さて、準備が終ったらさっそくフィルタやエアレーションのポンプを起
動させましょう。ポンプの音がうるさいときはちょっとした工夫が必要で
す。下にハンカチとかタオルを敷くのも一つの方法ですが、私の場合それ
でも妻に「音がうるさいわヨッ!」と叱られてしまうので、ポンプを紐で
結び、ターンクリップなどを使って水槽の端とかに吊り下げています。と
ても静かになりますので、皆様も是非お試しください。
それから、その3の準備編ではあえてヒーターのことに触れませんでし
たが、それは水作りの段階ではあまり必要ないと思ったからです。ヒータ
ーについてはまた別の機会にお話します。それでは水作り《実践編》をど
うぞ。
《 実 践 編 》
1.アンモニア源を投入する。
マグロの刺身----好きですか? 私Hinconなどは大好物で、食卓にこれが
あると嬉しくて嬉しくて・・・・・。おっと失礼しました。好きとか嫌い
とかいうことではなくて、実はこれがニトロソモノスの格好の餌となりま
す。
準備としては、まず(できるだけ安い)マグロの切り身を買ってきて夕
食に自分が食べます。そのとき、全部食べてしまってはいけません(笑)。
全部平らげたいのをグッと我慢して少し残しておきます。ちなみに、この
とき使うマグロは“できるだけ安い”ものであることが重要です。トロ身
のような脂肪分の多い切り身は水を汚しやすいので、どちらかというと使
わないほうが得策です。
残りの切り身は水あるいは温水でごしごしと洗います。これは表面につ
いた雑菌や防腐剤などをできるだけ洗い落とすためです。(防腐剤は結構
使用している可能性ありますよネ。でも少しぐらい水槽に残っても今後の
水換えで確実に減っていきますから特に問題はありません。)次に切り身
の表面を包丁で浅く数筋切りこみを入れます。これは水との接触面積をで
きるだけ増やすためです。そして三センチ大くらいの大きさに切り分けて
全部で三十切れくらいにします。
そのうち三切れを取り出し爪楊枝で束ねたりして紐でぶらさげられるよ
うにします。紐はハムとかを縛るやつがありますよね? あれを使うと便利
かと思います。なお結び方は適当で結構ですがマグロが途中で落ちないよ
うにしっかりと結わえましょう。
今度は、紐の片端をターンクリップや割り箸などに結び付けちょうどエ
アストーンの上あたりにマグロ三兄弟がくるように位置決めしてぶら下げ
ます。これは切り身の周りにゆるやかな水流を作り、表面に嫌気性の雑菌
が繁殖するのを抑えるための処置ですが、位置決めが面倒だという方やエ
アストーンを設置したくないという場合は特にこだわらなくても構いませ
ん。ただマグロは底に落とした状態よりは、なるべくなら底砂から少し離
した状態で----ぶら下げる---ようにしてください。底砂とマグロを接触さ
せるとその接触部分が嫌気域になり嫌気性の雑菌が増えやすくなってしま
うからです。
また、フィッシュレス法に限らず、水槽立上げの初期では、一時的に雑
菌(こちらは好気性の有機物分解細菌)のフロックが発生して初期に水が
白濁し、――ミルキーホワイト現象といいます――それが若干長期化する
ことがあります。この局面は同じ好気性の硝化バクテリアと、酸素という
重要な資源をめぐって熾烈な勢力争いが行われている時期ですね。通常は
硝化菌が徐々に勢力を扶植し、時間とともに雑菌は死滅しますが、あまり
にも長期化するようでしたら、ごみ取りフィルタの清掃、底砂の毒抜きな
どを行った上で、水換えを行ってください。換水割合はその水槽の状態に
よります。
なお、残りの切り身(27切れ)はまとめてビニール袋に入れて冷凍室に
保存しておくと便利です。
ここまで準備できればとりあえずはOKです。マグロの切り身に腐食菌
が繁殖しアンモニアがじわじわと放出され、それにともなってニトロソモ
ノスがねずみ算式(一日につき二倍程度)に繁殖していくでしょう。ニト
ロスピラの増殖速度はニトロソモナスの半分くらいですがそれでもコツコ
ツと着実に増加していきます。
なおアンモニア源として他に考えられる食材は、マグロ以外にもたくさ
んあります。タンパク質やアミノ酸を含んでいるものであればイカでもタ
コでもいいし牛肉や豚肉でもいいはずですネ。もちろん、普通の金魚の餌
