2002年1月8日付『ニューヨーク・タイムズ(電子版)』の記事(James Dad&Eric Schimitt, U.S.Sees Battle After Afghan War in Lawless Areas 河内謙策訳)
ワシントン、1月7日。国防副長官ポール・D・ウォルフォウィッツは、本日、アフガン後のテロリズムに対する戦争は、ソマリア、イェーメン、インドネシア、フィリピンなどの、これまでテロリストがしばしば軍事行動を自由に行ってきた聖域に対して行われることになるかもしれない、と述べた。
インタビューでのウォルフォウィッツの発言は、テロリストのネットワークを破壊する戦略の概要を明確に述べるものであった。
ウォルフォウィッツがブッシュ政権内での好戦的なメンバーと言われているだけに、彼の発言は、ペンタゴンがイラクのような大きくて政治的に難しい目標を選ぶことを延期し、そうすることによってバグダードを攻撃するのではないかと疑っているアラブやヨーロッパの同盟国との紛争を避けたことを意味する。
ウォルフォウィッツは、フィリピンのようなテロリストのネットワークを消滅させるのにアメリカの援助を歓迎している友好国と相談中である、と述べた。ペンタゴンはまた、ソマリアやイェーメンのような統治能力が不十分で、テロリストのネットワークを消滅させる軍の装備も十分でない国に対して大きな関心を示している。
ウォルフォウィッツは、テロリズムに対する戦争の次の段階の予報をしようという訳ではないと強調した。また彼は、ペンタゴンはいかなる国も次の段階の目標として除外していないことを強調した。
しかし彼はブッシュ政権の内部でサダム・フセイン打倒の唱道者の一人であった。彼は、イラクや他のテロリズムを支援する国に対して、もしテロリストの滞在を認めることをストップしなければ、アメリカから外交的、金融的、場合によっては軍事的なプレッシャーを受けることになるであろうというシグナルを送ったように見える。
彼は、アメリカのアフガニスタンに対する圧倒的な空爆により、これまでテロリズムを支援してきた多くの国がその態度を変えるようになってきたこと、それが将来のテロに対する強力な抑止力になっていると主張した。
彼は、「いたるところで前進が見られる」「これらの前進は、アメリカの真剣さとテロリズムを支援する側にいたらとんでもないことになるという恐怖に基づくものである。」と述べた。
「ある程度は動機が問題になる。」とウォルフォウィッツは続けた、「彼らは善意からそのような行動をとっているわけではないから、彼らにいい成績をつけて休ませるわけにいかないことは明らかだ。」
ウォルフォウィッツは、イラクはテロリズムに反対するというサインを見せていない、と述べた。彼は、「近頃サダム・フセインは自重しているけれども、そのことは我々が関心を寄せていることを彼がやめようとしているわけではないようだ。」と述べた。これらの中には、イラクの北部と南部に設定されている飛行禁止地帯をパトロールしているアメリカの飛行機に対する銃撃の問題が含まれている。
彼はまた、ペンタゴンの現在の主な関心はアフガニスタンにあり、そこは「少なくとも1、2ヶ月前と同様に油断のならない危険な地域である」と述べた。先週、今日ペンタゴンのスポークスマンが罠と呼んだパキスタン国境近くの待ち伏せ攻撃によって1名の特殊部隊員が殺害された。タリバンやアルカイダの残党がアフガニスタンの東部や南部で軍事行動を継続している。
ペンタゴンの高官は、今日、B-52とB-1爆撃機が再結集を試みて重武装をしているアルカイダの勢力に対して爆撃を行ったと述べた。爆撃機は、コーストの町の近くのザワルキリの基地にある、アメリカ軍によって集められたタンク、装甲車、その他の重火器を日曜日に爆撃している。その爆撃は、その週3度目の爆撃であった。
「今後数ヶ月の間の最も重要なことの一つは、今回の戦争の早い時期に便宜上結成され、トラブルメーカーになりやすく、敵味方が入れ替わる我々の同盟を、長期の真の同盟に作り変えることである」とウォルフォウィッツは語った。
現在までのところ、カブールの暫定政権のリーダーであるハミド・カルザイは「非常に立派な人物であることが明らかになってきている」、しかし「彼が難しい仕事をやり遂げる準備があるかどうかは別問題である」とウォルフォウィッツは述べた。
ウォルフォウィッツは、アメリカの次の目標を特定するようになることを注意深く避けながら、ソマリアが磁石のようにテロリストをひきつけている無法状態の国家であると述べた。ブッシュ政権は、アルイティハードというソマリアに基礎を置く戦闘的宗教集団をアルカイダと関係があるテロリストの組織であるとしている。アメリカは、ソマリアの送金業を営んでいる会社[バラカート社]の在米資産を凍結し、海岸沿いに偵察機をとばしている。
