『パーム』の「オールスタープロジェクト」で、レギュラー陣が撮影していた架空の映画と、同名の『青また青』と、『パーム』キャラのコスプレ大作戦『2821コカコーラ』が収録されています。
『2821コカコーラ』は持っていましたが、『青また青』は未読でした。この『青また青』の話は漠然と、例の架空映画の原作の話なのかと思っておりましたが、その映画のストーリーとも違うもののようでした(何より、「極点の王子様」が出てこない(笑))。もしかして、ビダーが、あの原作小説の作者なのだろうか?
ともあれ、離婚して、小説を書きながら、一人息子を育てる主人公ビダーの強さ、たくましさ。このビダーの境遇や性格は、どちらかというと、獸木野生本人と重なって、にやりとしてしまいます。ともあれ、名セリフ。
「自殺するか笑い飛ばすかない状況に追い込まれりゃ
タマナシでない限り誰でも、笑い飛ばす方を選ぶわよ」
全く仰せの通りでございます(--)。
|
お楽しみの新撰組青春グラフティ8巻目。この巻は、前巻の禁門の変の後日譚と、藤堂平助君の恋物語。それと、沖田さんの生い立ちを描いた、サイドストーリーが収録されています。この、小さい頃の泣き虫宗次郎君が、なかなかケナゲで可愛いかった。そして、これに登場する、大人げないバラガキの歳三君も、いかにもそれらしくてよかったです。
でもー、渡辺多恵子さん、コマのあちこちに突っ込みを書き込むのはいいんですけど、そこであまりに「笑」を連発しない方がいいと思います。いえ、そこだけちょっと、気になったもので…。
|
 | 『残酷な神が支配する』16巻 萩尾望都 フラワーコミックス |
この作品は、私的2000年の大ハマリコミックスの1つでしす。最新刊のこの部分は、雑誌でほとんど立ち読み済みでしたが、今回まとめて読むと、何というか…。ジェルミとイアンの2人。「思ったよりラブストーリーしてるではないの」という感じでした(オイ)。もし、ジェルミのあの一言「僕はイアンの専用男娼ぐらいがいい」がなければ、ずいぶんと甘ったるい展開に思えたかもしれません。
行き着く所まで行き、あやういバランスで拮抗し続ける、おのおのの関係。ストーリーははっきり言って停滞したままですが、プチフラワー誌での連載では、緩やかな動きもあり。次の号あたりで物語はどう動いていくでしょうか?
|
| 『珍犬デュカスのミステリー』 坂田靖子 ジュールコミックス |
このご時世に、事務員で月給40万円という、美味しい仕事を見つけた主人公。ところが実は就職先の工務店は、彼女の他に、社長とヘンな犬「デュカス」がいるのみ。おまけにその社長は、経営感覚まるでなし。おかげで彼女は、なしくずし的に経営者代行に近い立場になってしまうのだが…。
犬のデュカスが実は、言葉をしゃべる犬で、苦労人の主人公と掛け合いをやってくれます。このあたりは『伊平次とわらわ』(潮出版社)に似ているかも。そして、主人公とデュカスの遭遇する事件は、坂田靖子さんが「ミステリージュール」誌によく描いている、ややホラーがかったミステリー。なかなか、おもしろかったです。
|
飯嶋和一さんは、以前、minatoさんおすすめの『神無き月十番目の夜』(河出文庫)を読んだことがありました。『神無き月〜』は、江戸時代初期を描いた時代小説でしたが、そこで描かれた史実は、あまりにも悲惨で救いが無いように思えて、感動まで至れなかったのが正直なところでした。ただ、あの、まるで見てきたように物事を生き生きと描写していた、緻密な文章が強く印象に残っておりました。
そして、このたび、昨年の「このミス」で上位に食い込んだ『始祖鳥記』を読了。こ、これは文句なし!すごい!感動、でした。
江戸時代中期、飢饉や天変地異が頻発した天明年間のこと、備前岡山に、鳥になろうとした男がいた。彼、幸吉は岡山城下に住む腕のいい表具師であり、自ら竹や布で、グライダーのようなものを製作し、その翼で滑空することを試みる。しかし、夜な夜な宙に現れる幸吉の姿は、鵺として噂され、彼の飛行はなぜか、支配者層の悪政を糾弾したと受け取られてしまう。やがて、彼は咎められ罰を受ける。ところが、彼の行為は日本各地で、意外な方向に波及していった…。
まずは、よりいっそう研ぎ澄まされた文体に感動。久々に、日本語が美しいと感じました。あくまでもシンプルに、それでいて目に見えるように鮮明な表現。例えば、航海の途中の船内の様子。あるいは、時計を分解・修理するときの手順。寡作な人だけに、その情景を描くために、どれだけ綿密に資料にあたったか想像はつきます。が、そんなことをみじんも感じさせないほどの、さりげない描写。そうしたディテールの積み重ねで全貌を現していく、あの時代の都市。そこに生活する人々。
