飼育のあれこれ(その16)

金魚飼育で使う水道水


水道水という名前の水溶液

 化学の授業で“水”といった場合、それは100%の純水(=H2O)を指して
いますが、現実の世界の“水”というのはH2Oだけでなく実に様々な不純物を含
んでいます。
 ここでは私たちアクアリストにとって最もポピュラーな「水道水」を考えてみ
ましょう。水道水に微量に含まれている不純物は、大きく分けて次のようなもの
があります。

 ・微生物 (一般細菌)
 ・重金属 (鉛など)
 ・無機物質(塩素、フッ素、ホウ素、亜鉛、鉄、銅、マンガンなど)
 ・有機物質(・・・・)

 有機物質に敢えて例示をしていないのは単に種類が多すぎるからです。それで
もなんとか大まかに例示をすると以下のようになります。

 ・有機物質(四塩化炭素、ジオキサン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレ
       ン、ベンゼン、クロロ酢酸、クロロホルム・・・・・)

 これでも、まだ「・・・・」を書きたくなるくらいです(笑)。
ちなみに“クロロ”という言葉がついた物質が多いですが、このクロロは塩素(Cl)
を意味する化学用語です。水道水はその精製過程において、殺菌のために塩素を
通しますので、当然のことながら、塩素原子を含む化合物が星の数ほどできるわ
けです。

 このように水道水には信じられないくらいたくさんの不純物が混じっています。
これはもはや化学の教科書の感覚で“水”などとはいえる代物ではなく、「水溶液」
といっていいかと思います。もちろん、このままでは金魚のみならず、ほとんど
の水産動物は生きていくことができません。


残留塩素を除去する方法

 技術的には“純水”を作ることは可能ですが、我々消費者が実用的に作り出すの
は不可能です。私たちにできることは、水溶液である水道水から金魚の生存に決定
的に邪魔な物質をかろうじて取り除いてやることだけです。問題はその対象となる
物質がなにか――という話になります。

 一つはもちろん塩素です。正確にいうと溶存塩素ですね。化学形態はいくつかあ
りますが、とにかくこの溶存塩素が残っている水では金魚は生きていくことができ
ません。塩素水というのはそれほど強力な殺菌力を持っているわけです。
 これを取り除くには、浄水器を通すか、あるいは、コントラコロラインなどのカ
ルキ抜きを使う、といった二つの方法があります。飼育者としてはどちらのやり方
でもいいのですが、注意しなければいけないことはいずれの方法も完全ではないと
いうことでしょう。特に浄水器は蛇口取り付け式の場合は、ある地方公共団体の調
査によると、2〜3ヶ月使用しているうちに塩素除去効率が70%程度にまで落ちて
しまうという数字が出ていますので、カルキ抜きをこれだけに頼るのは危険です。
一番いいのは両方行うことだと思います。浄水器を通した水をさらにコントラコロ
ラインなどで中和すれば、より最適な飼育水が出来ると思います。

 ※ 水道水をジャバジャバ攪拌したりする「曝気(ばっき)」という昔ながらのやり
  方もありますが、これは攪拌の程度によって除去率が大きく異なりますし、一
  般的にいって効率自体も相当小さいと考えられます。池飼育のような大掛かり
  なマスプロ飼育でない限り、一般のホビィストは補助的な方法として利用され
  るのがいいと思います。


トリハロメタンとは何か?

