金魚の病気を治そう(その6)

尾ぐされ病の治療手順


 その2の話のなかで「尾ぐされ病(尾腐れ病)と松かさ病は二、三度しか経
験がない」と書きましたが、これは私Hinconの律儀?な性格と関係していま
す。つまり、この二つの病気は飼育水の水質が悪くなってくると頻繁に見ら
れる傾向があるのですが、少なめの餌をしっかりと守り定期的な水換えをさ
ぼらない限りこれらの病気には滅多にお目にかかることができないからです。
自画自賛のようで、場外からは舌打ちの音が聞こえてきそうですが本当の話
なので仕方がないということで(笑)。
 ですが、私とて人間ですのでつい手を抜きたくなるときもありますし、金
魚を飼い始めた当初は無意識にパイロットフィッシュ法をやっていましたの
で当然のことながら未経験ではありません。それに昔は広い実家で非常に多
くの金魚を飼っていましたので、二、三度とはいっても尾ぐされや松かさ系
統で扱った病魚だけでも累積でニ十匹近くになります。自分なりの治療法を
確立するには十分過ぎる程の(痛い?)経験ですね。

 前置きはこれくらいにしまして、さっそく尾ぐされ病の治療手順をお話し
ます。尾ぐされ病の症状は以前もお話しましたとおり、カラムナリス菌とい
う細菌が原因で、尾びれが充血し軟条が溶けてしまいパサパサになってしま
う病気です。もちろん尾びれに限らず他のひれ等に感染する場合もあります
が、原因は同じですので治療法は変わりません。

@ 水温を±2℃くらいに合わせた塩素抜きの真水を10リットル程度用意します。
 薬浴水槽への金魚の移し方は前述と同じですね。最初に飼育水2リットルを薬
 浴水槽へ入れ、そこへ金魚を放り込み、あとは予め作った真水を少しずつ
 足していくというやり方です。5リットル程度でもいいのですが鰓病と同様、
 薬浴用の水量はできるだけ多くしたいところです。
  エアレーションは鰓病の場合と同様ですが、尾ぐされ病の場合、できれ
 ばヒーターを入れて水温を飼育水槽と同じ温度に保持させた方がいいと思
 います。というのは、尾ぐされ病は鰓病と違って一日やそこらで治るもの
 ではなく一週間程度の薬浴が必要となりますが、その場合、毎日の気温の
 上がり下がりが激しい季節ですと病魚の体調がさらに崩れて病気が悪化し
 てしまう可能性が高いからです。薬浴水槽の水量が少ない場合は余計に水
 温変化の追従性がよくなりますから金魚にとってさらに不利になりますね。

  ちなみに尾ぐされ病の時は薬浴水槽の温度は上げないほうが無難です。
 薬効は温度が高いほどいいということで温度を30℃近くまで上げる方もい
 らっしゃるようですが、カラムナリス菌の繁殖は高温域(27〜28℃)で最
 も活発になるので昇温した場合病気が逆に進んでしまうケースがあります。

A 薬浴水槽へグリーンFゴールドを規定量(少しずつ)入れます。この薬
 は2種類の合成抗菌剤(フラン剤、サルファ剤)を成分としておりまして、
 カラムナリス菌やあとでお話するアエロモナス菌を多角的に攻撃するとい
 う優れた魚病薬です。
  抗菌剤を使った治療薬にはこの他にフラン剤を単独成分としたエルバー
 ジュエースがあります。これは比較的強い薬で薬害が出やすいという報告
 もありますが、取扱説明書に書かれているとおり、きちんと規定量を守り
 24時間を上限とした薬浴を行う限り最高の薬効が期待できます。なお両者
 とも顆粒ですので小さなプラケースやバケツで薬浴する場合は計量が難し
 いですが、これについては別コラムでお話します。
  フラン剤やサルファ剤の他にはオキソリン酸という合成抗菌剤を成分と
 した薬もあります。グリーンFゴールドリキッドやパラザンDがそれです。
 カラムナリス菌への薬効もかなりなものですが、実際はむしろアエロモナ
 ス菌を対象として作られた薬です。また、値段も比較的高いので尾ぐされ
 病程度の軽い病気に使用するのは私Hinconにしてみれば勿体無い気がしま
 す(笑)。ただ以下の点で愛用されている方は多いようです。

