■ 風邪のお話 ■

(1) 風邪とは?

実は、風邪と呼ばれているものの8割以上が、その病原体はウィルスによるものです。
そしてこのウィルスというものはやっかいなことに細菌とは異なる微生物なので、抗生物質で やっつけることが出来ません。
熱がポーンと38.5℃以上になって咳が出始め、体の関節のあちこちが痛くなり、症状が激烈な インフルエンザ・ウィルスには予防のためのワクチンと特効薬があるものの、喉をやられやすい アデノ・ウィルスや、鼻水が出たり鼻が詰まりやすいライノ・ウィルス、下痢を引き起こすロタ ウイルスなどには、まだ特効薬はないのです。
結局は、保温と加湿、安静と睡眠、栄養と水分補給に気を付けて症状を緩和させ、俗に言う 「抵抗力」、正確には「免疫力」で、体がウィルスをやっつける抗体を作るのを待つしかない のが現状です。


(2)予防法

1)うがい 喉の細菌や病原体の気管支への侵入を防ぎ、気道の乾燥を防いで気管支への病原体の付着を予防 します。
うがいをすると気管支の繊毛の働きが良くなり、痰を出しやすくするので、かかってしまった人 にも有効です。
2)手洗い 意外にも手に付着した病原体を知らず知らず鼻に持っていったりして、感染することがあります。
特に小さなお子さんをお持ちの方は、ご注意下さい。
3)マスク 病原体の侵入を防ぐとともに、湿気を補って気道の乾燥を防ぎ、病原体の付着を減少させる効果が あります。
もちろん、病原体の飛散を少なくしてくれるので、他人へ感染させない意味でも重要です。
風邪ひきの多いこの時期、風邪をひいていてもいなくても、人ごみや病院に行く時には、必ず マスクを!

 以上は、古くから言われていることですが、他にも、下記も参考になるかと思います。

4)加湿器 気道の乾燥を防ぐとともに、乾燥による病原体の飛散を抑えてくれます。雨や雪が降るとインフル エンザの流行がおさまってくる、というのもこの原理です。
加熱殺菌する、「ハイブリッド・タイプ」がお奨めです。そういった装置をお持ちでない方は、 手近なところで、特に夜、寝室に「濡れタオル」を吊るすとか、広口洗面器に水を張っておくだけ でも、けっこう湿度を上げることが出来ます。
5)空気清浄機 紫外線を利用した滅菌および抗ウィルス作用のある空気清浄機が発売されています。
空気の入れ替えは重要ですが、換気により乾燥した冷気が入ってくるので、換気の温度差を少なく した「ロスナイ換気」が良いとされています。
6)人ごみに
 出かけない
風邪を引いている人が居そうな所に出かけないようにする工夫も必要です。
ちなみにバスの中で誰かが咳をすると、そのバスの乗客の大部分に病原体が行き渡ってしまいます。
咳をする時はせめて手で口元を覆ってやるか、出来ればハンカチを用いて唾の飛散を防いでやる くらいの配慮は必要かと思います。
7)鼻で息をする 口で息をすると気管支が乾燥にやられやすいのです。特に声を出す職業の人はご用心!
2月に入ると、スギ花粉が飛び始めます。花粉症の方は鼻がやられて口呼吸になることが多く、 風邪が重篤化することがあります。花粉用の目の細かいマスクをすることをお勧めします。


(3)症状緩和法

1)保温と加湿 咳が続く場合には、空気が乾燥していたり、吸う空気の温度が低かったりするのも咳をするように 刺激するので、出来るだけマスクをしながら空気の乾燥と冷気から気管を防御し、旧式の、上に やかんを乗せられるストーブで部屋を暖めてやるようにすると良いでしょう。
空気が汚れることが気になるなら、ストーブではなく(普通は無いことが多いと思いますが) 床暖房やオンドル、セントラルヒーティング、それが無ければオイルヒーターでも良いのですが、 これらに加湿器を組み合わせると良いと思います。

