金魚の病気を治そう(その3)

白点病の治療手順


 金魚を水質や温度に慣らしながら慎重に行う必要がありますので、時間は
かなりかかります。もちろん待ち時間がほとんどなので全然疲れませんが、
時間がたっぷりとある休日じゃないとなかなか難しいでしょう。私Hinconも
病気治療はいつも週末にゆっくりすることに決めています。週の半ばで病気
を発見してしまったという不幸な場合は仕方ないので、早朝、しかも歯を磨
いたりトイレに入ったりする合間に応急処置をささっと済ませます。それに
ついては別の機会に紹介します。

 なお、これは基本ですが、病気を発見して治療用のプラケース等に移した
あとは絶対に餌を与えてはいけません。せっかくきれいな環境を整えても餌
から発生するアンモニアや腐敗物質などによって一気にごみ溜めのような環
境に早変わりしてしまうでしょう。また、病後に餌を与えるタイミングは結
構迷ってしまいますが、原則として水槽に移してしばらく他の金魚と一緒に
させてからなら失敗がありません。(他の金魚の餌探しの行動につられて空
腹だったのを思い出し食欲がよみがえってきます。)


@まず水槽の温度を確認します。できればデジタル温度計で小数点一位まで
 測って下さい。(アクアショップなどで千円程度で購入できます。高いか
 もしれませんがあると便利です。)

Aバケツ<A>に水道水を入れる。この時、温水器などを利用して水槽温度と
 同じ温度の水10リットルを用意します。水温は ±0.2℃くらいの精度で合わせ
 るのがよいです。またコントラコロライン等をよく混合させて塩素を完全
 に中和するのをお忘れなく。この時水質調整剤(アクアセイフ等)は入れ
 ない方がよいです。あとで投入する薬品が効かなくなる可能性があります。

B別の小さめのプラケース<B>に水槽の水をコップを使って2リットル入れます。
 (水槽の水位が減った分はAで作った水であとできちんと補充して下さい)
  次にプラケースの中にエアストーンを入れてエアレーションを行います。
 エアストーンは薬に晒されることになりますので薬浴専用のものを決めて
 おくと後々便利です。さらにヒーターを入れて水槽温度と同じ温度に保ち
 ます。(デジタル温度計のセンサーも一緒に浸けておく。)

C白点病の金魚を優しく網ですくってプラケース<B>に移します。同じ水槽
 の水なので水温・水質のショックは全くないはずです。

D次にプラケース<B>の水を真水で薄めましょう。バケツ<A>で作った水を
 1リットルずつ十分間隔でプラケース<B>へ注いでいきます。プラケースの水
 量が5リットルになるまで続けますので、全部で三十分かかる計算ですね。な
 お注意点ですがこの時一気に5リットルにしないで下さい。水質が急激に変わ
 り金魚にとってあきらかに悪影響をもたらします。もし時間が許すなら薄
 める作業に一時間程かけるのが理想的です。

 ここまでの手順は必要です。馬鹿馬鹿しいと思われる方もおられるでしょ
うが、私 Hinconの経験ではこの段階まで上手にクリアできればほとんど六割方
は治療が成功したと考えてもいいと思います。なぜなら金魚のストレスをほ
とんどゼロのままで治療用プラケース<B>が READY状態になったということ
は治療に要する体力をそのまま温存できたということに他ならないからです。
 なおここまでの段階で金魚のストレスを上げない目的でいくつかの措置を
講じています。念のためポイントを次に記します。

  ・治療用プラケースの水温を水槽水の温度と正確に同じにしたこと。
  ・治療用プラケースの水に水槽水を一部(=2/5)使用していること。(*)

   (*) 薬効を考えると治療に使用する水は本来真水をベースにするのが
    よいのですが真水にいきなりぽちゃりとやると水質ショックで金魚
    の体調が悪化する可能性があります。そこで飼育水を利用しますが
    飼育水はある一定量の亜硝酸や硝酸塩を含んだ水ですので治療用と
    してそのままは使用することはできません。そこで予め作っておい
    た真水で適度に薄めて治療環境を整えてやるわけです。

