金魚飼育のあれこれ(その8)

水換え量の決め方


水換え量を簡易計算で求める

 さて、これまでのところ、飼育槽に合った水換え頻度と割合は、主に硝酸塩
の検査キットを用いれば最適な量がわかるというお話をいたしました。
 基本的にはこれでいいのですが、おおよその目安としてはどの程度を考えれ
ばよいのか?――これは飼育者としては当然の疑問だと思います。いわれたよ
うに検査キットを使って水換え量を算出してみたところ、「1週間に2回、し
かも大型換水が必要です!なんていう結果が出ちゃったヨ。はっきりいってこ
んな頻繁な水換えは無理だなァ」という状況になってからでは方針転換が大変
ですよね。
 そこで、今現在の飼育状況(毎日与えている餌の量、種類、水槽の大きさ)
から大まかな水換え量を知るための計算方法をご紹介します。なお、これは米
国のALGONEという商用サイトで言及されていた考え方を少しアレンジしてみた
ものですが、全然難しくありません。電卓があれば誰でも出来てしまう代物で
す。

@A君は60センチ水槽を持っています。水量は52リットルで、硝酸塩を吸収す
 る水草は入れていないとします。ちなみ、飼っている金魚の数はこの際関係
 ありません。

AA君は毎日1回、ある市販の餌を 0.3グラムずつ与えています。どんな餌か
 というと、説明書きには「タンパク質の含有量40%」とあります。つまり、
 A君が毎日水槽に投入している、正味のタンパク質の量は、

         0.3グラム×(40/100)=0.12 グラム/日

 であることがわかります。

Bタンパク質に含まれる窒素(N;原子量14)は16%ですので、A君の水槽では、

         0.12×(16/100)=0.019 グラム/日

 の割合で窒素(N;原子量14)が導入されていることになります。水槽に入っ
 た窒素は、水槽内を浮遊する有機コロイドや金魚の排泄物といった、存在形態
 はそれぞれ違うものの、最終的にはバクテリアによって分解され、硝酸塩とし
 て水中に溶解します。
  ですが、餌に含まれた窒素のすべてが硝酸塩に変わることはありえません。
 それは水換えのときに、有機コロイドとして水に浮遊している窒素化合物が
 相当量除去されるからです。また、一般的に、水換えの際にはホースの先端
 を底砂にあてて底層水から取水することが推奨されています。これによって、
 水底に沈んでいた魚の排泄物(糞)のような巨大窒素化合物、あるいはその分
 解生成物が水と一緒に吸い取られ、水槽の外に捨てられます。排泄物における
 窒素の存在量は半端じゃありませんので、これが(一部とはいえ)除去される
 ことは、硝酸塩の濃度を飛躍的に下げることになります。要するに、水換えと
 いう作業によって、かなりの割合の窒素が硝酸塩に変化する前に外に放り出さ
 れてしまうというわけです。
 
  これらのことから、硝酸塩の濃度を計算する場合には、この水換え時の窒素
 除去率を考慮しなければ意味がありません。定量化が難しいことは承知の上で
 すが、ここでは控えめに、餌に含まれる窒素の70%が水換え時の除去を逃れ
 て、最終的に硝酸イオン(NO3;分子量62)となって飼育水中に溶出すると
 仮定します。(もちろん、定期的な糞掃除を実行されている方であれば、この
 割合はずっと小さくなるはずです。)

  すると、一日あたりに増加する硝酸イオンの量は次のとおりとなります。

         0.12×(16/100)×(62/14)×70%=0.060 グラム/日

C1週間に一度水換えをするということにします。すると、1週間のあいだに
 A君の水槽で蓄積される硝酸イオンの量は、

         0.060グラム/日×7日/週=0.42 グラム/週

 です。これを濃度に直すと、水槽水の重量は、比重を1とすると 52×1000=
 52,000グラムですから、

         0.42÷52,000×100=0.00081 %/週

 となります。普通、これほどの極低濃度は ppmという単位で表しますので、
 1%=104ppmという関係から、

         0.00081×104=8.1ppm/週

 という結果が出ました。つまり、A君の水槽の硝酸塩濃度は、1週間で
 約8ppm 増加することになります。

Dさて、硝酸塩濃度というのは通常どれくらいのレベルに抑えればいいのでし
 ょうか? 「自然界の環境では一般に 5ppm以下しか含まれていないので、
 飼育水槽もそれに合わせよう」とおっしゃられるかもしれませんが、これは
 現実問題として不可能に近いです。そもそも水道水の硝酸イオン濃度は9ppm
 程度はありますので、それ以下にするのはコストがかかり過ぎるからです。

  硝酸塩の管理レベルは人によって結構違っています。一般的には、おおむ
 ね50ppm(硝酸イオン濃度)を下回っていれば、金魚は大きなストレスを感じ
 ることがないといわれています。このことから、ここでは少し余裕をみて、
 仮に「30ppm」を管理レベルとします。

  すると、水換え前の濃度は30ppm、水換え後の濃度は22ppm(=30−8)とい
 うことになります。水換えを行った後は、 22ppmから徐々に上昇し、1週間
 後に再び30ppm(管理レベル)となるわけですね。

