2001年12月3日付けの『ニューヨーク・タイムズ』に掲載された記事(河内謙策訳)
(ELAINE SCIOLINO, ALISON MITCHELL, Calls for New Push Into Iraq Gain Power in Washington. http://www.nytimes.comのArchiveより訳出)
9月11日の事件以来、シンクタンク、法律事務所、雑誌関係者を中心とした、この緩やかなグループは会合を持ち、ホワイトハウスにたいしてイラクへの軍事攻撃を求める声をしだいしだいに大きく響かせてきた。
この同盟は、周辺の闘いをしているように見えたときもあるが、この同盟のメンバーの言では今やそうではない。彼らは、ブッシュ政権内部では、イラク攻撃は当然として、イラク攻撃をいかにやるかに議論が移っているという。
かつて下院議長だったニュー・ギングリッチは、ブッシュ政権内部の状態について、「サダム・フセインが悪魔であり危険であるとみなす勢力が勝利を得つつあるようだ。」と語っている。彼の考えも、その勢力と同じということであった。
外部からのキャンペーンは、湾岸戦争のときに始まる。そのキャンペーンは、共和党の外交政策をめぐる広範な争い(一方は慎重なリアリズムを主張し、他方はアメリカは戦争を計画し、それに勝利をする権利と義務を有するという軍事的積極主義を主張した)の一部であった。
あの保守的なハドソン研究所の上級研究員のマーシャル・ホイットマンは、「この争いは、過去10年間の争いがにじみ出てきたものとも言える。あのときにサダム・フセインを抹殺しなかったからね。」と語った。
政権内部では、指導的原理はなくコンセンサスの不在が目立ち始めている。
コーリン・パウエル国務長官は、CBSの“国民とともに”の番組の中で、ブッシュ大統領はテロリズムに対する戦争の次の段階についてまだ何の決定も下していないと述べた。
しかし、意見の違いは存在する。ある政府高官の言では、一方の勢力は、ドナルド・H・ラムズフェルド国防長官、ポール・D・ウォルフォウィッツ国防副長官、大統領直轄のテロ対策責任者ウエィン・A・ダウニング元将軍、副大統領直轄の主席スタッフであるI・ルイス・リビーらであり、彼らはすべてイラクに対して軍事力を行使するという戦略を支持しているという。
もう一方の勢力には、コーリン・パウエル国務長官、リチャード・L・アーミテージ国務副長官、新中東全権大使であるアンソニー・C・ジニー元将軍らがいる。彼らは、同盟諸国と一緒になってサダム・フセインに国際的な武器査察を受け入れるよう働きかけるべきである、と主張しているという。同時に彼らは、イラクに対する経済的制裁のやり方を改めるべきである、と主張していると言う。国家安全保障担当補佐官であるコンドリーザ・ライスはどちらにも属していないと見られている。
しかし、保守主義者の同盟を構成している部外者は手に負えない戦士である。彼らは長い間政府の一部と結びついてきたが、メディアを操作する術も心得ている。ワシントンの政界の中での彼らの結びつきは強い。
彼らのグループには、前CIA長官、イラクからの亡命者、過去の三代の政権担当者たちがいる。彼らは、ある種のケースにおいては、政権の中にいる彼らの友人が表明できない意見を公にする。
部外者たちは、シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ・インスティチュートや雑誌の『ザ・ウイークリー・スタンダード』などをはじめとした様々なところで活躍している。
「組織なんてものはないし、水面下で何かをしていると言うこともない。何か会合や、打ち合わせがあるとしても、私に声をかけるものはいないよ。」とR・ジェームズ・ウールシーは語った。彼は弁護士であるが、CIAの前長官で、テロリストのたくらみにサダム・フセインが関与しているということを率直に主張してきた人物である。
