|
『レキオス』 池上永一
文芸春秋社 2000円 |
|
さあ、今が旬の沖縄を舞台とした、サイキック・ファンタジー(なのか?)。おすすめです。作者は、第6回日本ファンタジーノベル大賞を受賞した人。沖縄出身の池上さんが描く沖縄。古い歴史、戦争という過去、基地という現実。そして、南国のおおらかさと、したたかさ。そして、池上沖縄には、当たり前に存在する、神秘な「セジ」の力。ルビ付きの、ネイティブうちなーぐち(沖縄言葉)が飛び交う世界に、すっかり魅了されてしまいました。 レキオスとは、沖縄に存在する、何か大いなる力であるらしい。その正体は謎だが、それをめぐって、GAOTUと呼ばれる謎の組織のキャラダイン中佐。CIA。主人公の、米軍黒人兵を父に持つアメラジアンの少女デニスと、彼女に取り付いた真嘉比のチルーという女の霊。そして、人類学者サマンサ・オルレンショー博士。その面々が、繰り広げるハイパーアクションといえば、いかにもありがちですが、この猥雑でなんでもありなパワーは、本当にすごいです。特に、オルレンショー博士。まぎれもない天才でかつ、どヘンタイなお人。知性と痴性の彼岸をいくあの境地にぜひ、あやかりたいです。 この物語を貫くパワーの源は「セジ」。時空に在り、運命を意のままに動かす力。血筋に依る物でありながら、他人から気合いで奪い取るものでもあるらしい。それを、超気合いでゲットしまくるオルレンショー博士、おそるべし、です。彼女が、沖縄最強の生物、ユタのオバァと対決したり、CIAの女スパイと、亀甲縛りの縄下着で勝負するシーンは、一見の価値有り(^^;;;;。あまりのぶっ飛び方に夏バテのアタマはオーバーヒート気味でクラクラしましたが、読み終えて1言、ああ、おもしろかったあ。 |
|
『マエストロ・エミリオ』 秋月こお
角川ルビー文庫 533円 |
|
人気やおいシリーズ、富士見2丁目交響楽団の第4部開始。しかし、去年これにハマった私でさえも、マンネリにくじけてるくらいなので、古くからのファンは、さぞかし読み続けるのに忍耐が要ることでしょう。 さて、第4部は「イタリア留学編」。初めての海外で相変わらず、圭にべったり頼り切る悠季。お師匠でなくとも、おめーいったい何しに来た!と、どつきたくなります。この巻から、挿絵の人が変わって、西炯子さんでなくなっただけに、悠季の女々しさに拍車がかかってきたようです。(今の絵は、やっぱりいまいち) まあ、別の意味でおもしろくなってきた面もありますが。つまり、これまでのシリーズは、はっきりと悠季の音楽家としての成長物語でした。圭は導き手であり、これまでのところ、恋と音楽とは、相反しないものでした。しかし、悠季を今以上に成長させるには、おそらく、どこかで圭から独立させないといけません。悠季の、圭への依存心が、いずれ克服すべき障害になりそうな気配。恋と音楽を天秤に掛けたら、迷わず恋を取るのが、巷のやおいのお約束ですが、さて、フジミはどうなるでしょうか。悠季が、圭から独立していく世界を描くのか。それとも、圭に依存したままの、やおいのお約束を貫くのか。秋月こおの創作姿勢やいかに。 |
|
『罰』 須賀しのぶ
コバルト文庫 476円 |
|
「キル・ゾーン」シリーズの最新刊です。今回もなかなか、大人な(ただれた?)展開で…。クライマックスが近づいたらしく、かなりストーリーが動いてますが、果たして、どう終わるか?少なくとも、あのBBコンビは、最後まで生き残れないんじゃないかなあ。今回美味しかったのは、ここにきて目立ってたシドー君。そして、キャッスルに対するエイゼンの態度。エイゼンいいなあ。ああいう男友達がいたら、何もいらない。 さあ、今回生死不明のあの人は、どうなるのか。あれで死んでしまったら、もったいないなあ。 |
『美味しんぼ』76巻 雁屋哲/花咲アキラ |
『風光る』7巻 渡辺多恵子 |
|
『スカーレット・ウィザード』3巻 茅田砂胡
中公新書 900円 |
|
