金魚の病気を治そう(その5)

エラ病(鰓病)の治療手順


 鰓(エラ)病は、鰓に細菌や寄生虫が付いて鰓の機能が阻害され酸素を体内
にうまく取り込むことができなくなる病気で、寒い時暑い時に限らずいつの
季節でも発生します。鰓は金魚にとって人間の肺のようなものですからその
機能が損なわれることは即、命に関わります。病気の進行も早く、飼育環境
にもよりますがそのまま放置すれば死んでしまうまで数日とかからないでし
ょう。それだけに飼育者にとって緊急を要する病気で、発見したらすぐに措
置をすることが必要だと思います。

 では鰓病の原因からお話します。まず鰓病でもっとも多いのは、カラムナ
リス菌という細菌が鰓の内部に寄生することによるものです。既に飼育経験
のある方なら「ああ、あれか」とつぶやいてしまうくらい有名な細菌ですよ
ね。ただしどちらかというと、尾ぐされ病の原因としてよく知られているの
ではないかと思います。尾ぐされ病というのは、尾びれを構成している軟条
(硬い筋と筋を接着しているつなぎの部分)が溶けてきてパサパサになって
しまうという嫌な病気ですが、実のところあまり命に別状はありません。ま
た後でお話しますが早期発見であれば専用の薬を添加してやるだけでそのま
ま忘れてしまってもいつのまにか治ってしまうことが多いようです。
 問題は鰓についた微細な傷からこの菌が入り込んだ場合です。水槽の環境
にもよると思うのですがその場合の繁殖スピードには目をみはるものがあり、
症状が現れてから市販の魚病薬をおっとり刀で放り込んでも病気の進展速度
の方がはるかに早く、結局は金魚を死なせてしまうケースが多いのではない
かと思います。これを予防するには、まず鰓に傷を作らないことですが、こ
ればかりはいくら金魚に言い聞かせても無理というものでしょう。やはり餌
のやりすぎや水質の悪化をできるだけ避けることによって微生物に対する抵
抗力を常に維持させることと、定期的な水換えにより菌の増加をなるべく抑
えることです。当たり前すぎて「なあんだ」といわれてしまいそうですが、
これに勝る予防策はありません。

 鰓病原因として次に多いのはダクチロギルス、ギロダクチルスという寄生
虫によるものです。これらは外来性の傾向が強く、ほとんどの場合、新しい
金魚を購入した時に一緒にくっ付いてきます。そして一旦水槽に入ると接触
感染により魚体から魚体へとどんどん寄生の範囲を広げていきます。感染し
てすぐにぽっくり逝ってしまうことはありませんが早目の手当てが必要です。
これらの寄生虫は(通常肉眼では見えない程)超小型の“ひる”のような生
き物で、放っておくと鰓から体中の血を吸われ確実に死に至るでしょう。ま
た、あとでお話する大型寄生虫のイカリ虫やチョウ等もそうですが、寄生虫
というのは一般に(我慢ならないほど)生命力が強くて、水槽の水を全部換
えてもフィルターや底砂に卵や幼生体の一部が残り、専用の薬で徹底的に駆
除しない限り、おいそれと水槽から出て行ってくれません。これらの寄生虫
による鰓病の予防としては、フィルタがきちんと効いているか常時確認する
ことが大事ですが、それよりもまず金魚を買う時は慎重に選ぶというに尽き
ると思います。寄生虫による鰓病にかかっている魚は、私の感じでは水底に
沈んでじっとしている場合が多いようです。ショップの飼育水槽をある程度
時間をかけて観察し、少しでも不自然なそぶりを見せる個体を絶対に選んで
はいけません。

 あとはサイクロキータ(トリコジナ)という原生虫も鰓にとりつくことが
あります。原生虫というのは細菌よりほんの少し進化した微生物と思ってお
けばいいでしょう。ただ、これは鰓に取り付く前に体表に寄生して、粘液が
異状分泌したり鱗が剥がれたりすることが多いので、外見上明らかに典型的
な鰓病とは区別できるものです。私の場合、サイクロキータかな?と思われ
る症状に初期の頃一、二度出くわしたことがありましたが、暗中模索で何だ
かんだと色んな治療を施しているうちに結局治ってしまった(笑)と記憶して
います。過激な時代のごくごく偶然の成功例です。またこれは人から聞いた
話で恐縮ですが、サイクロキータには高濃度の短期間塩水浴(3%で5〜10
分)を1日おきに繰り返すと治るそうです。なお、原生虫ではあとキドロネ
ラというのが鰓病関連の原因となりますが、これは水温がかなり低い(10℃
程度)場合にしか発症しないらしく私Hinconは残念ながら?経験がありませ
ん。

