トキドキ日記特別篇−パリ前半−


毎日の分だけどトキドキ日記。なぜなら更新がトキドキだから(たぶん)。

揺られ揺られて

mardi 2 novembre 2004

朝食のあと、郵便局へ。やっと切手を入手しポストカードを投函。遠回りをしてホテルに戻りチェックアウト。天気が比較的良かったので、午後は船に乗ることにした。

乗り場に行ってみると、船の手前にはコワイ顔をしたおじさん。チケット売場らしきものはないのできいてみる。「ここで払えますか?」「予約は?」「してないですけど・・」「大丈夫、そこで払えば乗れるよ」と指さすほうを見ると船の中にアラブっぽい顔だちのおにいさんが立っていた。とりあえず乗り込む。

「ここで払えばいいですか?」「予約は?」再びきかれる。「してないですけど」一応きいてはきたものの、特に問題はないようだ。料金を払う。「日本人ですか?」ときかれ「はい」と答えると、「はい、チケットと・・・これは日本語のパンフレット。それからこっちはフランス語。フランス語上手だね」お世辞とはわかっているものの、ほめられてやっぱりちょっといい気になる。

エディットピアフのBGMを聞きながら、パリの街を船でめぐる。最初に座ったニ階席はだんだんと寒くなり、下にうつった。さっきのおにいさんはガイドだったらしく、マイクを持ってフランス語で説明。もちろん、なんのことやらさっぱりわからない。ピアフのうたをいい気分できいていると突然マイクが目の前に。見上げると、おにいさんが(うたう?)という顔でちょっと笑いながら立っていた。

いつもはひたすら歩き続けるところを船の中で過ごし、余裕でホテルに戻る。預けていた荷物を受け取り、メトロを乗り継ぎ駅に向かう。夜行列車に乗るのはずいぶんと久しぶりなことだ。昔と違ってちゃんとクシェットを予約していたので、寝る場所は確保されている。2等なのでひとつの部屋に6つの寝台、行きは一番上がとれた。入ってみると荷物置き場も一番上・・・私の力では持ち上がらない。下に置こうとすると先に入っていたおじさんに注意されてしまった。「だめだよ、ちゃんと君の場所に置かなきゃ」「え、でも・・」と言いかけると、あとから入ってきたおじさんがさっと私の荷物を上にあげてくれた。メルシ、ムッシュー。

私たちの部屋はおじさんおばさん混合だったが、おじさんたちはなかなか紳士的で安心な感じ。もちろん変に騒いだりもしなかったけど、夜中は誰かのいびきに呼応して輪唱のようになり、途中から降り出した雨音も加わって2〜3時間ほどしか眠れなかった。


月曜日、キツネにつままれる

lundi 1 novembre 2004

土日に書いた日本へのポストカードを持ち、朝一でフランブルジョワ通りの郵便局に向かう。ところが行ってみるとドアは固く閉まり、ガタガタと開けようと試みるが中も暗く誰かいる気配もない。今日は月曜日のはずなのに・・・あれ?日曜だっけ?急に不安になるが、やっぱり月曜日で間違いない。時間が早すぎる? 時計をみて、郵便局の表示を見る。やっぱり開いているはずだ。もしかしてストライキ? でもそんな貼り紙はしていない。諦めきれない私は今度はサンルイ島の郵便局に向かう。こちらはフランブルジョワよりももう少し大きい。行ってみると、やっぱり閉まっている。おかしい。郵便局のことはあとでホテルできいてみることにして、今度はメトロに乗りコンコルドに向かった。

コンコルドから、サントノレ通りへ。この辺の店は値段はやや高めだけどおしゃれな気のきいたものを置いていて、マレとはまたちょっと違う面白いものが見つかったりする。店をうろうろしてカフェでゆっくりしようかな、との思いつき。ところがまたしても様子がおかしい。店はほとんど閉まっている。営業時間を見てみてもとっくに開いていていい時間なのに。カフェさえもひっそりと誰もいない。魔法がかけられたみたいに静まり返っている。いったいパリの街に何があったんだろう。それとも私が寝ぼけているのか。これは夢の中なのか。今日は月曜日じゃないのか!