茅田砂胡の人気シリーズ、第3巻。割合楽しみにしてはいたのですが、読んでいて、めげてしまった。すみません。この先、ネタバレでボロクソ言いますので、ファンの方は決して読まないで下さい。 作者としては、いつも通りのノリで飛ばしているつもりなのだろうが、悲しいかな、全くおもしろくなかった。理由はいくつか挙げられる。まず、手っ取り早く言うと、マンネリなのである。敵の多いカップルなので、毎回ピンチに陥る。それをクリアして大団円という、パターンが定着するのは仕方ないが、それにしても今回はあまりにもお粗末ではないだろうか。毎度のパターンが盛り上がらなかった理由はまず、敵役が、せこい。お上りさんの三下田舎海賊だの、アレンジャーの自己陶酔野郎だのに手こずっていては、単なるページ数稼ぎとしか思えない。せめて、ちょっとは手応えのある大敵役の存在を、匂わせるくらいしてもいいのではないだろうか。 そして、主人公たちがいっそう、化け物じみてきたのもある。おかげで、どんな危機になっても、まるっきり緊張感がない。おまけに、あの世界設定がいい加減なので、彼らのできることにも制約がなくなってしまった。元々、体力と金と権力は無尽蔵にある連中に、神様の加護と、最強のワザ、「ご都合主義」が加わってしまったので、まさに最悪の意味での「何でもあり」である。ついでにあの2人、全く性格が同じなので、掛け合い漫才にもならなくなった。 『デル戦』にはシェラを含め、魅力的なレギュラーキャラがたくさんいた。しかし、『SW』では、その点、誰もいない。自分が絶対に正しいと信じて、絶対的な力で周囲に自分の正義を押しつける、はた迷惑な主人公たちがいるだけである。彼らのこの正義によっぽど共鳴できない限り、さすがにうんざりだよお。 ああ、在りし日の『創竜伝』(田中芳樹)と重なっちゃったよ。茅田さん、いったい何があったんですか… 失礼しました… |
|
『ハリー・ポッターと賢者の石』 J・K・ローリング作/松岡佑子訳
静山社 1900円 |
|
イギリス発の、全世界的ベストセラー児童文学。大人のファンタジーとして読んでも、充分楽しめました。ちなみに、イギリスでは続刊が刊行され、発売日に子供たちが、学校を休んで本屋の店頭に行列を作ったとか。お国柄の違いもあるでしょうが、どんなおもしろい本でも、日本では、まず考えられないです。かの国がうらやましい。あ、でも、私も『十二国記』の続刊の発売日が来ようものなら、有休をとってしまうかもです(^^;) さて、中身は本当に直球勝負のファンタジー。少年、ハリー・ポッターは魔術師の家系に生まれるが、赤ん坊の頃、とある事件で両親を亡くしてしまう。かれは、魔法など絶対認めない、ガチガチのマグル(普通の人間のこと)の叔父の一家で厄介者扱いされて育つが、11歳の誕生日、彼の所に誰かから手紙が届く。それは、ホグワーツ魔法魔術学校の入学許可証であった。ある日、9と3/4番線の電車に乗り、ハリー・ポッターは旅立つ。彼の魔法魔術学校での楽しい生活が始まった。 前向きなハリー・ポッター。気のいい親友。嫌みな悪友。かしこくて気の強い女の子。いかにも正統児童文学な子供たち。彼らの学校生活と「賢者の石」をめぐる冒険。本当にファンタジーの王道を行ってます。そして、それを読ませるだけの描写力はさすが。ファンタジーの命である世界設定は、細部まで徹底しているし、これでもかと出てくる、いかにも楽しげなマジックアイテムがまた素敵です。「ふくろう便」、「百味ビーンズ(XXX味)」、魔法サッカー「クィディッチ」。男の子たちが、最新型のほうき「ニンバス2000」に目を輝かせるところなど、思わず、にやりとさせられます。 んでも、このクソ暑いのに、さわやか路線ばかり読んだので、ちょっとめげた…。ここらで少しばかり、鬼畜路線に行ってみようかな… |
|
『タイニーポムポム』 坂田靖子 プチフラワーコミックス |
|
『闇夜の本』系の、不思議な脱日常ファンタジーの短編集です。おかしな、異世界のクッキー店主が、天文学の先生をそちら側に迎えに来たり。地球温暖化の危機に雪ダルマが立ち上がったり。ちなみに表題作は、いたずらとソフトクリームが大好きなお姫様が、お城で騒動を巻き起こすお話です。 うーん、しかし今回はあまりにも、肩の力を抜き過ぎじゃなかったかな。それぞれのお話に入り込むのに、いつもより苦労してしまいました。ヘンで素敵な世界は相変わらずなんだけど、ね。 |
『よしえさん』8巻 須賀原洋行 |
|
