|
『火天風神』 若竹七海 新潮文庫 705円 |
|
三浦半島先端にある、リゾートマンション。そこでたまたま週末を過ごすことになった人たちに、記録的な大型台風が襲うという、災害パニック小説(多分)。『ホワイトアウト』(真保裕一)に続けて読みましたが、自然災害の迫力はこちらもなかなかです。 前半は、このマンションに来た人々のそれぞれの事情が描かれます。周囲の風景から浮きまくっているマンションとその住人の描かれ方は、ちょっと『理由』(宮部みゆき)を思い出しました。そこにまずは、記録的な台風が来る。それだけでもなか大事なのですが、そこに、更に火事が起こる。おまけに、身元不明の死体が見つかる。管理人はキレる。読んでいて、いっそあっぱれなくらいのパニックぶりで、こいつら、1人でも生き残れるんだろうか?と、読んでいてヒヤヒヤしてしまいました。 そして、人物描写がまた、いつにも増してシニカルで毒が効いています。途中、その悪意のあまりに、読むのがつらくなったほどでした。しかし、その悪夢の一夜をくぐり抜けた登場人物達が、自分と向かい合って成長していくラストには、文句なしのさわやかな感動がありました。ただ、ラストに付け足されたかのような、ミステリなエピソードは、ちょっと蛇足でないかな。 |
|
『妙技の報酬』 岡野玲子 小学館プチフラワーコミックス 552円 |
|
岡野さんの、コメディ短編集です。19世紀アメリカ西部で、名門の農園地主を継いだリカルド。お館様としての優雅な暮らしが送れるかと思いきや、農園の経済状況は、実はかなりの綱渡り。しかし、彼の代で没落したと思われることは、彼のメンツが許さない。かくして、外面は完璧、性格は姑息な彼の、見栄のために骨身を削る生活が始まったのだった…。 いいなあ、この、せこいところがなんとも。リカルドと、執事のハーベイとのババの押しつけ合いは壮絶というか。雑誌掲載年は意外に古く5年前ですが、『ファンシイダンス』を彷彿させる、ドタバタぶりがいいです。 同時収録の『走る!家元』。シュールなコメディです。シュールすぎて笑えないよー。 |
|
『超少女明日香・聖痕編』1巻 和田慎二 メディアファクトリー 552円 |
|
「花とゆめ」誌に長いこと連載されてきた、『超少女明日香』シリーズですが、このたび、「フラッパー」誌に移って連載された第一作。この移籍にあたっては、『少女鮫』の連載中に白泉社側といろいろあったらしいと、取りざたされておりました。なにはともあれ、祝・単行本化(^^) 例によって明日香とミックは放浪し、今回は月読市という地方都市にたどりついた。そこには、「聖痕」なるものにまつわる、何者かの計画が進行中であったが… 青年誌連載のせいか、絵柄も幾分ダイナミックになったようですが、違和感なくのびのびと描かれているようなので安心しました。続きも楽しみです。 |
『クッキングパパ』62巻 うえやまとち |
|
この巻は、ニューヨーク出張編。ニューヨークにて、荒岩さんと田中君で、食べも食べたり。どれもどっさりと、ボリュームのある料理ばかりなのがすごいです。 作者のうえやまとちさんが、ニューヨークについて、「こんなに気楽に歩けた街は他になかった」とコメントしていたのが印象的でした。真の都会とはもしかしたら、そういうものなのかもしれません。自由を呼吸しに、行ってみたいよなあ。 |
|
『ここはグリーンウッド』全11巻 那須雪絵 白泉社 |
|
再読です。ダンナが箱から引っぱり出してきました。私事ですが、子供の小学校の運動会で、紅白両チームに分かれて、競技ごとの得点を争っているのを見たら、読みたくなったそうです。確かに、これの運動会の話は、このシーズンの名物みたいなものですねえ(^^)。 そしてかく言う私も、今年は『ネバーランド』(恩田陸)を読んで以来、ずっとこれを読みたい気がしていたのでした。そういえば、『ネバーランド』の光浩君て、一回り暗くなった忍君かも。 この作品はやはり、最後まで明るいのがよかったです。ともあれ、これを連載していた頃の花とゆめ誌は、まだまだ元気だったなあ。 |
『犬夜叉』18巻 高橋留美子 |
|
祝アニメ化記念(^^)。いえ、アニメですが、なかなか良い出来だと思います。ただ、絵柄はややシリアスすぎるかも。原作で効いている、ほのぼの漫才の味を、どうか大事にして下さいまし。 本編の方は、かごめと桔梗との三角関係に1つの決着が…。「私は桔梗にかなわない。だって私は生きてるから。」は至言だと思います。 |
