金魚の病気を治そう(その16)

積極的な塩水浴治療(続き)


金魚の病気に塩の効果を飛躍的にアップさせる方法(続き)


[飼育条件]30リットル水槽、底砂あり、フィルタ・・・上部ろ材のみ、エアレ
     ーション(ぶくぶく)なし、水草なし、大型姉金4匹

2.治療開始――0.5%塩水浴
 さて、ろ材を無事退避したら、いよいよ治療を開始します。順番としては、
まず水槽の清掃から始めますが、このとき飼育水にデトリタス(有機物)の
雪が降りますので、上部フィルタ装置には必ず1枚ウールマットなどを敷い
ておきましょう。塩水浴中は交換あるいは洗浄を頻繁に行ってください。

(1)底砂の清掃
 病魚を驚かせないようにゆっくりと、かつ徹底的に底砂のバキューム清掃
を行います。乾電池式の清掃用具が必要となりますが、なければ、一時金魚
をどこかへ退避させて底砂ごとザブザブ水洗いすることになります。ちょっ
と面倒ですが、底砂中に有機物が大量に残った状態で昇温してしまいますと、
好気性従属栄養細菌の活性化により一時的にアンモニアが増えたり、有機物
にクリングした病原菌群(アエロモナス菌など)が勢力を強めることがあり
ます。十分お気をつけ下さい。なお、これを完全に回避したいという場合は、
別水槽あるいはバケツで昇温作業を行うことになります。

(2)大型換水
 2/3あるいはそれ以上の水換えを行います。これは病魚を入れたままや
りますので、少しずつ換水していくのが理想的です。(大型換水の方法につ
いては、別コラムを参照。)このときも、底砂のほうから水を抜き、できる
だけデトリタス除去を心がけてください。
 なお、使用する新水(サラミズといいます。)は、カルキ抜きはもちろん
必要ですが、通常の水換えで用いる新水と異なり、可能であれば半日〜1日
ブクブクを入れた状態で汲み置いたものを使用するのが治療効果を最大限に
高めることになります。何の病気でもそうですが、病状が重ければ重いほど、
ベースとなる治療水の水質が悪ければ、その後の治療方法がいかに適切でも
病魚は治癒しません。

(3)エアレーションの強化

 これは非常に重要なことですが、塩水浴で、しかも水温を上げる場合、上
部フィルタだけではエアレーションが絶対的に不足します。
 意外と知られていませんが、水に塩を溶かしていくと、溶存酸素の飽和量
が徐々に減っていきます。酸素を溶かし込む力がだんだんと減退していくの
ですね。ちょっと極端な例ですが、海水の濃度にまで上がると、溶存酸素は
淡水の8割くらいにまで下がってしまいます。
 また、水温上昇に伴って溶存酸素は減少します。20℃のときの溶存酸素量
を100とすると、30℃に昇温すると85にまで下がります。なんと15%も減って
しまうわけです。
 これらのことから、塩水浴の昇温治療では以下のことが重要です。

 ・過密水槽では絶対に昇温治療を行わないこと。ただでさえ、1匹に割り
  当てられる酸素が少ないところに、さらに“配給”が減るわけです。こ
  れ以上の説明は不要ですネ。

 ・昇温治療の際には、水量を十分確保するとともに、エアレーション装置
  (ぶくぶくなど)を必ず追加すること。

 これらがきちんとできていないと、塩を入れて昇温した途端に酸欠状態と
なり、病状悪化あるいは窒息死に至ります。

(3)塩水濃度の上昇
 1〜3時間に 0.1%ずつ時間をかけて塩水濃度を上昇させます。この時の
注意点は、金魚の大きさによって塩水の最大濃度が異なるという点です。一
般に 0.5%が推奨されていますが、これは5センチくらいの金魚を対象とし
た数字で、それより小さい金魚の場合はやや濃すぎると思われます。子赤で
あれば、0.2〜0.4%くらいを目処にすればいいでしょう。

