『黒祠の島』 ★ネタバレ★ネタバレ★ネタバレ★ネタバレ |
最初に、これは確かに駄作ではない。しかし、明らかに失敗作だと思います。
小野主上の本格ミステリと聞いたときから、イヤな予感がしていたのですが、それが現実のものとなってしまった…
おそらく、小野主上は、主上の周囲にいる新本格派ミステリの人々に触発されて、あのような本格ミステリを指向したのかもしれません。しかし、肝心の本格ミステリという枠組みに、あまりにこだわりすぎて、彼女の持ち味を殺してしまったのではないかという気がします。
その「本格」ミステリにしても、今時、あっと驚くオリジナルなトリックなど、そうそう思いつくはずなどないのです。ミステリーというジャンル自体が、今やパターンがほぼ出尽くして、いかに味付けを工夫し、バリエーションを増やしていくかに苦心している現状で、ここまでの直球ど真ん中は無謀にしか過ぎなかったように思う。
そこまで、本格にこだわりながら、結局モトネタは、「顔のない死体」という、手垢のついた、オーソドックスなものにすぎなかった。ネタは「名探偵コナン」並みでありながら、あれだけのページ数を費やす必要があったのだろうか?だとすれば、これは、作品の完成度以前に、読者層の狙いを誤った、と、そう感じました。
また、この作品はおそらく、因習に満ちた島で「解豸」というモチーフを使って、京極堂の妖怪シリーズのような、伝奇ミステリを狙っていたところもあったと思います。
しかし、結局のところ、それも外しました。なぜなら、京極堂のシリーズは、結局の所、本格の皮をかぶったキャラ萌え小説だからです。あのシリーズのような、アクの強いインパクトを出すには、式部さんではあまりに魅力薄でした。いっそのこと、あのやたら存在感のあった浅緋ちゃんを、最初からメインとして活躍させていれば、かなりキャラ萌えには成功したかもしれないのに。
しかしながら、ラストでの浅緋の登場は、唐突すぎました。それなのに、式部さん、完全に食われてるし。論理的にも、あれで彼女に論破されてどうする。一応、近代的司法制度を信じてたんじゃなかったのか?あんたのこれまでしてきたことは、何だったんだあああ!
あれで思いっきり、引いてしまいました。
唯一、「彼女」が生きていたのだけが救いでした。あのラストは、主上らしいと思いました。
以上、決して手抜きではない。渾身の作である。しかし、どうにもおもしろくない。
どの足から歩こうか考えすぎたムカデを見てしまったような気がしました。あまりに痛々しい気がします。残念です。
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