また、体を温める意味から、ゴアテックスのような発汗した水分は外に逃がしながら、保温効果の 強い衣服を着たり、布団も出来れば汗を逃がしてくれやすい羽毛のものを使用するのも良いでしょ う。
それでも発汗が多いと、その気化熱により「ズ〜ンと冷える」こともあるので、汗をかいたら、 出来るだけこまめに汗を拭い、下着を着替えるようにするようにお気を付け下さい。
特に朝、起床時などは、できればタイマーなどで前もって部屋を少し暖めておき、下着ごと完全に 着替える方が、体が冷えなくて良いと思います。

2)安静と睡眠 睡眠時間が短くなると、俗に言う抵抗力、つまり免疫力が低下することが知られています。
安静にして体が病原体に対する免疫抗体を作りやすい状態にしてやることとも重要です。
また、タバコを吸う方は、気管支粘膜の線毛の働きを弱めてしまって気管支炎や肺炎になり易い 上に、元々肺の機能が落ちていて治りも悪いので、少なくとも風邪の症状が良くなるまでは、 タバコを控えるようにした方が身のためです。
3)栄養と水分補給 発汗などで水分が取られて、体内は脱水気味になり、痰の喀出が悪くなることも、症状増悪の 原因になりますので、いつもよりは水分摂取を多めにすることも重要です。
ポカリスェット、アクエリアスなど、スポーツドリンクは水分の吸収が良く、体に負担をかけない ので、体力消耗が激しい発熱性の風邪症候群の際には効果的です。
ただ、冷たいスポーツドリンクは、スポーツの際には良いのですが、風邪の場合には体を冷やすと 免疫力が低下して、抗体産生能も落ちますので、出来れば「ホットポー」の様な、暖かいものが 良いかと思います。
なかなかホットポーが手に入りにくいので、その場合には、暖めたアクエリアスやポカリスェット にレモン果汁等を垂らして、ハチミツで少し甘く味付けしてやると良いでしょう。
お子さんにも好まれる様です。

  また、お茶は気管支拡張作用もある上に、細菌の運動を抑制するカテキンも含まれており、 ビタミンCも豊富です。 ちなみに、下痢の時などは、「お茶に梅干し」の組み合わせは、必要な塩分も補いながら脱水を 防ぎ、抗菌作用もある上に、体をスッキリさせる作用のあるクエン酸も含まれていて、現代の ポカリスェットも顔負けの優れものです。

栄養は風邪の病原体に対する抗体を作る上からもタンパク質とビタミンが重要です。ビタミンC にはウィルスに対する抵抗力を増す作用もあり、熱などで消耗している場合はビタミンB群を補 ってやる必要があります。


(4)治療法

基本的には対症療法と言って、症状を緩和する薬を飲んでいただくことが中心となります。
ただ、咳や鼻水、発熱などは実はその病原体を排除するための体の防衛システムで、これを薬で 抑え込みすぎると、病原体の侵入や繁殖を許してしまい、かえって症状が悪化することがあります。

しかし発熱が続き、体の方がグッタリ消耗してしまったり、脱水になると、肺炎球菌などの 気管支炎や重症の肺炎を起こす細菌が取り付いて2次感染を起こし、気管支炎を起こしたり、 悪化して肺炎になったりすることがありますので、38.5℃を超える高い発熱の場合には坐薬 などで熱を下げてやることがあります。
子供さんで比較的元気な場合には、あまり坐薬を使わず、水分摂取に気を付け、好きなジュース などをいつもより多めに飲ませてあげると良いでしょう。

また、夜も眠れないほどの咳をする場合には、睡眠不足から体力が落ち、免疫抗体の産生力も悪く なって治りが悪くなるので、対症療法として咳止めを使用する場合がありますが、これも使い すぎるとせっかく体が咳をして中に貯まった病原体を外に出そうとする作用を止めることになり、 気管支炎や肺炎を起こしやすくなるので、注意が必要です。
また、咳止めの中には腸の運動を抑えてしまって便秘がひどくなったり、吐き気を催すことがあり ますので、飲み過ぎに注意して下さい。

