飼育のあれこれ(その5)

水換え量と頻度


 「水換えの量はどれ位にしたらいい?」とよく聞かれるのですが、これは実
際上とても難しい問題です。というのが、その人の飼っている金魚の種類、数、
大きさ、与えている餌の量、水温、水槽のろ過能力などによって大きく変わっ
てくるからです。
 飼育本などには例えば1〜2週間に1回、1/3くらいの換水を行うと書か
れていますが、これでいい場合もあるし悪い場合もあります。夏の暑い盛りに
餌を毎日たっぷりと与えている水槽ですとこの程度の換水では全然足りないで
しょうし、比較的低温で餌を控えめに与えている水槽ならちょうどいいくらい
かもしれません。
 こんなことをいうと「じゃあ一体どうすりゃいいんだよー」という声が聞こ
えてきそうですが、こればかりは残念ながら正確にお答えすることができませ
ん。水質や金魚の健康状態などをじっくり見ながら、その水槽に最も合った水
換えを決めてやる他ないと思います。その際、少々高額(1500円くらいだった
かナ?)ですが硝酸塩の検査薬(※ アンモニアや亜硝酸の検査薬ではありま
せんよ)を購入されれば失敗することはないでしょう。通常、試薬の色で判定
するもので、目に見える形で水槽の状態が概ねわかりますので、ごく簡単に理
想的な水換え時期や量を知ることができます。

 具体的なやり方をご紹介しましょう。まずは一番お手軽でアタマを使わない
方法です。毎日、普通に餌をやりながら2日に1回くらい硝酸塩の濃度を測定
します。検査薬の取扱説明書を見れば、“危険濃度”が書かれていますから、
その日に測定した濃度が危険濃度ギリギリであれば、その次の日が水換えの時
期となります。至極簡単ですね。このやり方はある意味合理的ですが、ウィー
クディに余暇をもてない人間にとっては非常に困難を伴います。理由はいうま
でもありません。週の真ん中に水換えをしなきゃならなくなっても対応できな
いからですね。私なんかもその典型的な人間で、バケツリレーのような肉体労
働は土、日じゃないと体がもちません。

 次に、検査薬を用いたちょっとラクな方法をお話します。この方法だと、最
初に数回検査薬を用いるだけであとは必要ありません。
 まずは、いつものように水換えをした後に検査薬で硝酸塩濃度を測定します。
例えば濃度が危険濃度の20%だったとしましょう。 100%で金魚が危険にさら
されるわけですから、この状態ではあと80%の余裕があります。楽勝楽勝と思
いがちですが、さにあらず。そのあとに与える餌の量によっては『あっ』とい
うまに危険濃度に到達します。餌は金魚の栄養であるとともに、水質を汚す最
大の原因なのですね。とにもかくにも、その後も普段と同量の餌をそのまま与
え続けてください。
 さて、一週間経ちました。再度、硝酸塩濃度を測定してみましょう。このと
きに測った濃度が40%だったとします。つまり、一週間で+20%増加したとい
うことです。ということは、一週間に一度水換えをする人であれば、水換え後
の水槽の硝酸塩濃度は最低でも80%以下にしなければならないということにな
りますね。理由はいうまでもありません。例えば90%ですと、一週間後には90
+20=110% となって危険濃度を超えてしまいますよね。つまり、換水量は次
のように決められます。

 @水換え直後の硝酸塩濃度が80%だとすると、一週間後には 80+20=100%
  となる。
 Aこれを80%にするために必要は換水量は、(100−80)÷100=1/5となる。

 おわかり頂けたでしょうか。つまり、この場合は一週間に一度おおむね 1/5
の換水が必要だということです。ただし、上の例ですと、この水槽の硝酸塩は
80〜100% の範囲で変化しますが、金魚にとってはかなり高すぎるレベルです。
硝酸塩といえども有害な物質ですから、少なければ少ないほどいいに越したこ
とはありません。通常は水換え直前の最も高濃度の時でも50%以下にくらいに
抑えた方がコケの発生も少なく、なにより金魚の病気が少なくなります。ここ
では仮に、水換え直後の濃度を30%にすることにします。すると、必要換水量
は以下のとおり計算できます。

 @現在の水槽の硝酸塩濃度が 100%になっているとします。この場合、最初
  の水換えは、まずなによりも 100%を30%に薄めることが先決です。すな
  わち、必要換水量は(100−30)÷100≒ 2/3となります。水槽リセットと錯
  覚してしまうくらいデカイ換水量ですね。
 A一週間後には 30+20=50%に増加します。
 Bこれを30%にするために必要な換水量は、(50−30)÷70=1/3.5 となりま
  す。要するに2回目以降の換水量は 1/4程度の部分換水でよいという結果
  が得られました。

 ここで重要なのは、最初の@です。この大型換水を多くの方は忘れてらっし
ゃるか、または軽視しておられるのではないかと思います。例えば、最初の大
型換水を行わずに、毎週 1/4の部分換水を行う場合を考えてみましょう。

 @一回目の1/4換水では、濃度は100×(1−1/4)=75%となります。
  金魚もとりあえずは一息つけますが…。
 A1週間後には 75+20=95% に増加しています。これはきつい。
 B二回目の1/4換水では、濃度は95×(1−1/4)=71.3%となります。
 C同様に三回目の1/4換水では、(71.3+20)×(1−1/4)=68.5%になります。

 少しずつ減ってはいますが、これでは最終的に50%以下になるまでには何週
間もかかってしまいます。これだけ高濃度の状態が続きますと魚の体が先にま
いってしまうかもしれませんね。

 一般に大型換水というのは飼育者としてはあまりやりたがらないものです。
理由は色々あるかと思います。「せっかくバクテリアサイクルが完成した水を
換水で大量に捨ててしまうのがもったいない」という方、あるいは、「水質変
化は金魚がもっとも嫌うところなので換水量をできるだけ少なめに抑えたい」
という方、または、単に手間のかかることが嫌だという方――さまざまでしょ
う。ですが、硝化バクテリアはフィルターや底砂に大部分が棲息していて、飼
育水に存在する割合はたかが知れていますし、水質変化のストレスによるマイ
ナス効果よりも有害物質を薄めるプラス効果のほうが金魚にとっては好ましい
のです。水はあまりいじらないほうがいい、というのは金魚飼育の常識ですが、
あくまでも「良好な水質の水」の話です。悪い水をいじらずにそのままにして
いても何ら得るものはありません。遠慮なさらずに悪い水はザバザバと換水し
てやりましょう。

 さて、次のコラムでは、実際に水換えをなさる場合の注意点をお話します。