| T突然の経営危機
中堅社員の退職により、思いもよらぬ重大な経営危機に直面してしまった会社が増えています。
なぜ社員の退職ぐらいで重大な経営危機に直面してしまうのでしょうか?
一般に社員の退職により経営危機が生ずるケースは、退職した社員が営業、製造あるいは管理面等で、経営上のキーマンだったというケースが殆どです。キーマンの退職により重要な人的資源に大きな穴があき経営危機が起こってしまう訳です。
しかし最近はキーマンと言えるほどではない社員の退職で経営危機が起こっています。
なぜこんなことになってしまうのでしょうか。
確かに景気低迷のなか、売上の減少に見まわれ、また銀行の貸出抑制策のなか、資金繰りが楽でない会社が沢山出ています。。しかしこんなことは中小企業では多かれ少なかれ直面している事実で、そのような状況でも多くの会社は経営危機をなんとか回避してきています。
しかし現在顕在化している経営危機の理由は。。。
まさに中堅社員の退職という事実、具体的にいえば高額の退職金支払に原因があるのです。
おおくの経営者は、常日頃から会社の成長・拡大・競業会社の動向等には最新の注意を払っています。そして経営の安定に欠かせない財務面での手当も抜かり無く行っています
しかし、大きなポイントを見落としています。原因は就業規則にあります。就業規則のなかの退職金規定が経営に重大な影響をもたらすなどとは夢にも思っていなかったということです。
中小企業での経営の最大の関心事は、売上であり、そのための資金繰りであるといっても過言ではありません。関心事はどちらかといえば販売戦略・資金繰りであって、人事戦略に対する関心度は低いというのが一般的ではないでしょうか。
経営の4資源として、「人、物、金、情報」がいわれています。なかでも最も重要なものは「人」であることは間違いありません。しかしどちらかといえば「物、金、情報」のほうが重視され、「人」の部分がなおざりにされている傾向があるというのが事実です。
経営危機に見まわれた会社を見てみると、ご多分に漏れず、「人」の部分がなおざりにされるきらいがあります。その結果、「人」の部分の憲法ともいうべき「就業規則」への関心が低く、とりわけ「退職金規定」は見直しもなく、古い規定のままとなっているというのが実態です。
退職金規定の内容は、現在もまだまだ多くの企業が採用し続けている「勤続年数をベースとする本給倍率型」のままになっています。したがって勤続年数が永ければ永いほど退職金額が増える。。。まさに永年勤続誘導型の規定です。しかも退職一時金規定が中心で、そのほかは最低限の適格退職年金のみというケースが殆どです。思うにおそらくこの退職金規定を制定した当時は、社員の年齢構造も若く、多くのの永年勤続退職者が続出することまで思いが至らなかったということであったのでしょう。
話を元に戻しますと、複数の中堅社員が相次いで退職したことにより高額の退職金支払が必要となったという図式です。予期せぬ退職者の発生により思わぬところで資金繰りが破綻してしまい、経営危機に直面するという事態に追いこまれてしまったのです。
Uなぜ「宝幸水産」は倒産したか。。。。。時代は退職金倒産へ
平成14年4月宝幸水産は累損33億円、負債287億円を抱えて、倒産しました。当時メインバンクであった新生銀行の姿勢に大きな批判が寄せれたことはよくご存知のことと思います。しかし倒産の真の原因は財務諸表に明示されていた累損や負債の金額にあるのではなく、むしろそれまでは財務諸表上表示の必要が無かった退職金給付債務の未処理額(かくれ債務)を50億円も抱えていたことによるものでした。
従来は企業ごとにばらばらに処理され、債務の実態が財務諸表上公表されていなかった退職金債務ですが、国際会計基準への移行により、平成13年4月以降開始の事業年度から「退職給付会計」が本格的に適用されました。上場各社が隠れ債務の処理に大変な思いをしていたことはよくご存知のことと思います。
高齢化社会への移行が急速に進んでいるいま、最近は年金問題が大きな話題・課題となっていますが、企業にとっても社会保険料の負担が急増し、経営上の大きな課題・負担となっています。 しかし企業にとって年金問題と同じかそれ以上の大きな問題として退職金問題の解決が迫られています。
「退職給付会計」はとりあえず公開企業や大企業にのみ適用され、その他の中小会社は連結企業等の一部を除き強制適用とはされていません。
しかし従来の会計処理では、企業の財務状況の実態を把握することは困難です。したがって債務の実態を明らかにするためいずれ中小会社にも銀行等の金融機関からその適用を求められることは火を見るより明らかで、むしろ中小会社に対してのほうが必要度が高いと言えるのではないでしょうか。
Vパート従業員へ高額の退職金支払いを余儀なくされた!
パート従業員から退職金を請求され、当然に拒否したところ、労働基準監督署の臨検が入り、退職金の支払いを指導され、支払わざるを得なかった会社があります。
正社員用とは別にパート従業員用の就業規則を作成し、退職金規定も当然に設けていなかったにもかかわらず、「その他の事項は正社員用の就業規則に準ずる」との文言を挿入してあったことを指摘され、逃れられなかったことにあります。 |