金魚の病気を治そう(その10)

イカリムシの駆除と金魚水槽のリセット


 体に寄生したムシをあらかたピンセットで抜くところまでお話しました。
次は、
 @(体からムシを引き抜いた時の)傷の消毒と二次感染の予防
 A体に残ったムシの完全駆除
 B飼育水槽の殺菌・消毒(“リセットもどき”)
の順番でお話します。

傷の消毒と二次感染予防

 まず病魚を別の水槽またはバケツへ移します。この時、エアーレーション
はもちろん必要です。そして、0.1〜0.3%程度の塩、さらに細菌感染の予防
のために、グリーンFゴールドなどの薬を規定量(より心持ち少なめに)入
れて混合薬浴します。グリーンFゴールドは色んな細菌に対応できる万能薬
ですから予防には最適です。このとき塩を入れ過ぎないように注意して下さ
い。もちろん時間に余裕のない方はエルバージュのみの短時間浴(4時間ま
たは24時間)でも構いません。

 しばらく病魚を薬浴の環境に慣れさせます。

 次に10リットル程度の水道水にカルキを入れて真水を作ります。1〜2時
間ほどエアレーションしてやればいい真水ができるでしょう。外に出して紫
外線に当てればもっと完璧な水ができると思いますが、いったん外へ出すと
後で温度合わせが大変ですし、長時間放置しておくと“青水”に近くなり、
これから行う病気治療には使えませんので注意が必要です。
 この真水を少し使って(2〜5リットル程度)今まで何度も登場したイソ
ジンの5分間浴(1リットルにつき2〜4滴)を行います。イソジン浴は用
途が広くて、エラ病の治療にも使えるし、体表の消毒にも効果があります。
ちょっとした万能薬ですね。5分経ったらもとの薬浴水槽(バケツ)に戻し、
そのまま1日半くらいそっとしておきます。これで傷口の消毒と二次感染予
防はおおむね大丈夫でしょう。

イカリムシの完全駆除

 イカリムシの一生は大体1ヶ月半くらいで、メスは死ぬまでの間に何と10
〜15回も産卵するといわれています。さらに驚くべきことに1回の産卵で数
百個の卵を産むということで、面倒だからといって放置してしまうと水槽は
あっというまにイカリムシの巣窟となってしまいます。そこで、上の治療を
行った次の日に、今度は体に残ったイカリムシの駆除に移ります。
 とはいってもこの段階で体に残っているのは、ピンセットで引き抜けなか
ったもの、すなわち、頭部近くに寄生したムシだと思いますので、薬を使う
しかありません。寄生虫によるエラ病治療のところで述べましたが、リフィ
ッシュやマゾテンと呼ばれる薬を使います。両者ともトリクロルホンという
物質を含んでいますが、この成分がイカリムシの幼虫を殺してくれるのです。
 なお、ここで“幼虫”とあえて書いたのには理由があります。というのは
このトリクロルホンはムシの卵や成虫にはあまり薬効を発揮しないからです。
このことが実はイカリムシ駆除を一層難しくさせているのですね。(ちなみ
に成虫すら殺してしまうデミリンという恐い殺虫剤がありますが、私は使用
したことはありません。)

 まずグリーンFゴールドの薬浴水槽を徐々に真水に薄めていきます。薄め
方はわかりますね。薬水を2リットル程度残して、残りは捨て、そこにカル
キ抜きした真水を加えていくやり方です。
 そうしておいて別の水槽(バケツ)に温度合わせをした真水を用意してお
き、元の薬浴水槽の濃度が十分薄まったところでこの水槽へ金魚を移します。
その後はしばらく新しい環境に慣れさせます。なお、基本的にはヒーターを
入れて定温(15℃〜30℃)を維持するのが効果的です。

 次にリフィッシュ等を規定量よりやや少なめに投入します。取説の用量は
幅をもたせてあると思いますが、やや薄めの量で十分でしょう。むしろ多め
に入れてしまうと金魚に副作用が残る場合がありますから注意して下さい。

 これでひとまずOKです。次の週末までこのまま放置して構いませんが、
その場合は木曜日の夜までは餌抜きです。というのは、薬浴水槽にはろ過バ
クテリアがいませんので餌を与えていると薬水中にアンモニアが増えてきて
別の病気を引き起こしたり、中毒死したりしてしまうからです。ただし、前
述したように、イカリムシ寄生の場合は奪われた栄養をできるだけ補充する
のが基本ですから、私の場合、次の手順で餌を与えることにしています。

