金魚飼育のあれこれ(その2)

金魚を買った後にやること


金魚を買った・・・その後は?

 小鳥やハムスターに比べて金魚ショップで金魚を購入するのは実に簡単で
す。ビニール袋に金魚と水を放り込んで酸素を密封しゴムで縛ってもらう。
あとはそれをもらって買い物カゴに他の買い物品と一緒に放り込んでおけば
いいだけです。金魚ならではのお手軽感覚ですね。他のペットの場合はなか
なかこうはいきません。

 家に持ち帰る際に唯一注意することはこのままの状態で長時間放置しない
ことぐらいでしょうか。ビニール袋のなかは極端に狭いうえ、持ち運んでい
る途中でかなり過激に揺れることがあります。また、冬や夏などは買い物袋
のなかで水温がおそろしく変化しますから、金魚が感じるストレスは想像を
絶するものがあると考えて間違いありません。ビニール袋に入れてもらって
から自宅の水槽に放すまでの時間としては(金魚の匹数にもよりますが)め
やすとしては大体1〜2時間でしょう。4時間を超えると命の危険がありま
す。というより家に着いたら死んでる可能性大ですネ。移動時間は短ければ
短いにこしたことはないのです。

 さて金魚が無事家に到着しました。ここでちょっとクイズを出してみまし
ょう。

 ***
  問題:A君は60cm水槽(たとえば水量が52リットルだとします。)にリ
     ュウキンを5匹飼っています。それだけでは物足りないので、A
     君はさらにワキンを3匹買ってきました。さて次のやり方は正し
     いでしょうか?

 @金魚が元気そうだったのでビニール袋の水と一緒にドボドボと水槽に入
  れた。

 簡単すぎました(笑)。答えは勿論間違いです。金魚ショップでは大量の魚
を狭いショーケースに集めて飼育していますから、その中で泳いでいる魚は
ほぼ例外なくストレス過剰の状態にあります。ということは病気に罹ってい
る確率もそれだけ高いわけです。時々「トリートメント中」とか「調整中」
いう札をかけて水が黄色くなった水槽を見かけますが、あれなどは病気に罹
った金魚を治療しているのですね。
 ですので、販売の対象としている水槽の水も、金魚が発病していないだけ
で、何らかの病原菌が多少は存在していると考えるの普通です。こんなこと
をいうとショップの人に叱られてしまうかもしれませんが、既に飼育してい
る大切な魚を死なせないための最低限の防衛策といえるでしょう。正解は「
ビニール袋の水は自宅の水槽には絶対に入れない!」でした。

 では次は正しいでしょうか?

 Aビニール袋の金魚を網ですくって水槽にゆっくりと入れた。ビニール袋
  の水は病原菌がいるかもしれないので全部捨てた。

 答えは・・・これも間違いです。後段の水を捨てたところはいいのですが、
前段が間違っています。これではせっかく買ってきた金魚も、温度ショック
や水質ショックで弱って死んでしまうかもしれません。金魚にとって周囲の
水は人間でいうところの“空気”と同じです。その温度や不純物の濃度とい
った条件はでき得る限り慎重に合わせてやらなければならないのです。正解
は「ビニール袋の水を飼育槽の温度・水質に徐々に合わせてやり、金魚が
十分慣れたところで飼育槽にゆっくりと放してやる。」でした。

 Bまず温度を合わせるためにビニール袋を飼育槽に浮かべ、20分くらいそ
  のままにした。

 これは正解です。ビニール袋は熱伝達を妨げませんから水槽に数十分浮か
べておくだけで水温は徐々に同じになっていきます。ただしこれには注意が
必要です。それは飼育槽に温度ヒーターを使用して比較的高温に維持してい
る場合です。例えばビニール袋の温度が15℃で、飼育槽の温度が25℃だとし
ましょう。すると20分かそこらの短時間で温度が10℃も上昇してしまうわけ
ですから金魚はそれこそ強烈な温度ショックを受けます。ただでさえ運搬中
のストレスが大きい上、こんな拷問のようなことをされた魚はおそらくその
日のうちにあの世行きでしょう。
 これを避けるためには金魚を購入する前準備として飼育槽の温度をゆっく
りと下げておくのが一番簡単です。もちろん急激に下げるのではなく、1日
に1℃くらいのペースでゆっくりと下げてやります。要するに予想されるビ
ニール袋の水との温度差を事前にできるだけ小さくするわけですネ。
 なおビニール袋には酸素を注入してくれている場合が多いと思いますが、
水槽に浮かべる際には密封を切ってオープンの状態にして結構です。このあ
と水合わせに1時間くらいかかりますが、この程度であれば金魚が酸素欠乏
になることはありません。