|
『ホワイトアウト』 真保裕一 新潮文庫 781円 |
|
織田裕二主演の映画が上映中なので、あらすじは知られているかもしれません。豪雪に閉ざされる日本最大級のダム、奥遠和。このダムが武装したテロリスト集団に占拠された。人質となった職員及び、下流の住民の命と引き替えに要求された金額は50億。雪のため、警察も誰も手の出せないという状況の中で、ただ一人、ダム職員の富樫がテロリストに戦いを挑む、というもの。 映画は観ていないので何とも言えないのですが、富樫の顔はやっぱり織田裕二のイメージになってしまいました。確かにキャスティングはぴったりかもね。和製ダイ・ハードといったストーリーも、まさにそんな感じ。そこらにいるふつーのお兄さんが、持てる力と知識を総動員して、ひたすら頑張る話です。本当に、一人敢然と雪という大自然に挑む彼の姿は、見ていて痛いくらいにハードでした。 彼がなぜ、そこまでして頑張らなくてはならないのかというとそれは、自分の過失で死なせてしまった親友の婚約者が、人質となっているのを救出するため。これは、物語中では、なかなか説得力があります。ハラハラしながら、手に汗を握って一気に読めました。おもしろかったあ(^^)。 |
|
<ピープルシリーズ> 『果しなき旅路』/『血は異ならず』 ゼナ・ヘンダースン ハヤカワ文庫 820円/740円 |
|
恩田陸の『光の帝国』に触発されて、読みたいなーと思っていたところ、ちょうど、ハヤカワ文庫で、人気のある古い名作の再版フェアをやっておりました。何と言っても「読者アンケート第1位」です。運が良かった。きっと、こうやって読んだ人は、私の他にも多いに違いない。 その一族は、外界からの交渉を絶って、ひっそりと暮らしていた。彼らは、空中を移動し、手を使わずに物を移動させ、人の心を読み、その他にも、「外界人」にない多くの特殊な能力を持っていた。彼らは<同胞(ピープル)>。遠い昔に宇宙からやってきた人々の末裔であった…。 そんなピープルたちの歴史が、彼らの一人一人から語られていきます。『果てしなき旅路』は久々に読んだ古き良きSFの香り。異端者としての孤独と望郷の念。しかし、いかにも女性の物語らしく、地球に生きる<同胞>たちは、たくましく前向きです。これが『スラン』であれば、彼らと人間達は延々血みどろの殺し合いをしなくてはならないところでありましょうが。<同胞>たちは、「外界人」たちの少しばかり毛色の変わった隣人として、しっかりと地球に根付いて生きていきます。 そうして、『血は異ならず』で彼らが地球に到着するまでの経緯が語られるに至り、この物語はなんだか、SFというよりは、上質なお伽ばなしのように思えてまいりました。むかーし、むかし、あるところに…。そんな出だしの似合う、綺麗で優しい、魔法使い達のお話です。 |
|
『僕らは虚空に夜を視る』 上遠野浩平 徳間デュアル文庫 590円 |
|
『ブギーポップ』の上遠野さんのSF。余談ですが、創刊間もないこの徳間デュアル文庫は、なかなか気になるラインナップです。古い作品の再発行では、いつのまにか絶版になっていたらしい『闇狩り師』(夢枕貘)や、近日発行の『イル&クラムジー』シリーズ(大原まり子)等の名作が、復刊されるのがうれしいです。 さて、主人公工藤兵吾は、ある日を境に、しばしば奇妙な幻を見るようになる。それは、ここでないどこか。真空の耐え難い静寂の世界で、超光速戦闘機「ナイトウォッチャー」を駆り、強大な敵と戦うというヴィジョン。彼に何があったのか?この世界は、どうなってしまうのか? 今あるこの現実が、実は幻想で、夢の世界にいる自分の方が現実だったという設定は、上田秋成から、映画『マトリックス』に至るまで、けっこうありがちな気がします。また、もう一つの世界では自分はヒーローであり、世界の命運を背負って戦うという世界観も、RPGや異世界ファンタジーに良くあるように思います。 要するに、設定そのものは、ありがちで別にめずらしくもないのですが、それでいて、上遠野さんにしか描けないこの感覚、このリアリティはいったい何なのでしょう。この作品中で描かれる「現実」側の世界の空虚さ。戦い以外に何もない。ただ茫漠とした虚空が存在するだけの世界。そしてそこで人々は、死ぬまで戦い続けなくてはならず、疲れたらそこですべてが終わってしまうという。そうしたとてつもない空虚な「現実」が、しかし、こちら側のあたりまえの学校生活にあっても、なんとリアルに感じられることか。 星々と孤独と、それからちょっぴりの前向きさ。本当にこれは、未来に希望を持つのが難しい「今」ならではのSFなのかもしれません。 |
