全ての始まりは、奇妙な託宣。

 念のために、と始めた対応が、悪夢の扉を開く。
 
 魔法の世界ファンダヴェーレ。

 最初は、そこにある、とあるロストロギアを譲り受けるだけの任務でした。

 だけど、いつの間にか、邪眼の魔女・サンドリヨン復活を巡る争乱に巻き込まれ。

 そして、彼女が狙われてしまいます。



 それが、全ての始まり。



 戦う理由は、それぞれにある。相容れない理由も、それでいて譲れないことも。

それでも。

彼女達は、自分達の正義を信じて。


今日も飛び続けます。









presented by 矢鴨食堂

魔法少女リリカルなのはVS Episode.7

なのはと赤ずきんと魔導要塞


カリムが新たに示した、イレギュラーな予言。
それに従い、機動六課は戦乱収まって間もないファンダヴェーレを訪れる。目的であったロストロギアの回収はすんなりと終了。
もののついでと、ファンダヴェーレ最強の三銃士と、フォワード陣の模擬戦などしたりと、何事もなく終わるかに見えたが。
サンドリヨン軍残党『青髭』による蜂起に巻き込まれてしまう!
 迎撃に出る赤ずきん達三銃士に、なのは達は力を貸すことに。
……しかし、事態は思わぬ展開を見せる!
敵将『青髭』の真の狙いは……
なのは!?


サンプルテキスト

「それじゃ……はじめ!」

 なのはの掛け声と共に。互いの前衛が飛び出した。六課側からは、スバルとエリオが。三銃士側からは赤ずきんとヴァルである。

「まずは……ペネトレイトして、中衛と後衛を!」

 スバルのマッハキャリバーが唸りを上げる。微細なスロラームで回避運動を取りながら、ほぼ直進。あくびをしているいばら姫と、その後ろで出方を見ている白雪姫を狙う。エリオはソニックムーブを使って側面へ回り込む。中央突破を狙うスバルは囮も兼ねる。そちらに敵の攻撃が集中してくれれば、エリオも遊撃がやりやすい。

 だが、相手も手練れ。そう易々とこちらの思惑通りには行かせてくれない。

「ずっきゅ〜ん☆」

 双剣・グリムテイラーを逆手に構えた赤ずきんが、真っ向からスバルに突っ込んできた。真正直な相手の挙動を見て、スバルはリボルバーナックルのカートリッジシステムを作動させる。一発ロードし、ナックルスピナーを高速回転。魔力と物理療法で威力を上げての破砕の拳、ナックルダスターだ。

「せいっ!」

 魔力障壁すら無視して相手を殴り飛ばす剛の拳を、赤ずきんは魔法も使わず、二振りの小剣で受け流す。回転に逆らわず、逆にそれを利用して、グリムテイラー上を滑らせるようにして軌道を逸らしてしまった。

「へ? あれ!?

「そ〜れっ☆」

 突進の威力を乗せた渾身のストレートが、いつの間にか打ち下ろしへと軌道変更され、バランスを狂わされたスバルは踏鞴を踏む。泳いだ背中に、赤ずきんはくるりと宙返りをして蹴りを放つと、それでスバルは致命的にバランスを崩して転倒してしまった。

「ああもう、なにやってんの!?

 叱咤しながら、ティアナが後方から援護射撃を加えて、赤ずきんとスバルの間合いを離す。牽制目的の攻撃だが、軽戦士の赤ずきんは防ぐことよりも回避を優先して素直に下がってくれた。その隙にスバルは素早く立ち上がり、やや後退。赤ずきんに正対する。

「ご、ごめ〜ん!」

「迂闊なことやってるんじゃないわよ! 油断しすぎじゃない!?

 口ではそう言うものの、ティアナも内心驚愕していた。スバルの打撃をたったの一合で、しかも魔法も使わず技術だけで完全にいなしたのだ。魔導師同士の戦いでは見られない超絶技巧に、最初感じた外見とのギャップは消えて失せた。目の前にいるのは、正真正銘、ファンダヴェーレの最強の剣士だ。

「エリオは……うそ!?