須賀原洋行さんの、ホームエッセイコミック。これも、ついにアフタヌーン版の最終巻となってしまいました。まあ、アフタヌーン誌上で浮いていたことは確かなので、仕方はないです。いつか竹書房あたりの四コマ誌で、連載再開してくれることを、ぜひ願います。 思えば、須賀原さんが夫婦二人だった頃に連載がスタートし、匠くんが生まれて、マタニティマンガから、育児マンガとなり、いつしか、子供は三人になり。その間に車を買ったり、家を買ったり。同世代として関心のあったことがだいたいシンクロしていたので、この一家はすっかり、他人のような気がしなくなってしまいました。育児エッセイマンガは、育児初心者で、もの珍しかった頃にいろいろ読みましたが、育児自体に関心がなくなっても楽しめたものは、この『よしえさん』と浪花愛さんの『小さな来訪者』だけであったような気がします。 それでもって、最後の最後まで笑えた笑えた。子供3人、親2人の全員で繰り出すネタに、笑いっぱなしでした。この味はどうか、無くさないで欲しいです。最近の他誌での連載が、笑えなくなってきただけに…。 |
『クッキングパパ』61巻 うえやまとち |
『じゃじゃ馬グルーミン☆UP!』24巻 ゆうきまさみ |
『名探偵コナン』28巻 青木剛昌 |
『山田太郎ものがたり』13巻 森永あい |
| 山田さんちのビンボー物語。これでおしまい。やっぱり最後までとことんビンボーでした。わはは。しかし、番外編はこの後も、いくつかやるらしいです。太郎君の担任の先生と、彼女の先輩の高校時代。ちょっと見てみたい。 |
|
『風いろ日記』 高橋亮子
双葉文庫名作シリーズ 600円 |
|
何でだか買ってしまいました。高橋亮子の古い作品の中で、これだけが未読のような気がしたもので。事実、読んだことはなかったようです。 小学校6年生の瞳子ちゃんは、お父さんの転勤で、住み慣れた田舎を離れ、東京に引っ越すことになった。家族のみんなは引っ越していったが、彼女は断固拒否。半ば強引に、田舎のおじいちゃんの家にひとり残る。瞳子の、多感な季節。子供でいられる最後の季節を、情感豊かに描いた、高橋亮子らしいみずみずしい作品でした。『星虫』の後に読むと、ひときわしみるねえ。 高橋亮子は全部好きですが、どれか1つと言われたら『道子』が一番好きでした。その作品を彩る、純でやわらかい感性。その痛々しいまでの純さは、今読んでも、ひどく得難い貴重なものに思えます。 ちなみに、つい最近になって、高橋亮子の新作をレディースコミック誌でみかけました。立ち読みしたところでは、主人公の年齢は上がっているが、作風は昔とあまり変わっていない感じ。早く、単行本になって欲しいです。 |
|
『星虫』 岩本隆雄
朝日ソノラマ文庫 571円 |
|
冬林さんおすすめの『星虫』読了いたしました。うわああ。感動! この作品、確か長いこと、知る人ぞ知る幻の名作でした。後書きによると、10年前、第1回ファンタジーノベル大賞の最終選考に残り、新潮社から刊行されたものの、その後長いこと絶版になってしまっていたという。それでも、読んだ人の間では、根強い人気を保ち続けており、ネット上では周期的に話題になっておりました。そんなこともあり、私などでもタイトルだけは聞いたことがありました。 それがこのたび、朝日ソノラマ文庫から復刊されたと聞いて、さっそく読了。冒頭の叫びに戻ります。良かったよお。確かに、極上のファンタジーであり、SFでありました。忘れかけていた「夢」というものを、臆面もないほどに、正面から描いていることに感動。本当に、ずっと、こういう夢が見たかったのでした。 ご存じの通り、このところ、SFの現在と未来について、かなり悲観していました。今時のこのご時世。現実世界は目を覆うばかりの不安と閉塞感に冒されているようで。その中でこの先、夢はやせ細っていく一方なのではないかと。この先、物語の中でさえ、明るい未来は描かれなくなるのではないかと。それなので、この結末を大切にしたいです。ご都合主義と切り捨てることだけはしたくないと思いました。少年少女達の未来を夢見るまっすぐさに、ひととき、心洗われるのもよいです。 |
|
『ゴーストハント』4巻 いなだ詩穂/小野不由美
KCなかよし |
|