 次に鰓病の治療のやり方ですが、実をいうと人によって随分と違うという
のが事実でしょう。私も昔は鰓病でかなり苦労しましたが、聞く人聞く人全
部といっていい程治し方が違っていました。鰓病の原因が上で紹介したよう
に多種にわたっているということが違いが生じる根本的な理由なのでしょう。
どの原因にも効く一般的な治療方法はないと思いますが、要するに鰓内部に
取り付いている細菌なり寄生虫なりを殺すか、あるいは弱らせる方法であれ
ば何をやっても効果はゼロではないということですね。ここでは私Hinconが
やっている方法をご紹介しますが、もちろんこれが絶対だといっているわけ
ではありません。むしろどちらかというとマイナーな部類に入ると思います
が、おそらく一番即効性があり、時間を限られた私にとってとても有難い方
法だと考えています。治療には慎重を要しますがとりあえず失敗したことは
ありません。

 鰓をやられた金魚は大抵動きが鈍くなります。
 多くは背びれをたたんでしまい、溶存酸素が多いと思われる箇所から滅多
に離れようとしなくなります。そして鰓自体はぴったり閉じてしまったり、
あるいはみっともなく開けっ放しになる等、不自然な動作が目立ってきます。
これらの症状がなんとなく出てきたらまず鰓病を疑えばいいでしょう。その
場合、次のような治療を施します。大方針としては、まずカラムナリス菌に
よる鰓病の治療を行い、様子をみて効果がないようであれば寄生虫用の治療
に切り替えます。

@まず水槽の水温と±0.1℃ の精度で合わせた10リットルの水道水(当然、塩素
 を抜く。)を用意します。何故 0.1℃かというと、鰓病の魚体というのは
 通常物凄く衰弱していて、ほんの少しの水温差でも体力がもたずに逝って
 しまうことがあるからです。(T_T)/~~~

A別の水槽またはバケツを用意して、元々の飼育水を2リットル入れ、そこに病
 魚をぽいと入れます。同じ水なのでショックはありません。そして@で作
 った同温の真水3リットルを(少しずつ)混ぜて5リットルにします。それだけで
 もいいのですが、できればその後少しずつ@で作った真水を足して、でき
 るだけ水量を多くします。これは最初の飼育水(2リットル分)に含まれてい
 た細菌や寄生虫の濃度を極力減らすことと、薬浴環境の溶存酸素量を増や
 すことが目的です。できることならバケツでなくて、40センチ程度の小さ
 めの薬浴用水槽を使って20リットルくらいに薄めることをお勧めしたいところ
 です。
  付け加えると、この薬浴水槽にエアレーションをすることを忘れないで
 下さい。普通のぶくぶくでもいいし上部ろ過装置でも構いませんが、原則
 としてウールマットやろ材は使いません。特にゼオライトや活性炭入りフ
 ィルタ等は厳禁ですね。これはこのあと入れる虎の子の魚病薬を無駄に吸
 収するという欠点があります。私の場合は不織布(ごみ袋などでよく使わ
 れていますね)を一枚さらっと敷いておくだけです。簡単な物理ろ過用で
 す。なお複数の病魚を同時に薬浴する場合や夏場など薬浴水槽の温度が高
 い場合はエアレーションはダブルにするなどして溶存酸素量を増やしてあ
 げて下さい。いずれにしても薬浴水槽の基本環境(水温、酸素)を十分に
 整えることが鰓病完治への第一歩です。

