みなさまへ

 

  日本国際法律家協会は、9月28日の理事会において下記声明を発表いたしました

ので送信させていただきます。

 

  2001年10月1日   日本国際法律家協会 事務局長 新倉 修


同時多発テロに対する軍事行動に反対する声明

 

 


 2001年9月11日、アメリカ合衆国のニューヨーク市およびペンタゴンを襲った「テロ

行為」に対して、われわれ、日本国際法律家協会は、許されざる犯罪であるとしてこれ

を糾弾し、犠牲となった人々に心からの哀悼の念を表明するものである。しかし、同時

に、アメリカ合衆国大統領が、この痛ましい惨劇を、「テロリストによる合衆国に対す

る戦争である」呼び、「テロリストに対する戦争」を宣言したことに驚愕するととも

に、これが国際法と国際連合の在り方を真っ向から否定するものであることに強く抗議

するものである。

 われわれは、宗教を異にする人民が武器を持って対峙していた時代を乗り越えて、ま

た、二〇世紀における二度にわたる大きな戦争の惨禍を反省して、世界の平和と安全を

はかり人民の権利と福利を増進することを目的として、国際連合が結成されたことを

知っている。現在、世界の一八〇数カ国が加盟する国際連合は、その基本となる国連憲

章において、武力行使および武力による威嚇を原則として禁止し(第二条)、紛争の平

和的解決を義務づけ(第三三条)、例外的に個別的または集団的自衛の固有の権利を認

める場合であっても、国連安全保障理事会が国際の平和と安全にとって必要な措置を取

るまでの間にこれを限定し、しかも自衛権の行使について加盟国がとった措置について

安保理への報告を義務づけている(第五一条)。このような一連のしくみは、いかなる

口実であれ理由であれ、復仇のための武力の行使または武力による威嚇が国際法上禁止

されていることを明白に示している。しかも国内で行われた犯罪を支援した者の対し

て、たとえその者が国外にいる場合であっても、国境を越えて軍隊を派遣して威嚇し、

さらに武力を行使することはとうてい許されない。このことは、一九七〇年に国連総会

においてアメリカを含めて全回一致で採択された「友好関係原則宣言」(2625(XXV))に

おいて明言されている。今回の事件に関して、国連安保理が行った決議1368号は、確か

に「テロリストの攻撃に応えるあらゆる必要な手段をとり、かつ、国連憲章上の責任に

従ってあらゆる形態のテロリズムと闘う準備があることを表明し」たものであるが、テ

ロリストの行為の実行者、組織者、支援者を裁判にかけ、あらゆる形態のテロリズムに

対する闘いにおいても国連憲章上の義務による拘束があることを認め、自衛権の行使に

ついて国連憲章に基づくことを前提としているのであって、決して報復のための武力行

使を容認したものではない。

 われわれはまた、「テロ行為」が尊貴なる人命を軽視し、生命への権利をはじめとし

て、国際社会において確固として承認されている人権を侵害するものであることを改め

て強調したい。また同時に、報復を理由として行われる武力の行使が、国際的に承認さ

れている人権をも侵害することも指摘しなければならない。武力の行使は、その理由が

筆舌に尽くしがたい人命の損失に基づくものであるとしても、とうてい、失われた人権

に対する正当な救済でもなければ、正当な回復でもない。目的が手段を正当化し得ない

ことは、「テロ行為」についても、これに対する報復的「武力行使」についてもひとし

く当てはまるものと言わなければならない。

われわれはまた、アメリカの同盟国を称する日本が、平和憲法に基づく平和的手段に

よる解決を地道に追求することなく、短兵急に、自衛隊の海外派兵や米軍基地の警備な

ど、いたずらに軍事力の役割を拡大するために立法を急ぎ、あるいは法的な根拠がない

のに、「調査・研究」に名を借りて、出撃するアメリカ艦隊に自衛艦を随行させること

に強く抗議する。このたびのアメリカ艦隊および航空兵力や海兵隊の出動は、あきらか

に日米安全保障条約の枠組みすら逸脱していることを、改めて指摘しておかなければな

らない。

 このたびの犯罪は、ブッシュ大統領をはじめ、世界の政治的指導者が指摘するよう

に、単にアメリカに対するだけの攻撃ではない。しかし、これに対して武力を行使すれ

ば、われわれの民主的な秩序そのものが危機に瀕すると言わなければならない。した

がって、われわれは、八〇数カ国の国民に及ぶとされる、この痛ましい被害の発生に対

して、共通の関心を持って、ただちに国連特別総会を開催して協議することを求める。

その上で、公正で峻厳な裁判が実施できるように努め、あわせて「テロ行為」の温床と

なる構造的な格差や差別を廃絶するために、総力を傾けて、問題の解決に当たることを

心から期待する。いまこそ民主主義の総力をあげるときです。

   

     2001年9月28日

          日本国際法律家協会理事会

 



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