黄色い痰が出てきたらご用心。気管支に炎症が波及してきている証拠です。肺炎球菌など肺炎を 起こす菌による2次感染を予防する意味からも、抗生物質の内服が必要になって来ます。お近くの 医院の受診をお奨めします。
その際に、必ず「黄色い痰が出る」とおっしゃって下さい。抗生物質を飲むかどうかの判断の 分かれ目になります。
また、1週間を過ぎて長期化したり、市販薬を飲んでも治る傾向が見られない場合にも抗生物質を 飲む場合がありますので、「いつから」症状があるのか、「市販薬」、場合によっては「他の 病医院などの薬」を飲んだかどうかも重要です。
特に他の病医院での薬にすでに抗生剤を使用している場合は、長期になる場合や無効と思われる 場合は変更することがあります。出来れば薬局等で渡してくれる処方内容がわかるものや、今、 飲んでいる薬を持参していただくと、その次の段階で出すべき薬の判断が的確に行えます。

胃が弱い方の場合には、下熱鎮痛剤の成分や抗生物質が胃に負担をかけることがあるので、予め 申し出ていただくと、処方内容を検討する場合に参考になります。
特に潰瘍を起こしたことのある方は、必ず申し出て下さい。


(5)風邪Q&A

1) Q) 風邪をひいた時には「おかゆ」が良いというのですが、本当でしょうか?
A) 別に「おかゆ」でなくても、消化吸収の良い、胃腸に負担をかけない食事で、水分も十分に 補給出来るものなら良いと思います。
最近ではウィダー・イン・ゼリーなどのゼリー状で吸収の良いものがセブンイレブン等で売っています。
2) Q) 熱があるとお風呂に入ってはいけないと言われますが、どうしてでしょう?
A) 入浴後皮膚温が下がって末梢循環が落ち、気道粘膜などの防御反応の低下が起こります。 セントラルヒーティング等、暖房が行き届いていてシャワー浴が中心のアメリカとは異なり、 お風呂の湯の温度が高く室温が低い日本では、「湯冷め」しやすい上、発熱時には汗をかき やすく、体温調節がうまくいかないことがあり、入浴後の気化熱による体温変化や急激な 循環動態の変化に体がついていけず、免疫力が低下し症状が悪化することがあるので、 熱がある間は入浴はひかえた方が良いでしょう。
また、アニメ「エヴァンゲリオン」で有名になった、「お風呂は体をリセットする」 というセリフではありませんが、人間の最大の器官である皮膚からの免疫情報が入浴により リセットされてしまい、正確に外部からの情報が体内へ伝わらず、免疫抗体の生産が遅れて しまう、という説もあります。
3) Q) 風邪をひいた時に卵酒を飲むと良いと言うのですが、本当に効くのでしょうか?
A) 卵はコレステロールが多く含まれているのがちょっと難点ですが、完全食品と言われる くらい、栄養分がバランス良く含まれていて、ビタミンも豊富です。これに体をあたため、 血行を良くする上、カロリー補給の意味からもお酒を加えるのは理にかなっています。
しかし、お酒も飲み過ぎは肝臓に負担をかけて抗体産生に必要なタンパク合成が悪くなり ますし、お酒に弱い人は頭痛がひどくなったりしますので、ほどほどにされるのが良いで しょう。
4) Q) 生姜湯や葛湯は効果がありますか?
A) 生姜には殺菌作用があり、お寿司の時に食中毒の予防の意味からも昔からの知慧で、 知らず知らずの内に食べていたりします。
また、体を温める作用もあり、漢方薬としても使われています。お肉の生姜焼きを食べた後、 体がホカホカするのはこのためです。
葛は葛根湯という漢方薬があるくらい、日本でも古来より使われてきました。
体をあたため、血行を良くして発汗を促進し、熱を下げる効果があります。
すでに熱が出て汗をかくくらいになっている方には、効果が薄いように思います。


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Last update Jun.4.2002