も当然のことながら大量のタンパク質を含んでいます。ですが、これらの
すべてが水作りに適しているかというと、実はそうではありません。詳し
く別のコラムでお話しますが、結論としては、メインはあくまでマグロと
考え、それ以外の素材はできるだけ補助的に用いるのが実用的な方法だと
いえるでしょう。
注意点を一つだけ。当然のことかもしれませんが、電気代がもったない
等の理由でフィルタやエアーポンプのスイッチを切ったりしないようにし
てください。そんなことをすると水槽水の溶存酸素量のストックが切れる
やいなや好気性バクテリアの勢力が減退し、しばらくすると悪質な雑菌群
が異常増殖を始め、あっというまに見事な「下痢水」ができあがります。
水槽の水に酸素をたっぷりと与えてやることが水作りの最重要ポイント
といえるでしょう。
2.アンモニア源を交換する。
三日に一度マグロを全交換します。なぜ三日かというと、放置し過ぎる
と季節によっては腐敗が進みすぎ予想外の変な物質が発生したり腐臭が強
くなったりするからです。温度が高いほど腐食菌は活発に活動しますので
夏場などは一週間も放置すると悪臭に悩まされることになります。また前
述したように有毒物質がたくさん出てきて善玉のバクテリアの繁殖を妨げ
るかもしれません。
交換の際は冷凍庫に入れたマグロの切り身はかちかちに凍っていますの
で、しばらく水につけ柔らかくしてから爪楊枝を突き刺すとよいでしょう。
あとは同様に水槽にぶらさげるだけです。なお、古いマグロは生ゴミ入れ
にポイしてください。
以降、この作業を三日に一度ただひたすら繰り返します。
水ができあがるまでは基本的に途中で水換えを行わないことが重要です。
ちなみに一か月以上経った状態では、硝化菌のほとんどはろ過フィルタや
底砂表面を棲息地として定着しますので、水中を浮遊する菌の割合は圧倒
的に少なくなり、多少頻繁に水換えをしても、水槽全体のバクテリア総量
はほとんど影響を及ぼさなくなります。
しかし水作り初期の段階では、フィルタなどへの定着プロセスが始まっ
たばかりであり、水中浮遊のバクテリアの割合がほとんどと考えられます。
こうした状態で換水してしまいますと、せっかく増えつつあるバクテリア
の総量が激減し、数日前の状態に後戻りしてしまうでしょう。人生ゲーム
でいえば「ニコマ戻る」みたいな悲しい状況ですネ。
3.時々亜硝酸値を測定する。
これは絶対というわけではありませんが、実施したほうがいいかと思い
ます。というのは三十日で水ができるとはいえ、ぴったり三十日というわ
けでなく、季節や水温、地方ごとの水道水の浄化度の違いなどによって、
二十七日の場合もあるし三十五日の場合もあり得るからです。できたと思
って金魚を入れたらスグに死んじゃった…という悲劇を避けるためにも亜
硝酸の試薬はできれば購入しておきたいものです。ただ値段は結構高いで
す。店によっても違うでしょうが測定40回分の量で1,200〜1,800円程度。
それから何らかの理由により、マグロだけでは思うようにバクテリアが
増えないことも十分考えられます。そういう時は亜硝酸を測定していれば
すぐにわかりますので追加として金魚の餌(安いフレークタイプなど)を
ぱらぱら水槽に入れてやるとかの措置がとれますよネ。
亜硝酸の増加の具合はマグロでやろうがイカやエビでやろうが大体同じ
くらいです。タコではまだ試したことはありませんが、おそらく同様の結
果が出るはずです。標準的な増加傾向としては、三日目あたりから亜硝酸
が検出され、その後ズンズンと増え続け、ニ週間目ぐらいで試薬の測定上
限を記録します。その後亜硝酸値は延々と上限のまま推移し三十日めでな
んと急激に「ゼロ」になります。私はこれを亜硝酸のゼロダウン現象と勝手
に命名しちゃっています(笑)。バクテリアは倍々ゲームで増えますのでそ
の増減のパターンも半端じゃないのですね。
4.唯一の水換えを実施する。
前節で、基本的に水換えはしないと申し上げましたが、実は一度だけ水
換えすることをお勧めします。
亜硝酸が最大値を記録してからしばらく様子を見て(二十日目くらいが
目安でしょうか? )亜硝酸も硝酸塩もギンギンにあふれ返った時期を見計
らっておもむろに大量の水換え(二分の一から三分の二)を実施します。
