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帰りの飛行機の中で、ハッと気がついた。バックの中にあってはいけないものがあった。それは数字の書かれた穴のあいたカード....そう、ホテルの部屋の鍵であった。別れのあいさつに気をとられてうっかり返し忘れてしまったのだ。 うちに帰り、ちょっと考え、いつもなら「今帰りました」とお礼のファックスを入れるところをやめて、夜中に直接電話をした。本当だったら電話をするなんて...というところだけど、言葉の問題は抜きにしてこのほうが謝っているのが伝わりやすいと思ったからだ。実際、ファックスで文章を送ることにしたら、どういう風に書けばいいのかけっこう考えてしまう。それにこの時は向こうで頑張っていろいろ電話をしたのでその勢いもあった。 電話をするとなじみのお兄さんが出た。名前をいうと、うれしそうに「おー、元気?」と明るく挨拶をしてくれた。「元気。家についたわ、ちょっと疲れた」「そう!....で、どうしたの?」そこでいきなり「PERDON ! EXCUSEZ MOI ! JE SUIS DESOLEE ! (ごめんね、ごめんなさい、もうしわけないっ)」私は知っている限りのフランス語で謝った。こういう時はいきおいが大切だ。 「なに、どうしたのさ」「私、忘れてしまったのよ、鍵を...」「なんだ!問題ないよ!気にしないで」「ごめんなさい、すぐに送るから...」「そーんな!そんな必要ないよ、鍵を取り替えちゃえばいいんだから、そんなのすぐだし簡単なんだから気にしないで!」「本当?」「本当だよ、簡単なことさ」「ありがとう、ご親切に...」「いいんだよ、じゃまた、来年。」「また来年、ありがとう」 なるべく早く着くように送るから、というつもりがなんと送らなくてすんでしまった。こうなると、もう一度フランス語で話せたのも考えてみればラッキー。 ところで、なぜ着いてすぐにではなく夜中になって電話をしたのかというと、一番仲の良いお兄さんがフロントに座っている時間を見計らってのことである。何度も行っているので、どの曜日のどの時間にどのお兄さんが座っているのかだいたいわかっているのだ。あわてていてもその辺の作戦は抜かりない。 旅の履歴へ戻る |