フィリピンのサイトに掲載された、フィリピンを代表する論客の一人であるシンブラン氏の論文、訳は河内謙策。


アメリカのフィリピンに対する軍事的介入の新段階

 

ロナルド・G・シンブラン

(フィリピン大学教授、『我々に危険をもたらす基地』の著者)

 


 “戦争ゲーム“あるいは”米比合同軍事演習”の名で呼ばれ、バシランとザンボアンガで行われるもの(コード名はKalayaan-Aguila2002、あるいはBalikatan02-1)は、特殊部隊によって導かれた米軍の軍事作戦行動以外の何ものでもない。カラヤン・アギーラ2002は、フィリピンの地に対してなされる軍事介入としては、米比戦争(1899-1901)以来、最大のものである。モロ戦争(1901-1911)以来、もっとも多数の米軍がバシラン・ザンボアンガ地域に展開することになる。それは、1899年に始まり、ゲリラによって実際は1913年までアメリカ遠征軍を悩ませた米比戦争を想起させるものである。

 毎年恒例の軍事演習であることを口実にして、1200名のフィリピン軍と660名の米軍が「6ヶ月から1年の」あいだ、実際の生きた目標であるアブ・サヤフに対して軍事作戦を展開するのである。これまで、フィリピン軍とアメリカ軍の軍事演習はルソン島とミンドロ島の様々な地域で行われてきたが、国内の紛争にアメリカが巻き込まれないように反乱の発生している地域や異議申し立てがなされている地域は避けられてきた。1960年代や70年代の米軍基地を基礎にしてなされた高いレベルの軍事活動においても、米軍はルソン島周辺の反乱鎮圧攻撃に対しては低姿勢をとってきた。

 APの記者のポーリン・イエリネックは『US海軍タイムズ』の今年の1月11日号で次のように書いている。「…アフガニスタンは米軍が戦闘をしている、あるいはこれから戦闘を計画している唯一の地域ではない。すでにフィリピンにいる米軍特殊部隊は、アジアの国家がイスラム急進主義者と戦うことを励ます先頭に立つことになるであろう…米軍のフィリピンへの派遣は米軍が世界のいたるところでテロと戦うという実例である。」

 来る2004年の大統領選挙においてアメリカの支持を得ようとしているマカパガル・アロヨ大統領は、上院において同意された条約によらない限りフィリピンの国土に外国軍隊の存在を認めない憲法を完全に無視している。フィリピンとアメリカとの間のどの取り決め(相互援助協定、軍事援助協定、フィリピンを訪問する外国軍隊の地位に関する協定)においても、外国軍、軍事顧問、軍事トレーナーやコーディネーターの駐留を認めた規定は無い。フィリピンの外務次官ローロ・バジャも、実際に戦闘が行われている地域におけるこのような軍事行動は、二国間の如何なる覚書によっても基礎付けられないと述べている。マカパガル・アロヨ大統領と彼女の軍事問題についてのスポークスマンは、今回の軍事行動がフィリピンを訪問した外国軍の地位に関する協定で規定された“軍事演習”の範囲内であるという大きなごまかしをしている。「6ヶ月から1年」という空前の長さは非現実的であると言うことは出来ないにしても、永久とか無限定というのと同じである。米軍と他国軍隊との合同演習を調べたものは誰でも、こんなに長い期間の演習を発見したことはないであろう。

 エリート部隊を含むこんなにも大量の遠征軍は、アメリカのフィリピンに対する軍事介入の新しいページを開くものである。1950年代においてでさえ、アメリカの軍事介入は、30名に満たない軍事顧問団と一握りの工作員によるCIAの心理作戦に限定されていたのである。

 アブ・サヤフあるいはアメリカの国益に対する脅威に対してなされる戦闘に米軍が直接参加するということは、ミンダナオにおけるモロ・イスラム解放戦線とモロ民族解放戦線に対する大量の米軍投入の引き金になるかもしれない。これらの米軍はまた、米軍のリストに載っている他の”テロリスト”あるいは”共産主義的テロリスト”に向けられることになるであろう。現在、フィリピン共産党の軍事部門である新人民軍は、ルソン島、ビサヤ島、ミンダナオ島の50以上の地域において、100を超える解放区を作り上げている。米軍は“アメリカ帝国主義”と言われているようにアメリカの経済的利益を保護しているが、このアメリカ帝国主義がフィリピン共産党と新人民軍の敵なのである。