Bこうして作った薬浴水槽に、まずはカラムナリス菌に効く魚病薬、例えば
 グリーンFゴールド等を規定量(少しずつ)入れます。別に宣伝をしてい
 るわけではありませんが、この薬はカラムナリス菌に対して複数の薬効を
 持っており大抵の症状に効く素晴らしい薬です。エルバージュエースとい
 う薬もあります。これはもっと即効性がありますが少々きつめですので使
 用方法は取扱説明書に従って下さい。とりあえずこれで基本的な治療体制
 は完了です。ただし前述したように、この状態(市販の薬を放り込んだだ
 けの状態)では、鰓病の進行度合いにもよりますが、かろうじて病状を緩
 和させるか、あるいは進行を遅らせる程度の効果しかない場合が多いです。
 ほとんどの方のエラ病治療はここで終わってしまうと思いますので、場合
 によっては金魚を落としてしまうわけです。
  なお、ここで魚病薬の代わりに塩を使うことも可能です。薬浴ではなく
 て塩水浴にするというわけです。どちらがいいかというと、なかなか一概
 にはいえません。私はどうやっているかというと、魚体の鰓の動きになん
 らかの異常が見られる場合、つまり、明らかに鰓病だと考えられる場合は
 迷わず魚病薬を使います。そのほうが早く確実に治るからです。そうでは
 なくて、鰓病なのか単なる腸障害なのかわかりにくい場合(前日に与えた
 餌の量なども判断材料となります。)は、0.5%の塩水浴を選択します。塩
 は万能薬ですから鰓病にも腸障害にもプラスの効果を期待できるからです
 ね。いずれにしても、金魚の様子をじっくりとみて、わずかでも鰓病の可
 能性を捨てきれない時は、次のC以降の治療を施します。

C次に@で作った真水を別のバケツ(ここではプラケースとします。)2〜
 5リットル程度入れ、そこに、風邪のときによく使うイソジンうがい薬(イ
 ソジンガーグル等)を1リットルにつき2〜3滴投入しよくかき混ぜます。滴
 下する際はくれぐれも慎重になさってください。誤ってドボドボと入って
 しまったという場合は金魚をその水に入れると即死してしまうことがあり
 ます。イソジンというのは信じられないほど強力な殺菌・殺虫剤だという
 ことを忘れてはなりません。上限の目安としては1リットルにつき4滴です。

B病魚をイソジン入りの水に入れます。底に沈んで動かなかった金魚でもイ
 ソジンの即効力によっておそらく何らかの動きを始めるはずです。鰓をぱ
 くぱくさせて水底の方でゆったりと動き回っているときは成功と考えてい
 いかと思います。金魚が喜んでいます。この場合は《5分間》泳がせて、
 5分経ったら速やかに元の薬浴水槽にぽちゃんと戻します。短時間ですか
 らエアレーションはなくてもよいです。(あっても意味ないと思います。)
  イソジン水に入れた途端、狂ったように泳ぎ回ったり、水面へ来てパク
 パクしたり、あるいは沈んだまま死んだように動かなってしまった場合は、
 すぐに元のバケツに戻してあげて下さい。イソジンの入れ過ぎです。面倒
 ですが、1〜2日経過後(イソジンによるストレスから回復した後)もう
 一度トライして下さい。
  なお、5分くらいの短時間で治るのかどうか疑わしい方もいらっしゃる
 と思いますが、結論から申し上げてそれ以上浸けておくと死に至るほど十
 分すぎる時間です(笑)。ちなみに10分過ぎると金魚がまっすぐに泳げなく
 なって何となくゆらゆらした感じになり、20分を過ぎると水底に横たわっ
 て死んでしまいます。(←昔チョット実験したことがありました。金魚さんゴ
 メンナサイ…)

C病魚を薬用水槽に戻したら半日くらい様子を見ましょう。早期発見であれ
 ば、たった5分間のイソジン浴と24時間の薬浴(グリーンFゴールド)ま
 たは塩水浴で鰓病はあらかた回復してしまいます。ですので調子良さそう
 であればあと半日程度薬浴させておけば治ってしまうということです。例
 えば土曜日の早朝7時にイソジン浴をやって、夕刻の7時に金魚の様子を
 見て治る気配があればそのまま次の日(日曜日)の早朝には回復している
 ということで、さっそく元の飼育水槽に復帰させるという荒業も可能にな
 るわけです。時間に追われるサラリーマンにとっては涙が出るほど有難い
 薬がイソジンです。

D治らない場合、つまりイソジン浴して半日経っても相変わらず鰓病の症状
 が抜けない場合は、最初のイソジン浴から24時間以上の時間を空けてもう
 一度5分間のイソジン浴を施します。その場合、ここは少し危険な治療に
 なりますが、イソジンの投入量を心持ち多めにします。例えば1リットルあた
 り2〜3滴を3〜4滴に増やします。少しどきどきにしますが滴下量をき
 ちんと制御していれば大丈夫です。この2回目のイソジン浴で大抵の鰓病
 は治ると思います。