「アルカイダが逃げようとすれば、政府の力は弱いか存在しないくらいであるから、明らかにソマリアはその一つの候補地である」とウォルフォウィッツは述べた。
しかし彼は、ソマリアにおいては、アメリカの選択は限られている、「定義から明らかなように、一緒に行動できる政府が存在しない」と語った。彼は、アフガニスタンにおいて反タリバン勢力が果たしたのと同じ役割を果たせる信頼できる人々をCIAは探していると述べた。
フィリピンにおいては、アルカイダと関係を持ってきたアブサヤフ・グループを政府は鎮圧しようとしており、国の南部のバシラン諸島で戦闘が行われている。既にアメリカは、同国の軍隊の反テロ活動、特殊作戦の訓練を始めている。
彼は、「アメリカの参加は、フィリピン軍の直接的な支援を含むことになるかもしれない」と語った。「我々がアブサヤフのグループをバシラン諸島から一掃することができるならば、アルカイダのネットワークに対するささやかな一撃になることは間違いない。」
しかし、彼は、マニラ政府がそのことを「自分らの手でやりたがっている」と付け加えた、すなわち、「彼らにとっては、それが決定的な基準なのだ。彼らは、自ら助けるものが助けられるという図式の中で援助を受けようとしている」と述べた。
インドネシアにおいては、イスラムの戦士たちがキリスト教徒と、政府の力が「きわめて弱い」スラワジ諸島やマルク・プロビンスにおいて戦った、とウォルフォウィッツは語った。
「イスラム原理主義者とテロリストがインドネシアのムスリムとつながって、そうでなければテロリズムに対して友好的であるはずのなかった同国に一角を占めたということがわかるでしょう。」と彼は言った。「スラワジ諸島のケースでは、その地域の人々を守り、あるいはテロリズムを弱体化させる筈の安定した政治状態を作り出すのに十分な軍隊が存在しなかったことが問題だ。」
彼は、インドネシア政府はテロリストに断固たる処置をとることに同意しているものの、巨大なムスリムの暴力的な抵抗が引き起こされるのではないかと恐れている、と述べた。彼はまた、合衆国政府は援助を行う用意があるが、ペンタゴンは人権侵害で非難されたインドネシア軍と共同で演習をすることはできない状態である、と述べた。ウォルフォウィッツは、これらの制限は「9月11日の事件に照らして見直されるべきだ」と述べた。
彼は、インドネシアにおいて米軍が直接的な軍事行動をとることはありそうにない、「なぜなら、同国は巨大で共通点のない地域だからである」と述べた。
イェーメンもまた政府のコントロールの及ばない地帯や地域を抱えている、と彼は述べた。彼は、「イェーメンには非常に未開の地域があり、そこでは政府の統治がなされていない」と語った。
9月11日事件の直後、アメリカはアルカイダの細胞と思われるものに断固とした処置をとるよう要求した。3ヵ月後、イェーメン軍がアルカイダのメンバーと思われる者を逮捕しようとしたときに、イェーメンの中央地域から遠く離れた地域に住む部族の者とイェーメン軍の特殊部隊が交戦したことがある。 [以上]
ヤフーのサイトに2002年1月9日午前4時13分に掲載された記事(河内謙策訳)
ソマリア暫定政府の大統領は、ソマリアはテロリスト組織をかくまっていないから、アメリカの同国に対する攻撃は認められない、と語った。
「我々は、アメリカと直接対話をすることに成功した。我々は、アメリカがソマリアに対する如何なる攻撃もしないと考えている」とアブドゥールカシム・サラート・ハッサン大統領は、ロンドンで発行されている『アルザーマン・デイリー』紙に語った。
「ソマリアは、もはやアルカイダの組織に隠れ場所を与えてはいない。ソマリアは、反テロリスト陣営に属する。」とハッサン大統領は付け加えた。
ソマリアの首相ハッサン・アブシール・ファラは日曜日に「ビン・ラディンはソマリアに来ることは出来ないし、安全な天国を求めることも出来ない」と語った。
彼は、アメリカに言及しながら、「我々は、2万6000人の警察官を訓練した。我々は、彼らが我々に告げる者を誰であれ見つけ出し、逮捕することが出来る」と述べた。
アメリカの高官は、1991年にモハメッド・シアード・バール大統領が没落して以来強力な中央政府が存在しないソマリアに関心を表明し、ソマリアがアルカイダとつながりのあるグループや個人の根拠地であると述べてきた。
アフガニスタン駐在米軍の司令官であるトミー・フランクス将軍は、先週、アメリカはソマリアを監視していると述べた。[以上]