 次の週末まで2度だけ餌を与えます。1回目は火曜日の朝がいいでしょう。
そして金魚の排泄が全て終った頃(バケツの底に糞があれば排泄終了ですね。
例えば水曜日の夜あたりでしょうか。)に薬水の全換水を行います。もちろ
んそのとき魚病薬も入れ直します。そして、土曜日には飼育水槽へ移すこと
になりますので、金曜日の朝にも餌を与えることができます。要はアンモニ
アを蓄積させないようにうまく栄養補給をしてあげるということですね。

飼育水槽のリセットもどき

 上の手順で金魚の治療している間の時間を利用して、飼育水槽の殺菌・消
毒を行います。私Hincon の編み出した(笑)眉唾ものの方法ですが効果はて
きめんだと思います。
 まず飼育水槽に魚体が一匹もいないことを確認します。当たり前ですね。
以下、水槽パーツごとに箇条書きにしてみました。

・[底砂] 全て廃棄処分とします。昔再利用に向けて色々と工夫してみたこ
 とがありますが一度として成功しませんでした。砂や砂利はその構造上洗
 浄しにくく、どんなにごしごし洗っても微小な卵の類まで完璧に除去する
 のは至難の技なのですね。また、薬剤に浸してみても砂の底のほうまで薬
 効が届きにくいのでイカリムシの一部はどうしても生き残ってしまいます。
 結局、底砂はイカリムシの卵や幼虫の格好の隠れ家であるということも考
 えて、思い切って廃棄してしまうのが最も効率的なやり方だと思います。
 これだけで大部分のイカリムシを駆除できたことになります。
  なお、捨てる時は、エチケットとして、きちんとと洗浄した後、日干し
 をして完全に乾燥させてからしかるべきところに廃棄するようにしましょ
 う。

・[水] 10〜20リットルくらいを残し、残りは全部捨てます。手順としては
 まず上澄みの比較的きれいな飼育水をバケツなどにとっておいて、残りは
 底砂と一緒にぽいすればいいでしょう。この水はろ過バクテリアの種水と
 なります。
 
・[フィルタ、ろ材] フィルタあるいはろ材は、カルキ抜きした真水を使っ
 て洗います。普段ろ材を洗うときは、ろ過バクテリアをできるだけ洗い落
 とさないようにチャプチャプ程度の洗浄だと思いますが、今回の場合はイ
 カリムシの卵を振り落とさなければいけませんので、手もみする等して普
 段よりやや丁寧に洗って下さい。といってもこの後の処理もありますので、
 洗濯板でごしごしこすったりする必要はありません。
  なお、上部フィルタの物理ろ過用として一番上にかぶせてあるウールマ
 ットは新しいのと交換して下さい。(ウールマットというのは目が細かい
 ので、卵や生まれたての幼生体がひっかかり易くムシの温床になっている
 場合が多いです。)

・[器具] 上部フィルタ装置や補助フィルタを構成する器具、ヒーター、エ
 アストーン等については、イソジンを薄めた液で消毒した上、塩素やトリ
 ハロメタンをたっぷり含んだ水道水でじゃばじゃば洗いたおしてやりまし
 ょう。こちらの方は全然遠慮する必要はありません。ちなみに上部フィル
 タ装置の底を見ると死んだイカリムシが畳鰯みたいな感じでわんさとへば
 りついているのが観察できます。(キモチワルイケド・・・)

・[水槽内部] 水道水でさっと洗い、キッチンペーパー等できれいに拭き取
 ってやります。隅に卵が残り易いのでそうしたところはごしごしこすり取
 って下さい。

 以上のとおり洗浄が終ったら、お年をめしてらっしゃる方はお茶でも飲ん
でまず一服しましょう。一気にやると筋肉痛になってしまいますからね。

 次にバケツにとってあった飼育水10〜20リットルを水槽に注ぎます。この
中にはまだイカリムシの卵や幼虫が潜んでいますね。また、ろ材の方もさら
っと洗っただけですから、まだまだたくさんの卵が残っています。そこで、
このろ材(やフィルタ)も水槽水に沈め、リフィッシュ等の薬剤を規定量よ
り多めに入れてやります。生体がいませんので遠慮する必要はありません。
ただし、あまりにも多すぎると虎の子のろ過バクテリアを殺してしまいます
ので、2倍くらいの濃度に抑えておくのが適当でしょう。これだけ高濃度の
トリクロルホンを入れてやれば駆除効果はてきめんです。なお、新しく買っ
た底砂は最後の最後まで使いません。この段階で底砂を入れてしまうと、わ
ざわざイカリムシに隠れ家を提供してやるようなものだからです。