そう、登場する人間達によってその時代を鮮やかに切り取って見せながらも、そこから現代人に通じるものをあぶり出そうとする視点。見事でした。歴史物に感動したのは、故司馬遼太郎先生以来でしたが、司馬先生の文体が、一刀彫りの円空仏だとするならば、この人の文体は、精密に隙なく形づくられた工芸品のような、熟練の職人技を感じさせました。
そして、ストーリー。今回は、民衆を圧迫する腐った体制への憤りが、『神無き月〜』よりも、よりストレートに描かれておりました。そして、その腐敗に敢然と立ち向かって行く男達の熱っぽさ、すがすがしさ。そして、主人公の幸吉。彼がなぜ飛ぼうとしたのか。世俗的成功をほぼ手にしながら、なぜすべてを投げ打つようにして飛ばざるを得なかったのか。
感動です。勇気が出ます。次作が読みたいです(いつになるかなあ)
|
まずは、店頭で見かけて、厚さがそれほどでもないのに安心しました(^^;)。殊能さんの前作『美濃牛』が、かなり読み応えがあったので、次こそ京極堂並みの厚みか?と懸念していたもので…。いえ、とってもおもしろかったです>『美濃牛』。今回も、それを上回る華麗な謎解きを、と期待していたのですが…。
わははは、こう来ましたか(^^)。確かに予想もつかない展開でありました。さて
名探偵、石動(いするぎ)戯作と助手のアントニオは、東京の実業家から奇妙な依頼を受ける。9世紀の天台僧、円載が、唐から持ち帰った秘宝の行方を調査してほしいというのだ。依頼のままに、博多郊外の古刹に赴く石動とアントニオ。その寺にある「黒い仏」にまつわる謎とは…。(以下ネタバレ)
いやー、いきなりぶっとびましたー。最初は『鉄鼠の檻』(京極夏彦)かと思い、次第に、『弥勒戦争』(山田正紀)になってきたと思い、ラストは…。
まさか、本格ミステリが、いきなりサイキックSF、しかも、クトルフ神話に行くとは思わなかったです。なので、結果としてありがちになってしまった感はありますが、これはこれで、おもしろく痛快に飛ばしてくれれば、良しとしましょう。でも、長くなりそうね、これ。
うすうす感じてたけど。ついにここにきて、ライトノベル界の大型新人の誕生を見届けてしまった。
|
水樹和佳改め、水樹和佳子さんの主に80年代のSF中編を一挙にまとめて読める贅沢な1冊。なので、文庫にしてはなかなかのお値段ですな。収録作品は、以下の通り。
『ケシの咲く惑星』
『月子の不思議』
『樹魔』
『伝説 −未来形−』
『墓碑銘二〇〇七年』(原作 光瀬龍)
このうち、『ケシの〜』と『月子の不思議』は、豪華本を買う踏ん切りがつかないまま、未読であったので、あのころの未来に追いついてしまった今にこそ、読めてよかったです。
そこに描かれたまっすぐな想い。人の夢や心こそが、何かを変えていく大きな力であるという、気恥ずかしいくらいに明快なテーマ。SFと少女マンガとの幸福な蜜月時代の香りが、そこにある。うーん、なつかしい…。
『ケシの〜』を読んだら、無性に、佐藤史生の『金星樹』を読みたくなりました。SFならば、佐藤史生の初期短編(『春を夢見し』とかも…)も全部文庫化してくれー。
|
| 『ゴーストハント』5巻 いなだ詩穂/小野不由美 KCなかよし |
小野不由美の「悪霊シリーズ」(講談社X文庫)のコミックス版5巻目。『悪霊はひとりぼっち』の後半部分です。これは、なかよし誌掲載分ですが、これ以降は、半年に1冊、単行本書き下ろしになるそうな。多分、小説1作は1冊で終わらないだろうから、ペースとしては年1作というところでしょうか。この次はいよいよ、例の「ウィンチェスター館」の話になると思うので、楽しみです。遠慮なく、思いっきりコワく描いてねー。
実際どこかで、なかよし掲載なので、あまり怖く描かないようにしていると聞いた気がしますが、今回麻衣が暴走(笑)したシーンで対決した悪霊は、あまりに可愛く見えて笑ってしまった。あれじゃ「木霊(『もののけ姫』の)」だって。どちらかというと、リンさんのアップの方が、よっぽど怖かったです(^^;)
あとは、ゴーストハンターズ1人1人をアップで描いた扉絵シリーズは、やはり麗しい。個人的には、カバーの最後の折り返しにあった、カラーのリンさんの絵に、グッと来ました。
|
最初に。ワーキングマザーの柴田さん、現在の保育行政に言ってやりたいことは、よーく分かりましたとも。ええ、私も、保育行政に(保育の現場にではないです。念のため)ついてはゆっくり語り明かしたいくらいなので、その気持ちよーく分かります。分かってますので、どうぞ冷静に願います…。さて。