ホテルに戻って、ガイドブックを確かめてすぐに謎は解けた。全く気がついてなかったけど11月1日は祝日だったのだ、油断し過ぎ。レセプションのおにいさんがいたので、ことの顛末を話すと気の毒そうに大笑い。ルーブルの近くに祝日でもやってる郵便局があるよ、と地図を出してきて教えてくれたが、その辺はさっきもう行ってきたところだ。「それは重要な手紙なの?」ときくので「いいえ、いつでもいいのよ」と答えると「じゃあ、こんなのは忘れて(地図を放り投げて)明日行けばいいよ」2人でまた大笑いするのだった。


日曜の朝、シテ島にて

dimanche 31 octobre 2004

日曜の朝はたいていノートルダムに行くことにしている。ミサが行われ、信者が集まり、美しい歌声が隅々にまで響き渡るからだ。以前はそれほどでもなかったように記憶しているのだが、ここ数年は観光客が(私もだけど)異常に多く、中に入るためだけに列に並ぶことになる。あまり意味がないのにストロボを光らせる人、ミサをバックになぜか記念撮影する人が少なからずいて、なんとかならないものかしらと思うのだが、だいたいの人はおかまいなしのよう。それでも、充分に雰囲気を味わい、神聖な気持になって外に出る。

次にすぐそばにあるサントシャペルに、初めて行ってみることにした。荷物検査を受けて入ってみると、とても地味な建物の前にこれまた長蛇の列。とりあえず並んでみると、比較的早くすすむようなのでそのまま待つ。チケットを買い、入り口付近にある日本語の案内をとり、ブースにいたもぎりのおにいさんにチケットを差し出すと、おにいさんは少し顔を赤らめ、つっかえながら「アリガトウ」と恥ずかしそうに言った。ちょっと意外な言葉に、ふいをつかれた私はただニッコリ。どうやら「コンニチハ」と間違えた模様。かわいかった。

内部は地味な外観とはうってかわって素晴らしく美しい。2階にあがった観光客はほぼ全員、感嘆の声をあげていた。もちろん私も思わず「ワーォ・・・」。ものすごく混み合っていたけどぐるりと置かれた椅子のひとつに腰掛け、しばらくの間ただただぼんやりと眺める。ダメ元でストロボなしの撮影。ここはお祈りする人もいないので、特に気兼ねはいらないが、たぶんこのシャッタースピードだとちゃんと撮れてはいないだろう。ホテルからこんなに近いのに、なんで今まで入らなかったんだろうか。晴れた日に来れば、もっともっと綺麗に違いない。そして、パリには私がまだ見ていない、綺麗なものが無数にあるに違いないのだった。

サントシャペルの感動を胸に、花市へ。日曜日は鳥市も開かれていて、たくさんの小さなカゴに小鳥がいっぱい。買って帰れない私はカメラを取り出し、フィルムにおさめてまわる。店主のおじさんは私に気づいているのか、絶対にこちらを見ようとしない。だんだんお腹がすいてきた。色とりどりの鳥かごや名前を知らない無数の鳥たちをあとにして、早めの昼食をとりにサンルイ島に向かった。


つかの間のタイムトリップ

samedi 30 octobre 2004

朝食のあと、いつもの抜け道を通ってヴォージュ広場に向かう。これがパリでの平均的な一日の始まり。ところが行ってみると前をあるいていた夫婦が広場の入り口で無線を持った係の人にとめられている。何かあったんだろうか?何かの集会?警察沙汰? しかし彼女は警察には見えないし、のんびりとした雰囲気。聞いていても、フランス語は早くて事情がよくわからない。