ようやく出ました。小野不由美の名作『悪霊シリーズ』のマンガ版の4巻。ちょうど、シリーズ中頃、『悪霊はひとりぼっち』の前半分にあたります。安原少年がよいですね。いかにもアタマ良さそうで。ぼーさんとの漫才が見られてうれしいです。思わず、続きが読みたくなって、原作を引っぱり出してしまいました。 同時収録として、マンガ版オリジナルの番外編、『サイレント・クリスマス』が収録されています。これって考えてみれば、1年ぶりの小野不由美の新作だったんですね。雑誌掲載時にも読んだのですが、今、読み返すと、冒頭から、きっちりと伏線がひいてあって、いかにも小野主上という感じでした。しかし、いくら12月といえど、子供一人が白骨化していく臭いに、誰も気づかないなんてことありか?と、思わないでもないですが…。あのナルに、おとなげないと言われてしまったかわいそうなリンさんの、壊れた顔がステキでした(^^;) でもねー、ホントはこの次の、『悪霊になりたくない』が早く見たいのよー。ここからの、シリーズ後半部分が最高なんだけどなあ。 |
|
『あたしんち』6巻 けらえいこ
メディアファクトリー 854円 |
|
読売新聞日曜版連載中の、けらえいこさんの4コマコミック。この人、『セキララ結婚生活』以来のファンなんです。どちらかというと、エッセイの方が好きだったりしますが。とにかく、話がとっても日常的。本当に、こんなことあるある!っとうなづいてしまいそうな、ごくごく日常的な事柄をネタにして、それが本当に笑えてしまうというめずらしい人です。 『あたしんち』は、一応フィクションで、高校生のみかんとその家族のお話。ここに登場するおかーさんが、あまりにリアルなので、時々イタいところもありますが、エッセイの延長で楽しめます。いいじゃない、こういう幸せボケな世界があったって。 |
|
『死弦琴妖變(しげんきんようへん)』 加門七海
富士見書房 2000円 |
|
加門七海の妖しい大江戸時代劇。波津さんの麗しい表紙に惹かれて、リクエストをかけておいたのですが、このたびGET。しかし、読み終わるのに、けっこう手こずってしまいました。 幕府の隠密、舘脇(たてわき)は将軍の命で、四大琴という名の伝説の琴を捜していた。その琴にしかるべき弦を張って弾くと、どんな望みでも叶えてくれると云う。その琴が吉原にあるという噂を聞いた舘脇は、朴念仁の鬼門とも言うべき遊郭で場違いな探索にあたるのであるが…。 『大江戸魔法陣』あたりで、江戸の地に施された呪術について、存分にウンチクを披露してくれた加門さんですので、凝縮されたネタはすごいです。その知識の赴くままに、伝説の琴をめぐって暗躍するのは、天然記念物級の野暮天侍の舘脇、江戸の闇に精通した、怪しい幇間の一八。四大琴を伝承する公家の一族、死生麿。死生麿を追う、追討使の雨雀、と言った具合の、個性豊かな面々。琴を巡る謎は、次第に江戸の存亡にかかわる大事件に発展していく。と、なかなか読み応えはあったのですが…。 うーん、これだけ豪華なネタを、なかなか魅力的なキャラを使って仕上げているのに。なんでおもしろくないんだろう???。加門さんて、もしかしてネタはいいのに料理は下手?それでもって、絶望的にテンポが悪い。江戸の闇の雰囲気は出ているのに、もう一歩色気がない。痛快になるべきところがならない。笑えるはずのギャグが笑えない。物語を盛り上げる演出というものをもう少し考えてくれー。感想が「もったいなかった」じゃ、悲しいです。 |
|
『Heaven?』1巻 佐々木倫子
ビッグコミックス 905円 |
|
スピリッツ誌での連載は知っていたので、単行本が読みたかったのが、やっと出ました。『おたんこナース』に続く、佐々木倫子の新作。今度はレストラン経営のお話です。 店の名は、フレンチレストラン「ロワン ディシー(地の果て)」。超ええかげんな性格のオーナーが、地の利もコストも、なーんにも考えずに決定したそこは、文字通り駅からも遠い地の果て、墓地の隣にあった…。開店を控え、かき集められたスタッフたちの、苦闘の日々が始まった。 いやー久々、笑えました。キャラが真面目にやればやるほどおかしいというのは、佐々木さんの持ち味ですねえ。『おたんこナース』は、それでもところどころ、シリアスな人間ドラマをやっているところもあったのですが、これはとにかく笑えます。しかしこの店、この先いつまでもつのかねえ。 |