 これは、全戦線における大きな、延長された戦争の引き金になるかもしれない。

[以上]



フィリピンのサイトに2002年1月20日付けで掲載された記事(Alcuin Papa and PDI bureaus, Most Filipinos oppose US help vs Abu : survey. 河内謙策訳)


世論調査の結果によると、フィリピン人の大半がアブ・サヤフに対する戦いについてアメリカの援助を望んでいない

 

アルカン・パパ&PDIビューロー

 


 昨年の11月と12月にイボン財団によって行われた世論調査の結果によると、大半のフィリピン人が無法者の集団アブ・サヤフを一掃するための戦いに米軍が参加することに反対している。

 財団のデータ・バンクとリサーチ・センターの調査には様々な分野から1136人の回答があった。これらの人々に対して、アブ・サヤフに対する戦いに米軍の参加することの是非が尋ねられたのである。

 財団は、52.73%が反対で、40.32%が賛成の結果であったと述べている。しかし、マニラ圏に住む450人の回答結果では、48.44%が賛成で、42.67%が反対であった。

 財団では、この調査は、プラス・マイナス0.44%の誤差があると言っている。この調査全体は、フィリピンの経済状態、収入、生活スタイル、政府の活動成果などについての人民の考え方を知るためになされたものである。

 軍隊のエリートであるグリーン・ベレーを含む600名以上の米軍が既にフィリピンに到着し、来月から実際に行われる”カラヤン・アギーラ2002”と呼ばれる軍事演習に参加する予定である。

 軍事演習は、アブ・サヤフの掃討と、マーチン・バーンハム、グレシア・バーンハムという宣教師夫婦とフィリピン人看護婦デボラ・ヤップの人質救出のテストも兼ねている。

 日曜日の『フランス・プレス』は、アメリカの南部方面軍司令官代理ロイ・シマーツの言葉を伝えているが、彼は、フィリピン軍はバーンハム夫婦を観察しているだけで、救出することが出来ないと述べている。

 シマーツは宣教師夫婦はバシラン島のジャングルにいると語ったが、それが何時確認されたことかについては述べなかった。

 批判する人々は、米軍の存在は憲法違反であると主張し、活動家たちは米軍が出て行くことを要求している。しかし、司法省は、米軍の存在は、憲法に違反しないだけでなく、フィリピンを訪問する外国軍隊の地位を定めた協定(VFA)や米比安全保障条約(MDT)にも違反しないと述べている。

 反戦連合ピースキャンプのラスティ・ダリゾーは土曜日にこう語っている、「悪夢が近づいている。アフガニスタンをなぎ倒して瓦礫の山にした後で、アメリカは銃と爆弾をフィリピンに向けようとしている。」

 アメリカの上院議員サム・ブラウンバックが最近述べた、アフガニスタンの次はフィリピンだ、という言葉を引用して、ダリゾーは「これが侵略でなくて、いったい何が侵略だというのか。」と述べた。

 しかし、セブ市でインタビューの待ち伏せにあったマカパガル・アロヨ大統領は、今回のバシランでの軍事演習はアメリカが全世界に呼びかけているテロリズムに対する世界的な戦争へのフィリピンの協力の一環である、と述べた。

 彼女は、軍事演習がMDTとVFAの下でのいつもの演習に過ぎないと繰り返した。

 彼女は昨年の上海でのブッシュ大統領とのやり取りを思い出した。ブッシュ大統領は、アブ・サヤフに対する戦闘に米軍が直接参加することを申し出たのであった。

 彼女は、「私は、(ブッシュ大統領の申し出に対し)ノーと言いました。なぜなら、戦闘は、わが国の軍隊が自らなすべきことですからね」と語った[彼女は、今回は米軍が直接の戦闘に参加しない、軍事演習にすぎないから問題ない、と強調したのである。訳者]。

[以上]


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