水換えの大切さ
金魚の飼育とは要するに《施餌》と《水換え》の2つに他なりませんが、た
ったこれだけのことでも適正な量と頻度を実行なさっている方は意外と少ない
かもしれません。ご近所や知り合いの水槽を今まで拝見してみるに、水質保持
の観点から結構綱渡り的な飼育をなさっている方が見受けられます。
別に統計をとるほど多くの人に聞いたわけではないのですが、おおよその傾
向として、二週間に一度だけ 1/3の水換えをしているという方が多いようです。
水換え量と頻度は、金魚の数や大きさによりますので一概にはいえませんが、
水草を入れた水槽であれば、これくらいの感じで結構バランスがとれているか
もしれません。水草というのは硝酸塩を吸収してくれる働きがあるからですね。
ですが、水草のないベアタンク水槽の場合は、やや換水量が少なすぎる印象が
拭えません。たとえ金魚が死ななくても、有害物質の濃度が水質合格ラインぎ
りぎりのレベルで上下している可能性があるでしょう。
もしそうだとすると、これは金魚自体の体力(というより耐力?)にかなり
依存した育て方ですので、ちょっとした環境の変化によって金魚を病気にさせ
てしまう確率が高くなります。こうした状態をクリアして、金魚が本当の意味
で健康に暮らせる環境にするためには、まず、思い切った大型換水によって現
状の濃度レベルを十分下げてやり、定期的な水換えの量あるいは頻度を上げて
やる必要があるでしょう。
特に私Hinconのように過密水槽をもっている人間は、水換えには慎重の上に
も慎重を期すことが大事です。ちなみに私はひとつの水槽(60センチ水槽)に
何匹の金魚を入れているかというと、当時のメモによると、今まで一番多かっ
た時期で以下のとおりです。
・10〜15センチ程度の丸物:3匹
・5〜10センチ以下の丸物:4匹
・6、7センチ程度の和金:1匹
・5センチ以下の長物、丸物:7匹
合計15匹でした。このコラムのなかで適正な金魚の数として「1匹あたり10リ
ットル」とか書いておきながらこの有様。なんてひどい飼育者と思われた方も
たくさんいらっしゃるでしょう。私自身ひどい奴だと思います(笑)。だけど祭
りのたびに和金が増えるし、知り合いから「もらってくれ」といわれると断れ
ない性格です。そんな私ですが、今の居宅は狭いのでたくさんの水槽を置く余
裕もありません。どうにもこうにも仕方がないのです。水槽は満員電車のよう
な様相を呈しておりましたが、それでも定期的な水換えをたっぷりとやってい
たおかげで、金魚たちは病気もせずにすくすく育っておりました。
このときの水槽の状態をご紹介しますと、アンモニアと亜硝酸は常にゼロを
示していましたが、バクテリアの最終生成物である硝酸塩については物凄いス
ピードで増加していました。水換え頻度は当然のことながら1週間に1回。そ
のときの換水量は(水温によって微妙に増減させていましたが)1/2〜2/3とい
う量です。要するに毎週のように大型換水をしないと大量に発生する硝酸塩を
処理し切れないのですね。もう少し減らしても金魚のほうで我慢してくれるか
もしれませんが、あえてそういう選択はとりませんでした。ただでさえ過密状
態でストレスの溜まった金魚に別のストレスを重畳したくなかったからです。
いずれにせよ、水草のない水槽でやむをえず過密飼育をする場合、水換え量を
大幅にアップさせてやらないといけませんので気をつけてください。
さて、水換えをザバザバ続けていたおかげで私の過密飼育水槽の金魚は1匹
も罹患しませんでしたが、逆にどんどん成長していったのが破綻をもたらす原
因となりました。1年ほどすると体長が倍増する個体も出てきますので、さす
がに泳ぐスペースが極端に少なくなっていき、身動きがとれないようになって
しまったのです。そして1年半ほど経った頃でしょうか、いも洗いのような水
槽のなかで、何匹かの金魚が軽いエラ病の症状を呈するようになってきました。
この段階が過密飼育の限界だと感じた私はさっそくこれを中止することにし、
でかいものから順番に知り合いにあげたりショップで引き取ってもらったりし
て数を減らしました。あの時期は金魚たちにとって悪夢のような毎日だったこ
とでしょう…。
過密飼育のやり方?
