金魚飼育のクイズ1(金魚導入の失敗)
問題
真夏の暑い時期、貧困君の子供が夜店の金魚を持ち帰ってきました。ビニール
袋を通して見る子赤はとても元気がよく可愛いのですが、さてこれを死なせない
ように飼おうと思うと、まず何をすればいいのかわかりません。
貧困君はとりあえず小さな昆虫用プラケースに冷たい水道水を2〜3リット
ルばかり入れて、倉庫に置いてあったハイポを一粒ぽんと入れました。そして、
時を移さず、金魚をビニール水ごとドボドボとプラケースに放り込みました。
エアレーション装置(いわゆるブクブク)などは持っていませんでしたが、明
日の日曜日に水槽などとまとめて買って来るから大丈夫だろうと考えました。
夜、寝る前にプラケースの金魚を見ると、なにやら元気そうに泳いでいます。
この分だとニ、三日はこのままでも平気な気がしてきた貧困君でした。
ところが、次の日の夕刻、そろそろアクアショップにでも行こうと思ってプ
ラケースをちらりと覗いてみると――なんと金魚は水面にぷかぷか浮いている
ではありませんか。どう見ても死んでいます。
「な、なぜ!?」貧困君は軽いパニックに陥りました。とにもかくにも子供に
は「もともと弱い金魚だったんだよ」と言い訳をして、なんとか事なきを得た
のですが、本当にそうだったのかどうかは釈然としません。
さて、貧困君のやったことのどこがいけなかったか? そして、金魚の死因
は何だったのでしょうか?
回答例
貧困君はたくさんの失敗をしでかしていますネ。!(^^)!(←ナンダコレ?)
@まず、通常は金魚を導入するときは、それがたとえ涼しい季節であれ「冷た
い水」にいきなり放り込むのは無茶というものです。金魚は水温変化に敏感
な生き物で、とりわけ周りの温度が急激に下がった場合は、十中八九、体調
を崩してしまいます。これが失敗の始まりです。
A次にハイポの使い方が間違っています。ハイポ(チオ硫酸ナトリウム)とい
うのは水道水に含まれている塩素を中和させるためのもので、一般にカルキ
抜きと呼ばれています。5ミリくらいの粒状結晶として市販されていますね。
ハイポは一見氷砂糖のようで人畜無害に見えますが、その適量は非常に少な
いことは意外と知られていません。正しくはハイポの使用説明書なりをきっ
ちりとお読みになるといいかと思いますが、一般には 100リットルくらいの
水道水に対してチオ硫酸ナトリウムの結晶が60mgといわれています。つまり、
「100リットルの水にハイポ1粒(〜100mg)」が目安となります。
さて、ここで非常に技術的な問題に直面します。というのは、バケツの容
量は通常10リットル程度ですから、ここにハイポを一粒放り込んだ場合、適
量を大幅に超過しています。少なくとも貧困君のように2〜3リットルの水
道水にハイポ一粒入れてしまっては問題外です。超高濃度のチオ硫酸ナトリ
ウム溶液に金魚を泳がせることになってしまいますね。
そこで、私がよくやる計量法をご紹介します。まず 500ccの計量カップを
用意します。そこに 500ccの水を入れ、ハイポを一粒溶かし込みます。そし
て、金魚を入れるバケツが仮に10リットルであれば、計量カップから50ccだ
けをバケツに注ぎ込み、残りは捨ててしまいます。これでOKです。正確で
はありませんが、おおむね規定量に近い量のハイポがバケツに投入されたこ
とになります。もちろん、こんなことをしなくても、テトラ社から出ている
コントラコロラインという中和剤を使えば問題はクリアできることはいうま
でもありません。
さらに間違い探しをしましょう。次に貧困君はハイポを放り込んで“時を
移さずに”金魚をプラケースに投入していますね。これは非常にまずいこと
です。ハイポは完全に水に溶解するまでに相当時間がかかりますから、それ
までの間、金魚は残存塩素にモロにさらされていることになるからです。
B次の問題点は、そもそも金魚を入れるバケツの水量が少なすぎることです。
金魚が病気のときもそうですが、硝化菌がまったく存在しない“新水”に金
魚を退避させるときは、アンモニアや亜硝酸の濃度がちょっとしたことで急
上昇しますので、濃度変化を最小限に抑えるためにできるだけ多くの水量を
確保しなければなりません。できれば最低でも1匹につき5リットルくらい
の水量が必要でしょう。
また、水量が少ないほど、プラケース中の溶存酸素(O2)の絶対量は少
なくなります。エアレーション装置を入れていなかったからには、金魚にと
って、もともと存在していた溶存酸素が切れたときが命の終わりとなります。
このエアレーション装置というものは、実は結構奥深いものがあります。こ
れについては別の機会でご紹介したいと思います。
C金魚をバケツに入れる手順がまったく出鱈目なことはもはやいうまでもあり
ませんネ(笑)。ビニール袋をまずはバケツ水に20〜30分浮かべ、まず水温を
合わせます。しかるのちに、ビニール袋内の水を新水と徐々に混ぜ合わせて
いきます(⇒水質合わせ)。そして、金魚をバケツに入れるときは素手で優
しくつかみ、そっとバケツに放してやります。ドボドボやってしまってはい
けません。ちなみに、ビニール袋の水は病原菌が入っている可能性がありま
すから、基本的には捨てなければいけません。
以上、思いつくままに貧困君の間違いを指摘してみました。さて、これだけ
の情報で、皆さんは金魚が頓死した原因を推定することができるでしょうか?
