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「春を寿ぐ」展

 

場所 横山大観記念館
訪問日 1999.1.29



横山大観記念館・・・ここをはじめて訪れた人の大半が、おそらく絵ではなく、その家屋に驚嘆の声をあげるでしょう。
私もそう。上野駅を降りて不忍池を左からまわり、東天紅なんかの高いビルが立ち並ぶ不忍通りを少し地下鉄根津駅の方へ歩くと、道の左手にふと倒れかかった板塀が目に入ります。
いくら由緒ある上野の地、不忍池のほとりとは言え、ビルの林立し、車の往来も途絶えることのないせわしない都会では、あまりにも場違いな風情・・・その門には確かに「横山大観記念館」の文字。

いざ、門と言うよりはでかい木戸といった趣の入口を入ると、敷石伝いに右手へまわることに。ここで入場料を払います。
背の低いなんとか藪椿(寒藪椿だったかしら(^^;)の植え込みを越えると、そこにはなんと、
玄関! 玄関ですよ、ふつうのお家に入るように、「こんにちは」と靴を脱いでお邪魔するのです(=^^=)。
ちょっと驚きました、ここは確かに大観晩年の住居、こういう作りは不思議ではないのでしょうが、地方都市の町興しで文化人の邸宅を観光用に開放している所へ行ったことはありますが、まさか東京のど真ん中でこんな嬉しい体験ができるとはっ(=^^=)

して一歩足を踏み入れると・・・わああ@@、真っ先にトイレだ!(笑)、ここ、入ってみなかったのが惜しまれます、どんなだろう。
実はその前に玄関すぐに置かれた古色のついた衝立にも感動、トイレをすぎると廊下あり、茶室あり、庭あり縁側あり・・・かつてあたり前だったであろう日本家屋が、団地、アパート、マンションにしか住んだことのない私にはひどくひどく懐かしくて嬉しいものなのです。

ここは明治42年、大観が41歳の頃から、東京大空襲による全焼をはさんで昭和33年に90歳で亡くなるまで起居した場所だそうです。
現在の建物は昭和29年、京都から大工と資材を運んで建てさせた、数寄屋づくりの二階家です。
約400坪という敷地の大半が庭ですから、家屋自体はそんなに驚くほど大きいわけではありませんし、大理石やシャンデリアがあるわけでもない、一見ごく質素な木造家屋なんです。
けど、でも、しかし、
随所に見える細かな気配り、繊細な質の良さは日本ならではのもの

たとえば客間。入り口欄間には千鳥にはめられた竹、よし張りの舟形天井、静かに切られた炉、広い床の間とそこに掛けられた大観の軸「霊峰飛鶴」、またその右には藤原時代の小さめの不動明王(重文)、そこからの庭の眺めの晴れ晴れと心地よいこと・・・この部屋は「鉦鼓洞」と名付けられています。
家中の柱や梁には、指が吸い付くような通し柾目の、華奢な北山杉をふんだんに使い、
おさ欄間という細竹を美しく並べたものや、絹糸の様な美しい木目の板をはめた欄間がさりげなく空間を飾っていたりします。
中庭には石灯籠とともに、スッと背の高いカリンの木が一本、冬の風に名残の色葉を揺らしています。
そしてまた、縁側にはめられたガラス戸の桟が、一階は高い位置に、二階は低い位置にあって、ともに坐ったままで最も外の眺めが良いように工夫されていたり・・・その心遣いの全部は書ききれないです(^^)、日本家屋、いいな〜。特に二階の階段の天井部分の湿った暗がり、ここなど今でも何か妖しのモノがひそんでいそうでした。

肝心の絵はですね、大観と、同時代の日本美術院の同人の作品が十数点あるだけんなのですが、これがまた、ほとんどが床の間や壁にかけてあってとても自然に鑑賞できるのです。もちろんほとんどがガラスケースなし。やはり絵も、あるべき所で見るのが一番ですよね、軸なら床の間、大きくない額なら部屋の壁で、大切に飾られているのが最も心なごみます(^^)。
最も好きだったのは、二階の旧画室床の間に掛けられた
「若葉の林」。軸に仕立てた直径60pあまりの丸い紙(?)に、墨一色でさざめくような若葉の林が描かれ、その中央にわずかばかり咲き残りの桜が見え隠れしているものです。絵の中で風が吹き渡っていました。

ところでこの記念館、館の係りの方がめちゃくちゃ多い(笑)。お客さん5人しかみなかったのに、館の方、7人はいらしたですよ! 広くはない家屋なので、どこへ行っても館の人とぶつかっちゃって(^^;。
でもお陰でいろいろお話聞けました。
4/7ころ、行ってみて下さい、庭の大島桜が満開で、非常に風情豊かな景色となるそうです。

なお、一階の一番奥の部屋には同人さんの絵や大観の軸が掛けられていますが、ここが大観の亡くなった寝室なのだそうです。ちょっと、心改めて入室しました(=^^=)。

 

<データ>

横山大観記念館
東京都台東区池之端1−4−24
電話 03−3821−1017
営団地下鉄千代田線 湯島駅下車徒歩5分
JR上野駅からだと徒歩15分くらい
注意!開館日・毎週木、金、土、日曜日のみ

「春を寿ぐ」展会期
1999.1.7〜3.28
会期中一部展示の入れ替えあり

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西行物語絵巻展

 

場所 出光美術館
訪問日 1999.1.27



今年初の・・・というか、11月の奈良以来やっと展覧会なるものに行ってきました(^^)。銀座に用があったので出光美術館を選択、俵屋宗達の
「西行物語絵巻」(重文)を展示中でした。