ちなみに、何故この時期に大量の水換えが必要なのか私にもよくわかり
ません。今までフィッシュレスを何度も何度もやってきて、たまたまこう
すれば後々うまくいくことがわかったからやっているだけです。当初は三
十日間一度も水換えをせずに金魚を投入していましたが、その状態で金魚
を入れると亜硝酸や硝酸塩はまったく正常値を示しているにもかかわらず、
どういうわけか必ず何匹かは体調を崩してしまうのです。もちろん塩水浴
で養生させればすぐに復調しましたが、原因を色々と考えた結果、ひょっ
として硝化バクテリア以外にも金魚にとって必要な菌があって、フィッシ
ュレスで水を作った場合はその繁殖プロセスの一部が阻害されてしまうの
ではないかと考えたわけです。
普通のパイロットフィッシュを使った場合と比べて、水作りの過程でど
こが違うかというと、やはり半月後からの水質が決定的に違うことに気が
付きました。自然界では通常考えられないほど亜硝酸濃度が上がり過ぎて
いる時期が二週間もあるわけですネ。どう考えても不自然です。そこでそ
の二週間の期間の真ん中ぐらいのタイミングで一度亜硝酸濃度を人為的に
減らしてやって自然の状態に少しでも近づければどうかナと思いつきまし
た。特にこれといった理屈はないのですが、こうすることによって何故か
前述の問題がまったくなくなったのです。亜硝酸がゼロダウンした翌日に
金魚を入れても大丈夫になりました。
これは私Hinconの勝手な推測ですが、今まで超高濃度の亜硝酸があった
せいで繁殖を抑制されていた善玉バクテリアの一部が、途中で一回亜硝酸
を減らしてやると息を吹き返して活動を再開するからではないでしょうか?
この水換えによって硝化菌の一部はなくなりますが、20日目あたりの円熟
期になるとろ材や底砂に大部分の硝化菌が根を張っていますから、一度の
水換えくらいなら大勢に影響はありません。むしろ、硝化菌以外のバクテ
リアを活性化させることが重要だと(勝手に)思っています。※
※ 近所の金魚好きの人に話してみたら「見たようなことをいう」
といわれて笑われてしまいました。思わずミクロの決死圏を思
い出した私・・・。
4.亜硝酸がゼロになったら(三十日目ぐらい)
さて、亜硝酸がゼロになったからといって喜びのあまりすぐに金魚を入
れてはいけません。硝化プロセスがとりあえず整ったというだけです。他
に無数にある水中の善玉バクテリア類はまだまだ発展途上かもしれません
し悪性の物質が水中を漂っているかもしれません。特に後者ですが、タン
パク源として入れたマグロなどの表面に付いた薬剤が水槽中に残存してい
る可能性が考えられますし、なによりもマグロの腐敗によって出来たアン
モニア以外の腐敗生成物が金魚にとっていい影響を与えるとは考えられま
せん。
したがってここで思いきって水を三分の二くらい換水します。
せっかくできた硝化菌を捨ててしまうことになると考えがちですがそう
ではありません。この頃になると上部フィルタや底砂利、あとは水槽の内
表面にバクテリアがそこそこ根を張っていますから、たった一回の大型換
水ぐらいではびくともしません。ザバザバと換えてあげましょう。ただし
その後が大事です。換水したあとは一日程度放置します。もう既にお気づ
きでしょうがこの一日のあいだに換水で捨てた硝化バクテリアは完全に元
通りになります。(この時期水浮遊の菌の割合は少ないうえに倍々ゲーム
ですので回復時間は物凄く早いのです。)
5.金魚を入れる。
金魚の入れ方はもうおわかりですよネ。まずは温度を合わせしかるのち
に水質を徐々に合わせていきます。やり方はまた別のところでお話します
が結局は自分なりの方法で水合わせするのが一番だと思います。
もちろん新しく入れる金魚は十中八九なんらかの細菌や寄生虫を持って
いると思っておいたほうがベターです。ですから水槽に入れる前は塩、薬
剤、ヒーターなどを使って時間をかけてトリートメントしたのち水槽に入
れなくてはなりません。特に寄生虫なんて持ち込まれた場合は最悪ですネ。
病気になった金魚を扱うやり方はまたのちほど紹介したいと思います。
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