| いつも朗らかな主婦C子さんから、「いろは」と「アイウエオ」はどちらが先にできたのだろうという、猫目のド胆を抜くような質問をいただいた。今回はマジメに解説しよう。
「いろはうた」は平安中期から後期にかけて成立したと言われている。ひらがな47文字を重複させずに作られた七・五調の歌である。 色は匂へど 散りぬるを わが世誰そ 常ならむ〈歌意〉 花の色はあでやかに咲くけれども、間もなく散りはててしまう。人間の命も花と同じであって、永久に生き続けることはできない。それだから、空しい夢を見たり、人情におぼれたりする浮世の煩悩の境地から逃れて、ひたすら仏様にすがって往生を祈ろう。 “ひたすら〜"以下はこの歌のオチにあたるのだが、「いろはうた」は仏教の根本思想である「諸行無常」の精神を歌いこんだものなのだということがわかる。残念ながら、この歌の作者は定かではないのだが、47字のみを組み合わせて意味を成す文を作るという技に感心せずにはいられない。しかも、「あめつち」とか「たゐに」など同様に47字で作られた歌が他にも存在しているのだ。おそるべし平安人。だが、やはり「いろはうた」の出来に勝るものはないようだ。「いろは」は習字の手習いなどに使われていたらしい。 「アイウエオ」、つまり「五十音図」が現在のような形で成立したのも、やはり平安中期から後期とみるべきであろう。
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「いろは」と「アイウエオ」のどちらが先にできたのかを定めるのは困難であり、結局、冒頭の質問に答えることはできなかったが、 日本語の奥の深さを味わっていただければと思うのである。
(参考文献『五十音図の話』馬渕和夫 1993年 大修館書店)
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