃と、芸と情念の世界。いいなあ。
『花散里』 市川ジュン 白泉社Silkyコミックス

    『陽の末裔』で、大正〜第2次大戦前の時代を生きた女性たちの戦いを、熱っぽく描いた市川ジュンさんの、今度は社会派読み切り短編集。昭和初期の時代に、跡継ぎを産めない女性や、結婚しても働き続ける妻等、様々な立場にある女性たちを描きます。このタイトルの「花散里」は、やはり『源氏物語』をモチーフにしたものだったのね。

    1つ1つが短いだけに、問題の掘り下げ方は弱く、そうそううまくいきっこねーよ、というものもありますが、これまでこうした「女性が自然に生きること」を、繰り返しテーマにしてきた作者ならではの情熱を感じました。敬意を表します。
Novels
『忌みしものの挽歌』−「封殺鬼」22 霜島ケイ  小学館キャンパス文庫  

    封殺鬼シリーズ第22巻目。この巻はやけにシリアスしてるなーと思ったら、何のことはない、聖の出番が少なかったのね。もちろん、彼の出ているところは、笑えましたとも。しかし、ほかの面々(特に三吾)が見ていてうっとおしいくらい、めり込んでくれました。
    まあ、あの懐かしい人に会えたからいいか。

    羅ごう星に対抗できるだけの力を持つ、柿色の鬼の正体とは?いいかげん、次巻で明らかになってくれるでしょうか?

    余談ながら、カバーの西炯子さん。お願いですから、弓ちゃんに服くらい着せてあげてください。見た目がやばそうなんですけど…。