1 「るろうに剣心」と実在の仏像について
週刊少年ジャンプ連載中、和月伸宏作「るろうに剣心」には、原作、アニメとも何カ所かに仏像の絵が出てきます(原作・集英社、アニメ・フジテレビ)。
これらにはいずれもちゃんとモデルがいるんですね〜(^^) 修学旅行などでお立ち寄りの際は、ちょっと注意して見てやって下さいな。
まずは単行本から。巻之九、101頁 有名な斎藤の家内発覚の時の、時尾菩薩
元新撰組三番隊組長斎藤一に妻がいた! 驚愕した剣心と操ちゃん、斎藤の妻なら菩薩のような人でなきゃつとまらない、と考えて想像したのが「時尾菩薩」ですね(^^)
これのモデルは京都太秦(うずまさ)の広隆寺の弥勒菩薩(こうりゅうじのみろくぼさつ)です。奈良時代のもので、国宝第一号の、たおやかで美しい等身像。片足を組んで台座に坐り、右手をそっと頬に寄せ、わずかに微笑んでいます。そのあまりの魅力に修学旅行生が抱きついてしまい、右手の小指を折ったといういわくつきの美仏です。
外国の哲学者が「永遠の平和の理想を最高度に具現した芸術品」と称したそうです。どうです、時尾さんのイメージにぴったり!巻之十三、153頁 安慈が子供達と住んでいたお寺のご本尊
京都編で左之が闘った相手、安慈。この人は維新の闘いで孤児になった子供達をひきとって、蝦夷地の小さなお寺で暮らしていました。それが廃仏毀釈の余波で寺を追われそうになり、あげくのはてには、我欲に凝り固まった村長たちのため、寺ごと子供達全員を焼かれてしまうのです。黒こげの子供達の中で、ただ一人すっくと立つ菩薩の姿、とても印象的でした。
これは同じく国宝の、奈良薬師寺東院堂の聖観音(やくしじとういんどうのしょうかんのん)。すらりとした立ち姿の非常に美しい、奈良時代の正当派観音像です。人々を救うはずの観音が、何故子供達を見殺しにしたのか・・・安慈の修羅への転換はこの時始まります。それはこの、端正でバランスのよい姿をしている観音像と、まことに対照的なのです。巻之十三、94頁以降に何度も出てくる、左之と安慈の闘場「衆合乃間」の怖い顔の仏像(笑)
左之と安慈の闘いを見極めるかの如く、武道場のような闘場の中央にでんと鎮座する不動明王像。
これは京都の東寺(教王護国寺)の講堂の五大明王の中尊、不動明王です。他の不動明王に比べて憤怒の表情も内向的な、特徴ある顔をしています。
ちなみに東寺の講堂にはたくさんの仏像が並んでいて圧倒されますが、よく見ればメインの仏像が5体ずつ三つのグループに別れて置かれているのがわかるでしょう。その向かって一番左のグループの中央、真っ赤な光背(仏像の後ろの・・・ついたてみたいなもの(笑))を背負って坐っているのがこれです。839年作の国宝です。
次はアニメです。
京都編オープニング(川本真琴「1/2」)の安慈のバックの不動明王像
これは上記の京都の東寺(教王護国寺)の講堂の五大明王の中尊、不動明王です。
京都編オープニング(川本真琴「1/2」)の手袋を食べる斎藤のバックの如来像
これは奈良の東大寺の盧遮那仏(るしゃなぶつ・俗に言う奈良の大仏さまのこと)の台座に線刻してあるたくさんのお釈迦様のうちのひとつです。
大仏の台座のハスの花ビラの一枚一枚には、釈迦説法図というのが描かれています。今、何枚目のどの顔、と言うことは出来ませんが、ある本でぴったり同じ顔のものを発見しましたから、間違いなくこの大群像の中にいます。斎藤さんのバックの如来さん、ビデオお持ちの方はストップしてよく見て下さい、顔に傷が入ってますでしょ?あれが決め手ですー(=^^=)。
ちなみに奈良の大仏、奈良時代に作られた部分は、この台座くらいなもので、肝心の顔や体はほとんど江戸時代の補修なんですよ。でも、国宝です。安慈が子供達と住んでいたお寺のご本尊
原作では薬師寺東院堂の聖観音でしたが、アニメではもっと凝っていて、法隆寺夢殿の救世観音(ぐぜかんのん)なのです。「救世(ぐぜ)の安慈」が祀っていたのが「救世(ぐぜ)観音」!!これはなんと凝った作りかと、初めて見た時はびっくり仰天しました@@
この観音は、聖徳太子の等身像とも言われる7世紀前半の作。長く秘仏として包帯でぐるぐる巻きにされていて、明治になって初めて人々の前に姿を現しました。ものすごく異様な顔をしています。私は今でも見るのが怖い。極悪人面してるんですもの・・・この観音なら、確かに子供達を焼いてもおかしくないっ!