さて少し話は変わりますが、このような過密飼育を実現させるため、換水量
のアップ以外に私がやったことを参考までにお話いたします。
上の水槽は実は元々8匹の個体しかいませんでした。一番下に書いた、小さ
めの金魚以外の個体です。実をいうと60センチ水槽でこれくらいの大きさの金
魚を8匹も飼うのは実際のところやや過密なのですが、現代人の典型である私
Hinconとしては一応“適正”な数と思い込むことにしています(笑)。そのまま
でいけば当面は何も問題もなかったのですが、あるとき、近所の同好の士が引
越しをするというので、その人が飼っていた7匹を引き取ることになったわけ
です。引越し先に持って行けばどうかと何度も助言させて頂いたのですが、そ
の方にも止むに止まれぬ事情があり、仕方なしに協力することにしました。と
はいっても、8匹の水槽にいきなり7匹増やすことは実際上不可能です。あえ
てやってしまうと、硝化サイクルの規模が増大するまでの期間、それこそ15匹
全員がパイロットフィッシュとなってしまうでしょう。導入した当時のメモを
見ながら、私がどうやってその7匹を自分の水槽に導入したか――そのあたり
の話をさせて頂きます。
@引越し日当日に先方が持ってきたのは、飼育水を入れた大型のバケツで、そ
のなかに7匹の金魚が泳いでいました。今まで使ったフィルタ(バクテリア
がたっぷり繁殖した優れもの)や底砂も欲しいといったのですが、既に廃棄
処分してしまったとの返事。ショックで心臓止まりそうになった私Hincon…。
Aとりあえずフィルタの強化をしなければなりません。今までは上部式フィル
タしか設置していませんでしたが、これでは15匹を養うことはできませんし、
エアレーション(酸素供給)も不足することになるでしょう。そこで、私は
ろ過面積が広くて生物ろ過に優れた《スポンジフィルタ》を新たに追設する
ことにしました。ダブル使用です。本当は先方が今まで使用していた簡易フ
ィルタを使う予定でしたが、結果的にはスポンジにして良かったと思いまし
た。実を言うと簡易フィルタには活性炭などの吸着剤を含んでおり、ろ過の
完成にはむしろ邪魔だと思っていたからです。
Bいつものように水槽の金魚に餌をやって数時間放置した後、金魚たちを全て
バケツに避難させました。これは水槽を生体の居ない状態にする必要があっ
たからです。すなわち、フィッシュレス・サイクリングの手法を応用してこ
の水槽の硝化能力を飛躍的に高めようというわけです。なお、施餌後に数時
間放置したのは、糞や尿をできるだけ水槽内で排出させるためです。施餌後
すぐにバケツに移したりするとバケツ内のアンモニア濃度が急上昇してすぐ
に換水しなければならなくなりますよね。避難させた金魚たちにはこれから
1週間ほどバケツ生活を余儀なくさせることになりますので、とりあえず
0.2〜0.4%程度の塩水浴をしてもらうことにしました。なお、先方さんから
受け取った金魚7匹も同様に塩水浴に移行しました。
Cさてここまで準備をしておいて、本水槽のバクテリア培養を始めました。と
はいっても、既に8匹の金魚が長年暮らしてきた水槽ですから、それなりの
下地はあります。1日2回程度、多めの餌を水槽に与えればいいだけです。
夏場でしたので特にヒーターは使いませんでしたが、水温は27℃くらいがい
いようです。なお、生体がいない水槽ではアンモニア発生効率が悪いことは
既に他のコラムでお話したとおりですので、この場合は15匹分の餌に加えて
マグロの切り身も適量使います。とにかくガンガンとアンモニア源を入れて
やるわけです。真水から硝化サイクルを作るのと違って、バクテリアの増加
は物凄く早いです。十分な数のバクテリアになるまで高々1週間くらいでし
たので、途中、古い餌やマグロを回収したりとか、中途半端に換水したりと
かはしませんでした。(このあたりはそれぞれの個別環境によって違うと思
いますので、トライされる場合はご注意ください。)
Dアンモニアと亜硝酸がともにゼロを維持するようになったら、15匹用の硝化
サイクルの出来上がりです。その後は丹念に古い餌などを除去し、 2/3の大
型換水を行いました。そして、じっくりと水あわせをしながら金魚15匹を導
入しました。入れる順番はもちろん小さくて弱い金魚からですネ。
以上の手順で私は過密飼育に適した水槽を作りました。ただ、これはあくま
でも水質の観点から適しているというだけで、狭いスペースで生活しなければ
ならない金魚のストレスを度外視してのことです。
これを何とか緩和させる方法はないかと考えましたが、とりあえず、小さい
金魚の避難場所として蛸壺のような装飾品を入れてやりました。ちょっとした
おまじないのようなグッズですが、これは意外と人気が高くて、小さい金魚た
ちはこぞってその中へ身を入れていたのを記憶しています。ひとりになれる場
所を確保することは人間でも金魚でもやはり必要なのですね。
さて、過密飼育でお話することはこんなところだと思います。誤解のないよ
うにいっておきますが、決して過密飼育を勧めているわけではないということ
です。むしろ、百害あって一利なし。金魚の寿命もおそらく短くなるに違いあ
りません。ただし、現代社会というのは、人間ですら満員電車のような過密環
境で生活を強いられている社会ですから、金魚といえども事情によってはそう
ならざるを得ないというのが悲しいかな“現実”というものでしょう。
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