 もう一人の前衛の状況を確認しようと視線を走らせて、またもや驚いた。ソニックムーブを使っているエリオに、銀狼が完全に食らいついているのだ。

「く……速い!」

「悪いな、坊主……!」

 人型には不可能な、四足獣ならではの機動力で、ヴァルはエリオに牙や爪を振るう。その一撃一撃に必殺の威力はない。だが、エリオはヴァルの牙爪を受け、躱していく間に微細に誘導され、戦場から遠ざけられてしまう。

「このままじゃ……!」

 両方の前衛が主戦場から離れた後に残るのは、後衛のみ。遮蔽物無しの、火力勝負である。相手の火力がどの程度かは分からないが、ティアナとキャロは純粋な砲戦タイプではない。撃ち合いのみとなると、若干の不安がある。

相手の意図に気付き、カートリッジをロードしてでも強行突破を計ろうとするのだが。

「おっと、もう少し俺に付き合え!」

 ヴァルは更に攻撃の速度と手数を増やし、エリオに隙を与えない。元来、エリオの纏う防護服(バリアジャケット)・ライトニングスタイルはフェイトと同じ速度重視型だ。牽制目的でも相手の攻撃が直撃すると、思わぬ大ダメージになりかねない。

「最初から、バックス同士の撃ち合いに持ち込む気だったのか!?

「はっはっは! 心配なら、早く俺を振り切ってみせるんだな!」

「言われなくても!」

 口で強がってみせるが、この狼、本当に速い。非人間型相手の戦闘経験は、ガジェットタイプで磨いたつもりだったが、『本当に強い獣型』とは殆どやったことがない。アルフやザフィーラ相手にやってもらえば良かったか、と思っても後の祭りである。

 一方の主戦場では、遮る者が無くなった今、三銃士のディフェンダーとバックスの砲火が火を噴く。

「ふわわ。何か穴空いたから攻撃〜」

 未だに夢現のいばら姫が、あくびをしながら右腕を振るう。手首から太く長い茨の蔦が伸び、みるみるうちに巨大な鞭と化し、彼女の意思を乗せて自在に戦場を動き回る。二本、三本と増えた鞭は大蛇のようにのたうちながら赤ずきんと打ち合うスバルと赤ずきんの頭上を飛び越えて、ティアナとキャロを直接狙う。

「もののついでですわ〜。スイートフォン♪」

 いばら姫に続いて、白雪姫も右手を掲げる。手の内にあるのは卵形の魔導器・スイートフォン。三銃士専用のデバイスのような物らしい。カートリッジの代わりに精霊力を封じたエレメンタルカードを差し込むことにより、無詠唱で魔法を発動させることが出来るのだ。

「スプラッシュアロー!」

 茨の鞭の隙間を縫うように、無数の氷の矢が放たれる。やはり狙いはティアナ達だ。

「そういう陣形か。キャロ、ワンポイントでガード!」

「はい!」

 ティアナの指示に従い、キャロは自身にブーストを掛け、強化したプロテクションを展開する。彼女の防御魔法は先陣を切るスバル並かそれ以上の強度と防御範囲を誇る。なのはが鍛え上げた防御力は、バックスとしては目を見張るほどだ。なのはとよく似た桜色の魔法障壁に、次々と氷の矢が突き刺さるが、悉くが砕けて散ってゆく。

だが。

「……くっ!」

 ビシッ! ガキィン! とキャロのプロテクションを硬質の音が続けざまに打つ。純粋な魔力だけではない、直接打撃である茨の鞭は衝撃を殺しきれない。あまりの圧力で防壁ごと後退ってしまう。しかし、こちらもやられっぱなしと言うわけではない。

「キャロ!」

「はい!」

ティアナの合図と同時に、プロテクションを解除。その時に発生した衝撃で、一時的にいばら姫の猛攻を弾き飛ばす。そして生まれる、刹那の空白。

「クロスファイアーシュート!」

 その一瞬で、準備していたティアナのマルチショットが火を噴いた。前衛同士の殴り合いの頭上をこちらも飛び越えて、四つの誘導魔力弾がいばら姫達を狙う。

「……今!」

 味方の砲撃に呼応するように、スバルのマッハキャリバーが魔法を立ち上げる。彼女達専用の、翼の道を、大空へと。

Wing Road

 赤ずきんの鋭い踏み込みからの一刀をダッキングして回避し、ダッシュローラー最大加速。

「ふえ!?