元警察官の主人公、花咲慎一郎、通称ハナちゃんは、新宿歌舞伎町にある、無認可保育園「にこにこ園」の園長である。場所柄もあって、昼夜を問わず、山ほどの事情を背負って預けられる子供達。経営的には、当然ながら採算のとれない保育園を維持していくために、彼は副業の探偵業で、やばい仕事に手を染めつつも、子供達の幸福のために、日夜奮闘するのであった。
というハナちゃんの奮闘ぶりが、この前作『フォー・ディア・ライフ』で描かれておりました。『フォー・ディア・ライフ』で、ハナちゃんは、暴力団幹部の山内練に、自分の生命保険を担保にして4000万円の借金をこしらえてしまいます。血も涙もないやり手と評判の山内練相手に、毎月期日通りに返済していけるか?これだけでもまさに、命がけの綱渡りなのですが…
今回はまず、ハナちゃんが探偵として調査を依頼された、ヤバい話からはじまります。ある女性からの「胸に黒いアゲハの入れ墨のある男を捜して欲しい」という依頼。同じ頃、「にこにこ園」に飛び入りで、どうしても赤ん坊を預かって欲しいとねじ込んできたエリートサラリーマンの父親。これだけでも、てんてこまいのところに、ハナちゃんの恋人が、謎の失踪をとげる。彼女の行方を探すうちに、彼女の妹につきまとっていたストーカー男との関わりが浮かんできて…。などなど。これでもかというくらいに、盛りだくさんの事件が同時発生して、今回ばかりは、ハナちゃん絶体絶命!でありました。
まあ、それぞれの事件が結末でひとくくりに解決されてしまうところは、ちょっと作りすぎだった気がしないでもないです。子供の笑顔の礼賛も、個人的にはちょっとやりすぎ。なにより今回、ハナちゃんかっこよすぎました。もうちょっと、なりふりかまわないタイプだと思っていたのに…。ただ、今回は私のご贔屓キャラ、山内練が活躍してくれたので、それだけでよしとしておきます(*..*)。
ちなみに、山内練は『RIKO』シリーズ(角川文庫)が初出ですが、そちらではかなり重要な役どころで、主役を食いまくっておりました。春日組若手幹部。美形でゲイで暗い過去を持つ。現在は、利害がすべての経済やくざで、悪魔的頭脳と残忍さで周囲をおそれおののかせる男。彼のぶち切れっぷりが好きでした。今回はけっこう、ハナちゃんとなれ合ってしまった気がしますが、それもまた、善哉。
|
| 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』 J・K・ローリング作/松岡佑子訳 静山社 |
全世界的ベストセラーの第2作。あいかわらず、ホグワーツ魔法学校での、明るく楽しい学校生活が続いております。とはいえ今回も、彼らには重大な危険が迫っております。学校の暗い過去の伝説にまつわる「秘密の部屋」。そこには、恐ろしい危険が封印がされているという。で、ありながら、あまりにも闇のやの字もないあっかるさに、ちょっと食傷してしまいました。
『〜賢者の石』は、もう少し重厚な印象があったし、先生達も、敵役の生徒も、もっと個性的だった気がしたのですが。もっとも、この哲学性も教訓もないハリウッド映画的脳天気さがあればこそ、世界的ベストセラーになり得たのでしょうか…。
見所は、やはり派手なSFX的場面の連続。空飛ぶ車。ナメクジの呪い、女子トイレの幽霊等々。映像化されたら、さぞかし見栄えがするだろうと思われました。しかし、今回登場のロックハート先生。もう少し重要な役なのかと思っていたのですが、単なる見かけ倒しの道化だったのが残念でした。
|
『夏と花火と私の死体』(集英社文庫)で17歳の早熟な才能が脚光を浴びた乙一さんの、ライトノベルデビュー作です。『夏と花火…』は正直、その後味の悪さのためにあまり評価できなかった私ですが、今回は、作者の才能の非凡さは、認めざるを得ないと思わされました。
これには、表題作含め、ミステリー味付けの短編が2編収録されています。どちらも、ライトノベルにはもったいないくらい、文章がしっかりしている。独特の詩情があるし、泣かせのツボも的確で、完成度は高さは、老成されているとさえ言えました。これは、もしかして、上遠野浩平に続く、若い世代のカリスマになりうるでしょうか?
あとは、私のようなひねくれた読者をいかに騙すかの、お手並み拝見といきたいところです。今回は正直、ミステリーの謎解き部分は蛇足にしか見えなかった。また、なにより、お話がこじんまりとまとまりすぎていて、もの足りない気がしてしまった。この人はきっと、ある程度の水準作ならば、余裕で、計算ずくで生み出せるのでしょう。しかし、あと一歩の、計算を超えた何か。作者の血肉から生み出される何かが、作品中にあって欲しいと思います。
次回は、この人独特の醒めた人間観を、もっとストレートに出してほしいなあ。
|