Eつまり、30ppmを22ppmにするために必要な換水量を求めればいいことにな
 ります。ここで、換水は水道水(9ppm)で行うとします。したがって、換
 水割合は、

        (30-22)/(30-9)≒1/2.6

 となります。つまり、A君は1週間に1回 、約1/3強の水換えをしてやれ
 ばいいというのが、結論となります。


 以上のことを中学校の数学みたいに公式にしてみました(笑)。

 *********************************
《水換え量の算出式》 d(日)に1回水換えをする場合、

       [A・(K−S)/(5・a・p・d)]分の1を換水する。

         ここで、Aは水槽水の量(リットル)
             Kは硝酸イオンの管理値(ppm)
             Sは水道水の硝酸イオン濃度(ppm)
             aは1日に与える餌の量(グラム/日)
             pは餌中のタンパク質含有率(%)
 *********************************

 たとえば、上の例のとおり、A=52、K=30、S=9、a=0.3、p=40、d
=7 を代入してみますと、計算結果は 2.6分の1(約1/3)になりますね。水
換え量の目安を決めるのに結構役に立ちますので、よろしければ使ってみてく
ださい。

 さて、ここで一つ驚かれた方がいらっしゃるかもしれません。それは、1日
の餌の量が0.3グラム という、かなり少ない量にもかかわらず、換水量はそれ
なりに必要だという事実です。0.3グラム といえば、薬味スプーン山盛り一杯
が(推測ですが)おそらく0.1〜0.2グラム程度ですから「薬味スプーン2杯」
といったところでしょうか。金魚2、3匹分としてはよさそうな印象を受けま
すが、5、6匹もいたらちょっと金魚が可哀想な気もしますね。
 これをどうするかは、飼育側の考え方ひとつです。方針としては次の3つぐ
らいが考えられるでしょう。

1.0.3グラム/日でよしとする。
  小さい金魚5、6匹程度ならこれを選択するのもいいでしょう。ひもじい
 だろうなァと思うくらいの量が実は金魚の健康を長く維持することになりま
 す。

2.換水量を増やして、餌の量を増やす。
  これは体力的には一番辛いもしれません。ちなみに上の式を使って求める
 と、水換えを1/3から2/3に増やせば餌の量は2倍近くに増やすことができま
 す。ですが、2/3というのは大型換水のなかでもほとんど最大級ですね。一度
 に行うとおそらく水質ショックが起こりますので、2日に分けて行うことに
 なるでしょう。

3.硝酸塩の管理レベルを30ppmから50ppmに緩める。
  悪魔に魂を売ってしまうようで、ちょっとお勧めしにくいですが、私なら
 これを選択してしまうかもしれません(笑)。ちなみに管理レベルを50に変え
 ると、餌の量は約2倍に増やすことができます。薬味スプーン山盛り4、5
 杯程度。これなら何匹も飼えそうですね。
  なお、硝酸イオンが 60ppmを超えてしまうと、金魚のストレスが極端に大
 きくなり始めますので、注意が必要です。

4.水草を導入する。
  一番普通の対策です。実質的に飼育対象が増えますので、結構面倒ですが、
 硝酸塩の蓄積はものすごく少なくなります。少なくとも硝酸塩の除去という
 観点からは、水換え頻度は激減するでしょう。

5.底砂の糞掃除を定期的に行う。
  これが一番のお勧めです。これをいいたいがために、このコラムを書いた
 といっても過言ではありません(笑)。これと物理フィルタの洗浄の合わせ技
 で管理すれば硝酸塩濃度は飛躍的に低減されます。注意点はひとつです。底
 砂掃除と水換えをできれば別の日に行うということです。これは硝化バクテ
 リアの急激な減少を回避するためですね。

 さて、いろいろと対策を申し上げましたが、それを実行すれば、最低でも0.6
グラム/日の給餌が確保されることがご理解頂けたかと思います。次の問題はそ
の量で金魚を何匹養うことができるのかということですね。これについては、古
くから一つの目安が存在しています。「一回に与える餌の量としては金魚の体重
の2%程度が最適」というのがそれです。金魚の体重が仮に7グラム(6センチ
位の小型姉金に相当します。)としますと、1匹あたりの給餌量は0.14グラムで
す。したがって、一日 0.6グラムの給餌量では、60センチ水槽で4〜5匹という
計算になります。前にもお話しましたが、「1匹あたり10リットルを確保」とい
う経験則ともおおむね合致しています。

 ですが、この2%という数字はあくまで金魚を早く大きく育てるという飼育
環境で決められたもので、金魚自身にとってはいくぶん無理をした数値ではな
いかと推測しています。実際上はもっと少なめにしたほうが金魚の健康にはむ
しろプラスであることはこれまで嫌というほど経験してきました。その意味か
らすると、4〜5匹といわず、もっとたくさんの数を飼育することは充分可能
です。もっとも、この辺りはもはや飼育者の好き好きともいえる領域ですので、
金魚の成長も考慮した上で、じっくりと楽しみながら検討なさってください。