E三十分以上そのままにして金魚に治療水の水質やプラケース<B>の環境に
 十分慣れさせます。
  これでヒーターを昇温させる準備段階は完了です。
  まずエアレーションの泡がきちんと出ているかどうか確認して下さい。
 これは、昇温により溶存酸素量がぐっと減りますが、外部から酸素補給が
 不完全だと昇温中に酸欠を起こす可能性があるからです。

  エアレーションの確認が終ったらいよいよヒーターの設定温度を現状の
 プラケース<B>の温度+1℃に合わせます。その後、様子を見ながら一時
 間毎に1度づつ昇温していきます。(時間に余裕があれば2〜3時間に+
 1℃上げる方が金魚に与えるストレスが圧倒的に少なくなりますが、公私
 共に忙しい現代人には無理かもしれませんね。)
  最終的に28.5℃まで昇温します。ただし元々の水温を大幅に超えるのは
 金魚にとってむしろマイナス面の方が大きくなります。これは、金魚の体
 内には季節によって決められた適応温度範囲みたいなものが生来インプッ
 トされていますので、例えば冬季の寒冷期に一時的にでも猛暑の時期のよ
 うな高温に晒してしまうと常温に戻した時に一気に体調を崩して死んでし
 まうことがあるからです。元々の水温に対して大体+5〜6℃位が上限の
 目安でしょう。

Fヒーターで28.5℃にした後、私の場合、しばらく様子をみた上で思いきっ
 て29.5℃まで上げるようにしています。温度が高い方が白点虫の駆除効果
 が大きいからですが、その理由はあとでお話します。ただし、それ以上に
 上げない方が無難です。金魚にとって30℃以上の環境は日本人でいうとこ
 ろの熱帯気候のようなものですから、適応力の低い個体であれば白点虫が
 死滅する前に体のほうが先にまいってしまうかもしれません。
  また何故27℃じゃなくて28.5℃かというとこれにもちゃんと理由があり
 ます。27〜28℃は白点虫とは別の微生物----カラムナリス菌という恐い細
 菌----の最適生育温度になるからです。その温度を維持する時間が長けれ
 ば長いほどカラムナリス菌がどんどん活性化され、元々金魚のエラにその
 菌がわずかでも付いていたりすると、その個体はあれよあれよという間に
 エラ病という病気になり、一箇所に留まって動かなくなったかと思うと一
 気に頓死してしまう例が多々あります。
  このようにヒーターを使った治療はそれなりに危険も伴いますが回復が
 飛躍的に早いことから私としてはお勧めしたいところです。

G28.5℃あるいは29.5℃になったら、いよいよ薬品を規定量入れます。白点
 病には何といってもメチレンブルー液が効きます。これ自体は三百円くら
 いで売っていますが、少し高めの値段でグリーンFリキッドという名前の
 薬もあります。これも基本的にはメチレンブルーが主成分ですが、塩分が
 少し含有されています。効果の違いは私にはよく判りません。
  いずれにしても前述と同じように少しずつ規定量に近づけていくのがよ
 いです。メチレンは金魚にとって強い薬になりますので急激な添加や入れ
 過ぎは一気に症状悪化につながる可能性があります。なお使用説明書に書
 かれた添加量に幅がある時は、病状の進行具合(白点の数など)によって
 各自の判断で使い分けて下さい。通常は平均的な量かすこし少なめの量で
 十分かと思います。

H2時間くらい様子をみます。この間に高温やメチレンブルーによって激変
 した環境に金魚が少しずつ慣れてくるはずです。これにすら耐えられない
 位弱っている場合はバケツ<A>で作った真水で少し薄めてやります。薄め
 る時も金魚は水質変化を敏感に感知しますのでじっくりと時間をかけて薄
 めるようにしてあげて下さい。

Iこれで終りです。後は時々金魚の様子を観察するだけです。
  早期発見の場合は一日程度で体表から白点が消滅します。つまり土曜日
 の朝に治療を開始して日曜日の夜には一通り治癒するということですね。
 私Hinconはウイークデーは金魚の世話がほとんどできませんので回復がは
 やいということはとても有難いです。ですので私にとってヒーターは白点
 病治療に欠かすことができません。