 溶存塩素の他にもう一つ、できる限り除去したい物質があります。それはトリハ
ロメタンです。このトリハロメタンというのは、メタン(CH)のHの代わりにハ
ロゲン元素(塩素Cl、臭素Brなど)が化学結合した4つの化合物の総称です。

      ・クロロホルム
      ・ブロモジクロロメタン
      ・ジブロモクロロメタン
      ・ブロモホルム

 トリハロメタン(特にクロロフォルム)は発ガン性物質として知られていますが、
それよりも注目すべきは、トリハロメタンが中枢神経の機能低下を起こすこと、し
して、人体の肝臓や腎臓に対してはっきりとした毒性を示すという事実です。こう
したことから、水道水にはトリハロメタンに対する水質基準が定められていて、人
間が摂取しても安全と考えられる量に抑えられています。しかし、たとえ少量であ
っても毎日毎日口に入れるわけですから長い年月の間には何らかの悪影響が表に出
てくると思ったほうがいいでしょう。
 魚に対する毒性はどうかというと、これは現在のところはっきりとした研究はな
されていないようです。だからといってトリハロメタンが魚に無害ということには
なりません。そもそも人間様とちがって“魚類”の健康を気にする風土は日本のみ
ならず全世界に存在しませんから、そんな類の研究を飯のタネにしようという人が
いないだけです。一般的には、人体に対して毒性を発揮する物質はほとんど例外な
く魚に対しても毒性を持っていますので、私としては、トリハロメタンもまた魚の
腎機能などに悪影響を及ぼすと考えています。少なくとも強いストレッサーとして
働くことは間違いないでしょう。


トリハロメタンの除去

 トリハロメタンの除去方法ですが、これは非常に難しいです。一番手軽でお勧め
の方法は、前出の「曝気」です。トリハロメタンは残留塩素と同様、揮発性物質で
すので、曝気によって除去されます。ただ、普通にバチャバチャやっても除去率は
タカがしれていますので、次のような手順をとります。
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 (1) 浄水器を通した水にコントラコロラインを入れて残留塩素を除去する。
 (2) ヒーターを使って最高温度(35℃程度)に設定する。
 (3) ブクブクを複数個投入して、風通しの良い場所で2日程度エアレーションを
   行う。(トリハロメタンは部屋に滞留しやすいので注意が必要です。)
 -------------------------------------------------------------------------
 上の手順の意味を説明します。
 まず、(1)ですが、これは(2)で水温を上げる前に必ず行う必要があります。とい
うのは、水温が高くなると、トリハロメタンの前駆物質が残留塩素と反応して余計
にトリハロメタンが生成され濃度が高くなってしまうからです。水温を上げる前に
トリハロメタンの大元である残留塩素をカットするのが(1)を行う意味です。
 次に(2) で可能な限り水温を上げます。トリハロメタンは揮発性物質ですので、
温度が高ければ高いほど揮発量が多くなります。
 (3) は「曝気」の効果を狙ったものです。曝気というのは水を細かい粒にして空
気との接触表面積をアップすることによって、水粒子と空気の境界面における物質
拡散を加速させる方法ですが、ここでは、細かい泡の発生と攪拌効果による水面の
擾乱によって接触面積増加を図り、物質拡散を促進させるやり方です。なお、この
とき、ゼオライトを100gくらい放り込んでおくと、その他の無機質系の有害物質が
徐々に吸収されてより綺麗な水が出来上がります。

 以上の方法でやればトリハロメタンを始めとする揮発性有機物質は相当量が放散
します。ただ難点は時間と手間がかかることですね。

 また、「煮沸」するというのも揮発性物質の特徴を生かした除去方法ですが、こ
れは実は非常に危険なやり方だということをご存知でしょうか。
 残留塩素が存在した状態で「煮沸」してしまうと、水温上昇とともにトリハロメ
タンの濃度は急激に上昇していきます。そして、沸点に到達した時点で、その濃度
は元の水道水の濃度の3〜4倍にもなります。揮発して減少するトリハロメタン量
よりも残留塩素を材料として生成されるトリハロメタン量のほうが大きいわけです
ネ。
 こうした状態ですぐに加熱を止めてしまうと、あら不思議、高濃度のトリハロメ
タン水の出来上がりです(笑)。コーヒーを作るときに、人によっては、一度シュン
と沸騰すると、すぐに火を止めて湯を注ぐ方がいらっしゃいますが、これは相当健
康に悪い飲み方だということを銘記してください。
 トリハロメタンを除去するためには、お湯が沸いた後もしばらく続けて沸騰させ
ることです。それも最低5分程度継続しないと、トリハロメタン濃度は十分下がり
ません。ほぼ完全に除去するためには15〜30分は沸騰させる必要があります。