アフガニスタンの戦争が継続される一方で、パレスチナ紛争、インド・パキスタン紛争が進行し、特にインド・パキスタン紛争は核戦争になるかもしれないという緊張状態の中で年が明けました。アメリカの報復戦争が、パンドラの箱を開けたような感があります。
このような中でアメリカは、報復戦争の第2段階の準備を進めています。昨年からイラクなどへの戦争拡大が強く懸念されていたところですが、その第2段階の具体的なシナリオが見えてきました。今回訳出した、1月8日付けの『ニューヨーク・タイムズ』に掲載されたウォルフォウィッツ国防副長官の発言は、ブッシュ政権が第二段階の攻撃目標として、ソマリア、イェーメン、フィリピン、インドネシアを考えていることを明らかにしました。この発言の全容は、是非添付文書を読んでいただきたいと思います。
我々がまず確認しなければならないのは、今回のウォルフォウィッツ発言が、今までのブッシュ政権内の1個人の発言と異なり、事実上のブッシュ政権としての見解表明になっていることです。そのことは、ウォルフォウィッツ発言が1月7日付けのSouth China Morning Postの記事と一致していること(これはJoseph Gersonの教示による)、 また、ウォルフォウィッツの論敵であったパウエル国務長官がソマリアのような無法状態にある国に対する監視を認めると発言するに至っていること(http://www.portal.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2002/01/10/wsom10.xml&sSheet=/news?2002?01/10/ixworld.html なお、パウエルはソマリアをlawless placeと呼んでおり、lawlessという単語はウォルフォウィッツが用いた単語と一致する)、により裏付けられます。
次に、イラクへの当面の攻撃が回避されたのは国際世論の一定の勝利と評価できるものの 、アメリカの戦争拡大政策が危険であることに変わりはなく、「小さい国」(インドネシアは大国ですが)に対するアメリカの戦争拡大に対する反対運動を強めなければならないということです。ソマリアについては、もはやアルカイダの組織は存在しないというのですから、今回のアメリカの戦争拡大の目的が国際テロリズムの壊滅とは無関係であることを明確に示しています。(ぜひ添付文書のソマリア大統領の発言を読んでください。これは、田中宇氏の力作―「ソマリアの和平を壊す米軍の戦場探し」という論稿の結論と一致しています。http://tanakanews.com/b1224somalia.htm) インドネシアについても、内務大臣がアルカイダの組織がインドネシアに存在するという証拠を発見できなかったと発表していますが、この真偽は分かりません(http://breakingnews.scmp.com/Reuters/Front/fulltext.asp?ArticleID=Asia-82539)。
ともかく我々の眼前で大変な事態が進行しようとしていることは明らかです。是非このウォルフォウィッツ発言を多くの方に広めていただきたいと思います。なお私の友人からは、日本の平和運動は有事立法反対や憲法改悪反対で忙しいんだ、という意見が寄せられましたが、アメリカの戦争をアメリカと日本が一緒にやるための(より正確に言えば、アフガニスタンのように、アメリカの戦争を日本が下請けするための)有事立法ではないでしょうか。そうだとすれば、アメリカの戦争に反対しないでおいて、どうして有事立法反対運動が前進するのでしょうか。また、そのように日本の国内にだけ目を向けた平和運動では、世界の平和運動から日本の平和運動が孤立しかねません。私は、そのことを憂慮しています。
そのほか、不審船事件についての日韓ネットの声明を添付しました。水島朝穂先生の見解ともあわせてご検討ください(http://www.asaho.com/peace/jpn/index.html)。また、沖縄と韓国で米軍基地問題が進展しています。名護市長選挙についての文書を添付しましたが、韓国の基地問題についての日本語情報として沖・韓民衆連帯のサイトがあります(http://homepage1.nifty.com/OKIKAN)。東ティモールへの自衛隊派兵に関する東ティモールNGOの声明も添付しました。
河内謙策
Kensaku Kawauchi
kawauchi@fas.harvard.edu
kenkawauchi@nifty.com
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