Eもしイソジンがあまり効かないようでしたら、カラムナリス菌が原因では
 ないということです。イソジンは細菌やウイルスに対して絶対的な効果が
 ありますからカラムナリス菌による鰓病であれば必ず目にみえる形でいい
 方向に働くと思います。それが効かないということは菌以外の原因と考え
 る他ありません。すなわち寄生虫と考えればいいのですね。前述のダクチ
 ロギルスなどの吸血性の寄生虫がそれです。
  吸血虫はイソジンでかなり弱りはしますが、ちょっとやそっとの濃度で
 は死にません。なんといっても菌よりは進化していて環境の変化や外部か
 らの化学攻撃にはそれなりに強いからです。しかし、かといって高濃度に
 すると魚体のほうが危険にさらされますし、“鰓”という金魚にとって死
 生を司る重要部分に高濃度のイソジンをべたべたと塗布するわけにもいき
 ません。そこで対寄生虫用の専用薬に切り替える必要があるわけです。

Fまず、金魚が入った薬浴水槽を徐々に真水に全換水します。この段階では
 @で作った真水はなくなっていると思いますのでその時は面倒ですが新た
 に作らないといけませんね。水温はもちろん今までの薬浴水槽にきっちり
 と合わせます。全換水といってもグリーンFゴールド等の薬や塩が十分の
 一以下の薄さになれば十分でしょう。
  それから寄生虫用の薬を入れます。これはイカリ虫とかチョウとかの治
 療で使用するもので結構です。私の場合はリフィッシュという魚病薬を使
 っています。虫の駆除剤ですから細菌用の薬と違って超強力だということ
 はまず認識しておかなければなりません。いい加減に計量してもし仮に多
 すぎたりすると病気とは関係なくそれだけで金魚の具合が悪くなってしま
 うでしょう。計量の仕方はほんの少し工夫が要ります。また別のコラムで
 お話したいと思います。

G寄生虫による鰓病であればリフィッシュ等の薬を入れれば半日〜1日くら
 いで治ってしまいます。日曜日中に飼育水槽への復帰は無理かもしれませ
 んが、次の土曜日までそのまま浸けておいて大丈夫です。休みの日にゆっ
 くりと健康になった金魚を移して下さい。
  実をいうと私は虫の薬でリフィッシュ以外の薬を使ったことがないので
 すが、使用の際には注意が必要です。取扱説明書とかに記載されています
 が、まず水温が28℃以上のときは使えません。夏場にかかった鰓病には使
 えないケースが多いのですね。また、これは結構気にしない方が多いかも
 しれませんが、ペーハーが高いと駄目だそうです。つまりリフィッシュは
 他の色んな魚病薬や水質調整剤との併用は避けたほうがいいということで
 す。他の薬もそうですが例えばグリーンFゴールドリキッドという薬----
 エロモナス症状(後でお話します。)のある魚体には物凄い薬効を発揮す
 るもの------がありますがこれを水槽に入れるとペーハーが恐ろしく高く
 なります。アルカリ水になってしまうということです。この状態でリフィ
 ッシュを入れると完全にリフィッシュ使用の大前提に反しています。薬と
 いうより毒になってしまうのでしょうか…。これは恐い話。
  例えば金魚が病気になってエロモナス症候群になったとしましょう。ま
 た、よく見るとイカリ虫も付いていたとしましょう。こうした時、両方の
 病気に対応させようとしてリフィッシュとグリーンFゴールドリキッドを
 一緒に併用したりしますとほとんどの金魚が頓死してしまうかもしれませ
 ん。薬は化学薬品ですから併用すると何が起こるかわからないのです。実
 をいうと塩もそうです。純粋な塩水は理屈の上では中性(PH=7)のは
 ずですが、通常は何がしかの添加物が含まれています。特に(ミネラル分
 豊富な)岩塩はPHが10以上になる商品が非常に多いと聞いていますから
 なるべくならリフィッシュとの併用は避けるのが無難です。
 

 以上で鰓病治療は終りです。ちなみに鰓病を出した大元の飼育水槽は実を
いうと理想的には完全消毒が必要です。詳しくは申し上げませんが、40度以
上の熱湯消毒とイソジンによる洗浄が効果的でしょう。ですが、忙しい現代
人がこんなことをいちいちしているわけにはいきません。とりあえず 2/3く
らい換水してリフィッシュなどの薬剤を投入しておくことでおおむね消毒さ
れていると考えることにしましょう。