絵巻、中世の作品の江戸時代における模本で、絵の部分が琳派の祖、俵屋宗達、詞書きの部分が、寛永の三筆に次ぐ能書家と言われた烏丸光広の手になるものです。中世の漂泊の歌人西行の、出家から亡くなるまでを描いています。奥書から寛永7年(1630)9月作とわかりますが、これは宗達の作品中、明確に制作年のわかる唯一のものだそうです。

と、真面目な説明はこれくらいで(笑)、実は絵巻ってば、主人公がどれだかよくわかりません(^^;。特に出家前の西行を描いた部分、同じ様な狩衣の殿御たちがちょろちょろしていて、誰がだれやら(笑)。
唯一わかった「和歌詠進の褒美に鳥羽上皇から太刀を拝領する西行」は、
とってもがに股でへっぴり腰でした(^^;。

綺麗だな〜と思ったのは、第四巻、西行の娘が出家するシーンでの、牛の表現。白と黒の混ざり具合が鮮やかで、ひどく心に残りました。

好きなシーンは、今回の展示では写真だけだった、「武蔵野の秋の夜、小さな庵に老僧を訪ねる」場面。繊細な秋草と跳ねる鹿たちが美しくて、そこに庵と言うよりは屋台の屋根だけみたいなものの下にいる老僧と西行が、控えめに描かれています。なんだか、自然の中で人はかく生きるべし、というほど遠慮深げで好ましい絵でした(^^)

とまあこの程度で、絵は(さんざん書いてますが)、よくわからないんです(^^;、でも、中央の部屋の両壁際いっぱいを使って、全四巻のうちの三巻を展示してありましたが(第三巻は散逸)、まるで収まりきらない長大な代物。これを広げて端から読んでいったであろう往時の人の、気持ちの優雅さというか、時間、空間の贅沢な使い方というか・・・ちょっと感じるものがありました。

さて同じ部屋には尾形乾山、野々村仁清などの焼き物がいくつかと、伝西行筆の「中務集」、烏丸光広の書などがありましたが、最も心ひかれたのは、乾山の「色絵紅葉文壺」
これは両手で包んでちょっと足りないくらいの小さめの壺。
緑釉の中に六角の紅葉文が白抜きされていて、更にその中にそれぞれ赤、青、黄、茶(黒?)の紅葉文が、一つづつぺたぺたと、いも判のように入っています(=^^=)。可愛いこと!
見ていて楽しくなるものは、芸術云々の前に良いものだなあと実感できます(^^)。

別の一室では中国古陶の小特集をしていました。
ここでのお気に入りは、金時代の
「白地黒花魚藻文深鉢」
巨大ブランデーグラスみたいな口がすぼまった形の白地の鉢に、黒釉で二匹の無愛想なお魚と、揺らめく草(藻なんでしょうけれど、笹みたいな草に見えます(^^;)が描かれ、釉薬の上から掻き落としで装飾の線描が入ってます。
白地と言っても煮詰めたミルクみたいな穏やかな色、黒釉と言っても茶褐色の暖かい色、そして草や魚の尾鰭の先がかすれるように地に溶け込んでいて、とにかく見ていて優しい気持ちになれました(^^)。

遼代の陶磁という小特集もしてまして、私の甥っ子の名が「遼那(りょうな)」ということで親近感がわいて(笑)、じっくり見てきました。

じゃばらの長首とラッパ型の口を持ったスリムな長壺が多い!@@

変だったのは「三彩人魚形水注」
エビ反りの人魚の背中から液体を入れて、胸元のトリのくちばし状の部分から注ぐものなのですが、いかにもモンゴリアンといった顔立ちの福耳の人魚はちょっと・・・怖すぎ(^^;。

ハッとして思わず欲しいと思ったのは、十数p四方の小さな三彩の角皿「三彩印花花文方盤」
緑と褐色の釉が、お行儀のよい浮き彫りの花をうっとりと覆っていて、日溜まりで開いたお弁当のような懐かしい輝きに満ちていました。

さてさて、そんなに広くはない出光美術館ですが、それでもひととおり見たあとはくたくたになってます。ふふふ、そう、ここには無料でお茶を飲めるスペースがあるのです。紙コップに自分で注ぐんですけどね(^^) で、ここからの皇居の眺めがとっても気持ちいいんですよ、なにしろお堀端のビルの9階ですもの。大事に抱えられた緑と水の中、周囲の車の喧噪などどこ吹く風とばかりに、水鳥たちが別世界の時を刻んでいました。おすすめです(^^)

以上、久々の更新でした。

あ、付け足し!
出光美術館から有楽町の駅へまっすぐ向かおうとすると、すぐ左手に大韓航空のオフィスがあります。そこのショーウィンドウに、なななんと!
広隆寺の弥勒菩薩さんの金ぴか像が!!!@@・・・これ、よく見るとお顔がちょっと違う(^^;、それもそのはず、韓国の国宝第83号弥勒菩薩像で、ソウル国立美術館にあるものの模造だそうです!ああ、びっくり(^^;。あまりに広隆寺の弥勒さんに会いたいと思っていたので、金きらきんのお姿で白昼夢に現れてくれたのかと(笑)。
説明板、もっと良く読みたかったのですが、さすがに恥ずかしくて断念しました。でも、出光へいらっしゃる方、是非是非チェック!です(^^)

 

<データ>

出光美術館
東京都千代田区丸の内3−1−1帝劇ビル9階
NTTハローダイヤル 03−3272−8600
営団地下鉄日比谷線、千代田線、都営三田線 日比谷駅
営団地下鉄有楽町線 有楽町駅
JR有楽町駅
各駅下車徒歩2分


西行物語絵巻展会期
1999.1.12〜2.28
2.9から展示の入れ替え

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