 戦士は、相対した相手の手足の予備動作から次の挙動を予測して動く。赤ずきんほどの使い手となれば、筋肉の僅かな震えから動きを先読みできる。さらに魔法使いでもある彼女は、魔力の動きからも魔法も察知できる。だが、スバルとマッハキャリバーのダッシュは、完全な機械による挙動。あらゆる予備動作無しで、いきなり動き出したのだ。赤ずきんに予想できるはずもない。

 虚を突いて赤ずきんの脇を駆け抜け、ウイングロードへと駆け上る。しかし、すぐに中途で解除し、下方への射界を確保。迫り来るティアナの魔力弾を背に、スバルもカートリッジを二発ロード。

「一撃必倒!」

 コマンドワードと共に足元にベルカ式の魔法陣が展開。両腕に発生させた環状魔法陣を、更に大きく円を描くように動かして中心点に光弾を発生させる。

「ディバイン!」

 リボルバーナックルのスピナーが唸りを上げ、高速回転を始める。それ単体でも凶悪な破壊力を誇る鋼鉄の拳を振り上げ。

「バスター!!

 魔力弾を殴りつけ、砲撃と化す!!

 時を同じくして、ティアナのクロスファイアーシュートもいばら姫と白雪姫へと殺到する。長年のコンビ故の、息の合った連係攻撃だ。

 だが、コンビネーションという意味では、向こうも譲らない。

「ガーデン・オブ・エデン」

 いばら姫が無数の蔓を呼び出し、空中に展開させる。絡み合わせて盾のようにするが、所詮植物の蔓。スバルとティアナの砲撃を防げると思えない。しかし、そこに今度は白雪姫が手にした光の輪をかざして魔法をかける。

「フローズン・バスケット」

 蔓の盾を氷で包み込み、強度を上げる。その上で即座に次の魔法を発動させた。

「エターナル・グロリアス」

 魔力付与により強度を更に上げ、堅牢なる氷の防壁を作り上げてしまった。スバルのディバインバスターも、ティアナのクロスファイアーシュートも続けざまに着弾するものの、分厚すぎる盾を貫けない。

「く!?

 攻撃失敗を即座に察知し、ウイングロードを再展開し、スバルはそのまま前へと駆け抜けようとする。背面に回り込んで戦局を変えるつもりか。

だが、彼女の作り出す翼の道は、誰にでも乗れる、という特性もある。

「じゅ〜すぃ〜☆」

 いつの間に回り込んだのか。スバルの作り出した道の先に、赤ずきんが立っていた。

「便利な魔法だね〜。あたしも欲しいなぁ、こういうの」

 そういいながら、逆手に構えたグリムテイラーを手に、真正面から突っ込んできた。

「そう何度も……!」

 スバルもカートリッジをロードしながら、マッハキャリバーの速度を上げる。今度は受け流すことも出来ないように転倒付与効果のあるリボルバーキャノンを起動。再び打ち合うべく加速をかける。

だが。

「こっちも忘れないで〜」

「ですわ〜」

 そんな声と共に、巨大な氷の盾と化していた蔓の塊が、ばらりとばらけた。どうやら、白雪姫が氷の結束を解いたらしい。そのまま、氷で威力強化された茨の鞭が、縦横無尽に、無差別に戦場を暴れ回る!

「どわわわっ!?

「ちょ……無茶苦茶じゃない!?

「きゃあ!?

「うわ、こっちまで!?

「いばら、てめー、俺がいるの忘れてるだろ!?

「ふわわ。避けられない方が悪い〜」

 離れていたエリオとヴァルにまで襲いかかる鞭の前に、スバルもティアナもキャロも吹き飛ばされた。各々防御魔法を展開して防ぐが、ティアナ程度のバリアでは容易にブレイクされてしまう。スバルの全力のプロテクションやキャロのブースト付きでもない限り、連打を凌ぐのは難しい破壊力だ。慌ててキャロがワイドエリアプロテクションを使って本人ごとティアナを防御圏内に入れてしまう。

「ティアナさん、大丈夫ですか!?