 C温度が同じになったので、次に水質を合わせを行うことにした。10分間
  隔でビニール袋の水量の1/4ずつ換水を行った。金魚も元気そうだ。
  ふむふむ。

 ちょっと待って下さい。基本的には正解なのですが、実はやや難がありま
す。百点満点ではないということです。この方法で4回換水をしたとしまし
ょう。するとビニール袋の水の濃度(ここでは飼育槽水の濃度を意味してい
ます。)はどんな変化をするか・・・

・1回目の1/4換水 ⇒1/4ですから濃度は25%になりました。
・2回目の1/4換水 ⇒計算は面倒ですが43.8%になります。
・3回目の1/4換水 ⇒57.8%
・4回目の1/4換水 ⇒68.4%

 さてどうでしょうか。1回目の換水で濃度が25%ですから、金魚の周囲の
水が100あったとすると、そのうち25が水槽水になっているわけです。その10
分後には100のうち44(つまり半分近く)が一気に水槽水に・・・さらに10分
毎に58、68と・・・これはもう漸増という感じですね。
 これは何をいいたいかというと、Cの方法では最初の1回目、2回目の換
水の濃度変化が急激過ぎるということです。逆に3回目、4回目の換水は実
質的にはほとんど意味をなしていません。金魚の体は“濃度”にきわめて敏
感ですから、時間とともにゆっくりと比例的に上昇していくのには対応でき
ますが、急激な変化にはほとんどお手上げです。金魚の水質ショックはこう
いうところからも生じてくるのです。
 ではどうすればよいのか?
 簡単です。「最初に少なめに換水、回数とともに多めに換水」これが正
解ですね。具体的には1/5⇒1/4⇒1/3⇒1/2という感じでやれば魚にとって最
高の水換えとなります。よろしければ是非お試しなさって下さい。

 D換水率が大体1/2となったので金魚を水槽へ移すことにした。手で扱うの
  は良くないのでビニール袋に網を突っ込んでなんとか水槽へ入れること
  ができた。めでたしめでたし。

 こ、これはちょっと面倒くさいですよね? また、金魚は人間の手の温度
は灼熱地獄ほどに感じますのでDはある意味で理想的なやり方ではあります
が、網を小さな袋に突っ込んでごちゃごちゃやっていると知らず知らずのう
ちに魚体に傷をつけてしまいがちです。傷ができれば病原菌がここぞとばか
りに入り込んで繁殖を始めるに違いありません。
 ここは魚屋さんになったつもりで思いきって徒手空拳でひょいと水槽に移
してあげましょう(笑)。平手のなかでケナゲに暴れる金魚も結構かわいいも
のがありますよ?
 最後に、換水で減った水槽水はきれいな水ですぐに足してあげて下さい。
既に棲んでいる金魚にとっても、ちょっとした水換え効果が期待できます。

 さて以上が金魚導入編ですが、本当にきちんとやるのなら、飼育槽に入れ
る前にトリートメントをすることになります。要するに運搬で溜まったスト
レスを取り除いたり、病気になりかかった魚体を回復させるための措置です。
普通は塩を使って1週間ほど「塩水浴」をさせます。魚の年齢にもよります
が、塩素をきちんと抜いた水道水で大体0.2〜0.5%ぐらいの濃度です。
 特にショップで黄色い水で調整した水槽を発見した場合、持ち帰った個体
も保菌者である可能性が高いので、塩水にほんの少し魚病薬を添加してやっ
てもいいかと思います。ただし、薬ははっきりいって魚体にストレスを重畳
してしまいますので、塩水浴である程度余分なストレスをとってからのほう
が確実でしょう。このへんは難しいさじ加減ですが、やらないよりはやった
ほうが後々の飼育が楽になると思います。ちなみにトリートメントをする際
にも当然のことながら、水温・水質をゆっくりと合わせることを忘れずにな
さって下さい。“変化”は金魚がもっとも嫌うところです。