ウールシーは、自分の役割につき、控えめに「私は法を実践しているだけだ。新聞社からおたづねがあれば電話に出るし、頼まれればCNNにも出る。」と語っている。
保守主義者の同盟の最も重要な根拠地は、国防政策検討委員会であろう。超党派の国家安全保障問題専門家が、ペンタゴンの外で会議をするのである。18人のメンバーの中には、元国務長官ヘンリー・A・キッシンジャー、元国防長官ハロルド・ブラウン、元統合参謀本部副議長デービッド・E・ジェレミー提督、元副大統領ダン・クェール、元国防兼エネルギー長官ジェームズ・R・シュレジンジャー、先に述べた元下院議長のギングリッチや元CIA長官のウールシーらが入っている。
リチャード・パールは、レーガン政権時代の国防副長官で、国防政策検討委員会の議長を務めている。
先に述べた元CIA長官のウールシーは、同委員会からテロの攻撃についてのイラクの関与を調査するように依頼を受けている。
9月には、国防長官の事務所が、ロンドンに根拠をおくイラク国民議会の指導者であるアーメド・シャラービ、それに元イラクの核兵器開発責任者キディール・ハムザを呼んで話を聞いている。
会合に出席した亡命者たちのアドバイザーであるフランシス・ブルックは、「ラムズフェルド国防長官は会合にずっと出席していた。彼は、貴方方を支持する、心配することはない、私とアーメドは友人だ、と語っていた」と言う。
パウエル国務長官も、シャラービの指導力に疑問をはさんでいるジョージ・J・テネットCIA長官もイラク人たちがきたことを知らない。ある上級公務員は「彼らがやってきたというのは、著しく常軌を逸脱したことだ。彼らが我々の政策をだめにするかもしれない」と語った。
しかし国防政策検討委員会の議長のパールは、アメリカの軍隊がイラク南部を占領し、
イラクの亡命者たちによって新政権を樹立し、フセインの支配が終わるまで彼らを守るという戦略の一部としてイラク国民議会を擁護している。
彼は、アフガニスタンは型板のようなものだという、「北部同盟は、我々が攻撃用の手段を提供しない限り、1インチたりとも領土を守ることは出来ないであろう。また,イラクの反体制派に攻撃用の手段を提供してきたものはいない。」
ペンタゴンの調整官であるドブ・ザクハイムとダグラス・フェイスは、パールのために働いてきた。そしてパールはウールシーが1969年に上院の軍事委員会に職を見つけるのを助けた。パールとウォルフォウィッツは親しい友人で、両名はともに冷戦タカ派の総帥であったアルバート・ウォールステッターの被後見人であった。
確かにパールは、ラムズフェルドがCNNで「パールは、明るくて、才能のある人物ではあるが、公務員ではない。彼は、大統領のために発言するのではないし、私のために発言するのでもない。」と語ったように、どこにでもいる人物である。
もう一人の外部者は、ローリー・ミルワであるが、彼女は、1993年のワールドトレードセンターの爆破事件の背後にはサダム・フセインがいると言っている。しかし、CIAや国務省の上級公務員は、そのような証拠は何もないといっている。
もともと、保守主義同盟の外部者たちは、ブッシュ大統領がアフガニスタンのみに気をとられるのではないかと考えた。それで、9.11事件の後、『ザ・ウィークリー・スタンダード』の編集者で、クウェール副大統領の主席スタッフを務めていたウィリアム・クリストルは、約4ダースの人の署名を集めた手紙をブッシュ大統領に送り、イラクが9.11の事件に関係しているという証拠がなかったとしても、サダム・フセインの体制を転覆するまで戦争を続けなければならないと訴えた。
署名者の大多数は保守的な共和党員であったが、『ザ・ニュー・リパブリック』の編集者のマーチン・ペレスやブルックリン選出のスティーブン・J・ソラーズ前下院議員のようなイスラエルに忠実な民主党員もいた。
いまやクリストルは大統領に手紙を出す必要はない。彼は「ブッシュ大統領は、テロリズムに対する戦いを途中でやめることもないし、イラクについての考えを放棄することもありえない」と言っている。
[以上]