「ごめん、キャロ! ……でも、おかげで見えた!」

 態勢を立て直しながらティアナが見据えるのは、未だにあくびをしているエルフの少女だ。前に出てこない白雪姫、それぞれこちらの前衛を食い止めている赤ずきんやヴァルではなく、この戦場を支配している三銃士の要は、実は彼女に間違いない。そして、徹夜でもしているのか知らないが……とにかく、彼女は眠そうである。

「コンディションが悪いのなら……そこを突かせてもらうわ!」

 自身のデバイス・クロスミラージュにカートリッジを二発ロードさせ、足元にミッドチルダ式魔法陣を展開。口の中で補助詠唱を行い、空間に魔力を固定していく。

『みんな、絶対にあたしの方を見ちゃ駄目よ!』

 念話で仲間に注意を促して、ティアナは背後に虚像を作り上げる。背に浮かんだのは、不可思議な図柄だった。ゆったりと回転する幾何学模様が、鈍く明滅を繰り返す。

「スリープ・タペストリー!」

「あれは……ぅ……?」

 いばら姫の攻撃でバランスを崩したスバルに追撃を掛けようとしていた赤ずきんは、その現像を目にしただけで軽く蹌踉めいた。

「いけませんわ。あれは……催眠効果のある幻術!」

 光輪・キルケトゥスを一振りして、容易にレジストする白雪姫。この辺りはさすがは専業魔法使いである。同様に赤ずきんもすぐに持ち直して、スバルを追う。だが、ふとあることに気付いて、口元を引き攣らせた。

「催眠……効果?」

 嫌な予感と共に振り返ると。

「……く〜。す〜。すぴょすぴょ……」

 いばら姫が、思いっ切り爆睡していた。

「「あ〜!? やっぱり〜!?」」

 悲鳴を上げる赤ずきんと白雪姫に対し、ティアナはしてやったりと口の端を上げた。視線を巡らせれば、互いに打ち合うスバルと赤ずきん、エリオとヴァルの姿。寝こけているいばら姫の背後で、白雪姫はスイートフォンを使っての速攻を仕掛けようとしている。ならば。

「スバル、今度こそ相手を押さえなさいよ!」

「了解っ!」

「キャロ、お願い!」

「はい! ブーストアップ、行きます」

 ティアナの要請に従い、キャロがデバイス・ケリュケイオンをかざして強化付与魔法をかける。同時にクロスミラージュがカートリッジを二発ロード。

「これが最大のチャンス!」

 ティアナがなのはに叩き込まれたのは『戦場を支配する磨き抜かれた戦術眼』。そして、機を活かすべきスキルである。今の状況は、彼女とキャロで片付けるべきシチュエーションだ。狙うべきターゲットは、いばら姫と白雪姫。距離と発動時間、キャロのブーストという副効果を合わせて、一番効果的と思われる選択肢は。

「ショートバスター!」

 なのは直伝の、ディバインバスター速射型! オレンジの砲撃が、戦場を真一文字に切り裂き、飛翔する!

 ティアナの曰く付き砲撃魔法・ファントムブレイザーを改めて見た後、なのはがファントムブレイザー自体の修正と共にティアナに伝えた技術である。中〜遠距離で効果を発揮する砲撃魔法で、扱いやすい代わりに砲撃魔法にしては威力が低めだが、総合力で戦うティアナにはこの程度で十分なのだ。しかし、低いと言っても今回はカートリッジを二発消費した上にキャロのブースト付き。敵二人を行動不能にするぐらい、わけがない。

「速い!? いけませんわ!?

 思いの外、反撃が速かったのか、白雪姫が狼狽する。そして、その砲撃の射線軸上にいばら姫がいることを見て……青ざめた。

「ま……拙いですわ!? アクア・フィル!」

 絶望的な悲鳴と同時に。

模擬戦の真っ最中にぐーすか寝ているいばら姫に砲撃が炸裂。そのまま貫通して、白雪姫にも命中した。しかし、攻撃をキャンセルしてまで展開した水属性の防御魔法によって、白雪姫には余りダメージは与えられなかったようだ。けほけほと咳き込みながら、軽く焦げただけの姿を見せる。

「だけど、いばら姫には直撃のはず! これで、相手のフォーメーションは崩れたわよ!」

 中距離の制圧攻撃がなければ、後はティアナ自身と、キャロのフリードリヒで戦線を押し上げていけば白雪姫も圧倒できる。そう読んで動こうとした矢先。

「なんて事をしてくれましたの〜!?

