その壱 行ってはならぬ宿


 
"ギー――"

お決まりの扉の開く音が鳴る。そしてここ何ヶ月か見ていない冒険者の顔を確認する
と、宿の親父は少し嬉しそうに「おかえり」と言った。
                                      
「ただいま。ふぅ……今回はえらく長い依頼だったな。やっぱり所要プレイ時間一時
 間以上の依頼は疲れるよ」                         
「本当ですね。まぁ、結構収穫があったわけですししばらくは張り紙と睨めっこせず
 にすみそうです」
                                      
「にしてもお前等、一体何にそんなに時間をかけたんだ? 四、五ヶ月も顔を見せな
 いからすっかりくたばったと思ったじゃないか?」
宿の親父は冗談まじりに言ったが、四、五ヶ月も顔を見せなかった理由は本当に聞き
たいようだ。
                                      
「いや、ちょっとね。一件の洞窟に向かう途中に何故か馬車の車軸が折れたのよ。で
そこで会ったこの子が冒険に出かけた両親がいないって泣き出したのよ」
ラネルの後ろに隠れていたのは五歳ぐらいの男の子だった。
                                      
「それで可愛そうだから、ありとあらゆる所を探したわけさ。でも見つかんないだよ
 な……この子の両親」
「そうか……、それで遅れたのか。……!、なぁその子の名前知ってるか?」
「あぁ、ハルム=テルって名前だったな。親父、そんな事聞いてどうするんだい?」
                                      
「う、いやなんでもない……(この子の両親がこの前連れこみNPC扱いでウチの宿
 にやって来たんだよな。たしか今は遠い異国で農業でもやってるって話だったはず
 だ……)」
                                      
親父はアルバムを持ちながらそうボソリと呟いた。

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