 しかし、こんな面倒なことしてられませんよね(笑)。金魚の水として使うには、
それをさらに常温にまで冷まさなければなりませんので、ほとんど現実的ではあり
ません。それに、たとえトリハロメタンを除去したところで、クロロ酢酸などの非
揮発性物質(これも発ガン性がある)はしっかりと残りますので、労多くして益少
ないやり方だといえます。

《閑話休題》
  話は変わりますが、煮沸するとトリハロメタン濃度が上がって困るのであれ
 ば、コーヒーを入れたいときどうすればいいのでしょう(笑)? 答えはカンタ
 ンです。浄水器を通して残留塩素を除去した水を煮沸することです。これによ
 り、加熱によるトリハロメタンの濃度上昇はほぼゼロとなり、沸点に達した時
 点でトリハロメタンはほとんどなくなります。
  ちなみにコントラコロラインなどのカルキ抜き剤を入れた水を煮沸した場合
 はどうでしょうか。これはおそらくダメだと思います。カルキ抜き剤によって
 無害化された(塩素を含む)物質が熱分解してしまい塩素が再発生する可能性が
 あるからです。

 以上、トリハロメタンは曝気でそこそこ取り除けること、そして、煮沸による除
去は無理があることをお話しました。もちろん、これ以外にトリハロメタンを消滅
させる方法もあります。それは「トリハロメタンを除去できる浄水器」を設置す
ることです。庶民でも手の届く価格帯の浄水器というと蛇口取り付け式に限られて
しまいますが、私が金魚飼育を始めた頃は、蛇口式浄水器というと、

              残留塩素、濁り

の2項目を除去できる製品しかなかったように記憶しています。しかし、時は経ち
技術は進歩を遂げました(笑)。最近の蛇口式浄水器では、トリハロメタンや鉛など
を除去してくれる高性能タイプがいくつか販売されています。具体的な製品につい
ては別コーナーで紹介していますので、フィルタの性能や取替え頻度などをじっく
りと検討した上でご購入の参考になさってください。
 おススメは、少なくとも残留塩素、濁り、トリハロメタンの3項目を除去できる
ものです。また、トリハロメタンの除去性能の劣化は比較的早いといわれており、
フィルタ寿命の初期で80%の除去率があったものも末期では20%に下がってしまい
ます。このため取替え頻度としては3〜6ヶ月程度の短めのものがいいかもしれま
せん。もちろんお金に糸目をつけないのであれば据え置き式のタイプ(シーガルフ
ォーなど)の除去性能が抜群なのはいうまでもありません。

 ちなみに浄水器業界では、トリハロメタンの恐ろしさをことさらに言い立てて、
信じられないくらい高額の商品を販売する業者も多数存在しています。シーガルフ
ォーは世界中で信用されている浄水器で、私もいつかは購入したいと考えています
が、貧乏人の私の感覚では材料費やコストを考えるとそれでも高すぎるような気が
しています(笑)。ご購入の場合は、メリットとデメリットをよくよく検討なさって
くださいネ。


磁気活性水による飼育

 ホンのちょっとでも胡散臭いと思われた方――それは正しい感覚です(笑)。最近
の健康ブームに乗って、いつのまにかスポットライトを浴び、物凄い勢いで健康品
業界を席巻しているのが、この“磁化水”を用いた製品ですが、数万円〜数十万円
といった、トンデモナイ高額商品もなかには見受けられますね。
 基本的な構造はいたって簡単です。ネオジム磁石という強力な磁石を二つあるい
は複数用意して、水道配管や蛇口管などを挟み込むだけ。ネオジム磁石は1個数百
円程度ですから、どんなに外装に手間をかけた品物でも数万円で販売するというの
は相当無理があると思います。

