平成18年度第2回研究会
参加記


第2回研究会に参加して

 第2回研究会は、7月15日(土)13時から新宿区立中央図書館で開催された。
 今回は、5月13日に行われた第1回研究会に引き続き、「埋蔵文化財保護に関して行政が本来担う役割」の検討が行われた。

 まず基調報告として吉田敬運営委員から、官から民への流れの中で行政の役割として最後まで切り離せない部分はどこか、行政の役割を改めて考え直そうという趣旨であることが説明された。また、前回の検討内容とその整理の説明が行われた。今回の資料は、前回の検討に基づいて作り直したものであること、第1回研究会に参加していない人には検討の流れや文言の整理がわかりにくいところがあるということから、進行側の説明と参加者からの確認が行われた。

 全体の検討手順は、「T 周知・予防」−「U 調整」−「V 本発掘調査」−「W 保存」−「X 活用」という埋蔵文化財保護のための5段階サイクルに沿って、埋蔵文化財保護行政の主な作業・手続きの項目を抽出し、作業一覧表・フロー図に整理して、将来的にも行政だけが行うべき項目と民間でも担える可能性がある項目とに仕分けた上で、「行政が本来になうべき役割はなにか」を議論し理論化しようというものである。現在は段階を追っての検討過程である。

 今回の検討内容は前回の続きであり、「T 周知」の前回検討結果の確認と「U 調整」と「V 本発掘調査」の段階の検討が今回の予定であった。ただし「V 本発掘調査」の項目検討に入る前に、発掘調査対応方式(調査体制)の形態があまりにも多様にあり、議論する上で共通認識を得る必要があるということで、現在知られている方式について運営委員会で整理した資料が提示された。発掘調査対応方式(発掘調査体制)については、教育委員会受託方式、法人・調査会受託方式、民間調査機関受託方式などがあり、3大別18方式が示された。しかしこの他にもいくつかの方式が存在していることが追加報告・指摘され、次回の資料で改めて整えることになった。このため、資料には本発掘調査以降の手続き・作業のフロー図も示されているが、本発掘調査以降の各項目についての検討は次回に行うことになった。

 今回の検討は、前回と同様に、現体制維持の立場の吉田氏と行政改革・民間活用の流れに沿った敵役の立場の伊藤氏という役割分担で進められたが、参加者からの意見も多く出され、議論が行われた。
 まず「T 周知」についての前回検討内容を運営委員会でまとめた作業一覧表に基づいて確認し、持ち越しとなった課題について議論し、続いて「U 調整」の各項目について検討を行った。ここでの検討作業は、埋蔵文化財保護行政の一連の作業・手続きについて手順に沿って項目分けし、一つ一つについて、行政が行うべき(行政でなければならない)項目か、将来的に民間が行うことも可能な項目か、という視点で区分することが目的である。但し、一覧表は既に○付けされているが検討のためのものであり、議論内容を抜きに一人歩きしないよう注意が必要である。

 「T 周知」については前回に検討しているのであるが、「分布調査の実施」、「試掘調査の実施」、「遺跡認定の現地確認」については行政が行わなければならないのか、という議論は今回に持ち越されていた。
 この点については、分布調査、試掘調査は、行政の専門職員が配置されているのであれば、職員が地元のことを見ないで判断して良いのか、という点で行政職員が関わるべきであるという意見が出された。
 対して、現状の大勢はこの意見であろうが、「行政でなければならない」という論法にはならないので、行政が自らしなければならないという理論が成り立たなければ、行政改革の流れの中で民間ではダメということにはならない、と伊藤敏行運営委員から指摘があった。
 この議論はもっと突き詰めるべき所であるが、ここでは決着つかず、項目検討を先へ進めることとなった。またこの議論に関連して、作業一覧表の項目には手続き・作業の主体者と実施者の区分を残すことが必要であるという意見が出された。

 「U 調整」の検討では、「1.開発計画の把握」の民間事業については「@照会」も「A計画把握の工夫」も民間で出来るのではないか、という伊藤運営委員からの提起があった。また、「2.取扱い協議」の中で「A確認調査」を行う段階は都県によって異なるところがあり、どの手順・方法が妥当かという議論も必要だが別の機会に議論するということで今回は棚上げして進行するという説明があった。

 最後に、今回の研究会での議論に関連して参加者から次のような意見があった。
○ 文化庁は発掘調査の標準を整えているところだが、整えれば整えるほど、それに適合すれば行政でなくても良い(民間で良い)という方向にしかならないだろう。
○ 行政でなくても可能ということだけでなく、これまで行政でやってきた理由は何か、行政がやってはいけないのか、行政と民間とどちらがより良いのか、検証が必要。
○ 周知から調査、活用までを一連のものとして行うことに保護行政の合理性がある。
○ 行政がやってきた、また、やっている事について、自前では手一杯で出来なくなった部分を外部へ委託するというのでは、自らが行わなければならないという説明ができない。
○ 行政がやってはダメという事ではないが、行政がやるべき事の絞り込みが必要。
○ 当たり前に行政がやってきた事について、なぜ行政がやるのかという理論武装が出来ていないことを反省。

 次回の検討会は本日の続きの検討になるが、「U−2−A確認調査」の件を整理し、本発掘調査以降の項目を併せて運営委員会で一覧表を作成・提示し、議論を深めることになった。

 官から民へという時代の潮流に対して、「行政が自ら行う必要があること」を理論的に説明できなければ、善し悪しを問わず、なし崩し的に「民へ」となることも考えられる。「行政で」であっても「民間へ」であっても、合理性が求められるはずである。現在は検討過程であり、次回以降も十分な議論を尽くすことが期待される。

(記:世話人・池田 治)