私の想像をいくつかあげてみます。
■すくってきた金魚がもともと弱かった可能性・・・あり得ます。ですが、ビ
ニール袋で泳いでいたときは“元気だった”ということですから、やはりその
後の貧困君の扱いがまずかったと考えるのが自然でしょう。もっとも、夜店の
金魚というのは、通常、在庫管理が滅茶苦茶ですから、本当の意味で健康な個
体にめぐり会うことは実際の話、相当難しいかもしれません。
■残留塩素にやられた可能性・・・これは否定できません。ですが、これにや
られるとあまり時間をかけずに金魚の挙動がおかしくなります。就寝前に確認
したら金魚は元気だったとありますから、この時点では金魚は残留塩素のアタ
ックをかろうじて逃れたものと推測されます。ただし、最低でもストレスの蓄
積に寄与しているはずです。
■水合わせが失敗した可能性・・・これも相当影響を与えていると思われます。
水合わせ(水温+水質)をきちんとやらないと、表面的には元気でも、実は金
魚は非常に大きなストレスを体内に内包します。ストレスの蓄積は免疫システ
ムの不調につながり、弱った金魚はさらに弱ってしまうという悪循環に陥りま
す。今回の場合、ストレスの重畳が間接的な死因としてかなり寄与しているか
と思います。
■酸欠の可能性・・・非常に可能性が高いです。水温にもよりますが、2〜3
リットルでは溶け込んでいる溶存酸素の量もただがしれています。就寝前に確
認したときはまだ残存していた酸素も時が経つにつれ消費され、次の日にはな
くなってしまったというストーリーはかなり説得力があります。実例をみても
酸欠というのは「頓死」の原因として常にトップランクにあるはずです。
■何らかの病気にかかった可能性・・・あり得ますが、それにしては死ぬのが
早すぎますね。金魚の病気というのは通常、微生物(細菌、寄生虫)によるも
のがほとんどで、罹患してから死ぬまでの間が1日未満というのは私は見たこ
とがありません。エラを攻撃するタイプのカラムナリス菌などにやられると、
数日で全滅してしまうことも十分あり得ますが、初めて金魚を導入して細菌の
せいで次の日に逝ってしまうというのはちょっと考えられません。
■アンモニア等による中毒の可能性・・・これが主因ではないかと私自身は推
測しています。金魚導入時の失敗の原因としては代表的だと思います。金魚が
来た――バケツに入れた――次の日死んだ――このパターンで主役となるのは
何といってもアンモニアです。亜硝酸も毒物ですが、これは劇毒のアンモニア
と比べると子供の遊戯のようなものです。金魚はある程度のアンモニア毒性に
耐える力を持っていますが、ある濃度(←極低濃度です!)を超えた時点で頓
死してしまいます。貧困君の場合は、水量がたった2〜3リットルしかなく、
金魚が排泄するアンモニアを安全レベルまで薄めるだけの絶対量がなかったこ
と、そして、糞やアンモニアが多量に入っていると推定されるビニール袋の水
を小さなプラケースに入れてしまったこと――これは悔やんでも悔やみきれな
い致命的なミステークです。
さらに、ハイポを入れ過ぎていることを思い出してください。こちらが主因
で死んだ場合は「ヤク中」による死亡ということになります(笑)。
以上でこのクイズは終わりです。なんだか自分でクイズを出して、自分で答
えるというのもはっきりいって妙な感じですネ(笑)。
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