 さて、こうした話をすると、磁気水自体の効果も疑心暗鬼になってくるかもしれ
ませんが、さにあらず、それとこれとは話が別です。私自身はどうかというと、数
年前、らんちゅうの飼育に使っているブリーダーの方が結構おられて、成長速度が
速いだとか病気が少ないだとかの感想を聞いているうちに、一度実践してみようと
いう気になりました。ただし、巷に売られている高額商品を購入できる経済的余裕
もなく、バラ売り店から磁石を個別に購入し工作用のアングルを使って水道管に
取り付けました。かかったお金は 900円程度でしたが、性能的には巷の商品と同等
あるいはそれ以上だと思います。

 ※ 別コーナーに店名のリンクを付けています。磁石を個別に買えるところは
  そこだけでなく、他にもいくつかありますが、送料無料で買えるショップは
  おそらく一つしかないと思います。なお、ある程度見栄えよく付けたい方は
  この店オリジナルの磁気活性器(5、6千円)がありますので、そちらを利用
  されてもいいかもしれません。

 さて、その結果ですが、特に水がおいしくなるとかの目に見えた効果は確認でき
ませんでした。ですが感触は悪くありませんでした。磁気水を使う以前と比べて、
全体的に金魚の動きが活発になっていると感じたからです。また、金魚飼育とは関
係ありませんが、自家用車のガソリンホースに強力磁石を挟み込むようにして巻き
つけてみました。これは前述の磁石サイトの掲示板に書かれていた裏ワザでしたが、
驚いたことにこちらのほうは効果満点で、ガソリンの燃費が2割近く上がったのを
はっきりと確認できました。以降、水道のほうもクルマのほうも磁石は付けたまま
となっています。

 このように、実際問題として明らかに効果があるのは間違いないのですが、その
効果がどういう理論・理屈によるものなのか、実は現在のところほとんど証明され
ていません。磁気活性器を販売しているウェブページなどを見ると、「強い磁場を
かけることによって、クラスター状に水素結合していた水分子が互いに離れ、クラ
スター粒子が細かくなり、その粒子間の空き容積が小さくなることによって、粒子
間に存在していた不純物が水中に溶存できなくなる」といったようなことが書かれ
ていました。クラスター理論というそうです。これは感覚的には理解できますが、
俄かには信じがたいことで、本当の意味で世間に受け入れられるためには数多くの
検証実験が必要でしょう。
 私自身としては上記のような難しい理由ではなく、もっと単純なところに答えが
あるのではないかと思っています。ポイントは、磁石の性質として鉄分を引きつけ
て離さないこと、また、強力な磁場に荷電粒子(イオン)が通過するとそのイオンは
強い力を受けること、この2点が大きく関係していると推測していますが、はっき
りしたことは未だにわかりません。 


水換えに使う水

 以上、長くなりましたが、最後に私が実践している方法をご紹介します。なお、
わが家の水道水は強力ネオジム磁石で処理?した水です。

(1) 残留塩素、トリハロメタン、鉛などを除去できる高機能の蛇口式浄水器を通し
 た水道水に、コントラコロライン等のカルキ抜き剤を規定量の半分〜1倍程度を
 目処に入れる。これは浄水器が除去し切れなかった残留塩素を処理するためで、
 フィルタの使用期間によってカルキ抜き剤の投下量を調整しています。

(2) 時間がないときは温度合わせした水をそのまま水換え用水として使用するが、
 通常、水換え日の早朝に(1)を行い、ゼオライトまたは活性炭(吸着剤)をバケツ
 に入れたまま、昼過ぎまでの約半日間エアレーションを行う。ヒーター温度は飼
 育水槽温度と同じに設定します。


(3) 病気治療用の隔離水槽の水換えを行う場合は、(2)のエアレーションを1〜2日
 程度継続して行う。なお、ヒーター温度は最高温度に設定。水換えのタイミング
 にうまく合うように降温してやります。

 よろしければ参考になさって下さい。