  なお白点が消えたからといって金魚をすぐに水槽に放り込んではいけま
 せん。忘れてはならないのが水温と水質を徐々に合わせるということです。
 水温はとりわけ重要です。1℃ずつ下げるのが基本ですが1℃下げるのに
 できれば3時間程かけたいところです。温度を上げるのと下げるのとでは
 金魚がストレスは違います。下げる時の方がはるかにストレスが強く「3
 時間」は最低限必要な時間なのです。最終的に水槽温度まで下げなければ
 復帰できませんので、明日は仕事があるというような場合はいきなり2〜
 3℃も一度に設定温度を変えてしまいたくなりますが、ちょっと待って下
 さい。
  ここであせっては全てが水泡と化します。要は明日家を出るまでに無事
 に温度が下がればよいのです。本当は夜中に温度を下げるのは最悪なので
 すが背に腹は換えられません。落ち着いてマイペースで降温致しましょう。
 あるいは若干リスクはありますが、せめて1℃/時間くらいのペースで下
 げるなら調子を崩したとしても時間が経てば完全復帰するでしょう。(実
 をいうと私はこのペースで降温してしまっていたりします(笑)。

J温度が大体合ったら今度は水質合わせです。
  これは人によって色んなやり方があるでしょう。私は1/5、1/3、1/2・・・
 という感じでプラケースを水槽水に徐々に置換していきます。もちろん十
 分な時間をかけてです。

 さて、なぜ温度を28.5℃とか29.5℃とかの高温に上げるかという理由です
が、これは少し説明が必要です。
 体表に付いた白点は皮膚の中に食い込んでいて、外部からの攻撃に対して
鈍感です。表面に現れた白点は要するに“虫の卵”と思って頂ければいいの
ですが、卵の殻自体は周りの環境に対して強いバリアを形成していますので、
そのままでは薬(メチレンブルー)がほとんど効かないのですね。
 薬の効果を期待するためには卵が孵化して幼虫の体が直接薬水にさらされ
るという条件が必要です。もちろん通常の温度でも卵は少しずつ孵化します
ので、薬に漬けていさえすればいつかは必ず治るのですが、自然な孵化を待
っていると相当時間がかかってしまいます。これをヒーターによる昇温によ
って強制的に卵の孵化速度を早め、孵った幼虫を薬に晒してやるというのが
ここで紹介した治療方法です。とても早く治ります。

 以上で白点病の治療は終りです。どうでしたか。ポイントは金魚の立場に
たって治療してあげるということに尽きると思います。
 実をいうと上で書いたこと以外に水槽側でやっていることもあります。そ
れは白点病の金魚が発生した大元の水槽中に残っている白点虫の完全駆除で
す。これは次々と白点病が発生した場合の特例なのですが、やり方はごく簡
単です。まずバケツに水槽水と一緒に健康な金魚を全部移します。一時避難
ですね。その後、水槽のヒーター温度を一気に30℃以上に上げて数時間放置
します。もちろんあえてポンプは回し続けます。これによって水槽内のフィ
ルタ、底砂、水中に残っている白点虫の卵が孵化します。孵化した幼虫は寄
生する相手を探し回りますが、金魚は既に別の場所に避難させていますので
幼虫はむなしく水中を漂うか、すんなりと死んでいきます。適当な時間が経
ってからおもむろに水槽の水が全体の 1/3位になるまで水を捨て、あとは新
しい水を入れます。もちろん塩素を抜いた水です。その後はしばらくの間…
できれば一日ぐらい、ポンプを回してにごりをとってから、水温・水質合わ
せをきっちりとした後、バケツに避難させてあった金魚を慎重に水槽に復帰
させて完了です。

 これをやると硝化バクテリアの一部が死んで勢力バランスが若干不安定に
なる心配がありますが、今までの経験では35℃くらいまでの温度であればす
ぐに復帰可能なようです。なお、ついでながら、先に完全駆除と書きました
が、白点虫は水という水には必ず存在している虫ですので、本当の意味での
駆除はなかなか難しいと思います。