なお、夢殿開扉は春秋の年二回ですから、見たいと思う方は要チェックです。もちろん国宝。・・・以上、思い出すままに書いて並べてみました(^^)。京都・奈良への旅のお供にどうぞです。
ん? 何でモデルの仏像までわかるのかって? ふふ、犬好きが、スピッツならスピッツ、同じ犬種がいっぱいいても「これがうちのナナ」とかって個体識別ができるよーに、(なんっちゅう喩えじゃ(^^;)、好きな仏像たち、間違えるはずもありません。万一和月さんやアニメスタッフが「違う」と言ったとしたら、それは和月さんたちが勘違いしているか、見た本が間違っているのです。きっぱり。それほどはっきりと言えます。
とにかくモデルの仏像たち、超超有名な作品ばかりで、和月さんもかなり忠実に写してらっしゃるし、アニメに至っては、あれは写真を使ったのでは?と思うほどそのままなので、間違えようがないのです。もっと仏像の見分け方を知りたい方、よければ表屋敷の仏像ゴマ知識を覗いてみて下さいね!・・まだ途中なんだけど(^^;
田村由美作『BASARA』コミックス17巻カバーに、少女漫画としては珍しく仏像が描かれています(小学館)。
作者様あちこちで、突然仏像を使った気の迷いを弁解してるみたいですが(笑)。これは奈良の高畑にある新薬師寺の十二神将像。天平時代(8世紀)作、塑像と言って、なんと粘土で出来たもので、国宝です。
十二神将というのは、簡単に言うと、病気平癒のご利益のある薬師如来の、12の能力の化身と言った所です。
12という数字から想像出来るように、それぞれが十二支とも対応しています。ここ新薬師寺では、真ん中にどどんと座高2メートルの巨大薬師如来が座っていて、その周りに外むきの円陣を組んで、ほぼ等身大の十二神将がぐるっと並んでいます。
これはちょっと変わった並び方。どれも怒った形相なだけに、薄暗いお堂の中でこう迫られるとかな〜り迫力があります。
そのかわり真ん中のお薬師さんは、頭がでかくておでぶうで、おまけにギョロ目(笑)。
気のいいサラリーマンが笑いをこらえながら「よっ、お疲れさん」と言ってるようで、見るとぷぷぷと笑いたくなること請け合いです(^▽^)。さて、神将像は全部で十二体ありますが、カバーにはそのうち5体が描かれています。
一人ずつ名前がついているのですが、ちょっと厄介なことに、国宝指定の名前と、お寺に伝えられてきた名前とが食い違うものがあります(^^;
現在お寺ではどちらの表記がされているか確認出来ないので、面倒ですが両方書いておきますね(漢字はうっとおしいので最後にまとめて表をつけておきます)。
カッコの中が寺伝です。それぞれ干支も対応させておきます。
カバーをベロンと広げて見た時に、一番右から、1 ハイラ大将・辰 (インダラ大将・巳)
2 ショウトラ大将・丑 (クビラ大将・亥)
3 アニラ大将・未・・・この人は破魔矢のお尻を覗いてます(笑)
4 メキラ大将・酉 (バサラ大将・戌)
5 インダラ大将・巳 (メキラ大将・酉)です(^^)、あなたの干支はありましたか? ちなみに私の干支はありません。しく(泣)。
4番めの大将さん、寺伝ではそのものズバリ、「BASARA」なんですよ(^^)。新薬師寺は、修学旅行のメッカ奈良公園の春日大社から、ささやきの小径とか志賀直哉旧宅など魅力的な所を通って徒歩で15分ばかりの場所です。
是非足を伸ばしてみて下さいね!
その際は、境内の香薬師堂に居る「おたま地蔵」にもご注目(=^^=)。
これはリアルなすっぽんぽんのお地蔵様。
お玉に御利益がある・・・てことはバイアグラ地蔵みたいなものでしょうかね(爆)。
でも、私が以前見た時はちゃんと着物来ていたような気がしますので、変な期待はしないでね(^^;(香薬師堂とは、もと香薬師という白鳳時代の可憐な薬師如来立像がまつられていた所です。なんと昭和18年に盗難にあって以来行方不明(;;)、これはそれ以前の文化人の記述で非常に素晴らしいものだったとありますので、ぜひとも私が生きているあいだに返して頂いて、一度見てみたいものなんです。・・・返せ〜っ(泣))
最後に十二神将の堂内での配置と漢字名、一覧にしておきますね〜♪
カッコ内が寺伝です。
真達羅・シンダラ・寅
(寺伝も同じ)珊底羅・サンテイラ・午
(招杜羅・ショウトラ・丑)2 招杜羅・ショウトラ・丑
(宮毘羅・クビラ・亥)摩虎羅・マコラ・卯
(寺伝も同じ)安底羅・アンテイラ・申
(珊底羅・サンテイラ・午)薬師如来 毘羯羅・ビカラ・子
(寺伝も同じ)5 因達羅・インダラ・巳
(迷企羅・メキラ・酉)☆ 宮毘羅・クビラ・亥
(波夷羅・ハイラ・辰)伐折羅・バサラ・戌
(安底羅・アンテイラ・申)1 波夷羅・ハイラ・辰
(因達羅・インダラ・巳)4 迷企羅・メキラ・酉
(伐折羅・バサラ・戌)3 あに羅・アニラ・未
(寺伝も同じ)* あに羅の「あ」は安+頁。「に」はイ+爾。
* 頭の数字はBASARA17巻カバーに描かれたもの5体。カバー右から順に1〜対応してます。
* ☆印の宮毘羅(寺伝波夷羅)のみ、昭和の補作のため、国宝に指定されていないんです、見るからに貧相で哀れかも(^^;
* 漢字や読み方、対応する干支などは、本やお寺によって異同があると思います。私が参考にしたのは週刊朝日百科の「日本の国宝58」と新潮社とんぼの本「やさしい仏像の見方」です。
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