 この状態で半日以上放置します。5センチ金魚の場合は 0.5%塩水浴とな
ります。この慣らし期間は、環境変化に病魚の体を十分適応させるための措
置です。それが不完全なまま昇温してしまいますと、十中八九、治療が失敗
に終わります。なお、濃度上昇と水温上昇を同時に行うのは(飼育者はラク
ですが)金魚にとっては相当のストレスになりますので、避けるようにして
下さい。
 また、あせって魚病薬なども添加してしまいますと往々にして最悪の結果
となってしまいます。魚病薬は一般に水温を上げると薬効が上がるといわれ
いますが、28℃以上の高温下では毒物に近くなるものがあります。リフィッ
シュなどが典型例ですね。いずれにせよ、魚病薬は塩と違って、抗菌力が強
い分、魚に相当なストレスを与えます。水換えや昇温のストレスに薬のスト
レスが加わると、弱った金魚はそれだけで昇天してしまう可能性が高くなる
でしょう。

(4)水温上昇
 いよいよ水温を少しずつ上昇させます。このとき、水温上昇を開始する時
刻が重要です。通常、水槽の水温は夜に下がり、日中どんどん上がっていき
ますネ。金魚の体というのは基本的にこうした水温変化に対応するようにで
きています。時間がないサラリーマンの場合、ついつい夜に昇温してしまう
方が多いのですが、これは金魚の生体リズムを破壊する行為以外何者でもあ
りません。治療というよりはわざわざ病状を進行させているようなものです。

 昇温開始は朝です。少々遅れてもせいぜい午前中ですね。そして、その昇
温速度は最低でも1時間に1℃です。白点病のような軽い病気治療とは異な
り、ここではエラ疾患を含んだ相当重症の金魚を対象としていますから、2
〜3時間に1℃にしてもいいくらいです。そして、最終的には28℃まで上げ
ますが、1日のうちに5℃以上昇温することは金魚の適応能力を超えてしま
います。28℃に達しなくても「昇温前の水温+5℃」まで昇温したら、その
日の作業はお仕舞いにして、それ以上一切水イジリをしてはいけません。

(5)塩水濃度をさらに上げる
 次の日の午前中、塩水濃度をさらに0.1%上げます。0.5%塩水浴していた
場合は0.6%にするわけです。人によっては、さらに0.7%にする場合もあり
ますが、リスクがあるので辞めたほうがいいと思います。濃度を上げたら、
この日の作業は終わりです。水温のほうはいじってはいけません。

(6)水温上昇を続ける。
 さらに次の日の朝、残りの水温上昇作業を行います。最終到達温度は28℃
です。28℃になったらそのまま2〜3日放置して、慣らし期間とします。

(8)さらに高温にする。
 金魚の状態が良ければ、28℃のままずっと維持します。変化がなければ、
水温をさらに上昇させます。子赤や遺伝的に弱い金魚の場合は、病状を勘案
しつつ、29℃程度を目安にします。5センチ以上の魚であれば、30〜31℃ま
で上げます。長年ランチュウ飼育をしている私の親戚は、 0.8%塩水浴で、
33℃くらいまで上げることがあるそうですが、普通、高濃度、高水温になる
とヒレが溶けたり頓死のリスクも大きくなってきますので、時間の限られた
我々一般のホビィストは、0.7%、31℃くらいを上限にしておいたほうが無難
ですね(笑)。

(7)高水温を維持したまま数日間(最大1週間)放置する。
 有機物はほぼ除去されているという前提でいうと、この数日間は水換えは
必要ありません。ただし、底砂のバキューム清掃は隔日くらいに行うことが
必要です。
 なお、水温が高ければ高いほど、長期間の維持は禁物です。例えば、30℃
の状態で3〜5日間様子を見て、病状悪化の兆しが垣間見えたなら、高温に
ストレスを感じている場合がありますので、28〜29℃くらいまで水温を下げ
て負担を軽くしてやるのがいいでしょう。

 ※この高温塩水浴は、夏場は水温上昇幅が小さくてラクですが、冬場は
  逆に上昇幅が大きいので慎重に行う必要があります。要所、要所で慣
  らし期間を十分とってあげるのがポイントです。



閑話休題:どんな塩を使えば良いか? !(^^)!