 そうしておいて薬浴用のエアーストーンを水中にセットし、エアレーショ
ンをしてやります。これは次の週末までの1週間、ろ過バクテリアを生かし、
もとのレベルまで増殖させるため処置です。前述しましたが、ろ過バクテリ
アは好気性の菌なので溶存酸素が切れると死滅してしまいます。
 さらにアンモニアの供給源としてマグロの切り身があればそれを水槽に吊
るします。なければいつも使っている金魚の餌をぱらぱらと入れてやるだけ
でも結構です。
 また、イカリムシの卵は15℃以下の低温や30℃以上の高温では孵化しませ
んので、秋や冬はヒーターを使い、真夏はファンや氷で冷やすなどして、強
制的に孵化させる必要があります。そうしないといつまでたっても幼虫にな
って水中に泳ぎ出してくれませんので薬がさっぱり効かないことになります。

 このままの状態で次の週末まで放置します。
 イカリムシの卵は2〜4日で孵化し、脱皮すると水中を浮遊するようにな
ります。このとき水槽に宿主がいないと放っておいても徐々に死んでいきま
すが、完全に死滅するまで長い時間がかかります。これを高濃度のトリクロ
ルホンの力で即死させるのがこの駆除方法のポイントです。1週間もあれば
ほとんど全ての卵が孵化しますし、また、卵や成虫にもわずかながら薬効が
あるようなので、短い時間で完全駆除することができます。

飼育水槽へ復帰

 さてついに水槽を立ち上げます。底砂や飼育水を捨てたり、ろ材を洗った
りしてろ過バクテリアが激減してしまった水槽ですが、倍々ゲームで増えま
すので1週間も経てばほとんど回復しているはずです。また、イカリムシの
ほうも高濃度のトリクロルホンによってほぼ完全に死滅していると思ってい
いでしょう。これだけいい条件が揃っていれば水槽を再度立ち上げても大丈
夫です。

 あとは説明は要らないかもしれません。まず真水を加えて上部フィルタの
水頭圧が確保できるくらいの水位まで上げてやります。そうしておいて、フ
ィルタ部にウールマットやキッチンペーパーをしきつめ、ポンプを数時間程
度回してやります。すると水中のゴミやイカリムシの死骸などがマットに付
着しますので、それを捨て、あとはリフィッシュで1週間浸した生物ろ過専
用のろ材を設置し、補助フィルタやエアーストーンなどを取り付け、真水を
規定のレベルまで供給し、温度合わせ、水合わせをしたあと、病魚を飼育水
槽に移してやるだけです。
 この時、薬の濃度はかなり薄まっているはずですが、念のため規定量以下
になっていることを必ず確認して下さいね。また、薄すぎる場合は追加して
下さい。イカリムシの治療は終ったわけではありません。卵がひとつでも残
っている限り薬が切れればまたゆっくりと増殖していきますから慎重の上に
も慎重を期す必要があるのですね。
 とどめとして、次の週末に2/3くらいの大型換水を行い、薬をやや少な
めに入れ直します。これであらかたイカリムシの駆除が終了するはずです。
まだムシが取れない場合や死に損ないの幼虫が皮下組織に残っている場合は
次の週にも同じことを実施して下さい。
 飼育水槽がひとつしかない場合でも以上のやり方で治療・消毒すればイカ
リムシは十分駆除できます。何度もイカリムシにやられて頭にきている方は
ぜひ試してみて下さい。効果のほどは実証済みです。


最後に

 これで「病気を治そう」のコーナーは一応終了です。寄生虫ではイカリム
シの他にチョウ(別名ウオジラミ)というのが有名ですが、基本的には同じ
治療で大丈夫です。
 今読み返してみると、ずいぶん長々と書かれていてなんだかまとまりがな
かったかもしれませんね。いつか気が向いたときに表みたいな形で整理して
みたいと思います。とりあえずこの話の最後までお付き合い下さり有難う御
座いました。