金魚飼育のあれこれ(15)

コアカの飼育は難しい


「子赤」飼育のすすめ


 小さなワキン(和金)のことを昔から子赤と呼んでいます。これとは逆に大き
なワキンのことは姉金といわれています。何故“兄”ではなくて“姉”なのかは
判りませんが、赤という色は古来から女性を連想させるからなのかもしれません。
子赤がどういう魚なのか、やや詳しくお話しましょう。

 一般にどんな金魚でもそうですが、金魚の産卵時期は大体4〜5月くらいです。
入学式の季節には世界中で膨大な数の金魚が生まれているわけですね。生まれた
ての金魚は一見、小指の先ほどの針のような形をしていて、「針仔」とか「毛仔
(ケゴ)」という名前がつけられています。
 針仔はきわめてデリケートな生き物で、全てが生き残るのは稀ですが、一部の
針仔は徐々に成長を続け、1〜2週間もすると、青っぽい体色になり、そしてい
わゆる「黒仔」といわれる黒色の稚魚となります。ワキンの黒仔が市場に出回る
ことは少ないですが、ランチュウなどの高級魚の黒仔はわりと普通に取引されて
います。
 さて、黒仔となった金魚の体色はさらに変貌を続け(この時期は虎ハゲ期とい
います(笑))、夏になるまでには、素赤や更紗あるいは猩々(ショウジョウ;ヒ
レの先まで真赤ッカ)といった赤を基調としたきれいな体色がほぼ完成されます。
子赤というのは一般にこの時期のワキンをいいます。夏祭りのシーズンが近づく
と、大量の子赤が出荷・売買されることになるわけですね。夜店の金魚すくいで
入手すると遊戯料も含めて2、3百円はしますが、金魚ショップで直接購入すれ
ば1匹20〜30円程度で購入できます。
 ちなみに、生まれてから1年目までの金魚のことを“当歳魚”といい、誕生日
を過ぎた金魚は“明け二歳”といわれます。

 明け二歳の金魚は冬の厳しい環境を乗り越えていますので、とても丈夫で飼い
易い魚です。「私は金魚観賞は大好きですが、飼育とか病気治療とかはちょっと
難しくて・・・」という方は必ずいらっしゃいますが、そういった方がショップ
へ行くと、ほとんどの場合、明け二歳の金魚を勧められることが多いのではない
でしょうか。特に遺伝的にフナに近いワキンの二歳魚――例外も多々ありますが
概ね“姉金”とお考えになってください――はものすごく丈夫ですし、安価なわ
りには体色や尾びれのバリエーションもたくさんありますから手頃な観賞用金魚
としてうってつけです。ショップでは素赤は姉金、それ以外は例えば更紗(さら
さ)とかいう名前で販売されています。肝心のお値段ですが、もちろん比較的長
期間育て上げる分維持費が上乗せされていることはいうまでもありません。(と
いっても100〜700円くらいかな)

 さて、ここからがHincon流の与太話になります。

 明け二歳の魚は本来とても丈夫で長持ちするはずなのですが、ビギナーの方か
らお話をうかがうとせいぜい半年〜1年程度でおロクになっている例が多いよう
です。何故?と思われるかもしれませんね。実をいうと理由はあきらかです。

 それは、二歳魚の丈夫さが裏目に出て、肝心の飼育者の側の技量がほとんど上
がらないからです。

 金魚の病気治療というのは基本的に水をいじりますので非常に繊細な作業とな
りますが、残念なことにこうした作業のコツを文字情報から正確に会得すること
は非常に無理があります。本やインターネットで書かれていることは大抵ポイン
トだけで、実際にスタート地点からゴールまで完走するとなると、途中、文字で
は表しえない小さな障壁――疑問といっていいかもしれません――が次から次へ
と出てきます。これは実際治療に当たった方なら判って頂けるかと思いますが、
いわゆる「あれ? この後はどうしたらいいかな?」という状態ですね。また、
金魚の治療方法というのは、魚種や個体のくせ、残存している体力、あるいは病
気の種類によっても扱い方を変えてやる必要があります。その辺の配慮も上手く
治療に反映させてやらないと、結局はせっせと体力を奪うだけの行為になり金魚
を弱らせてしまうわけです。

 そこで私が、これから金魚飼育を始める皆さんにお勧めしたいのが「子赤」飼
育です。既に申し上げたように、子赤は免疫システムが成熟していませんので、
病気に罹りやすく、またどちらかというと治療にもかなり困難を伴います。濃い
薬品や塩が使えないのが理由のひとつですね。子赤を飼い始めると結構頻繁に色
んな病気に罹ってくれて(笑)、そのたびに飼育者はあれこれと調べたり頭をひね
ったりどこかで仕入れた方法を試してみたりと、試行錯誤を繰り返しながら自分
なりの治療行為を実践していくことになるでしょう。時には成功し時には失敗す
ると思います。
 そうした行為の結果たとえ子赤を死なせることになったとしても落ち込んだり
する必要はありません。ひとつのトラブルが過ぎ去るたびに飼育者としての技量
が知らないうちに確実にステップアップしているからです。何が悪かったのか冷
静に考えて次回はそれを改善するようにすればさらに学習効果は高まります。ま
さに習うより慣れろですね。私個人的には、金魚飼育の技能アップにはこうした
方法が一番効率がいいと思っています。子赤十匹も死なせればもう一人前の金魚
飼育者ですヨ(笑)。

 子赤をお勧めするわけはもうひとつあります。既にお気付きでしょうがいわゆ
る“経済性”です。一匹云千円もする高級魚を次々に死なせるのは精神的にもよ
くありません。命に値段はつけられないなどと奇麗事をいってみても歯が浮くだ
けですよね。こんなことをいうと、「Hinconは子赤をパイロットフィッシュとし
て扱っている。けしからん!」などと口を尖がらせる方もいるかもしれませんが、
それは完全な誤解です。私がお勧めする子赤飼育では、子赤を職人の高みにまで
いざなってくれる案内人(パイロット)と考えているわけで、あくまでも“長生
きさせたい貴重な生命”であることには違いありません。“アンモニア発生装置
(=モノ)”として扱うパイロットフィッシュ法とは全く次元の異なる話である
ことをご理解ください。