 別コラムで基本に塩は普通のものであれば何でもいい旨のことを書いたとき、
「たくさん種類があって購入時にいつも迷ってしまう。敢えていえば何かお勧
めはありませんか?」というご主旨の質問を頂いていました。塩については巷
間、色々な意見があって定説はありませんが、丁度いい機会ですので、私の考
えを次にご紹介致しましょう。

 斯界では“岩塩”が人気を呼んでいるようです。岩塩というのは要するに、
海や淡水湖の底で化石のように固まった塩塊を破砕して使いやすくしたもので
すが、長年の結晶過程で多くのミネラル分を含んでいますので、これが金魚の
健康にいいと信じてらっしゃる方が多いと思います。
 たしかに、ある種のミネラルが水棲動物にプラスの影響を与えるのは十分あ
り得ることです。ですが、私個人としては岩塩の効用については非常に懐疑的
です。
 理由はふたつあります。ひとつはミネラルのバランスに関することです。金
魚が必要としているミネラルは、底砂や餌などにふんだんに含まれており、日
常的に十分摂取されています。そこへいつもと違うミネラル組成をもったもの
を放り込んだりすると、飼育水のミネラルバランスが大きく偏ってしまいます。
こうした状態は、必ずしも金魚に好影響を与えるとは限りません。隔離水槽で
使った場合も同じことです。
 また、岩塩に限らず、水にミネラル豊富な塩を溶かすと、PHが無闇に上が
り過ぎる傾向があります。PHが8〜9以上の水は、金魚の飼育水としては色
々な意味で好ましいことではありません。ちなみに、高純度のNaClは水に溶か
してもPHをほとんど上下させません。

 塩水浴に最も適した塩は、ミネラルも含めて不純物が極力少ない塩だと考え
ています。その意味では、外国で生産・販売されている塩は、珪酸カルシウム、
ヨードなどの不純物が相当含まれているので避けたほうが無難です。また、た
とえ“岩塩”などと銘打ってあっても、自然な岩塩に食品添加物を山のように
入れている製品も数多く存在しています。
 また、日本で販売されている塩についても、例えば「つけもの用の塩」など
は味付け用の添加物が非常に多く、金魚の治療には使えません。普通のテーブ
ルソルト(いわゆる「食卓塩」)も、塩をさらさらにするために、炭酸マグネ
シウムなどの添加物が入っていますから候補からは外れます。では、どういっ
た塩がよいのか?

 アクアショップに専用の塩が売られていますね。これは使っても差し支えな
いと思います。ただし、成分表をよく見て、不純物が一切含まれていないもの
を購入なさってください。ミネラル豊富などと書かれているものは即、棚に戻
したほうがいいかと思います。
 また、スーパーなどで入手できるものでお勧めできるのは、(財)塩事業セン
ターで作られている「食塩」(←商品名デスヨ(笑))です。入れ物はビニール袋で
あったり薄茶色の包装紙であったりと、いくつかのバリエーションがあります
が、日本全国どのスーパーでもごく普通に入手できます。この素朴な商品は、
NaClがなんと99%以上も含まれている高純度の塩で、食品添加物はゼロ、そし
て余計なミネラル分もほとんど含まれていません。あたかも金魚飼育者のため
に販売されているような塩です。しかもお値段は1キロ約百円という、超お手
ごろ価格(笑)。人間の食卓用としてはかなり物足りないかもしれませんが、金
魚の塩水浴用としては、私Hinconがお勧めする数少ない市販品のひとつになり
ます。なお、私自身、長年愛用していて治療実績は数限りなくあります。よろ
しければお試し下さい。

(つづく)