訴えるような目で見ていると、彼女が話しかけてきた。「フランス語話せますか?」「ええ、少しなら」そう答えると、今度は英語で話しはじめた。「映画の撮影をしているので、通り抜けられないのですよ」「え、じゃあヴォージュ広場は見られないのですか?」そんな、冗談じゃないぞ、ここは私の行動範囲なのに閉め出されてたまるもんか、と思ったものの、困った様子で訊ねる。彼女は少し考えたあと、うしろを振り向き中の様子をうかがうとにっこりして、「いいわよ、入っていいわ、赤いテープがはってあるからそこには入らないようにね。行けばわかるから大丈夫」と言ってくれた。どうやら、この入り口は撮影している範囲に入っているらしい。つまり撮影中にうっかり入ってしまうと、フィルムにうつってしまうのだ。今なら入っても大丈夫と言うわけで、入れてもらった。

広場を取り巻く回廊に足を踏み入れてみると、回廊と広場のあいだの道にはなんと馬車が2台(馬車の単位がよくわからないけど)スタンバイ。いったい何の撮影だろう?と気になったが、せっかく入れてもらって邪魔をしてはいけないのでさっさと広場に入る。聞いた通り、赤いテープがはり巡らされていて、そのまわりには土曜日ということもあってギャラリーがいっぱい。正面の大きな入り口からの入場制限はないらしい。私も仲間に入って見物することにした。

どうやら時代は19世紀くらいな様子。設定はなにかのお祭りの日のようで、綿菓子を持った子役がいたり、帽子をかぶったムッシューと日傘をさしたドレス姿のマドモアゼルもみえる。脇には風車などの小道具。「静かにしていてください」というお願いがあったあと、1、2、3、アクシオーン!というかけ声とともに撮影が始まり、同時に馬車も背景で行き交い始める。だいぶ離れているのでセリフは聞こえて来ない。馬の蹄の音だけがカッカッカッカと響き渡る。スタッフの合図で子役の母親らしき女性が男の子に手招きをし、一人前に帽子をかぶり衣装をつけた小さなムッシューが綿菓子を持ったままうれしそうに、仲良く話をしながら歩く主役たちの脇を通り過ぎて、母親のもとにたどりつく。

時代設定が昔であるにもかかわらず、いつもと変わらない広場なのに、馬車も衣装もまったく違和感がない。むしろこうしていると、見ている私たちのほうが違和感があるくらいだ。カルナヴァレ館などで昔の絵画を見てもそうなのだが、パリの街、特にこのマレの辺りは驚くほど変わりがなく、一番変化したのは歩いている人たちの服装なのだ。


私は何をしているのだろうか

vendredi 29 octobre 2004

空港に着いてチェックイン、それからエスカレーターで上にあがっていつもの店の雑炊で腹ごしらえ。そのあと本屋によって雑誌を買ったり、外国人向けのみやげ物やをひやかしたりして、それから出国手続きをとる。これが旅立つ時のパターン。今回は昨年寄り損ねたカードのVIP(?)ラウンジにも入ってみようかなと思っていた。

ところが、チェックインしたあと保険のカウンターに寄ってしまった。たまにはここで入ってみようかなあ、などと思いついたのが始まりだったのかも。旅行先別で保険料が違うものを見つけて手続きし支払おうとしたところ、カードが使えず現金を引き出しにATMへ。その時に出国手続きに向かう長い列を見ながら「いっぱい並んでるなあ、早めにいったほうがいいかもね」とぼんやり思ってしまったのがいけなかった。なぜか保険の支払いをしたあと、何の疑問も抱かずその列に並んでしまったのだ。何かおかしい、とハッと気づいたのはすでに手荷物検査をパスして出国のためのパスポートチェックの順番を待っている時だった。

いったい私は何をしているのだろうか。

私はそう寝起きの悪いほうではない。用事があればけっこうパシッと目がさめる。ただ、起き上がってからが問題で、コーヒーカップを片付けようとしてトイレに入ってしまったり、完全に頭が目覚めるまで無意識の行動をくり返してしまうことがままあるのだ。これを空港でやってしまった。

気づくと私は雑炊を食べ損ね、ラウンジでのコーヒーも逃し、雑誌も買えず、搭乗時間よりはるか前にさっさと出国しようとしていた。寝ぼけるにも程がある。







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