  ・グリーンFゴールド“リキッド”と銘打たれているように液体なので
   計量がきわめて楽。
  ・オキソリン酸を飼育水槽に直接入れても水草が枯れるようなことがな
   い。(ただし、オキソリン酸はグラム陰性菌を選択的に攻撃する薬な
   ので、ろ過バクテリアもそれなりにダメージを受ける。)

    ※ 硝化細菌がグラム陽性菌だから水槽に入れても大丈夫、という
     俗説がありますが、これは違いますね。硝化細菌はグラム陰性菌
     ですのでオキソリン酸の攻撃対象に入っています。

B グリーンFゴールドを使っている場合は、1時間くらい経ってから、薬
 浴水槽が0.1〜0.2%濃度になるように塩を少しずつ溶かして入れます。Aと
 Bの順番は当然のことながら逆でもまったく構いません。なお、塩の投入
 は必須ではありませんので別に入れなくてもいいのですが、尾ぐされ病の
 場合は入れたほうがあきらかに治りが早いです。伝統的な塩の効果という
 のはやはり何といっても素晴らしいものがありますね。ただし前にもお話
 したように入れ過ぎは金魚に過剰のストレスを与え、鰓病などの二次的な
 症状を促してしまいますのでくれぐれも注意なさってください。

  ちなみにエルバージュは十二分に強い薬ですので塩はむしろ余計です。
 入れ過ぎたりすると間違いなく体調を崩してしまうでしょう。また、Aの
 最後でお話したグリーンFゴールドリキッドを使う場合、岩塩などのミネ
 ラル入りの塩を 0.5%になるまでどっさりと入れるのはNGです。両者と
 もかなりのアルカリ性ですので薬に加えて岩塩を入れると飼育水槽のペー
 ハーを大きく変えてしまうことになり魚体にとってマイナスにこそなれプ
 ラスにはなりません。塩で病気を治したい場合は基本的に「単独使用」が
 原則と考えておけばいいかと思います。

C このまま半日ほど放置して金魚を薬浴水に慣らします。この慣らし期間
 は必ずとって下さい。次の治療は金魚にとってはかなりきついものになり
 ますのですぐに移行してしまうとストレス過剰でぽっくり逝ってしまうケ
 ースがあります。

D 十分時間が経ったら鰓病のところで述べた5分間のイソジン浴を行いま
 す。イソジンの入れ過ぎ、薬浴時間のとり過ぎは絶対厳禁です。慎重の上
 にも慎重を重ねて行ってください。
  実をいうとこのイソジン浴はなくても尾ぐされ病は治ります。ただ病状
 の進んだ尾ぐされ病ですと治るまで時間がかなりかかってしまいます。そ
 の間、途中の薬浴水の換水、薬の入れ直しなどの治療管理?がすこぶる面
 倒で「もう治らなくてもいいや」とすら思ってしまうくらい大変なのです
 ね。私などはとてもじゃないけど対応できません。
  イソジン浴は細菌の撲滅にいぶし銀のような効果が期待できます。イソ
 ジンで半分、通常の薬浴で半分、というぐらいに思っておいて間違いあり
 ません。

E 1回目のイソジン浴から24時間後にもう一度イソジン浴を行います。こ
 れが駄目押しとなります。エルバージュを使っている場合はそのまま飼育
 水槽に戻しても構いません。というよりエルバージュの入った水に24時間
 以上金魚を浸けてしまうと薬害が出るとの報告もありますので避けてくだ
 さい。いずれにせよ2度目のイソジン浴の段階で菌はほぼ完全に死んでい
 ますので、尾びれが元に戻るのは時間の問題です。グリーンFゴールドで
 薬浴している場合はできたらそのまま薬浴を続けて下さい。土曜日にでも
 飼育水槽に移してやればいいかと思います。

 以上、尾ぐされ病の治療でした。飼育水槽側は 2/3くらいの水換えを実施
してカラムナリス菌をできるだけ減らすようにして下さい。念のため先に述
べたグリーンFゴールドリキッドを規定量の半分くらい(生体がいるなら少
しずつ)添加しておけばほぼ完璧でしょう。