『彼氏彼女の事情』10巻 津田雅美 |
| この巻は、ちょっとインターミッション。真秀さんの恋の話。みんな自分なりに楽しんだ、レギュラーメンバーそれぞれの修学旅行の話。有馬と出会う前の、高校入試前夜のみんなの話、等。話は深刻になりつつありながら、ここにきてもちゃんと笑えるのが、この人の持ち味ですねえ。が、しかし。できればもう少し、話を早く進めてくれい。 |
『ヒカルの碁』9巻 ほったゆみ/小畑 健 |
|
順調に巻数を重ねています。人気囲碁マンガ9巻目。この巻は、アキラに思わずうならされました。プロになって精進する塔矢アキラ。ある日、先輩の代理で、都議会議員のセンセイと対局しなくてはならなくなった。そのボンクラなセンセイをヨイショするために、「負けてあげて下さい」と耳打ちされる。そんな生臭い大人の世界を前にして、さあ、どうする?アキラ。このときの彼の行為には、おおっとうならされました。 何がいいって、主人公はヒカルやアキラでも、こうした囲碁界の大人の事情が背景にきちんと描かれているところが、ジャンプ作品らしからぬリアリティを感じさせます。さあ、プロ試験がんばれ、ヒカル。 |
|
『The Five Star Stories』10巻 永野 護 角川書店 NEW TYPE コミックス 1000円 |
|
出た出た。やっとでた(^^)/。2年ぶりの新刊です。それだけに今回はボリュームがあって内容充実、お買い得、でありました。 この壮大な物語。一般的には、架空世界の壮大な時間と空間を舞台とした、ピカピカのハードSFと言われております。作者の永野護さんは、どちらかというとアニメーターが本業。それも、メカデザインで有名な方なので、当然のことながら、メカと巨大ロボットが山ほど出てきます。ただし、ここではそれはロボットではなく、MH(モーターヘッド;鋼鉄の騎士)と呼ばれております。 舞台は、5つの恒星のからなる、ジョーカー星団。ここには、惑星毎、時代毎に、常に強大な国々が覇権争いを繰り広げております。領土を巡って絶えず勃発する戦争。そして、この世界には超高度な科学力があって、そのありったけを、強力な兵器開発につぎ込んでいる世界。その世界で活躍するのは、とにかく、より強くて有能で美しい者たちであると相場が決まっております。そこに、何千年の時が流れ、多くの王国が興亡していく歴史の中で、綺羅星のごとく名のある英雄が現れ、活躍して消えていく。そんな絢爛たる英雄列伝なのでありました。 そして、そうした世界は、常に次の3者を軸にして、描き出されていきます。1つ目の軸は前述した「MH」。そして、2つ目はMHを操縦できるほどの、人並みはずれた戦闘能力を持つ人間である「騎士」。そして、3つ目が騎士の操作とMHの制御とを中継するための、生体コンピュータ「ファティマ」であります。この三者はどれも欠かすことのできないものであり、たとえて言うと『十二国記』の王と麒麟のように、多くの魅力的な組み合わせとなって登場します。 そしてファティマ。生体コンピュータであり、人間より数段優れた能力と数倍もの寿命とを与えられながら人権を持たず、一般には、常に騎士の所有物であるように、マインドコントロールされています。そして、騎士の好みなのか、多くが美しい女性形に生み出されます。彼女らの背負った、人造人間としてのジレンマ。そして、戦う女であり、愛することはできても生殖することのできない存在。フェミニズム的にもいろいろと考えさせられる、このファティマの存在が、この物語にぐっと厚みと華やぎとを与えているのでした。 うーん、ここまでして説明しても、なかなか内容が説明しきれないなあ。まあ、内容は壮大すぎて、毎回「ここはどこ?この人だれ?」という状態で読んでいたりしますが、そんな中で大物がざくざく出てきて、かっこいいセリフを吐いて見せ場を作り、時におおボケや漫才もやってくれるというのは、毎度見応えがあります。特に、この物語の主人公である天照の帝と、彼のファティマ、ラキシス。そして彼らのMH、ナイト・オブ・ゴールドの活躍は見物です。 さて、その物語もようやく10巻。この巻では、女性陣が強くてよかった。女騎士同士の果たし合いが、いつのまにか口げんかになってしまうところなど、笑ってしまいました。そして、総じて母は(ばーさんも)強い。なんでこんなに強いんだ(笑) |