 なんでか、涙目になって、あたふたと逃げる白雪姫がいた。

「あわわわ、みんなも逃げた方がいいよ〜!」

 見れば、赤ずきんも適当にスバルをあしらって逃げに回ろうとしている。

「……どういう事……?」

 頭に疑問符を浮かべて、隣のキャロと顔を見合わせる。

その疑問に答えたのは、低い含み笑い。何事、と思って視線を向けると、ティアナ渾身の砲撃が作り出した土煙がようやく薄れてきたところだった。

 そして、その中から現れたのは。

「……私を起こしたのは…………お前か?」

 視線だけで人を殺せそうな顔をした、いばら姫だった。

「あの……ティアナさん、あの人……さっきの人と同じ人ですよね?」

 キャロにそう聞かれたって、分かるわけもない。ふわふわぽけけ、としたエルフのお姫様はどこにもいない。そこにいるのは、外見こそ同じだが、血と死の香りを全身に漲らせた魔騎士だからだ。

「我が眠りを妨げる者には……死を」

 物騒な台詞と共に。いばら姫の背後から、爆発的に茨の蔓が吹き出した!

「な、なぁーーー!?

 太さも量も、先程のガーデン・オブ・エデンなど比べものにならない。大自然の怒りかと見紛うばかりの緑の津波が、辺り構わず無差別に炸裂し、全てを呑み込んでいく。

「ちょーー!? これ、なにーー!?

「う、うわーー!?

「何でいばらが暴走してんだよ!? 赤ずきん、白雪、俺を置いて逃げるなァッ!?

「ごめーん、ヴァル〜! そんな暇、全然なかったんだよー!」

「退避、退避ですわー!!

 まさに阿鼻叫喚の地獄絵図。一番離れていたはずのティアナとキャロですら死ぬ気で逃げないと飲み込まれる規模だ。

 悲鳴と共にうやむやになってしまった模擬戦の様子に、さしものなのはも肩をコケさせる。

「な……なに、これ?」

「寝起きが悪いんだろう。あのいばら姫という奴は」

 ザフィーラがこともなげに言ってくれるが、寝起きが悪いとかそういうレベルではない。しかし、赤ずきん達の言動からすると、日常の光景なのかも知れない。そんな日常、嫌すぎるが。

「状態変化系の幻術使って相手のコンディション不足を突いたのはお見事だったけど……これは予想できないよねぇ」

「確かに、事故だな」

 ティアナの戦術の組み立てに穴はない。結果としてエリオもスバルもうまく相手の戦力を分割していたし、フリードを使わずに一人落とせれば上出来。内心かなり喜んでいた先生だが、知らない相手との模擬戦はそうそう予想通りに行くものではない、ということか。

 ともあれ。なのはの生徒達は予想以上の成長ぶりで、彼女の期待以上の働きを見せてくれた。ファンダヴェーレ最強の四つ葉騎士団・三銃士の実力の一端を垣間見る事が出来たのだから。

「……ところで、ザフィーラ。どう見る?」

「そうだな。少なくとも、三人ともSは越えると見るが」

 ザフィーラの見立てに頷く。とくにあの赤ずきんの近接戦闘能力は、特級などと言うレベルではない。スバルがまるで子供扱いだ。純粋な剣技ならば、シグナム……いや、なのはの兄や父を上回るかもしれない。

「それでも、力の殆どは見せていないな。赤ずきんにいたっては魔法を一度も使っていない」

「そうだね。それにあのいばら姫の暴走……でいいのかな?……を見る限り、潜在的な戦闘能力はまだまだありそうだし」

 何よりも、あの完成されたコンビネーションだ。フォワード陣には得るものが多いだろう。

「……それよりも、この状況。どうするんだ?」

 ザフィーラに言われて、改めて訓練場を見る。至る所に溢れかえる巨大な茨の蔦。城の壁も平気で破壊し、中にいるであろうスバル達は悲鳴しか聞こえてこない。

「ええと……どうしましょう?」

 ここまで案内してきた騎士を苦笑しながら振り返ると、彼は諦めたように肩を竦めて見せた。

「寝起きのいばら姫に勝てる者はいません。起きるまで数分、傍観するしかないんですよ」

 彼の深い溜息に、なのはは片頬をひくひくさせるしかなかったとか。


初版はコミックマーケット74にて頒布。
第二版をコミックマーケット75で。
大幅な加筆修正を行い、実に50P近くの増ページ!!

表紙イラストはSTRO−さん。
……ページ数増えたので、カバーずれてないか、ちょっと心配(オイ)。


新書サイズ フルカラーカバー 232P イベント配布価格700円
メロンブックスさん、とらのあなさんにて委託販売予定


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